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06/22/2011

映画「アリス・クリードの失踪」


「アリス・クリードの失踪(THE DISAPPEARANCE OF ALICE CREED)]

J・ブレイクソン監督 2009年 101分


Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
満員の客席。映画が始まった。


ふと、視界の隅がチカチカする。


どうやら隣の席の人が手に持ったケータイが光っているようだ。着信アリのお知らせなのだろう。


数十分後。隣の席の人はやっと気づいたようだ。チカチカとしたその光はおさまった。


暗い映画館のなかで手に持ったケータイの光に気づかないほどに冒頭10分間のシーンにその観客は吸い込まれていたのである。
(ケータイの電源は切ってほしいのはいうまでもない)


さて、3人と一室。基本はたったこれだけで観客を夢中にさせる映画をつくれるか。


もしもそれができる自信を持てなければ、きっと他人を楽しませることは一生できない。


そんな意気込みや希薄がビシバシ感じられる本作のJ・ブレイクソン監督は、短編映画を自主制作して高い評価を得たのち『ディセント2』の脚本を共同執筆。そして自主制作になっても自ら監督するために書いた「アリス・クリードの失踪」で長編監督デビューを果たす。


冒頭の約10分間。アパートの部屋や車に黙々と細工を施し、アリス・クリードを誘拐してベッドに縛り付けるまで、ふたりの男は一切しゃべらない。聞こえる声はアリスの悲鳴のみ。


それは、200万ポンドを手に入れるための用意周到な誘拐計画のはじまりだった。


だが、生き抜く希望をけっして捨てないアリスのとっさの行動をきっかけに、誘拐犯との関係がめまぐるしく変化していく。


物語の内容についてこれ以上は「何も言えねえ」(北島康介選手ふう)


さて、この作品のテーマやそこで描かれるものは多々あれど、私がひとつだけ取り上げるとするならば、覚悟と意気込みだ。


冒頭10分間、登場人物はだれも言葉を発しない映画。登場人物は3人。舞台は8割ほどアパートの部屋。


まるで意地悪な制約がある罰ゲームのようだが、これを監督は自らに課した。


一見するとそれは悪条件だが、考え方を変えるとそうではない。鉄は熱いうちに打たねばならないというから、過酷な状況や条件のなかで鍛えられてこそ、タフな作品が出来上がることをこの監督は知っているだけでなく実践したのである。


冒頭10分間。ふたりの男が黙々と作業する様子は「映像は語るより見せろ」の基本に忠実だ。観客はアクションの中から物語世界の約束事を理解しようと目を凝らし何が起きようとしているかを見極めようとする。


登場人物にひとこともしゃべらせないうちに、こうして観客は早い段階ですんなりと作品世界の住人となる。


そもそも物語の約束事は観る前の予備知識として観客は持っている。誘拐の話だというのがそれだ。たいへんわかりやすいお題が先に「どーん」と与えられているので観客は迷うことはない。


迷わないから安心できる。それでいてドキドキしながらこれからはじまる物語世界へ足を踏み入れていくことができるようになっているのである。


こういった作品で重要なのは、観客に伝える情報量をいかに調整するかである。


はじめてアリスと誘拐犯の関係が変化した瞬間に、観客は物語世界の登場人物との秘密を共有することになる。これは「情報における共犯関係」の成立にほかならない。


観客との共犯関係を築けるかどうか。映画がヒットするかどうかはここにかかっているといってもいい。共犯関係が成立したとき、物語は一気に動き出す。


さて登場人物は3人だ。ふたりではない。3人集まればトライアングルを形成することできる。


恋愛でも三角関係というのはよくある(?)もの。どんな恋愛作品だってトライアングルを基本に展開する。


『アリス・クリードの失踪』もその例に漏れないのだが、はじめはそうとわかりにくいようにしている。それは犯人が男ふたりだからだ。


ふたりというのは「0か1」の世界である。非常にハッキリした関係だ。だからそこに隙間が生じにくい。つまり、物語が動き出しにくいのだ。


犯人がふたりだから仲間割れも起こりにくく、まったく硬直したように物語は動きようもないと思えるのが普通だ。それに登場人物の数は決まっているから、ますます何がが起きるとは思いにくい。でも、何かが起きるから映画になった。


タネも仕掛けもあるはずなのに、とうていマジックが成立するとは思えないと感じさせる。そんな挑戦状を叩きつけれた観客は、ならば監督のお手並みを拝見させてもらおうという気にもなる。


観る側の準備運動をこれほどしっかりやってくれる作品だから、観客は冒頭10分を過ぎる頃にはますます内容が気になっている。


こんな冒頭10分間をつくれる度量を持つには、それ相当の覚悟と意気込みが要る。


監督はこの作品で、登場人物3人だけのほぼ限定された空間という条件でこれほどのことができるということを、これ以上ない方法で証明してみせた。


内容について話すことができない(そういう種類の作品な)ので、ここではひとりの人間の覚悟と意気込みを垣間見れる貴重な機会を与えてくれる作品とだけ伝えておこう。


もちろんこれはモンモノのダイヤの原石であり、それは自ら磨いてこそ輝き、人目につくようになる。そんな作品である。


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06/21/2011

AKBさしこに学べ~3,5秒のテクニック~

その共感・応援される謎を選挙コメントで徹底解剖(第3回AKB48選抜総選挙)


●共感・応援される秘訣を体現するこれ以上の教師はいない。たった1年で10人ごぼう抜きしたAKBさしこの総選挙コメントにその秘密が隠されている。


■経緯(物語)で気持ちを伝える

■まさかの発言で伝説に~ファンの究極の夢をかなえる魔法のコトバ~

■常識を破り、常識を守る

■信頼を増す数字の扱い方

■心の奥にズシンと響かせる「ひとクッション挟む」テクニック

■応援される「不完全さのテクニック」

■まだまだ発展途上なアイドル~さらなる可能性の提示~

■共感を得る究極の方法~弱さとは親しみやすさ~

■スピーチの締め(終わり)は新たなはじまり

■夢が叶うワクワク感を抱かせる

■共感・応援される秘訣を体現するこれ以上の教師はいない

■舞台で爪痕を残す大物たち~北野武、エリカ様~

■さしこ9位はむしろ当然~無意識ならば天才~


第4回、第5回のAKB48総選挙の記事と合わせてこちらでまとめてお読みいただけます。

27位→19位→9位→4位、そして1位。

AKB48グループのなかで、なぜ指原莉乃は注目され、躍進を続けるのか。

その謎を解く鍵はAKB総選挙のスピーチにある。

順位とは結果だけではなく、そこからはじまる新たな1年への期待値でもある。新しい1年のスタートを切る瞬間にAKB48総選挙の壇上でいったい何をどう語るのか。

わずか数分のスピーチ。

そこにはコトバの力を用いた数々のテクニックが散りばめられている。スピーチを注意深く読めば指原莉乃が躍進を続ける理由が明らかになってくる。

コトバの力を意識してそれを生かす者だけが切り開ける道をさっそく垣間見ていくことにしよう。


なぜ指原ばかりが躍進を続けるのか AKB48総選挙スピーチにみるコトバの力なぜ指原ばかりが躍進を続けるのか AKB48総選挙スピーチにみるコトバの力
高田圭

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06/01/2011

ここ掘れワンワン『マジすか学園』シリーズ


※『マジすか学園』および『マジすか学園2(途中の第7話まで)』を範囲としたレビューです(放送中のため)

※キャラ紹介には、AKBアイドルとしてのキャラや活動についての記述も含まれます。物語内でのキャラと、AKBアイドルとしてのキャラの両方が密接にリンクするため。


「どうせアイドルドラマだろ」もしもそう思って見逃しているなら、妻が隠した1000万円当選宝くじとヘソクリに気づかぬまま、リサイクル料金を払って自宅の冷蔵庫を引き取ってもらい、やれやれひと仕事終えたな、と満足げに一服するようなものである。


妻が帰宅すれば、大変なことをしてしまった!と気づくが、そんなことをしでかすのは、たいてい嫁に逃げられた男である。そもそも妻がいなければヘソクリもないが、ここでの大事なポイントはロクに中身を確認しないまま冷蔵庫を手放したことである。(注・あくまで例え)


『マジすか学園』の各放送回の冒頭には

「このドラマは、学芸会の延長であり、登場人物の一部に、お見苦しい(?)演技がございますが、温かく見守ってご覧いただければ幸いです」
と表示される(回により多少変化アリ)


この表示は、いうなれば『花咲か爺』の犬である。親切にわかりやすく「ここ掘れワンワン」と教えてくれているのに、掘らない者がいるだろうか。


「やっぱり学芸会の延長か。アホらしい」と吐き捨て、掘らずに立ち去るだろうか。


『花咲か爺』の老人は鍬で畑を掘っていた。つまり、耕して作物を育てる意志を持って実際に動いていた。だから犬は教えてくれた。そして犬のことばに驚いた老人がその場所を掘ってみると……。


もしも心にいつも鍬を持って畑に出ているならば、誰にだって犬が教えてくれるはずだ。


『マジすか学園』冒頭のこの表示(但し書き?)に、私も驚いた。あんなに露骨に「ここ掘れワンワン」と教えてくれるなんて、そんなことってはたしてあるのだろうかとビックリした。こんな大胆なことができるのは、もちろん只者ではない。それだけは確かだ。


ということで鍬を持とうとせず、犬を追い払おうとするような人は、この先を読んでもまったく意味がないことだけは先に伝えておく。


前置きはこのぐらいにして、ドラマの話をすすめよう。


ざっと物語の基本情報を紹介しておく。
(『マジすか学園』を軸に紹介。『マジすか学園2』では四天王その他に変更アリ)


登場する学校は主に2つ。「馬路須加女学園(マジ女)」とそのライバル校の「矢場久根女子商業高校(ヤバ女)」だ。


メインとなる「マジ女」の、いわゆる番長は最強武闘派集団のラッパッパ(吹奏楽部)の部長である大島優子。そして副部長にサド(篠田麻里子)。


その下にラッパッパ四天王といわれるシブヤ(板野友美)、ブラック(柏木由紀)、ゲキカラ(松井玲奈)、トリゴヤ(小嶋陽菜)がいる。


そんなマジ女にある日、転校生がやってくる。前田敦子である。一見すると地味な前田は「マジ」の言葉に反応して眼鏡を外すと、ケンカ最強女子に変貌する。


キャラ設定の都合上、主人公の前田のセリフはけっして多くはない。孤独であろうとする前田は多くを語ろうとせず、いつも他人との接触を極力避けている。


主人公がしゃべらないとなれば、いったい誰が学校の様子やキャラ同士の関係を視聴者に知らせるのか。


そこで活躍するのが鬼塚だるま(なちゅ)である。前田と同じ日に同じ学年・組に転校してきた彼女は、前田の強さをいち早く知ると「あつ姐」と呼んで勝手に「舎弟」と称していつも付いてまわるようになる。


だるまは前田の代わりに、マジ女や生徒たちのことについて聞いて回ることで、視聴者に必要な情報を提供する。


このとき、噂話という体(てい)でだるまに情報を提供するのがチームホルモンだ(「マジすか学園2」ではチームフォンデュが該当)。ヲタ(指原莉乃)をリーダーとする彼女らはいつも教室でホルモンを焼いている。


ちなみに人が噂話をしやすい状況は、気の合う仲間と食事をしているときだという説もある。ホルモンを焼くのもチーズフォンデュを食べるのも、キャラに話をさせる(説明させる)自然かつお約束の設定である。


さて、チームホルモンは校舎の最上階にあるラッパッパの部室への出入りはできず、喧嘩もあまり強くない。どこにでもあるようなチームの代表という位置づけだが、前田やゲキカラなどと早い段階で激突することで、メインキャラの喧嘩の実力や人柄を視聴者に知らせる重要な役割を担っている。


注目すべきは、地味に思えるかもしれないがチームホルモンのリーダーのヲタを演じる指原莉乃(通称「さしこ」)である。その絶妙な配役がたまらない。


前回(第2回選抜総選挙)では19位ながら、そのヘタレキャラを買われてAKBメンバーで唯一、自身の冠番組(『さしこのくせに』)を持っている彼女は、その他バラエティ番組への出演がもっとも多いメンバーのひとりだ。単体(ひとり)でもキャスティングされるメンバーは他にはあまりいない。


お気づきかと思うが『マジすか学園』シリーズでの指原莉乃のキャラと位置付けは、見事にAKBでのそれと似ている。けっして正統派アイドルのエース候補とはいえないが、AKBの名でいちばんおいしく売れているのは彼女だといっていい。


『マジすか学園』ではたいていジャージ姿。ゲキカラに鼻エンピツの刑に処されたり、いろんな相手に向かって行ってはたいていボコボコにされたりする。そんなエースとはかけ離れたようにみえる位置でも、実はいちばんおいしく活躍できている「さしこ」。


そんな活躍は人気にも繋がっている。テレビでの露出が多すぎると誰かが投票するだろうという心理がファンに働いて順位が下がりやすいといわれるなか、もっとも露出が多いAKBメンバーのひとりでありながら、第3回選抜総選挙速報では見事7位に急浮上している(前回19位)。


愛される、応援されるキャラとはなんなのか。真のヒーロー(ヒロイン)とはなんなのかを良く体現するのが指原莉乃である。


たとえエースの位置とかけ離れているように見えても、真(裏?)のエースとして花を咲かせることができることを、チームホルモンのリーダーという位置・役柄を通して教えてくれているのである。ほんとよくやるよ「さしこのくせに」(笑)


さて、そんなチームホルモンとだるまのおかげで、視聴者は『マジすか学園』という物語世界でまったく迷わなくて済むのである。彼女らはスターウォーズシリーズでいえばC3P0とR2-D2といったところだ。


こうしてわかりやすく物語の舞台と人間関係が伝えられるので、たとえAKB48のメンバーを誰ひとり知らなくても、まったく問題がない。


普通だったら、こういったアイドルドラマは出演するアイドルを知っている視聴者だけを対象としがちである。だが『マジすか学園』シリーズはそういった従来のよくありがちな例には当てはまらない。


企画・原作を務めた総合プロデューサー秋元康氏は以下のように語っている。


「AKB48をアイドルっぽく見せないドラマを作りたい、そしてこの人数の多さと各メンバーの個性を生かしたい。そう思ってこのドラマを企画しました」(秋元康)


その言葉から推測できるのは、ファンのみならずより多くの人々にメンバーを知ってもらいたいという気持ちで作られたということだ。


つまり、開かれたドラマなのだ。だるまやチームホルモンの例にはじまり、あれほど多い各々のキャラの個性が光るよう、それでいて物語が停滞しないよう、細心の注意と絶妙なバランス感覚で職人技を使ってみせた。そんな魅力的なドラマなのである。


「各メンバーの個性を生かす」という点については、登場キャラの名前に注目してほしい。


キャラの名前のつけ方は大きく3つに分類することができる。


(1)ニックネームを用いない

前田敦子と大島優子はそのままだ。ニックネームが付いていない彼女らは、第2回選抜総選挙でのそれぞれ2位と1位である。


既に広く名前が知られている主要中の主要メンバーに関しては、ストレートに個性をさらに前面に打ち出すよう、そのままの名前で演じさせている。アイドルとしてのイメージとドラマのキャラとしてのイメージもほぼ同じ。いわば、期待を裏切らない役どころを演じて基礎を固めている。


その他の多くのメンバーたちには、たいがいニックネームが付けられてる。


それらは主に2つの系統に分けることができる。


(2)AKB48のアイドルとしてのキャラの歴史や由来にのっとったもの

・デビュー初期は黒髪だったものの、やがて見た目や雰囲気が渋谷系ギャル路線になった板野友美(シブヤ)

・清楚だが実は裏表があるとかないとか噂されるブラックな柏木由紀(ブラック)。ちなみに本人曰く、ブラックと呼ばれるのはたまたま黒い服を着ていたことが由来にすぎないという。よく、私服がダサいとメンバーたちにイジってもらっている。

・男装がイケメンすぎると話題の宮澤佐江(学ラン・洋ラン)。男装電子写真集を出すほど好評。

・テレビ出演時に安定してしゃべれてカメラに映る時間が多め。つまり尺を取れる峯岸みなみ(「尺」 マジすか学園2から名乗る)「もしドラ」原作のモデルでもある(映画版の主役は前田敦子)

・AKB48じゃんけん選抜で第1位となった内田眞由美(ジャンケン)。かつて大島優子に下克上な「やっぱりセンターに立ちたい」発言をしたり、じゃんけん選抜で「私が1位を取ります」と宣言したりで話題に。実際に1位となりセンターポジションを獲得。有言実行の強運という才能の持ち主。


(3)新たな個性(魅力)を引き出されたもの

・「ねぇ、怒ってる?」と前田敦子を挑発して壮絶な死闘を繰り広げ、猟奇的な役での狂気度MAXな演技で大ブレイクを果たしたSKE48の松井玲奈(ゲキカラ・甘口)

・正統派アイドル美少女系を逆手に、頭脳派のいわゆる悪役の演技が好評の渡辺麻友(ネズミ)
 

このように「メンバーの個性を生かす」手法を、それぞれのメンバーに合わせて用いている。


そもそも、この人数の多さを考えてみてほしい。ちょっとやそっと器用なぐらいでは、とてもじゃないがそれぞれのキャラの個性・魅力を伝えることはできない。まして新たな魅力を引き出すことなど夢のまた夢だ。


しかし『マジすか学園』シリーズでは、これほどの数のメンバーの個性をしっかり伝えつつ、物語を停滞させることなく前へ前へと進めている。


お約束のコネタ格言っぽい深いセリフも散りばめられ、また有名ヤンキー作品へのオマージュともとれるパロディっぽい設定やセリフといったおちゃめなところもありつつ、それでいて「AKB48をアイドルっぽく見せないドラマを作りたい」の言葉どおり、視聴者がちょっと引くかもしれないほどにガンガン殴り合うシーンもかなりある。


映像作品は語るより見せろの基本に忠実に、彼女たちは「喧嘩」というアクションをどんどん披露していく。


その喧嘩シーンでは血糊の量がハンパではない。前田敦子との激闘の撮影の合間であろういわゆるメイキング映像では、ゲキカラ役の松井玲奈は両手を血糊で真っ赤にしながら、手が冷たくてしょうがないと笑顔でコメント。おそらく撮影が寒い時期かなにかで、血糊のため手が濡れて冷たかったのだろう。


そのぐらい多くの血糊をつけて殴るは蹴るわ、凶器・卑怯攻撃はあるわの、かなり過激な喧嘩シーンが多い。


だが、そんなアクションシーンを撮ることがメインではない。それら派手なシーンはむしろ脇役で、登場人物の心情を丁寧に掬いあげて描くことがメインとなっている。


それは最強武闘派集団ラッパッパ四天王のひとりでありながら力技の攻撃をしないトリゴヤ(小嶋陽菜)が、読心術やマインドコントロール能力で前田を追い詰ることで主人公の背景(みなみとの過去)を明かす回にも顕著にあらわれている。


また、戦いを通して心を通わせるという物語のスタンスは、ラッパッパ部長の大島優子のセリフとしてしっかり語られる。


このように、喧嘩を通して心を通わせて成長していく様子がしっかりとわかりやすく描かれているのである。


この「わかりやすさ」に徹底できるのがプロだ。妙に凝ろうとせず、メンバーの個性を生かすことに集中しているからこそ、人数が多くても物語が破綻しないのだ。


妙に凝ろうとすれば、必ず制作者の思い入れが灰汁となってにじみ出る。そうなってはメンバーの個性をボヤけさせてしまう。


だから『マジすか学園』シリーズで用いられる物語構築上の仕掛けはどれも基本の型ばかりである。奇をてらわない素直なつくりに徹している。


基本・素直をベースに、遊び心をほんの少し加えるだけで、メンバーの個性がどんどん発揮されて物語に彩りが増していく。


これがオトナの仕事というものだ。あまりに徹底したプロの姿勢ため、照れ隠しで「学芸会の延長」とおちゃらけてみせるそこには、えって真剣さが滲み出ているかのようだ。


ここで引き合いに出してはたいへんかわいそうではあるが、不良を題材にした作品で、ほんとうに「学芸会の延長」になってしまったものがある。見比べれば(本来は見比べられるようなレベルではないが……)その違いがハッキリと浮かび上がってくるだろう。

さて「妙に凝ろうと…」に関してもう少し話を続けよう。物語づくりで実力がモロに出やすいのは群像劇だ。多くのキャラを登場させてうまくやれば「上手な人」と思われるので、制作サイドはつい群像劇に手を出したくなる。


だから必要もないのにわざわざ登場キャラを増やして、実力がないために案の定ハチャメチャになって自滅した作品のなんと多いことか。


生半可な気持ちやちょっと器用なぐらいでは、手を出して散々な目にあうのが群像劇である。


そんななか『マジすか学園』シリーズは、そもそも登場キャラの多さに必然性がある。なんてったって、大人数アイドルグループなのだから。(小泉今日子を思い浮かべたあなたはきっとマツコ世代)


人数が多いことを始まりとして、アイドルだからという甘えを排除して各メンバーの個性を生かすことに集中した『マジすか学園』シリーズがどんな物語かは、先に紹介した秋元康氏のことばにすべて表れている。


「AKB48をアイドルっぽく見せないドラマを作りたい、そしてこの人数の多さと各メンバーの個性を生かしたい。そう思ってこのドラマを企画しました」(秋元康)


型にとらわれず、それぞれの個性(魅力)を生かす。この心がけさえあれば、どんな分野でも大きな結果を出すことができる。


それをアイドルを用いて具体例で見せてくれるのが『マジすか学園』シリーズである。


これにはとても及ばないが、ちなみに私(タカ)は、それぞれの個性(魅力)を生かすことをタイトル作成において行い、その具体的な方法や例を以下のメルマガで紹介している。

▼わかりやすい日本語で (Plain Japanese)


さて『花咲か爺』の有名なセリフに「枯れ木に花を咲かせましょう」がある。


もちろんAKB48のメンバーは枯れ木ではないが、そのままだったら魅力を伝えるチャンスがなかったかもしれないみんなに、各々の個性という花を咲かせる機会を与える。それがアイドルをプロデュースするということであり、その具体的な方法のひとつが『マジすか学園』シリーズなのだ。


そして「ここ掘れワンワン」と犬に教えてもらい、鍬で畑を掘り、金貨(大判・小判)を掘り出した老人はどうしたかを思い出してほしい。老夫婦は喜んで近所の人々に振る舞い物をした。


私も金貨(『マジすか学園』シリーズ)を教えてもらったのだから、ひとりでも多くの人にそれを知らせることで振る舞い物の代わりとさせていただければ幸いである。


最後に『マジすか学園』より、主人公・前田敦子とみなみ(高橋みなみ)の両名が言うセリフを紹介しておこう。


「世の中、マジしかねぇんだよ!」


マジになれることを探すのではない。だってマジしかないのだから。なんでもマジ(一生懸命)でやろう! という青春ドラマなのだ。


個性を生かし、魅力を引き出し、心の成長を描く『マジすか学園』シリーズ。タダ(無料)のテレビドラマで見せちゃっていいのだろうか? と心配したくなるほどの作品である。


ただし、出演者たちの多くは演技の初心者なので、セリフが多少聞き取りにくかったり、棒読みっぽい感じだったりすることもないこともない。そこは愛嬌だ。


ちなみにAKB48のメンバーだけでなく、姉妹グループのSKE48やSDN48のメンバーも出演する。


○オマケ補足情報1
『マジすか学園』ではメディアに登場することが多い前田敦子、大島優子、篠田麻里子らの出番が多い(なちゅも)。

『マジすか学園2』では松井珠理奈、横山由依など新鋭メンバーの出番が多い。

どちらにも安定して出演場面が多めなのは渡辺麻友、松井玲奈、宮澤佐江、それに板野友美といったあたり。


○オマケ補足情報2
『マジすか学園』シリーズでもっともおいしい出番を用意してもらい、それに見事に応えたのはゲキカラ役の松井玲奈とネズミ役の渡辺麻友だろう。

松井玲奈はAKB48ではなく、SKE48のメンバーであり、ゲキカラで大ブレイクする前は、同じSKE48の松井珠理奈のほうが知名度も人気も高かったといっていい。ゲキカラを演じたことで「W松井」といわれるSKE48のエースと呼ばれるようになった。
また『マジすか学園』放送後に秋元康から直々にお褒めのメールを受け取ったという。
(SKE48は東海地方を中心に活動。「SKE」は劇場所在地の名古屋の中区「栄」に由来)

渡辺麻友はもともと人気があったが、ネズミ役で存在感をさらにアピール。何をやっても頭ひとつ目立つ子。それは演技にもハッキリとあらわれている。画面に映っただけで瞬時に空気を作れる貴重な逸材だ。『マジすか学園』『マジすか学園2』のどちらにおいても、もっとも存在感がある。


○オマケ補足情報3
第3回AKB48選抜総選挙 最終順位は6月9日発表


▼「マジすか学園2」のキャスト 人物相関図


▼テレビ東京では毎週金曜深夜0時12分~放映中。
その他の地域の放送の詳細はこちらで確認を。

▼ドラマDVDはこちら

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○その他AKB48関連品

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