映画「アイアンマン (IRON MAN)」
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▼「アイアンマン (IRON MAN)」
監督:ジョン・ファヴロー
2008年/アメリカ/125分
原作:マーベル・コミック「アイアンマン」
■ 天才発明家のトニー・スタークは軍事企業の社長で超お金持ち
武器のデモンストレーションでアフガンを訪れたトニーは、車で移動中に武装集団の攻撃を受けて拉致される。
兵器開発を強要されたトニーはひそかにパワードスーツを製作。それを使ってなんとか脱出する。
帰国したトニーは軍需産業からの撤退を発表。
さらに自らが作った武器がテロリストに横流しされていることを知る。トニーは個人で新型パワードスーツを開発し、テロリストとの戦いをはじめる。
■ どんだけ上手いねん!
はじめに言っておこう。「アイアンマン」はスゴくおもしろい。そしてとてもよくできている。
映像、ストーリー、キャラクター。どれをとってもスマート。さらに社会風刺と笑いもある。
近年「アイアンマン」ほどすんなりと映画を楽しむことができた作品はないといってもいいほどだ。
料理でいうと、濃すぎず、薄すすぎず、辛すぎず、甘すぎず、熱すぎず冷めすぎず、ボリュームもほどよい。
どんだけ上手やねん! いったい監督はだれかとおもったら「ザスーラ」の監督をしたジョン・ファヴローであった。
オバマ大統領のスピーチライターとして有名になったジョン・ファヴローとは同名だが別人の彼は、俳優としても活躍。数々の映画に出演している。
さらに米大ヒットコメディドラマ「となりのサインフェルド」にゲスト出演もしている。
「となりのサインフェルド」は日本ではほどんど知られていないが、米国でお笑いといえばこのドラマ抜きには語れないほど超人気ドラマであり、その笑いの特徴はナンセンスにあるのだが、ここではジョン・ファヴローそんな超人気コメディドラマにゲスト出演するほどの「笑い」のセンスがあることを心にとどめておいていただきたい。
その笑いのセンスが活かされたのが傑作「ザスーラ」だ。
レトロとCG映像とパラレルワールド。家族で観るなら迷わず「ザスーラ」
▼「ザスーラ(ZATHURA)」作品レビュー
そしてこの「笑い」の要素を丁度いい加減でスパイスとして加えたのが「アイアンマン」である。
こう書くとまるで「アイアンマン」がコメディかと思われるかもしれないが、そうではない。
■ 真面目過ぎないほどよいユルさ加減
真面目過ぎないほどよいユルさ加減が、全体として非常に良い効果を生んでいるのだ。
たとえばパワードスーツにしても、初期型は材料が限られていたこともあってものすごく手作り感がある。ここでいう手作り感とは、武装集団に拉致されて監視下にありながら寄せ集めの材料でなんとか作ったとう「リアリティのある手作り感」である。
そして帰国した後に作った新型パワードスーツがいくら最新の材料と機器を結集して作ったとしても、あくまでスーツであるからこれを使いこなそうとするトニーは何度も失敗を重ねる。
飛ぶどころか空中に浮くことさえうまくできない。パワーの制御とバランスをコントロールすることが難しい様子がちょっとコミカルにみえる絶妙の撮り方をしている。
また徐々にパワードスーツの扱いに慣れていくのと平行して、秘書の女性とのラブロマンスも直接的なお色気無しにもかかわらずしっかり織り込まれていく。
そもそも武器商人の映画というのは、ふつうなら米国ではタブーだ。なぜなら……こちらのレビューを読んでもらえればそのヒントを得られるだろう。
というわけで、ふつうだったら武器商人の映画というだけでリスクがあるのに、うまいこと一流のエンターテイメント娯楽作品によくぞ仕上げたと拍手をおくりたい。
それもこれも、いい意味での「ほどよいユルさ加減」を真面目にしっかり徹底しているからこそできるのだ。
■ 生身のメカ感
また、程よい匙加減としてはメカの描き方や使い方がよい例だ。
メカ映画「トランスフォーマー」が有名だが、これはちょっとやりすぎの典型例となっている。
「トランスフォーマー」のメカのCGはほんとうにスゴい。目がまわるぐらいにクルクルとめまぐるしく変形する。だが、スゴい映像だったね、のヒトコトで終わってしまう。いわゆる余韻がゼロに近いのだ。
「トランスフォーマー」のメカの映像はたしかにスゴい。パッと見は「おぉ!」となる。
映画「ファイナルファンタジー」の人間のCG映像は、当時としてはたしかにスゴい。パッと見は「おぉ!」となった。
だが、そればっかりでは観客は飽きてしまう。フカヒレスープがいくら高級料理でおいしいといっても、朝昼晩毎日ずっとフカヒレスープでは飽きてしまう、みたいなものだ。
ところが「アイアンマン」は映像がスゴいけど、どこかアナログっぽいリアリティがある。昔のアニメでいえば「サブングル」みたいな。(――ってわかりづらいか^^;)
最高のオーディオシステムで音楽を聴くのもいいが、生演奏のライブに行ったほうがワクワクした、なんて経験はないだろうか。
デジタルの音がイヤホンやヘッドホンを通して聞えてくるんじゃなく、生演奏の楽器の音が空気を伝って聞えてくる。
そんな感覚が「アイアンマン」にはある。ひとことでいえば「生身のメカ感」とでもいおうか。それができるのも、キャラクターの味付けや、物語のペースや、笑いのセンスがしっかりとかみ合っているからだ。
「アイアンマン」はラブロマンスとしても、人生のドラマとしても、メカアクションとしても楽しめる、エンターテインメント傑作である。
■ おもしろい冒険・アクション作品を見極めるヒント
ちなみに、おもしろい冒険・アクション作品を見極める指標のひとつはラブロマンスにある。
たいていの冒険・アクション作品の主人公は、ヒロインと恋に落ち、程よいあたりでベッドシーンになる。これはよくあるパターン。するとその映画作品自体もよくあるパターンのどこかで観たことがあるような冒険・アクション作品であることが多い。
ヒーローとヒロインが「いい仲」になってもベッドシーンがないどころか、キスシーンさえない作品は、不思議とかなりおもしろい冒険・アクションであることが多いようだ。
そして「アイアンマン」もこの法則(?)に当てはまるのだ。
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