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05/14/2011

吉川ひなのに天才作家の素質!?

「ジュニア&高島彩のファンファンてれび」というバラエティ番組で、お笑い芸人の千原ジュニアが女性タレントと一泊二日のルームシェアをするとう企画があった。


まだ相手が誰か知らないジュニアが待つマンションの一室にやってきのは、女優の吉川ひなのであった。


玄関の扉を開けて会った瞬間に「うゎ!」と声をあげて驚いたジュニアに対し、ひなのは「自分はジュニアに嫌われているとおもっている」と告白した。


するとジュニアは、そんなことないとあわてたように否定する。


ほんと?じゃあ仲良くしようよ。と提案するひなの。こうしてルームシェアが始まった。


相手が自分をどう思っているか不安なのは皆同じだ。その不安な気持ちをあえて「嫌われている」とマイナスに振って初めに伝えることで「そんなことない」という大人の対応を引き出し、ならば仲良くしようと提案し、これからはじまるルームシェアでのふたりの関係の下地をしっかり作っている。


このテクニックを披露した瞬間に「ひなの劇場」の幕は上がった。


以下、おおまかな時間軸に沿って出来事を並べよう。


○趣味のトークでは、沖縄旅行が好きなジュニアが島の店でマリンスポーツ雑誌の表紙でひなのを見たと話す。素潜りが好きだというジュニアに、ひなのは「私も」と同調してみせる。
(→共通点を強調。親近感を抱かせる)


○夕食の買出しでは、見かけによらず(?)さりげなく食材を選びながらも、作る料理の献立はしっかり頭に入っている。
(→後の料理の手際とその味で意外性を強調)


○帰宅して一緒にキッチンで料理をはじめる。ジュニアははじめての料理体験を告白しつつ、発言でスベってしまう。すかさずひなのはそこをツッコむ。
(→遠慮なく懐に入り込む特別な存在をアピール)


○できた料理をジュニアはおいしいと絶賛。
(→買出しや料理といった共同作業が成功したことによる高揚と興奮)
(→これができるのも料理の腕があってこそ)

○食後、おもむろにひなのが自分のバッグからナースハットとナース服を取り出して自分の体に当ててみせる。翌日の仕事かパーティか何かかで使う衣装だという。ジュニアが試着するよう要請するも却下する。
(→他の一面をチラ見させる+ジラし効果)


○ひなのは試着の代わりにパワーストーンだという石を3つ取り出す。幸運が訪れた宝物だと紹介しつつ、効力が失われるからと絶対に他人に触らせない。ジュニアが何度も触らせてと手を出しだすも、ダメと言って見せるだけにする。
(→大切なもの・幸せの象徴を提示して前フリ+さらなるジラし効果)


○プリクラを撮ったことがないと告白するジュニアに、ひなのは今から撮りに行こうと提案。深夜のため実際には行かない・行けないが、何度も「行こう」と提案。
(→ジュニアに「新体験」「夢の実現」への期待と予感を膨らませる)


○風呂上りにジュニアの前で髪にドライヤーをあてるひなの。
(→普段は他人に見せない自分を見せているよとアピール)
 リビングで何度も2ショットの写真を撮るひなの。
(→ふたりの時間を写真で記録して「思い出づくり」)


○ジュニアにあだ名をつけてそれをジュニア自身に何度も言わせるひなの。
(→特別なふたりだけの関係を作り、相手にそれを強く印象付ける)


○ジュニアが普段やっている飲み会への参加希望を伝えるひなの。
 「水」とだけ言って、ジュニアを使おうとするひなの。
(→後に行う「相手の気持ちを揺さぶる」ための前フリ)


○翌朝。別れの直前にパワーストーンのひとつをジュニアに渡すひなの。
(→あなたは特別な存在と知らしめ、相手の幸せを願う気持ちを伝える)
(→ジラしの解消)


○ふたりが別れた後のひなの単独コメントにて。「水ぐらい持ってきてくれても良くない?」「飲み会に行く約束したのに、一緒にご飯たべてひとつ屋根の下で一泊したのに、お互いの連絡先を知らないままってどういうこと?」とダメ出し。
(→ジュニアに反省を促す体(てい)で「気持ち」に揺さぶりかける)


以上の流れをみてわかるとおり、これを無意識でやっているとしたら天才だ。計算してできるならなおさら天才だといっていいだろう。


もちろんテレビであるから百戦錬磨のジュニアとしてもおもしろくなるよう、ひなののパスにおいしく乗っかったのだろうが、次から次に渡りに船を出してくる様子に、ひなののタレントとしての才能に畏敬の念を抱いたのではないか。


そして、ひなのは基本として綺麗な女性であるから、その畏敬の念がほのかな恋心に発展しないわけはない。


実際、ルームシェアを終えたジュニアは、ひなのが好きだと告白した。(まぁ笑いとしてそう言ったのだが、何割かはマジだろう)。


「ド深夜」に放送された、お笑い芸人と女優のふたりだけの企画で、これほど「感情移入」の具体例を見事に列挙した作品を見れるとはおもわなかった。


作品やキャラへの感情移入を促すテクニックの例の数々が、笑いのスパイスで味付けされてバラエティというおいしい料理になった。そんな企画であった。


もしも吉川ひなのに映画を撮らせたら……? ふとそんなことを思わせられてしまった。


才能の片鱗を垣間見れるほど、おもしろいものはない。


終わりに、吉川ひなのをキャスティングしたスタッフの腕もよかったと付け加えておこう。


ひとつ屋根の下。ふたりで一泊。もしもルックスが良い普通の女性タレントをキャスティングしたら、ジュニアの負担が大きすぎてしまう。


この点においてひなのは、よくしゃべり、リアクションも大きくてわかりやすい。


投げたボールがとりあえず返ってくれば、あとは何とかできる。それどころかどんどんボールをこちらへ投げかけてくるとなれば、あとはどう試合するかに専念できる。


演者の最低限の心理的負担を和らげるスタッフの心遣い。そして、ふたりが織り成す「お笑い化学反応」への期待。下地を作るとはこうこうことなんだな。

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05/13/2011

MC狙いの雛壇芸人監督作「ドロップ」は露骨すぎる!?


▼「ドロップ」
品川ヒロシ監督 
2008年 122分 日本
原作:品川ヒロシ『ドロップ』


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Comments(論評、批評、意見)
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(お笑い芸人コンビ「品川庄司」の品川ヒロシが自らの青春時代を元に書いた同名小説を自ら監督〈脚本も〉した作品)

注:品川祐は作家や映画監督では品川ヒロシ名義で活動しているため、本記事においては主に「品川ヒロシ」の表記とする。


以下、映画単体でのレビューである。


不良にあこがれて私立中学から公立中学に転校した信濃川ヒロシ。転校初日に学校の不良グループのリーダー井口達也に呼び出されて喧嘩したことで、その仲間になる。


品川監督は本作を青春映画だと言っている。

「ただの不良映画ではなく、観ていて楽しくなる青春映画に仕上げたかった。」(品川ヒロシ)


不良が主人公というよりも、たまたま趣味が不良だったというようなかんじだ。青春のいちページを描く題材として、より身近な学生時代のエピソードに「不良」を借りてみただけのようにみえる。


東京の調布や狛江あたりに限らず、どこにでもいる少年たちの日常の話である。


不良……。これはなかなか強力な題材である。特に若者である場合には、それは大人社会への反抗の象徴として使える魅力的な題材である。広い意味での青春だ(これをAとする)


それと同時に、男たちの数取り(椅子取り)ゲームとしても需要がある。このゲームは大人の男も大好きだ。社内の派閥争い。業界地図再編。政権交代……等々。これは青春からは距離を置く(これをBとする)


Aでいくのか、Bでいくのか、おもいっきりどちらかに舵取りをしなければ、「不良」は強力ゆえにその扱いがあいまいなまま焦点がボヤけてしまう。


残念ながら映画「ドロップ」はその例に当てはまってしまったようだ。


「ドロップ」が青春に舵をとったのならば、おもいきって「不良」は味付け程度でじゅうぶんであった。極端な話、喧嘩シーンは無くてもいい。


ところが「ドロップ」では不良たちのアクション(喧嘩)シーンがけっこうある。おそらく監督がアクションが好きなのだろう。不良モノだから喧嘩シーンを入れるのはあたりまえという感覚で、好きゆえに力が入っている。


ボコボコにする・されるシーンがけっこうあるため、観客はB(バリバリの数取りゲーム・不良モノ)を目指した作品だと思っていいのか戸惑っていると、物語が中盤を過ぎたあたりから急にBでもなくAでもなく、Cが前面に出てくる。


Cとは、直球のお涙頂戴系をモロに狙いすぎてしまった青春ドラマである。これが監督のやりたかったことなのだろうか。


青春を描く方法にはいろいろある。題材はなんでもアリだ。不良はそのうちのひとつではある。


ならば、徹底的に不良を描くことで青春を浮かび上がらせることもできる。その好例には「クローズ ZERO」シリーズがある。


▼映画「クローズ ZERO」作品レビュー

▼映画「クローズZERO II」作品レビュー


これら「クローズZERO」シリーズの映画では、どんだけ~といわんばかりに登場人物たちはガンガン喧嘩する。痛さはあまり感じられないアクションとはいえ、とにかく殴りあい蹴りあい、吹っ飛びまくる。大乱闘どんちゃん騒ぎである。


そこまでやってはじめて、ジワ~と青春のいちページが浮かび上がってくるのだ。


一方で「ドロップ」は、途中から急に取ってつけたようなお涙頂戴ドラマになってしまっている(具体的には、身近な大事な人の死である)


ただ喧嘩するだけじゃなくてしっかり愛や友情も盛り込んでいるんだよ、と制作者が前へ飛び出してアピールしてしまっているのだ。


物語よりも、その裏側が「狙っている」モノのほうが目立ってしまっているのである。


「ドロップ」を観ると、お笑い芸人の土田晃之が、雛壇芸人のなかでも品川くんはMCがやりたくて雛壇をがんばっている系ですね、といったようなことをコメントしていたことの意味がよくわかる気がする。


狙っているモノが目立ってしまうのは、初の長編監督デビュー作だからしょうがない。まして成宮寛貴や水嶋ヒロといった有名イケメン俳優や名の知られた芸人たちも起用できるとなれば、浮かれるな、というほうが無理ではある。


それらを考慮しても「狙い」や「浮かれ具合」が露骨すぎるのだ。この露骨さが活きるのはお笑いの場合や、学芸会といった場所である。


「ここでお涙いただきます!」「俺ってデキるでしょ!」「こんなに有名な俳優さんを使えてスゴいでしょ!」という声が聞こえたと錯覚しそうになるような、そんな「イタさ」は芸人としてはアリだ。品川ヒロシが有吉弘行に「おしゃべりクソ野郎」とあだ名を付けられたことは、芸人としてたいへんオイシイ。


それでもお笑い以外の領域ではマイナスに働いてしまうことがある。これに見事にハマッてしまったのが「ドロップ」ではないだろうか。


観客の多くは芸人「品川祐」を知っている。雛壇芸人として活躍したり、小説を書いたり、俳優をしたり、歌を歌ったり……。


多才で幅広く活躍する品川ヒロシを知っている。しかも「ドロップ」は彼の青春時代を元にした作品であることも知っている。


これほど「顔」が見られている中でつくる作品は、宣伝としては有効であると同時に「品川祐(品川ヒロシ)」という記号が「物語自体の魅力」を邪魔するリスクもある。


物語よりもその裏側で「狙っている」モノのほうが目立ってしまってることがわかりやすく出てしまっているのはお涙頂戴シーンだけではない。主人公ヒロシがヒロインの女性に告白するシーンも狙いすぎだ。お笑いの技を使ってみました、といわんばかりである。キャラの心情ではなく、制作者の心情が出てしまっている。


もしも、なるべく「品川ヒロシ=我」を抑えて作品づくりに専念できたなら、とんでもなく感動する作品になっていたかもしれない――。


品川ヒロシは多才で、器用で、頭がいいとするならば、それ故にデキる者だからこそ見落としがちな小さな石に躓かないよう気をつけてほしかった。


芸人は「前へ前へ」の強い気持ちが必要だが、物語づくりにおいてはそれを力強く持ちつつも、そっと作品の奥深くに込めなくてはならない。


それをするには「観客第一」を念頭におく必要がある。


品川監督が目指したと言う「観ていて楽しくなる青春映画」は、誰が楽しいのかを考えなくてはならない。制作者ばかりでなく、第一に観客が楽くなければならないのだ。


「ドロップ」を観ると、いったいこれは誰に向けて作られのだろうかと思える。


監督が考える偉い人やスゴい人に褒めてもらいたくて、またはもっともっと自分はスゴいんだとたくさんの人に認めてもらいたくて一生懸命に作りました感が前面に出過ぎてしまっている。


そのため、観客はおいてきぼりに。


それは上映時間にも表れている。このテイストの作品で122分は長い。スパッと90分ぐらいでじゅうぶんだ。


初の長編監督デビュー作であり、自身の青春時代を元にしたことからも思い入れが強くなのはしょうがない。だからこそ他人も「思い入れて」もらえるよう「余計な思い」をそぎ落とせたなら、90分ほどになっていただろう。


たいがいの青春映画はオジさんやオバさんが作っている。だからこそ、青春時代との距離がとれる。それが最大の利点だ。距離とは「我」の抑え具合であり、客観であり、観客目線への想像力である。


品川ヒロシ(品川祐)は1972年生まれの39歳。青春作品を作る一般的な例にもれず立派なオジさんである。最大の利点が活かされるはずが、まるで学生映画研究会での初監督作品のようだ。


ほんとうの学生作品ならば、それが荒削りであっても「青春」に間違いはない。


ちなみに青春の現役がつくった作品を元にした映画はちら↓

▼「キャッチ ア ウェーブ(CATCH A WAVE)」作品レビュー


ずいぶん辛口になってしまったようだが、才能があるといわれるような人がその用い方をうまくできないためにもったいないことになっている例はいたるところに転がっている。そうならないよう願う次第である。


品川ヒロシはかつて「お笑いをやったことがない人にお笑いのことをとやかく言われたくない」といったようなことをテレビで言っていた。(注:発言内容は正確とは限らない)


結論からいうと、それを言ってはおしまいである。


お笑いでも映画でも、呼び名は何でもいいが、そこに観客(や評論家)がいるから評価してもらえる。


例えるならば、サッカーをやったことがないからと日本代表選手たちが活躍するW杯の試合にコメントしてはいけないだろうか?


そんなことはないはずだ。たとえサッカーをやったことがなくたって、そのスポーツを愛する人や、何かに一生懸命にがんばる者を応援したい人は観戦しておおいに語らう。そうすることで盛り上がり、選手もチームも強くなっていく。


この点においては、お笑いも映画も同じである。


自分にとっていいこともわることも、話題にしてもらえることで宣伝にもなるし、それによって支えられるのである。


先の品川ヒロシの発言が本気なのか、現在はどうなのかはわからないが、もしも当時のまま本気でそう思っているなら、もったいないどころじゃない。


多才。器用。頭がいい。そこにスマートさが加わったとき、とんでもないことになる…と期待したい。


ちなみに上記すべてが揃っているお笑い芸人には、劇団ひとりがいる。

▼小説「陰日向に咲く」記事


さらにちなみに、不良モノでもおもいっきり学芸会に徹すると宣言することで、かえってエンタメを加速させている作品に「マジすか学園」シリーズがある。ここまで出来るのはさすがは秋元康。ホンモノの玄人技とはこういうことをいう。

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そのほか不良青春作品のおすすめを紹介しておこう。女性目線の「不良モノ」の金字塔だ。もちろん男性もおさえておくべき作品である。その世界観と読者の心の琴線に触れる手法は一読の価値がありすぎる。

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