人気アイドルグループSMAPのメンバーである草なぎ剛氏が酔って裸になって騒いだことが影響して、日本民間放送連盟は地上デジタル放送への完全移行をPRする新キャラクターとして「地デジカ」を発表しました。
▼「地デジカ」に関するニュース
そもそも、たいていのマスコットキャラクターが人間ではないのはなぜでしょう。
キャラクターといえば「ひこにゃん」があります。
▼ひこにゃん特設サイト
戦国時代は泣く子もだまる赤備えの鎧兜で有名な彦根藩の井伊家。そんな赤備えの兜をかぶったのは武士ではなく猫ちゃん。それが「ひこにゃん」です。
それから「はばタン」。
▼「はばタン」プロフィール紹介
震災からの復興を不死鳥(フェニックス)で表現したのが兵庫県のマスコットキャラクターです。スポーツ万能男子という設定にもかかわらず、日射病で倒れるというツッコミどころも。さすがは関西のキャラクターですね。
ところが、奈良県の平城遷都1300年祭のマスコットキャラクターは「かわいくない」という声が相次いだことがありました。
この平城遷都祭のキャラクターをみると……たしかにあまりかわいくありません。
▼せんとくん紹介
かわいくないというより、ちょっとコワいかも。
なぜコワいかというと、今にもしゃべり出しそうだからです。
「ひこちゃん」と「はばタン」は、その容姿からしてしゃべりそうにありません。しゃべったとしても「にゃぁ」とか「カァー(フェニックスがどう鳴くかわかりませんが)」とかいったかんじでしょう。
「ひこちゃん」と「はばタン」がしゃべるのかどうかは知りませんが、たとえしゃべったとしても、きっとアニメっちくな声をしているだろうな、とイメージすることができます。
一方の平城遷都祭のキャラクター「せんとくん」は「ふつう」にしゃべりそうだったのです。なぜなら童子のイメージでデザインされたキャラクターだから。
童子といえば人間の子供・少年(菩薩の別名でもあります)。
子供や少年がしゃべるのよくある光景です。たとえ外見はかわいい子供でも憎まれ口をたたくばかりでちっともかわいくないという子供もいるかもしれません。
そもそも人間の子供がかわいいかどうかは、その子供との距離(親類・友人・知人)で決まります。
見ず知らずの子供が憎まれ口をたたいていたら、かわいいとは感じにくいかもしれません。
みんなウチの子がいちばんかわいいと思っているのですから、もしも特定のだれかの子供をマスコットキャラクターにしたら、ウチの子のほうがもっとかわいいのに、と思う人が続出してしまう。
こうなってはみんなに愛されるマスコットキャラクターにはとうていなれそうもありません。
もう一度「ひこちゃん」と「はばタン」を思い浮かべてみてください。
ウチの子よりも……と考えるでしょうか。たいていの人はそんなことは考えません。
なぜなら「ひこちゃん」と「はばタン」は人間の子供をモチーフにしたキャラクターではないからです。(猫と鳥をモチーフにしたの)。
ウチの子や親戚の子や近所の子と比較しようもないものであって、容易にしゃべり出しそうもないもの。
それが広く愛されるキャラクターの条件です。
平城遷都祭のキャラクター「せんとくん」は童子にシカの角を生やしたものです。
もしもウチの子供にシカの角が生えていたら?
シカの角みたいな寝グセぐらいならまだかわいいですが、ほんとうにシカの角が生えたら?
そんなこと、考えたくもないでしょう。
考えたくもないオソロシイ事が起こったそのまんまの容姿を持ったキャラクター。
だから「かわいくない」という声が相次いだのではないでしょうか。
新キャラクターの「地デジカ」は角が生えており、2本足で立ち、色いレオタードを着ていますが、その容姿は人間に近いものではありません。鹿をイメージさせる容姿をしています。
鹿は人間のことばをしゃべりますか?
フジテレビのドラマ「鹿男あをによし」に登場する鹿は人間のことばをしゃべりましたが、一般的にはしゃべりませんよね。
▼「鹿男あをによし」フジテレビ
↑あまり話題にならなったようですが、スゴクおもしろいドラマです。いやホンマ最高です☆
だから「地デジカ」は2本足で立ってレオタードを着ていても、鹿をイメージさせる容姿をしているのです。
そもそもマスコットキャラクターというのは、人畜無害なものが好まれます。好まれるというのはキャラクターを作ったり用いたりする側にとって好まれることを意味します。
さらに、好まれるというよりも、人畜無害でなければならないと困るのです。
作られたキャラクターはギャラを要求しませんし、ご飯を食べませんし、トイレも使いません。
人気がなくなって倉庫の奥に押し込まれても、文句のひとつもいいません。
もちろん、お酒も飲みません。
そもそも人間をイメージさせる容姿をしていませんから、人間の言葉をしゃべりようもありません(イベントでは人間の言葉を音声機器を使って発することがありますが……)。
見た目がかわいくて、愛着を持ってもらえればいい。そこに人間臭さは不要です。人間味という言葉とはかけ離れた、都合のいいように作られた「かわいさ」だけがあればいい。それがマスコットキャラクターに求められる要件の典型的なものです。
そうすると、地上デジタル放送への完全移行をPRするキャラクターに草なぎ剛氏が選ばれたことは、その目的と要件からすると無理があったことになります。
どれほど人畜無害の「いいひと」のイメージが強いとはいえ、草なぎ剛氏は人間です。
人間をキャラクターに選んだからには「ひこにゃん」や「はばタン」と同じものを求めてはいけません。
人間ですから、当然のように人間味がある。そういったあたりまえのことも含めた「キャラクター」として起用したのなら、今回の草なぎ剛氏の件をきいた鳩山邦夫総務相が「最低の人間だ。絶対許さない!」とまで激怒することはなかったでしょう。
おそらく、タレントとキャラクターの違いがわかっていなかったのでしょう。
あのタレントは人気があるからキャラクターにしようと安易に思っただけ、と思われてもいたしかたありません。
人気があるタレントには、そうなった理由があります。また、愛されるキャラクターだから人気があるタレントになったともいえます。
人間味があるからその「人となり」=「キャラクター」が愛され、人気のタレントになる。
それが「人間」というものです。
「人気があるからPRキャラクターに」というのは根本からおかしいのです。
そのおかしさに気づいていないから「最低の人間だ。絶対許さない!」という発言が飛び出すのです。これは「血の通った人間」は必要なく「作られた形だけのキャラクター」だけが欲しかったんだと言っているようなものです。
人間味を排除した魂の抜けた「キャラクター」で、人間不在のPRを押し進めていく。もしそんなふうに国民に思われたなら、たいへん遺憾です(←政治家みたいだ)。
あるアンケートによると約9割の人たちはに草なぎ剛氏に同情的だそうです。
▼「草なぎ謝罪会見、アンケートで92%が同情」:イザ!
また、それまで彼のファンでなかったが、人間味ある人だと知って草なぎ剛のファンになった人もいるという話も耳にします。
キャラクターの意味のみならず、キャラクターになってもらうタレントの人気の意味を理解する努力さえしなかったことが浮き彫りになったという意味でもたいへん遺憾ですね(←だぁかぁら政治家みたいだってば)。
キャラクターがどういうもので、キャラクターをいかに活用すべきか。
そういった大事なことはやはりディズニーに学ぶのがいいでしょう。
ミッキーもミニーもマイクを通してはしゃべりますが、直接言葉は発しません。
それに、人気のタレントがディズニーのキャラクターになったという話は聞いたことがありませんよね。
逆はあります。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のアトラクションか映画になって、海賊の役にジョニー・デップが起用された例はあります。それもあくまで、ジャック・スパロウというキャラクターを演じる仕事をジョニー・デップが受けたということです。
▼「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(PIRATES OF THE CARIBBEAN)」映画作品レビュー
ジョニーデップがいくら人気者だからって、ジョニー・デップはディズニーキャラクターにはなりません。
なにはともあれ、政治家の皆さんは一度真剣にディズニーリゾートで遊んでみる必要があるかもしれませんネ。
ちなみに「地デジカ」についてのあるアンケートでは、8割以上が「良くない」と回答しているそうです。
▼【日本のアンケ】地デジ代役「地デジカくん」8割が「良くない」
それから「地デジカ」は「ちでじか」と読むようです。
はじめ「ちでじりょく」ってなんだ? と思ったのは私だけ……?
まぁキャラの絵をみれば、鹿とかけているのはわかるのですが、文字だけだとわかりにくいかも。
そんなこんなで、キャラってなんだ? というのを今一度よく考えてみると、ディズニーのおもしろさが一層増すかもしれないですね。