« 人気の秘密は人間力~「君に届け」~ | Main | 映画「ハート・ロッカー(The Hurt Locker)」 »

02/05/2010

サロゲート(SURROGATES)

▼「サロゲート(SURROGATES)」
ジョナサン・モストウ監督 2009年 89分 


<ストーリー>

近未来。人類の98パーセントは自身の代わりに外出や出社をする代行ロボットのサロゲートを使用している。

人々は自宅のリクライニングソファのような装置(スティムチェアー)に横たわり、自分が希望する身体と容姿をしたサロゲートをリモートコントロールすることで、外出の必要がほぼなくり、事件・事故・感染病・差別の危険が格段に少なくなった。

たとえサロゲートが破壊されても、使用者の安全は保障されているはずだった。

しかしある晩、何者かに襲われて破壊されたサロゲートの使用者も死亡する事件起こる。

FBI捜査官のトム・グリアーは、サロゲートを開発したVSI社をその周辺を捜査する。

Comments(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
■SFっぽくないSF作品

ロボットSF作品ときけば、どこか遠くの異世界を想像するだろう。

しかし日本で生まれ育った人たちにとって「サロゲート」は異世界でもなんでもない。

さすがに街中を歩き回る人型ロボットは無くても、自宅に居ながら自分の好きな容姿のキャラクターを作って、兵士による戦闘ミッションだのモンスター狩りだのゾンビ殲滅だのを行っているのはもはや日常である。

例えば通称FFシリーズは、もうかれこれ20年以上も前からイケメンやイケギャル(?)を自身の代理キャラクターとして操作してモンスターと戦うゲームとして遊ばれている。

なにもゲームに限ったことではない。SNSも基本は同じだ。気に入ったアバターを用いて、会ったこともない人と会話したりゲームをしたり、はたまた新年会だって誕生会だってしたりする。

あなたも、現実に会ったことがある友人知人の数と、会ったことはない友人知人の数を比べてみるといい。

どちらが多い少ないは別にしても、会ったことはない知人のひとりやふたりはいてあたりまえだということにあらためて気がつくだろう。

そんな日常を生きる人々にとって「サロゲート」の世界はけっしてSFの世界ではなく、自身が生きるまさに現実そのものだともいえよう。

だから「サロゲート」は一見するとSFとしての衝撃度は低いようにもおもえる。

実際に「サロゲート」を観はじめてもSF設定の新鮮さや衝撃といったものはあまり感じられないから、気楽に作品を楽しもうという気にもなる。

するとその予想のとおりに、あの無精ひげのダメダメ系いつも傷だらけのタフおやじでお馴染みのブルース・ウィルスが、なんと金髪サラサラヘアーにツルンツルンのお肌で登場するではないか!

これはもう大爆笑せずにはいれらないし、そうしなければ制作者に対して失礼である。

やはりこの作品はお気楽にキャラを楽しむのがベストかと思い、ユルユルモードで観ていると、次第に「おや?」と思いはじめる。

なぜなら、この作品は意外に複雑なのだ。


■ 「サロゲート」のニクイところ

物語の筋はシンプルなのだが、作品の内容と性格上、複雑に感じてしまうのである。

まず、日本で生まれ育った人にとっては特に、欧米人の顔は識別しにくい。これは欧米人にしてみれば東洋人の顔は皆同じにみえるというのと大差なく、どの国の人にとっても外国人というのはそんなものである。

そんな前提に立っても「サロゲート」に登場するサロゲートのほとんどはファッション雑誌のモデルのような容姿ばかりでどれも同じように見えるので、だれがだれだか分かりづらくなることに拍車をかけている。

そして「サロゲート」ではサロゲートとそれを使用する本人とで容姿が違う。つまり、ひとつのキャラクターにふたつの容姿が存在するのだ。

さらにサロゲートの開発者であるライオネル・キャンター博士の周囲に関しては、複数体のサロゲートを使用することもできる。

こうなると、スクリーンに登場するキャラクターが人間なのかサロゲートなのか、さらにはそのサロゲートは誰が操作しているのか、といったことが頭をよぎり、殺人事件の黒幕をつきとめる課程で観客は少々混乱気味になるかもしれない。

もっと整理してわかりやすくすることもできただろうが、おそらく制作者サイドとしては、あえてそれをしなかったのではないか。

これが「サロゲート」のニクイところである。

「サロゲート」を観終わってから、少々複雑に思える内容を頭の中で思い返して整理しようとすると、アラ不思議。

ユートピアを描きながらそこに皮肉と風刺を効かせていたその奥深さがジワジワと滲み出てくるのだから。

そもそもSFは皮肉と風刺のためにあるといってもいいほどだから、それをどう効かせるかがSF作品の良し悪しの判断材料になる。

この点で「サロゲート」はあえて複雑そうにみせることで風刺のスパイスをピリリと利かせているのだ。

そしてサロゲートを使用することによる混乱を、物語の謎解きにおける混乱と「かける」ことで、生身で痛みを感じる現実を生きることの意味と大切さをも伝えている。

もちろんそこにはグリアー捜査官のプライベートな事柄(子どもの死。妻マギーとの関係)も描かれ、人間ドラマとしての物語もしっかり組み込まれている。

だから観終ってしばらくすると、けっこうスゴい作品だったなと思えてくるのだ。


■ おもう壺夫くん・壺子ちゃんになって「してやられる」作品

さらにこの作品のおもしろいところはブルース・ウィルスの使い方にある。

ブルース・ウィルスといえば「ダイ・ハード」シリーズをはじめ、数々の出演作品を通して「タフで不死身な男」のイメージが強い。

無精ひげで傷だらけの超人。それがブルース・ウィルスという俳優のステレオタイプ化されたイメージである。

ところが「サロゲート」で彼は金髪サラサラヘアーにツルンツルンのお肌のお姿で、片腕を失ってもライフル片手に文字通り超人的跳躍力と頑丈さで飛び回るのだ。

もちろんこのときのグリアー捜査官(ブルース・ウィルス)はサロゲートである。おそらく捜査官用のため、一般人用よりも格段に身体的能力や耐久性がアップしているであろうサロゲートを使用している。

これはまさにブルース・ウィルスという俳優の、映画を通して作られた「超人」というキャラクターそのままである。

しかしサロゲートを失って生身となったグリアー捜査官は、負傷しているとはいえ、足元がフラフラ状態である。

街中を歩くのさえ危険を感じるほどだ。なにせ周囲は皆サロゲートである。

軽くぶつかっただけでも生身は怪我をかもしれないし、車だってときおりぶつかるかぶつからないかのスレスレを猛スピードですり抜けたりする。万が一サロゲートに当たっても人を死なすことはないと運転手もわかっているからだ。

生身で出歩く危うさや脆さをヒシヒシと感じたグリアー捜査官だったがそれでも一歩一歩あるき続け、さらなる負傷を重ねていくうちにどんどんタフになっていく。これは身体的にというより精神的にという意味が強い。

このように、映画によって作られたイメージとしてのブルース・ウィルスと生身のブルース・ウィルスとの対比が、作品のなかでのサロゲートと使用者との対比を際立たせている。

そんなことに気がつく頃には、お気楽にユルユルモードで観はじめていた自分がまんまと制作者のおもう壺夫くん・壺子ちゃんになっていたことに「してやられたな」と後頭部を意味もなく掻くことになるのである。


■ 観終わってからジワジワとおもしろくなる

この作品、観はじめると「なんかヘン」な感じがおもしい。

その原因のひとつは登場キャラクターの多くがファッション雑誌から飛び出てきた美男美女のサロゲートだらけで妙に滑稽にみえるためだ。

それはまるでFFシリーズのキャラクターが街中を歩き回っているかのような滑稽さでもあるが、どう観てもやっぱりヘンなのだ。

もちろん意図してヘンにしているところがFFシリーズと「サロゲート」の大きな違いだが、このヘンな感じはちょっとハマりそうでおもしろい。

そして、見終わってしばらくすると「なんか深いな」とジワジワと湧き出るようなおもしろさもある。

なによりブルース・ウィルスの金髪サラサラヘアーにツルンツルンのお肌だけでも一見の価値アリである。

ちなにSURROGATEという単語には代理人や代用(物)のほかに、遺言検証判事の意味もある。

作品のラストでグリアー捜査官が似たような立場に置かれるのも、うまくタイトルとかかっているようでおもしろい。

こうしてレビューを書いているうちにも「サロゲート」のおもしろみがまた増してきたように思う。

意外と、いや、かなりいいぞ!「サロゲート」。

アクションシーンもかなり派手だ。迷っているなら観たらいい。

もうひとつちなみに、国防省かどこかの広いフロアにスティムチェアーがズラリと並べられ、兵士たちがGIサロゲートを操作して地上戦闘訓練かなにかを行っているシーンがある。

現実にも米軍はアフガニスタンの3000m上空を飛ぶ無人機を戦闘で使っているという。

この無人機を操縦するのは米国本土の基地で操縦桿を握る兵士だ。

仮になにも知らされていない状態で基地の操縦席に座らされ、そこに移る映像だけを見せられたら、それがゲームなのか現実なのかの区別をつけることは難しいだろう。

GIサロゲートと無人機を取りかえれば、「サロゲート」の作品中の国防省のシーンはSFではなく、現実の光景となる。

こんなシーンをわざわざ撮り入れる「サロゲート」。これはお気楽ユルユル作品のふりをしているが、実は骨太作品である。

ほかにもいろんなところに風刺が効いているから、探してみるのもいいだろう。


----------------------


本日2月5日、日本テレビで「崖の上のポニョ」が放映!
奥深いポニョを10倍楽しむにはコチラ↓

▼ほんとはおそろしい「崖の上のポニョ」

▼ポニョのミステリー「ポニョはなぜ崖の上なのか」

 「崖の上のポニョ」謎だらけの迷宮を脱出せよ!
▼ポニョのミステリー「宗介はなぜ大人びているのか」


|

« 人気の秘密は人間力~「君に届け」~ | Main | 映画「ハート・ロッカー(The Hurt Locker)」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21326/47483920

Listed below are links to weblogs that reference サロゲート(SURROGATES):

» 劇場鑑賞「サロゲート」 [日々“是”精進!]
 「サロゲート」を鑑賞してきましたブルース・ウィリス主演で放つSFサスペンス。人間が各々の身代わりロボット“サロゲート”に日常生活の一切を任せるようになった近未来社会を舞台に、FBI捜査官がある殺人事件を機に浮き彫りとなっていく巨大な陰謀へ迫るさまをス...... [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 17:03

» サロゲート [★YUKAの気ままな有閑日記★]
今年に入ってやっと2本目の劇場鑑賞で〜す【story】身代わりロボット“サロゲート”が活躍する近未来。人間は自宅でサロゲートをリモートコントロールするだけで、リアルな世界に身を置くことはなくなった。ある日、あるサロゲートが襲われ、使用者本人も死亡する事件が起こる。FBI捜査官のグリアー(ブルース・ウィリス)は、サロゲートを開発したVSI社と事件との関わりを捜査するが―     監督 : ジョナサン・モストウ 『ターミネーター3』【comment】時代や背景、目的や状況などは違えども、、、『アバター』... [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 17:49

» サロゲート/ SURROGATES [我想一個人映画美的女人blog]
{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/} ←please click 全人類ひきこもり{/eq_1/} タランティーノ新作のほかに、NYの劇場で観て来たもう1本はこれ。 ちょうど公開が早まって滞在中に公開になり、待ち合わせまでの時間にちょうど良かったので一人で夜に観て来た{/m_0151/} ちょうどMac{/pc2/}に入ってる映画の予告編、行く前にチェックしてて面白そうって思ってた... [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 20:21

» 崖の上のポニョ [DVD] | [お買い得連絡通信]
崖の上のポニョ [DVD]出演:ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメン... [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 21:10

» 「サロゲート」 突き抜け感がない [はらやんの映画徒然草]
なんとなーく、なかったことにされてしまっている「ターミネーター3」の監督、ジョナ [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 21:42

» サロゲート◇◆SURROGATES(2009) [銅版画制作の日々]
やっぱりブルースはスキンヘッドが良い! ブルース・ウィリス主演、「サロゲート」を鑑賞しました。何でもアメリカンコミックが原作だそうです。The Surrogates←詳細はこちらをご覧ください。 ところでこのお話、アバターと被っているような気がするのですが。。。。如何でしょうか?サロゲートとは、直訳すると代理者という意味らしい。作品に描かれているのは人類の100%弱が身代わりロボット“サロゲート”を使って生活をしているという世界のお話である。人間は外出せず、サロゲートの媒介であるスティムチェアと... [Read More]

Tracked on 02/05/2010 at 22:34

» サロゲート☆独り言 [黒猫のうたた寝]
ブルース・ウィリス主演のこの映画またまたヅラネタで笑ってしまう予告なんですがまぁ、ロボットなんだもんね、若造りで金髪でもいいんじゃないかと許容してしまいます(笑)とはいえ、近未来、人間はロボットを自分の代わりに遠隔操作して本物の肉体はお家の中で危険回避とい... [Read More]

Tracked on 02/06/2010 at 01:47

» [映画『サロゲート』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆これ、素晴らしいですね。  色んな意味でいい。  先ずは、ジョナサン・モストウ監督的にである。  私は、ジョナサン・モストウ監督『ターミネーター3』の完成度は低いとは思っていない。  女性ターミネーターや、物語の終幕の余韻など、『1』『2』に劣らないと思っている。  『4』の評価と同じで、映画似非保守は、今後も『ターミネーター』の続編が出来ると、永遠に酷評し続けるのであろう。  かくして、ジョナサン・モストウ監督はしばらく映画作品を監督していなかったようだ。  しかし、『ターミネータ... [Read More]

Tracked on 02/06/2010 at 03:40

» サロゲート [映画情報良いとこ撮り!]
サロゲート 近未来人間の代わりにサロゲートというロボットが出現した。 これは、生活のほとんどをこのサロゲートを遠隔そうすることで、生活をすることができた。 そんなある日事件は起きた。 眼球を破壊され、IDチップも黒こげになっているサロゲートが。。。 サロゲートが破壊されたことにより、持ち主までも死ン出しまうという事態に発展。 FBI捜査官のグリアーは、この事件の解決に乗り出す。 果たして事件の真相は? キャスト ブルース・ウィリス ラダ・ミッチェル..... [Read More]

Tracked on 02/06/2010 at 04:05

» 試写会「サロゲート」 [流れ流れて八丈島]
土曜日の昼間の試写会に行って来ました日比谷の東商ホールで「サロゲート」ですブルース・ウィリス主演のSFアクション・サスペンス映画です生身の人間の身代わりにロボット(サロゲート)が社会生活を送る世の中になっていて……というまあ有りがちな設定で、ブルース・ウィ...... [Read More]

Tracked on 02/06/2010 at 04:46

» 『サロゲート』・・・いっそ短編にしたほうがおもしろそうな近未来SF [SOARのパストラーレ♪]
本国での公開で大コケというニュースを昨年のうちに耳にしていた本作。あらすじを読む限りサスペンス仕立ての近未来SFとしておもしろそうな内容なのになぜ?という思いで劇場へ。 [Read More]

Tracked on 02/07/2010 at 00:14

» ★「サロゲート」 [★☆ひらりん的映画ブログ☆★]
今週の平日休みの2本目はTOHOシネマズ川崎にて。 久しぶりのブルース・ウィリスものかなーー・・・ この人、刑事役が多い気がするけど、今回もFBI捜査官でした。 [Read More]

Tracked on 02/09/2010 at 04:35

» ■映画『サロゲート』 [Viva La Vida!]
ブルース・ウィリスの新作は、人間の身代わりに“サロゲート”と呼ばれるロボットたちが社会生活を送る近未来の世界を描いたSFアクション『サロゲート』。 つっこみどころはたくさんありますが、勢いに釣られて楽しく観られる一作です。 まあ、一番のつっこみどころは、髪の... [Read More]

Tracked on 02/09/2010 at 06:32

» サロゲート アバターっぽいがでもお見事〜♪グッ!! ( ̄ε ̄〃)b [労組書記長社労士のブログ]
【 {/m_0167/}=9 -4-】 昨日は、自動車運転者労務改善基準のレクチャーを友人の社労士に。 その時に思ったことを今日の記事にしようと思っていたけど、時間がなかったのでその記事は先送りに、今日仕事が早く終わったのでついつい立ち寄って見てしまった映画のレヴューを。 レヴュー書けるなら本題書けるやんという意見はあるけど、真面目な記事を書こうと思うと間違いがないように慎重にならなくてはいけないので、あんまお気楽には書けないのだ。  近未来、人類の98%は自らの身代わりとなる“サロゲート”とい... [Read More]

Tracked on 02/09/2010 at 22:59

» 『サロゲート』に流されてしまう私たち [映画のブログ]
 『サロゲート』の作り手は、『アバター』というタイトルをジェームズ・キャメロンに押さえられてさぞかし悔しかったに違いない。  もちろ... [Read More]

Tracked on 02/10/2010 at 00:43

» 「サロゲート」代行ロボットが何でもしてくれる世の中 [soramove]
「サロゲート」★★★ ブルース・ウィリス、ラダ・ミッチェル、ロザムンド・パイク主演 ジョナサン・モストウ 監督、89分 、 2010年1月22日 公開、2009年、アメリカ (原題:SURROGATES)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 髪がふさふさのブルース・ウィリスの頭が気になって仕方ない。 「ロボットがすべての社会生活を代行してくれる 未来社会を舞台にしたSF・アクション... [Read More]

Tracked on 02/18/2010 at 20:00

» 映画:サロゲート [よしなしごと]
 予告編を見たらおもしろそうだったのですが、あまり宣伝もしてませんし、イマイチパッとしない感じですよね。と言うわけで今回はサロゲートを観てきました。 [Read More]

Tracked on 02/18/2010 at 22:47

« 人気の秘密は人間力~「君に届け」~ | Main | 映画「ハート・ロッカー(The Hurt Locker)」 »