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04/16/2011

トゥルー・グリット(TRUE GRIT)


▼「トゥルー・グリット(TRUE GRIT)」
ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督 
2010年 110分 アメリカ


Comments(論評、批評、意見)
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(69年のジョン・ウェイン主演作『勇気ある追跡』の原作になったチャールズ・ポーティスの同名小説をコーエン兄弟が再び映画化したもの)


牧場主の娘で14歳のマティ・ロスは、オクラホマ州境のフォートスミスへやってくる。撃ち殺された父親の遺体を引き取りにきたのだ。そこでマティは犯人のチェイニーに罪を償わせることを心に誓う。


インディアン領に逃げ込んチェイニーは、お尋ね者のネッドの悪党一味に加わっているという。そんなチェイニーへの追跡が地元の保安官によっては実質的に行われないとわかったマティは、金を工面して連邦保安官のルースター・コグバーンに犯人の追跡を依頼する。


はじめは相手にしなかったお酒飲みのコグバーンだったものの、マティの強い意志と報酬のために仕事を引き受けることにする。


そこに別件でチェイニーを追ってきたテキサス・レンジャーのラビーフが加わり、犯人追跡の旅がはじまる。


この映画のいいところは、そもそも犯人をなかなか追跡しないところだ。追跡しないというより「追跡できない」のだ。地元の保安官は悪党としては小物のチェイニーを、インディアン領へまで追うつもりはない。そこは管轄外となるため追跡しない理由だって持てるからだ。


そこでマティはまず、追跡者を探す。それと平行して資金を工面する。自身が乗る馬も手に入れる。こうと決めた目的のために、必要なことを行う。


やっとのことで連邦保安官のコグバーンを追跡者にすることができたが、自分も同行するつもりだったのにおいてきぼりをくらってしまう。それでもマティは執念で追っていく。


そうなのだ。犯人のチェイサーを追うまえに、まずは自ら雇った追跡者(コグバーン)を追わなくてはならなくなるのだ。


スターウォーズエピソード4にみるとおり「主人公はなかなか旅に出ない・出れない」というヒット作の基本を、このようにしっかりおさえているのである。


またマティが追跡者(連邦保安官)コグバーンとテキサス・レンジャーのラビーフのふたりに追いつき同行するに至るエピソードにも、それぞれのキャラの性格のみならず、観客の馬への愛着心をそっと植えつけておくための前フリがしっかりと込められている。


こうしてやっと追跡を開始するのだが、この3人は喧嘩ばかりしている。とにかく仲がわるい。嫌味と悪口ばかり言い合うのだ。目的はひとつでも、こうも人は反目しあえるものだと観客に教えてくれるかのようである。


あまりの仲の悪さに、早々にこの追跡隊(といっても3人だが)はバラバラになってしまう(2人と1人に別れる)。


観客としては、ただでさえ人数少ないのに大丈夫か?と思うが、いったん別れたことでその後の大事なシーンをより劇的にする布石となっているからご安心を。


ちょっと考えてほしい。荒野をただ追跡するだけだった?…と。当然のように単調になる。かといってバンバン撃ち合ってばかりにもいかない。


ならばどこでメリハリをつけるかといえば、やはり人間関係ということになる。キャラ設定やその関係性ということになると『ファーゴ』『ノーカントリー』のコーエン監督のお家芸(?)である。


目的はひとつなのに、14歳の少女のまえでいい大人がまるで小学生のように口喧嘩が絶えず、つまらぬ意地の張り合いで射撃ごっこまでする始末。どこか笑える人間関係が展開しつつも、バラバラだったからこそクライマックスでの連携プレーに観客は心躍らせることができるのだ。


こうしたコメディの雰囲気は、追跡中のシーンのいたるところに見ることができる。その一方で、ふとした瞬間に一気に緊張の場面にもっていく技量はメリハリの極地だといっていいことは付け加えておこう。


こう書くとまるで本作がコメディかのようだが、そうでもない。お気楽な娯楽西部劇とはもちろんちがう。また、けがや死体の描写などはかなりグロテスクな部類に入るだろう。


お気楽娯楽な西部劇だと、撃たれて倒れた相手はそれまでである。その後倒れた後姿は画面にちょいと映っても、それはもう「死体」という記号にすぎない。


ところが本作では、吊るされたり撃たれたりした死体の顔をはじめとするその有様がそのまま遠慮なく描写される。追跡側の者だって撃たれてけがをすればとても痛そうであり、それによって満足に動けなくなって苦い思いをする。


そういったことは14歳の少女マティであっても例外ではない。ネタばれになるので詳細は控えるが、追跡というリスクには支払うべき代償も当然のようにあることを教えてくれるのだ。


そしていわゆるガンファイトのシーンもちゃんとある。最近の派手さばかりを狙ったアクションシーンに慣れてもっと激しいものをを求める観客には合わないだろうが、分量は程よく調整されている。


ただドンパチ撃ち合うといった無駄なシーンがないために、かえって物語の内容におけるアクションシーンの比率がそれほど多くなくても、これでじゅうぶんだと思わせる。


それは、コグバーンとラビーフそれぞれにおける銃の得意分野が何であるかをしっかり前フリしており、効果がクライマックスにおいて最大限に活かされるようきっちり計算されているからである。


キャラ、人間ドラマ、テーマ、アクション。どれもが抑制のきいた見事な配分で組み合わさっており、そこにコーエン兄弟ならではの味付けがしっかりきいている。


西部劇なので物語はシンプルだ。だからこそ、どう描くかで力量がモロに出る。


そういった意味でも、きっちりと物語を堪能させてくれる数少ない作品である。


おおいにおすすめしておこう。

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