映画「タイガーランド」
タイガーランド〈特別編〉 [DVD] | |
![]() | ロス・クラヴァン おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「タイガーランド」
監督:ジョエル・シューマカー
「物事は、それ自体を見せるよりも、それ事後を見せるほうが効果的な場合がある」(――3分映画のタカ――)
この格言(笑)にもあるように、これまでベトナム戦争を題材にした映画は、ベトナムでの戦争の話、もしくは米兵がアメリカ合衆国に帰国してからの話(帰還兵の苦悩)というのが多くを占めていました。
そんななか、ベトナムへ送られる兵士たちの訓練の様子を描いた作品に「フルメタル・ジャケット」があります。
海兵隊訓練キャンプでの新兵の訓練の様子が描かれるこの作品は、ベトナムへ送られるまでの訓練シーンと、訓練後に送られたベトナムでのシーンがあります。
しかし「タイガーランド」にはベトナムのシーンはありません。ベトナムから帰還した後のシーンもありません(兵士がその後どうなったか伝えきいたといったようなナレーションはあります)。
あるのは、アメリカ合衆国の国内での新兵訓練の様子と、そこで訓練を受ける新兵たちの生き様です。
新兵のボズは規律違反や問題行動が続いて小隊のお荷物のように扱われますが、彼の兵士としての技量や能力はズバ抜けており、それを他の兵士たちもわかっています。
ところがボズは反戦を口にしたり、上官の命令に逆らって突撃命令を無視させて仲間たちの命を守ろうとしたり、軍規を知りつくして兵士仲間を除隊させたりします。
なぜ、そんなボズが兵士になったのか。
ベトナム戦争当時、志願兵もいましたが、ベトナムに送られた兵士の多くは20前後の若者だったそうです。
まだ、右も左もよくわからない若者をベトナムへ送ったのです。
軍隊以外に行くあてのない新兵たちはたくさんいたことでしょう。
自分の信念、考え、意思に関係なく、兵士にならざるをえなかった若者たち。
たとえ志願兵であったとしても、志願したわけではない新兵と出会い、またボズのように公然と反戦を口にして上官に逆らう兵士と出会い、影響を受けていく若者。
それぞれの思いが交錯するも、ベトナムへ送られる日は着々と近づいてきます。
訓練場の上官はこんなふうにいいます。
おまえたちのなかには運良く他の部署に配置転換されることを期待する者もいるだろう。だがそんな甘い希望は今すぐ捨てろ。おまえたちはまちがいなくベトナムへ送られる。ここでの訓練はきびしいものだがおまえたちがベトナムから生きて帰る可能性を少しでも高めてくれるありがたいものだぞ。
逃げ道がないと感じ、追い詰められる兵士たち。高いところから飛び降て怪我をすればベトナムに行かなくて済むからと、何度も飛び降りようとするけれどもできない兵士たち。
脱走したくともできない新兵たちの間には、ボズに頼めばベトナムにいかなくて済むらしいという噂まで広がります。
軍規の抜け道を利用して仲間を除隊させることができるほどのボズですから、自分を除隊させることもできるでしょう。
ボズは脱走を試みますが、それでも軍隊に戻ってきます。
ボズの、不器用にも思える生き方。そこに当時の若者のリアルが映しだだされているともいえます。
ベトナム戦争がアメリカ合衆国にもたらした様々な影響や問題は計り知れません。
アメリカ合衆国はベトナム戦争の戦費をベトナム映画で回収したとまで言われるほど、アメリカ合衆国は実にたくさんのベトナム戦争映画を作りました。
それだけアメリカ人にとってのベトナム戦争というのは大きなものであり、アメリカ合衆国が作ったベトナム戦争映画はアメリカ人のメンタリティを理解する大きな助けになると考えていいでしょう。
そこそこの数のベトナム映画を観てきた方や、アメリカ合衆国やアメリカ人がどんな国でどんな人たちなのかを知りたいと願う人に「タイガーランド」をおすすめしておきましょう。
ふつーに映画を娯楽として楽しみたい方はこんな作品がいいですよ
http://mikkemon.seesaa.net/article/117223208.html
↑一級のアクション傑作です。超おすすめ。
ちなみに記事中で紹介した「フルメタル・ジャケット」は、ベトナム戦争映画ではめずらしく、ベトナムでの戦闘シーンがジャングルではなく市街地です。
フルメタル・ジャケット [Blu-ray] | |
![]() | ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-06-24 売り上げランキング : 980 おすすめ平均 ![]() ![]() ![]() ![]() Amazonで詳しく見る by G-Tools |