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12/20/2010

映画「ロビン・フッド(ROBIN HOOD)」

▼「ロビン・フッド(ROBIN HOOD)」
 リドリー・スコット監督 2010年 140分


Comments(論評、批評、意見)
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そもそもロビン・フッドってなんだ?


「あたりまえのように有名人ぶってるけど、そもそもお前が誰かよく知らねーし」


これと同じようにおもっている人って実はけっこういるんじゃないかと思う。私もそのひとりだった。


まぁだいたい知ってるけど、そもそもなんで彼はシャーウッドの森に住んでいるの? 森ガールならぬ森ボーイ、いや森のオッさん?


それで、森に住めばアウトロー(無法者)?


もしそうなら、黒姫高原の森に自宅をかまえるウェールズ系日本人(←本人によれば)作家のC・W・ニコル氏はアウトロー?


そんなことはない。森に住んだからといってアウトローとはいわれない。


ではなぜロビン・フッドだけそう呼ばれるのか?


いわば、ロビン・フッド誕生の物語。それがリドリー・スコット監督とラッセル・クロウ版の「ロビン・フッド」だ。


ロビン・フッドときくと、なんとなくおとぎ話ちっくなイメージを持つかもしれない。だが本作の世界観はリアルちっくである。


冒頭の城攻めにしても、匂いがかげるのではないかというほど戦場の雰囲気が伝わってくる。そういえばリドリー・スコット監督は城攻めが好きいわれ『キングダム・オブ・へヴン』の終盤でも壮大な城攻めを披露した。


そんなお家芸(?)の城攻めで、ロビンは名もなきひとりの傭兵として十字軍に参加する。


数人の射手仲間はいるものの、その生き方は一匹狼のようだ。その他大勢の兵士と違うのは、十字軍の戦いに自分なりの考えや意見をしっかりもっていること。


また、城攻めで自軍の敗北が決定的とみるといち早くその場を去るなど、状況を瞬時に見極める目と俊敏さと行動力もある。


そんなロビンは旅の途上でイングランドの騎士ロバートの暗殺現場に居合わせる。これがきっかけで騎士になりすましてノッティンガムの地に向かう。


このようにロビンは品行方正な正義のヒーローとはいえないが、己の考えを持ち「義」の心を持っていることが早い段階で観客に知らされる。


ロビン・フッドという男についての予備知識がゼロでもまったく問題ない。それどころか、むしろ何も知らないほうが物語に入り込みやすいだろう。


ロビン・ロングストライドという男は、技術(射手)もあって、人望もあり、人の心を掴む声と話し方ができて、女性のハートも射止める。


よく見れば出来過ぎだが、そもそも一介の傭兵という出発だから、そんなオールマイティぶりにも嫌味が感じられない。


だれでもスッとロビンという男の存在を認めてしまうようにと、実にうまくできている。こういった物語の進め具合はさすがといったところだ。


それだけではない。本作は140分あるが、そんなに長い作品とは感じられない。それどころか「え?意外とあっさりと終わっちゃったね」と思えるほどだ。


城攻めでも、終盤の英仏両軍の海岸での戦闘でも、かなりの迫力がある。海岸のシーンでは130頭の馬と1,500名の兵隊すべてが本物だというし、豪快なアクションをみせてくれる。


それでも、戦闘シーンを延々と見せすぎない・やりすぎないのは、作品全体を貫くスタイルと同調している。


スタイルとは「わかりやすさ」である。


この作品はわかりやすい。ロビン・フッドの「ロ」の字を知らなくても、十字軍の「十」の字を知らなくてもまったく問題ない。


王様と傭兵と諸侯と未亡人。それらがどんな思いと狙いをもってどうしたいと願っているのか。それらの関係がこれ以上ないくらいにわかりやすく展開する。


それもこれも、物語がただ一点に集中しているからだ。


ロビン・フッドがなぜアウトローと呼ばれるようになったのか?


ロビン・フッド誕生の物語にフォーカスしているからこそ、ブレがまっくないシンプルでわかりやすい良作となっている。


また、若者がほとんど登場しないためにうわべだけの華やかさとは無縁なのもいい。ヒロインだってケイト・ブランシェットだ。けっしてピチピチとはいえない。だからいいのだ。


彼女の魅力がとてもよく発揮されている。もちろんラッセル・クロウも。ちなみにふたりともオーストラリア人だ。


偉人や有名人を題材にして、主人公の行動の動機に的を絞った作品は、ありそうであまりない。


観客が物語に感情移入できるかどうかは、主人公の行動の動機にかかっていることからも、そのものズバリをシンプルにズバッと描く本作は誰が観てもロビンを応援したくなるだろう。


あまりに壮大な物語を期待すると肩透かしを食らうかもしれないが、肩の力を抜いて観るのがちょうどいい。その割にはいろいろ豪勢だけどね。

(おまけ)
リドリー・スコット監督とラッセル・クロウのコンビといえば、ほかに『グラディエーター』がある。


迫力の戦闘シーンをみせてくれるこの作品でマキシマスが嫉妬や妬みによって将軍の座を追われて奴隷になるというのは、旧約聖書のヨセフの物語がベースだとみてとれる。


聖書の有名なエピソードをちりばめている『グラディエーター』の詳細解説はこちら


<リドリー・スコットやラッセル・クロウの関連作>

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12/02/2010

映画「ナイト&デイ」

「ナイト&デイ(KNIGHT AND DAY)」
ジェームズ・マンゴールド監督 2010年 米 109分


Comments(論評、批評、意見)
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キャスト、監督、ストーリー。すべてがここまでハマッた作品はめったにない。ものすごく豪華なコントでもある。やっぱり映画はいいもんだ。そう思わせてくれる作品。


……まいった。おもしろすぎる。

はじめに言っておこう。「ナイト&デイ」はロマンチック・コメディである(アクション満載の)。

「ミッション:インポッシブル」シリーズでトムが大真面目にアクションをすればするほど、頭の片隅でおもわずクスっと笑みがこぼれてしまう、あの感覚と意味が「ナイト&デイ」を観てスッキリした気がする。

トム・クルーズという俳優のキャラは、ひとことでいうと「ちょっとだけ空気が読めない風のおちゃめな大スター」だ。

サービス精神旺盛で人懐っこい印象の大スター。日本が大好きで、ちょっとした奇行(?)っぽい言動で話題をふりまく愛すべきアニキ。

そんなトム・クルーズという俳優のキャラが見事に映画のロイ・ミラー役にハマッた。

そしてブロンド美人のおバカキャラを上手に活かしてスターとなったキャメロン・ディアスがヒロインである。

トムもキャメロンもいいお年頃。顔のアップではさすがに年輪(?)を隠し切れないので、むしろ年齢をコメディの味付けにしている。

アクション満載のロマンティック・コメディともなれば、普通に考えたらもっと若いキャストを考える。だがもしも20代のメインキャストだったら、おそらく浮いてしまうだろう。

トムとキャメロンだからしっくりハマったのだ。

このキャスティングの妙だけでも映画チケット代は安いものである。


■ おそるべし!意識を失う数カット

ストーリーと演出。このふたつも見事にハマっている。はっきり言ってうますぎる。

監督は「アイデンティティー」「ニューヨークの恋人」のジェームズ・マンゴールド。様々なジャンルの作品をきっちり娯楽にできる監督だ。こんな監督がいるのが米国のおそろしいところである(いい意味で)。

はじめに言ったとおりロマンチック・コメディ(アクション満載の)であるから、アクションのリアリティといったようなことは論外で、とのかくおもしろいものを作ろうとする。そのおもいっきりの良さは才能であり、確かな職人技によって発揮される。

例えば、ロイ(トム)とジェーン(キャメロン)が危機的状況に陥って脱出→逃亡→安全地帯までの一連のアクションをわずか数カットで描ききってしまう。

何がどう起こってどうなったかをほとんど見せないことでその過程(シーン)を観客の脳裏に浮かび上がらせると同時に笑いをも提供する。

さらに、この意識を失っている間の数カット(詳細は控える)は作品のラストへの伏線になっている。ラストで「定番」を覆す仕掛けにもなっているのだ。

さらにさらに、意識を失う(失わせる)シーンを複数回用いることで作品に軽快なテンポをもたらすと共に、観客がストーリー展開に無理なくついてこれるようアシストもしてくれる。

・数カットでほとんど現場を見せずに描く
・数カットで場面展開をスムーズに行う
・数カットで「うそん…」とあっけにとられる笑いを提供
・数カットで伏線をはる
・数カットでお約束を破る(定番を覆す意外性への前フリ)
・数カットで作品のテンポを保つ
・数カット(の繰り返し)のパターンで観客にテンポと安心感を与える

ざっと挙げただけで「意識を失う数カット」にはなんと7つもの役割がある。

おそるべし……。私はこの数カットで、笑いで涙が滲むほどだった。それには監督のあまりの巧さに感動した涙も数割含まれていたかもしれない。


■ セットアップの小粋な会話、そして素直な作りに好感

冒頭の空港から飛行機内の会話までのシーン。キャラ設定からふたりの進むべき未来(物語の結末)まで、ありとあらゆる要素が小粋な会話にすべて詰まっている。

隣の席に座って話すのではなく、通路を挟み、さらに斜めにズレた席に座ったふたりの会話。この距離感がたまらない。

しばしの会話の後、ジェーンが機内のトイレで化粧を直して数分後に出てくると……。そして不時着。

このセットアップだけで、この映画を選んでよかったと確信することができるはずだ。

その後のふたりの関係は、アクションを通して揺れ動く心情の機微をしっかり描きつつ絆へと集約していく。

特にジェーンが自分の気持ちに気づいたときの行動と、ロイとの再会時に敵の攻撃をかわしながらの彼への告白の仕方(仕掛け)がヘタに凝らずにストレートでたいへん好感が持てる。

お約束や定番も抑えるべきところではしっかり抑えるあたりも職人技だ。


■ ものすごく豪華なコントでもある

なんども言うが「ナイト&デイ」はロマンティック・コメディだ(アクション満載の)。

メインがアクションではない。たしかにアクションが満載だが、アクションが目的ではない。アクションはロマンティック・コメディのための味付けである。

その割にはとんでもないアクションの連続だ。こればかりはハリウッドの独壇場であり、その利点が最大限に活かされている。

キャスト、監督、ストーリー。すべてがここまでハマッた作品はめったにない。

どんな国と地域の人が観たって、なにがどうなっているのかがすぐわかる。わかりやすいストーリーで、誰でも楽しめる。

まだまだ語り尽くせない。これを言ってはおしまいだが、私がとやかく細部を解説するよりも観たほうが話がはやい。

ものすごく豪華なコントでもある。

とにかく笑った。おもしろかった。

やっぱり映画はいいもんだ。そう思わせてくれる作品だ。


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