映画「アンストッパブル(UNSTOPPABLE)」
▼「アンストッパブル(UNSTOPPABLE)」
トニー・スコット監督 2010年 99分
Comments(論評、批評、意見)
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物語が行き詰まることなく、観客が息詰まるような一瞬の連続。期待どおり、またはそれ以上のものを確実に提供してくれるトニー・スコット監督は相変わらず、いやますますいい仕事をしている。
この物語は実際に起こった列車暴走事故を基にしている。大量の化学薬品とディーゼル燃料を搭載した貨物列車777号が無人で暴走。ベテラン機関士フランクと新人車掌のウィルが貨物列車を止めるべく奔走する。
たったこれだけの話。とてもシンプルだ。内容も結末も容易に想像できそうだが、その期待を裏切らないだけでなく、大きなお釣りをもらえる。そんなかんじの作品だ。
なんといってもテンポがいい。無人で暴走をはじめてからラストまで物語は一気に加速していく。
かといって事の次第を淡々と追っていくわけではなく、しっかりとキャラ=人間が描かれている。
まず、ベテラン機関士のフランクは会社から強制的な早期退職を宣告さている。日本で置き換えるなら、いわゆる解雇予告され、その予告期間中といったところである。娘たちともロクに会話らしい会話ができずにいる。
新人車掌のウィルは、いわゆるコネで入社したと皆に思われている。ベテラン社員たちは、会社は自分たちを解雇して若造を補充していると不満をつのらせている。つまり、若いウィルは歓迎されていないのだ。ウィルにしても仕事は必要だが、それが鉄道関連でなければならない理由は持ち合わせていないようだ。
さらにウィルには別居中の妻がいる。ちょっとした行き違いにより、妻との間で裁判をかかえている。
そんなふたりがはじめて組んだ日……その事件が発生する。
フランクもウィルも、勤める鉄道会社に特別な恩義を感じてはいない状況である。自分たちが乗る貨物列車を間一髪で緊急待避線に滑り込ませて暴走列車との衝突を免れたふたりは、そのまま退避していればよかった。会社もそのように指示していた。
それにもかかわらずふたりは、暴走列車を追いかける。
会社のお偉いさんに向かってフランクが、会社のためでもおまえのためでもない。町の人々のためにやるんだ、といったようなことを言うシーンがある。
ふたりの境遇を知らされている観客は、このセリフにガツンとやられてしまうだろう。
ここまでくれば観客の感情移入はバッチリだ。あとは、目的達成のために越えなければならない障害を「画」的にも派手に演出することや、そのテンポを調整することや、音楽や効果音を工夫することに注力すればいい。
これら職人技については『トゥルー・ロマンス』『クリムゾン・タイド』で定評のあるトニー・スコット監督のもっとも得意とするものである。
題材と監督と役者がこれほどマッチする作品もめずらしいのではいだろうか。
たしかな技術で安心して観れて、期待にじゅうぶんに応えてくれて、観てよかったと思える。そんな貴重な作品だといっていい。
評判がいいので、これから観る人は期待値が上がってしまうかもしれなが、それでも観てがっかりするようなことはないだろう。
一番いいのは「とりあえずコレでも」と観ることだ。
まぁトニー・スコット監督とデンゼル・ワシントンの組み合わせでピンとくる人は、期待せずにはいられないだろうが……。
デートムービーとしてもいい。下手な恋愛映画を観るぐらいなら『アンストッパブル』を選べば、男も女も盛り上がって楽しめる。
映画デートでの作品選びは重要だ。センスが問われるのはもちろん、ふたりで楽しめる作品を選べるかどうかにデートの成功・失敗がかかっている。
だれがどんな状況・目的で観てもいい。そういえる作品である。
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