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映画「イーグル・アイ(EAGLE EYE)」

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▼「イーグル・アイ(EAGLE EYE)」
監督:D・J・カルーソー
2008年/アメリカ/118分
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ


ある日、コーヒーショップの店員ジェリー・ショーにかかってきた1本の電話。相手は女性の声で、FBIが迫っているから今すぐ逃げなさいという。


一方、法律事務所のパラリーガルとして働くシングルマザーのレイチェル・ホロマンにも女性の声で電話がかかってきた。指示に従わなければ8歳の息子を殺すというのだ。


日常を慎ましくも精一杯生きてきた男と女が、一本の電話によって国家の最重要指名手配犯として追われるようになるこの物語は、いわゆる「巻き込まれ型」の典型作品だ。


そういうわけで「イーグル・アイ」を観てまず思い浮かんだのが、サスペンスの集大成といわれるアルフレッド・ヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」だ。


「巻き込まれ型サスペンス」の傑作として広く知られている「北北西に進路を取れ」は、主人公が誰かに間違われることから事件に巻き込まれていく物語である。


「イーグル・アイ」においても平凡な暮らしをしていた青年が、いきなりだれかに間違われたかのような状況に放り出される。


ジェリーとレイチェルは次々に出される電話の指示に従うことでなんとか逃げのびることだけで精一杯だが、それでも徐々に黒幕をつきとめていく。


ジェリーとレイチェルの逃亡劇は、文字通り息をつかせぬアクションの連続である。


くやしいがスピルバーグにこういった作品を作らせたら、彼の右に出る者はそうはいない。


まして監督が「ディスタービア」のD・J・カルーソーである。「視線の交差」と「制約から救出への転換」が見事だった「ディスタービア」の監督とスピルバーグとくれば、おもしろいことは折り紙付である。


▼「ディスタービア」作品レビュー


「北北西に進路を取れ」のリメイクをしたらどうなるか? そんなことをおもって「イーグル・アイ」を観ればおもしろさが倍増するだろう。


もちろん「イーグル・アイ」を観てから「北北西に進路を取れ」を観てもいい。


両作品を観比べてみれば、物語構築の方法と手順と展開がよく似ているとがわかるだろう。


マグフィン(Maguffin:悪者が欲しがっていてヒーローが持っているもの)の用い方や、ある程度の段階で黒幕を明らかにして、クライマックスへと盛り上げていく手法など、玄人のなせる業(ワザ)だ。


さらに物語のキャラクター設定の定石「父と息子の和解」もちゃんとある。


「イーグル・アイ」を観ると、この作品にはけっしてド肝を抜かれるような奇抜さや斬新さが満載とはいえないのだが、サスペンスの基本をおさえた職人芸が物語作りのスキルとしてしっかり受け継がれるシステムがハリウッドにはあるんだな、というのが実感できる。


時代が変わり物語の題材や用いられる小道具は変わっても、物語構築の技術はしっかりと受け継がれ、どんどんブラッシュアップされていく。


だからハリウッドの映画作品は、それがヒットするかどうかは別にしても、映画作品になったものの多くは、基本となる「物語」がそこそこちゃんとしているのだ。


日本ではあまり公開されないコメディ作品や、アメリカンドラマなんかも含めてちょっとでも話題になった作品は、ちゃんとおもしろい。


「ちゃんとおもしろい」という言い方はいくらか変な感じだが、これは観客を楽しませる基礎があって、おもしろくなることにじゅうぶんうなづける構造をしているという意味である。


それができるのも、宝くじとはまったく縁遠い、安定した「物語づくりの土壌」があるからだ。


日本だと、たまにすごくおもしろいすばらしい作品がポン! とできたたりする。


でもその一方で、思わず「なんじゃこりゃぁ!」を松田優作のモノマネしざるをえないような作品がポンポンポン!と出てきたりする。


こういう状況を「宝くじ頼み」という。つまりハズレが多いのだ。


別にハリウッド映画を必要以上にヨイショするつもりはないが、ハリウッドでは映画づくりを宝くじを買うような感覚でするようなことはまずないんじゃないかとおもう。


今回の「イーグル・アイ」を観れば、ハリウッドの脚本術というのはやはりシステムとしてもきちんと機能しているんだなというのが実感できるのだ。


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