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ツルモク独身寮

ツルモク独身寮 (1) (ビッグコミックス)
ツルモク独身寮 (1) (ビッグコミックス)窪之内 英策

おすすめ平均
stars名作青春恋愛漫画
stars名作漫画
stars昔の月9ドラマのような話
stars第1巻目
stars本当に面白い!登場人物が個性的すぎ!

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作者:窪之内英策

今回は1991年に映画化もされた傑作漫画「ツルモク独身寮」を紹介しよう。

高知の工業高校を卒業した18歳の宮川正太は東京にやってくる。東京の郊外にある木工家具製作会社「ツルモク家具」に入社。それと同時に会社の独身寮に入寮する。

同室の先輩である杉本京介田畑重男と寮生活をおくり、仕事にも励みながら、隣の女子寮に住む先輩女子社員の姫野みゆきとも仲良くなっていく正太。

インテリアデザイナーになる夢を抱きながらも工員として仕事に追われる日々。

やがて、田舎に残してきた彼女・桜井ともみが上京。正太、みゆき、ともみの三角関係へと発展する。


私がはじめて「ツルモク独身寮」の漫画を読んだのは、高校生のときだったかな。

当時すでに有名作品であったツルモク独身寮の題名だけは知っていたこともあり、ふと手にとって読みはじめるとページをめくる手がとまらなかった。

圧倒的な世界観。

上手な絵。

軽快なテンポ。

すべての登場キャラクターが生き生きとしてあたかも実在しているかのような完成度の高さ。

物語にしっくりハマるギャグとそれを生み出す絶妙な「間」。

耳に残るフレーズやセリフの数々。

友情、恋愛、青春、将来への不安、挫折、夢、希望、親子の愛……。

あらゆる物語のあらゆる要素がそこにあったのだが、当時はただただ「おもれぇなぁこの漫画」といいながらページをめくるのであった。

しかし、それからずいぶん後(10年以上経って)になってから、衝撃の事実を知るようになる……。

雑誌かなにかにツルモク独身寮のことが書いてある記事をみかけた私は、おもわず「えっ! マジで?」を声を上げそうになった。

なぜなら作者である窪之内英策が「ツルモク独身寮」を描いたのは彼が二十歳そこそこの頃だと知ったからだ。

ありえないありえないありえない。いや、もしそうだとしたら……イヤハヤめっちゃおそろしい……。

その話はほんとうで、漫画「ツルモク独身寮」の単行本にはところどころオマケのコーナーみたいな箇所があって、そこに作者の近況が描いてあり、それによって作者の年代もわかるのであった。

当時高校生だった私はおそらく物語内容に夢中でオマケコーナーを飛ばしてしまっていたのだろう。

「ツルモク独身寮」を読んでからずぅっと私は、「ツルモク独身寮」の作者はベテラン漫画家だと勝手に思い込んでいたのだ。

実際は窪之内英策さんは1986年に週刊少年サンデーに掲載された『OKAPPIKI EIJI』でデビューした後の、はじめての連載漫画が「ツルモク独身寮」だというではあ~りませんか。

しかも窪之内英策さんは「ツルモク独身寮」の主人公宮川正太と同じ高知県出身で、自身も家具メーカーに勤務して寮生活をしていたことがあるというではあ~りませんか(2回目)。

つ・ま・り「ツルモク独身寮」は原作者である窪之内英策さんのリアルタイムの青春をフィクションという手法を用いた漫画の世界に投影した傑作だったのであ~る!

たいていの青春物語は、おじさんやおばさんが書いて(描いて)いる。

だから、どうしてもズレが生じる。

かといってほんとうにリアルタイムの青春を謳歌する若者が書け(描け)ば、ひとりよがりすぎてそのままではとてもじゃないが作品としては成立しない。

現代は携帯電話の普及によるケータイ小説の出現によって若者のリアルタイムの物語が比較的世に出やすくなったとはいえ、そのほとんどは個人の日記の範囲を出ない内輪のモノローグになっている(物語はダイアローグでなければならない)。

これは、等身大の自分の描きたい出来事が身近すぎて、他者(読者・観客)が求めるものとの距離をはかりにくいというのがそうなってしまう理由のひとつだが、ごく稀にこの距離をうまくはかれる才能を持った若者が現れることがある。

リアルタイムの青春と距離をはかる能力。

このふたつを併せ持つ若者めったにいないのに、さらにキャラクター造詣と物語構築力、さらに笑いの「センス」と「間」、それに絵のうまさまで持ち合わせるとは……。

青春モノは、せつなさといとしさと技術だけでは心に響かない。リアルタイムで経験している作者の「その時」にしか出せない「色」や「勢い」といったものが加味されて、はじめて傑作となる。

そういった意味で、世の中にはめったに青春モノの傑作は誕生しないのだが、そんななかでも「ツルモク独身寮」は間違いなく青春ラブコメ漫画の傑作といえる。


私が学生の頃に寮生活をしていたときのこと。こんなかんじのことがあった。

男子寮は未曾有(みぞう)の「荒れ様」といわれていた。

そう思っていたのは教師たちだけという噂もあったが、寮生のひとりとして贔屓目にみても、さまざまな問題が浮き彫りになっていたといっていいだろう。

「クローズZERO」や「ドロップ」といった、不良たちにの暴力による抗争とうわかりやすくい荒れ模様とは違う、肉体的にも精神的にもキツい出来事が多発するようになっていた(詳細はピーが入るのでカット)なかで、どうしたら良い寮になるか、を話し合うようにと、寮生全員が集会室に集められて意見をいうようにいわれたことがあった。

かったりぃ~という雰囲気が蔓延しながらもピリピリした空気のなか、ひとりの寮生がスッと手を上げた。

意見を言うように促された彼はゆっくりと立ち上がり、こう言った。

「ツルモク独身寮みたいな寮にしたらいいと思いまぁ~す」

集会室が笑いと拍手に包まれた。

寮生たちがひとつになった瞬間はあとにもさきにもこれっきりだった(たぶん)。

「ツルモク独身寮」――おそるべし。


物語構成    ◎
キャラクター   ◎
笑い       ◎
世界観      ◎
奥深さ      ◎
青春       ◎


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