映画「レイクサイド マーダーケース」
監督:青山真治
日本/2004年/119分
原作:東野圭吾「レイクサイド」
古めかしさと懐かしさが作者の狙い? 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる、数少ない作家の作品が原作。
ストーリー(概要)
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湖畔の別荘に集まった3家族と塾講師。
名門中学校への受験対策のための合宿中に殺人事件が起きる。
中学受験への影響を恐れた親たちは死体を湖に沈めようとする。
主な登場人物の紹介
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△並木俊介
▽美菜子
並木俊介の妻
▽高階英里子
並木俊介の愛人
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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古めかしさと懐かしさが作者の狙い? 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる、数少ない作家の作品が原作。
■ 限定された空間劇
並木俊介という登場人物は、湖畔の別荘とその周辺という限定された空間で起きる殺人事件という舞台に、私たちを導入する格好の材料である。
限定された空間で起こる殺人事件。こういった物語で重要なのは登場人物だ。
役所広司、薬師丸ひろ子、豊川悦司、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、眞野裕子。
名の知れた名優たちが出演していることだけをとってみても、この作品のおもしろさは折り紙付きではないかと思えるだろう。
しかしこういった限定空間劇には、彼らの他に忘れてはならない重要な登場人物が必要である。
それは「観客」だ。
一般的な物語がそうであるように「レイクサイド マーダーケース」においても主要登場人物のひとりが観客の視点を引き受けている。
主要登場人物のひとりとは、いうまでもなく並木俊介だ。
■「お受験」という仕掛け(前フリ)
お受験。
なんだかなつかしい言葉だと思うかもしれない。
エスカレーター式に大学まで進める名門私立校に早い時期に入れてしまいさえすれば、よっぽどのことがないかぎり名門私立大学出身という経歴を我が子に与えることができる。
だから幼稚舎といった段階から名門私立校に入校させることが事実上不可能な家庭にとって、唯一といっていいチャンスは中学入試なのである。
名門私立校出身の経歴を手に入れる、最初で最後のチャンス。それが中学受験だというのだ。
学歴信仰は崩壊したという人がいる。だが、学歴に代わる確固たる指針をみつけられないでいる人たちにとって、学歴は依然として唯一の拠り所であり、目標となりえるのだ。
とはいえそんな「お受験」というものに疑問を持つ父親がいる。――並木俊介である。
彼はお受験に熱中する父母たちを、一歩ひいたところからみつめる存在だ。それはつまり、私たち観客の視点でもある。
かといって並木俊介は品行方正な聖人というわけではない。高階英里子という若くて綺麗な女性の愛人がいることからもわかるとおり、必ずしも理想的な夫・父親というわけでない、ひとりの男性なのだ。
これまた私たちのことでもある。私たちはけっして聖人と呼ばれるような人間ではなく、誘惑に弱いどこにでもいる並木俊介とたいして変わりのない人間なのだから……。
■ それぞれの「親の道」
どこにでもいる男・並木俊介=観客が、自分の息子や娘のためにできることとは何なのか。
子は親の背中を見て育つ。とはどこぞの誰かの名言だが、親は背中を見せるだけでなく、子のためにできる限りのことをしたいと願うもの。
だからこそ、子供が少しでも有利に人生をおくれるよう有名私立校出身の経歴を与えようとするならば「勉強しなさい」と口をすっぱくして言いつづけることのほかに自分に何ができるだろうかと考える。もしその答えを知ったなら、それを見逃すだろうか。
名門中学校の受験では受験者の学力試験結果だけでなく、親子揃っての面接が重視されるという。
学力試験については塾に行かせたり家庭教師をつけたりする以外に親ができることはほとんどないが、面接については親の頑張り次第でなんとかなるかもしれない。
名門校が望むような受け答えができるよう模擬面接を繰り返すのも、親の力でなんとかしたいという思いが報われる可能性がもっとも高いのが面接だと考えているからだ。
さらに、面接以外にできることもあるとしたら?
たとえその行為が人の道を外れたものであったとしても、子にはみせられない背中であったとしても、親としてできる精一杯のことができる、それが自分なりの「親の道」であると自分に言い聞かせることができそうなものがあるとしたら?
■ 人間にとっての最大の謎
人は謎があればそれを解きたいと願う生き物である。
では、人間にとっての最大の謎とはなんだろう。
それは「人間」である。
原作者の東野圭吾という作家の推理小説における最大のミステリーは殺人トリックでも真犯人でもない。
最大のミステリーは「人間」なのだ。
殺人トリックやアリバイといったものは、人の興味をひきつけてその謎を論理的、科学的に解き明かすことによって読者にカタルシスを与え、犯行動機という「人間というミステリー」に光をあてる、そのための仕掛けにすぎない。
そもそもふつうの人は「人間というミステリー」になんぞ、普段は見向きもしない。
どんな事件・事故がニュースで流れようとも、それが「人間というミステリー」を解き明かす鍵であるなどと、思いもしない。
「お受験」ときいたとき、あなたはどう思っただろう?
なつかしい言葉の響きだと感じたかもしれない。推理小説の題材としてはすでに古めかしいものだと感じたかもしれない。
まさにそれこそが作者の狙いだとしたら?
古臭く、自分とは関係が薄いどこぞの話。
それこそまさに、湖畔の別荘に集まった3家族と塾講師といった当事者のなかにあっても「お受験」そのものを一歩ひいた立場でみつめている並木俊介、つまり私たち「読者・観客」が、世の中で日々起こる事件・事故に対する捉え方そのものではないだろうか。
■ 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる
先に、限定された空間で起こる殺人事件といった物語で重要なのは登場人物だ、という話をした。
名の知れた名優たちの他にも忘れてはならない重要な登場人物が必要であり、それは「観客」である。だから観客の視点を代表する主要登場人物が必要だという話だ。
並木俊介がこの物語の主人公であり、彼の視点で物語世界を見つめたその瞬間から、あなた(観客)はこの作品に肩までどっぷり浸かったといっていい。
あとは「人間というミステリー劇場」をじっくり堪能するだけである。
人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる作家はそうはいない。日常を切り取る装置。それが推理小説であるなら、ときには日常を切り取り、人間というミステリーにどっぷり浸かってみるのもいいだろう。
■ その他
東野圭吾はたいへん才能豊かで並外れた筆力を持つ作家です。人間というミステリーをミステリーの手法で描き出す、正統派のミステリー作家であるともいえるでしょう。
帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学が活躍するフジテレビのドラマ「ガリレオ」も東野圭吾の著作「探偵ガリレオ」「予知夢」を原作としたものです。
そして映画「容疑者Xの献身」も東野圭吾の推理小説が原作ですね。これはフジテレビのドラマ「ガリレオ」の劇場版として、同ドラマのキャスト・スタッフによって映画化したものです。
人気作家のため、ドラマ化や映画化された作品がたくさんあります。タカは一部しか観た(読んだ)ことはありませんが、どの作品もいいですね。この作家の作品には当たり外れが無さそう、もしくは少なそうです。
デート △
フラッと ○
演出 ○
キャラクター ◎
笑い -
映像 ○
ファミリー ○
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