映画「ローン・サバイバー(LONE SURVIVOR)」
「ローン・サバイバー(LONE SURVIVOR)」
監督:ピーター・バーグ
2013年/121分
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米海軍特殊部隊ネイビーシールズ史上最悪の惨事といわれるレッドウィング作戦を描いた本作は実話に基づく物語。
2005年。タリバン幹部の居場所を特定するため、アフガニスタンの山岳地帯に偵察に入ったネイビーシールズの隊員4名。
任務は2日ほどで終了するはずだった。しかし作戦中に山羊飼いに遭遇し拘束するも彼らを解放したことで200人を超えるタリバン兵に追われ、攻撃を受けることになる。
本作ではアフガニスタンの村人やタリバン兵の言葉に字幕が出ない。声の調子や大きさや仕草や表情や状況から何を言っているのか推測するしかない。観客はまるでその場に自分がいるかのような感覚にもなる。
この演出と相まって、戦場で窮地に陥った米軍兵士たちの極限に次ぐ極限がこれでもかというほどに続く。
山、山、山。そして岩、岩、岩。撃たれてしまうから自ら崖から落ちるしかない。その先には岩、岩、岩。幾度も身体を打ちつけられ、身体ひとつを安全に横たえる隙間さえない。
休む間もなく追手は迫る。そして再び銃声。さらにロケット砲弾を次々に撃ち込まれる。
いったい何度転落しただろうか。硬い岩に体を打ち付けボロボロになりながらも、また転落しなければならない極限が続く。
救援ヘリの音とその姿をみつけたときの兵士たちの歓喜もわずかひと時でしかなかった。ロケット砲によってヘリは撃墜されてしまうのだ。
唯一の生き残りとなった兵士に差し伸べられた手さえも、相手の言葉がわからないからそれを信じていいかわからない。散々攻撃されて満身創痍の兵士は村に連れていかれても気が休まることはない。
身振り手振りで現在地と米軍の位置を地図で伝えようとしたり、自身の傷を手当てするために必要な物を欲しいと村人に訴えるのだが、それさえもなかなか伝わらない。
必死に伝えようとしても、伝わらない。
言葉が伝わらなければ行動で。しかし戦闘という行為によって満身創痍で仲間も失った孤独な兵士にはその伝える手段にさえたいへんな苦労をする。
それでも兵士は伝えることを最後まであきらめようとはしない。村人たちだってそうだ。彼らの決死の行動によって孤独な兵士もその真意を徐々に理解するようになる。
激闘、孤立無援。そして傷の痛み。さらに、わからない・伝わらない不安と恐怖。
壮絶な戦闘シーンもさることながら、その根底には伝わらない恐ろしさがある。
実話を元にしている作品なので、どこで何がどうなるかは予告編その他でほぼ明かされているだろう。
物語の流れや結末がどうなるのかではなく、兵士たちはどう生きようとしたのかを、その壮絶なシーンの連続と向き合って観ていただきたい。
『ローンサバイバー』は、ほんとうにおそろしい映画である。