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映画「キャプテン・フィリップス(CAPTAIN PHILLIPS)」


▼「キャプテン・フィリップス(CAPTAIN PHILLIPS)」

監督:ポール・グリーングラス
2013年/134分


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ソマリア海域。コンテナ船が海賊に襲撃される。

海賊ときくと「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズみたいに海賊船が大砲を撃ったりしながら襲ってくるイメージが浮かぶかもしれないが、本作ではボートに乗った海賊が襲ってくる。

海賊たちが小さなボートで大きなコンテナ船を追いかけてくる初めの襲撃シーン。ここからラストまで一瞬も気が抜けない。

ボートから、海面から壁のよう伸びるコンテナ船体をどうやって登るのかと思ったら方法はとてもシンプルだった。いわば城攻めで城壁を登るそのままといっていい。

コンテナ船の強みはスピードと船体の大きさと、そして消火栓だ。

船の出力を上げて大きな波を起こして追尾ボートをかく乱することや、ボートからコンテナ船に乗り込まれにくいその高さ(大きさ)については、なるほど! とすぐにピンときても、消火栓とはなんだろう? 

その謎はボートの海賊がコンテナ船に乗り込もうとする際に明らかになる。

それでも、コンテナ船の防衛策はこれらスピードと高さ(大きさ)と消火栓だけである。

護衛の船があるわけでもなく、セキュリティ要員が乗船しているわけでもない。銃などの武器もない。船長のフィリップスが、近づいてきたボートの海賊に向けて発射したのは信号弾ぐらいなものだ。あとはコンテナ船を左右に舵をとらせてボートをひきなさそうとするぐらいしか海賊たちの乗船を阻止する術はない。

抵抗するもいよいよ武装した海賊4人にコンテナ船に乗り込まれてしまう。それでもフィリップス船長は事前の準備と機転と度胸と覚悟で乗組員の命を守るため、その力の限りを尽くそうとする。

やがて船員の救出と引き換えに海賊の人質となったフィリップス船長。ここから海軍特殊部隊ネイビーシールズなどによる救出までが描かれることになる。

さて、海賊といっても彼らは普段は漁師である。しかも海賊行為をやりたくてやっている者ばかりではない。強制されて気がすすまないながらもやらなければならない者がいたり、やるからにはそれなりの成果を出さなければならないとプレッシャーに押しつぶされそうな者もいる。

だからどの船を襲うかにしても下調べをして計画を立てているわけでもない。レーダーをみてなんとなくこの船が襲撃しやすそうだからと安易に決めたりもする。

だから襲ってみてはじめて積荷が何であるかを知ろうとしたり、そもそもどこの国の船かも知らなかったりする。

計画が無いに等しい海賊と、海賊対策を普段から強く意識しているフィリップス船長。

それでも武装しているのとそうでないとのは圧倒的な差がある。そんな危機的状況は人質となってからも続く。

本作は134分という映画としては比較的長めの上映時間だが、物語の初めから終わりまであくびをするような「間」はない。

特に、コンテナ船に急接近するボートをはじめてレーダーに捉えたその瞬間から、観客もあたかもその場に居合わせたかのような緊張感に包まれる。

この圧倒的な迫力とリアル感のおおきな理由は、なんといってもフィリップス船長役のトム・ハンクスだ。

演技がうまいとか、そういうのを超越した「魂の表現」をする役者だとあらためて思わせてくれる。とくにクライマックスの救出シーンから救出後にかけては彼の独壇場だ。

海上。船。救命艇。そういった場所や空間を限定されたいわば「圧力釜」効果もあって緊迫感もハンパない。そこに迫真の演技が加われば……。

とにかくスゴいものを観た。そう言える映画に出会えるのはめったにあるものじゃない。

今年はあまり印象に残る映画を観なかったなぁという人は、ぜひ観たらいいだろう。


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