« November 2008 | Main | January 2009 »

12/18/2008

ほんとうはクリスマスに観るべき映画


クリスマス特集第2回

▼クリスマスのほんとうの意味に思いをはせて、深くじっくりと感動したいあなたへ贈る
「ほんとうはクリスマスに観るべき映画」
~映画史に残る名シーンだといわれるほんとうの意味~


この作品をクリスマス映画としてとりあげる人は、まずめったにいないでしょう。

一見しただけではクリスマスと関係しているとはとうてい思えないような映画作品をご紹介します。

その前に、クリスマス特集第1回にも目を通していただくと、よりわかりやすくなりますのでどうぞ。。


「クリスマスのほんとうの意味」
<あなたは他に見たことがあるだろうか?
冒頭に人名が次々につづく系図が載っている物語の本を――。>
知っているようで知らないイエス・キリスト誕生の意味。


ではクリスマス特集第2回は、イエス・キリストの誕生の物語を映画作品と共にご紹介します。


■ イエスの誕生~飼い葉桶に寝かされる~

■ なぜ羊飼いが最初にやってきたのか

■ ふたつの資質をもつ指導者たち

■ もうひとりの指導者

■ 暗闇の時代に現れた守護者・指導者
  ~「ブラインドネス」「ダークナイト」でわかる闇と光~

 牛舎とサンダル
  ~なぜ主人公はサンダルを「選んで」履くのか~

■ 映画史に残るシーンだといわれるほんとうの意味

■ ほんとうはクリスマスに観るべき映画

■ 「アイ・アム・レジェンド(I AM LEGEND)」はなぜ題名だけで結末が予想できてしまうのか
  ~題名に秘められた大いなる意味とは~

▼クリスマスのほんとうの意味に思いをはせて、深くじっくりと感動したいあなたへ贈る
 「ほんとうはクリスマスに観るべき映画」
 ~映画史に残る名シーンだといわれるほんとうの意味~

| | Comments (3) | TrackBack (0)

12/16/2008

映画「NEXT -ネクスト-」

B001CEIK64NEXT [DVD]
ニコラス・ケイジ, ジュリアン・ムーア, ジェシカ・ビール, トーマス・クレッチマン, リー・タマホリ
ギャガ・コミュニケーションズ 2008-10-03

by G-Tools

監督:リー・タマホリ
アメリカ/2007年/95分
原作:フィリップ・K・ディックの『ゴールデン・マン』

運命の人だと確信した彼・彼女は、なぜ去ってしまったのか。実は深イイ作品。張りぼてで肩透かしをくらわせておいて、その実アクションシーンはスリリングで迫力があり、目が離せない。せつないラブストーリーと、人間の内面と葛藤を描いたドラマでもある。「マトリックス」のネオも真っ青の「弾丸避けアクション」も披露。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
2分先の未来がみえる予知能力を持つ男・クリス・ジョンソンは運命の女性とめぐり会う。
しかし、テロリスト集団によってロサンゼルスのどこかに核爆弾が仕掛けられたことにより、FBIのカリーに捜査協力を依頼される。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△クリス・ジョンソン
ラスベガスのマジシャン。

▽カリー・フェリス
FBI捜査官

▽リズ
教師。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
――――――――――――――――――――――
運命の人だと確信した彼・彼女は、なぜ去ってしまったのか。実は深イイ作品。張りぼてで肩透かしをくらわせておいて、その実アクションシーンはスリリングで迫力があり、目が離せない。せつないラブストーリーと、人間の内面と葛藤を描いたドラマでもある。「マトリックス」のネオも真っ青の「弾丸避けアクション」も披露。

■ なぜ彼・彼女は去ってしまったのか

接点が全くないように思えるふたりが運命の出会いをした。

愛し合うふたり。

しかし、運命の出会いと思えた彼はすぐにどこかへ行ってしまった……。

あなたの人生にも、これと似たような経験がないだろうか。

出会いに運命的なものを感じて、これからずっと一緒にいたいと思った矢先に、彼・彼女がスッと消えてしまった。
今いちばん傍にいてほしいのに……。

彼・彼女は、どうしても行かなくてはならないところがあるのだという。

実は既婚者? 
実は子供がいる? 
実は膨大な借金がある?
実は大富豪の御曹司・箱入り娘で許婚がいる?
それとも、実は……宇宙人?

いろんな憶測や妄想が広がるも、たしかなことは運命の人だと確信した彼・彼女は去っていってしまったということだ。

なぜ彼・彼女は去ってしまったのか。

その答えをどしても知りたいと願ったことがあるなら「NEXT-ネクスト-」を観るといい。


■「張りぼて」は正解!

「NEXT-ネクスト-」ではテロリスト集団によってロサンゼルスのどこかに核爆弾が仕掛けられるという危機が訪れるのだが、これは米国映画の「危機のお約束」の設定としては使い古されたものだ。

「NEXT-ネクスト-」のイケてるところは、あえて使い古された設定にするのみならず、テロリスト集団になんの理念も目的も持たせないところだ。

しかも、テロリストのメンバーの誰ひとりとして、その人間ドラマを描いていないのだ。

「ただそこにある危機」とでもいうべきか。物語に必要な「危機」を、いかにもありがちな設定として使っているにすぎない。その徹底ぶりはありちな典型的なアメリカ映画のパロディのようでさえある。

FBIにしても、ロサンゼルスのどこかに核爆弾が仕掛けられているというのに、なんだかんだいいいつつもそれを阻止するための最優先事項を、ラスベガスのB級マジシャンのクリス・ジョンソンの捜索と確保にするのだ

さらにテロリスト集団も自分たちの計画(その内容と動機は一切描かれない)を阻止するであろう最大の要因はラスベガスのB級マジシャンのクリス・ジョンソンだと考え、彼の捜索と抹殺を最優先事項とする。

これらについて「リアリティが感じられない」とか「とってつけただけペラペラの張りぼて設定」だとか言う人もいるだろう。たしかにそのとおりだ。

しかし「NEXT-ネクスト-」でFBIやテロリスト集団をペラペラの張りぼてにすることは、間違っていない。

設定がペラペラの張りぼてじゃないか! とニヒルな笑いを誘っておいて肩透かしをくらわせておいて、その実アクションシーンはスリリングで迫力があり、目が離せないのだ。

このギャップはなんだろう? と目を白黒させているうちにニコラス・ケイジの哀愁漂うチャーミングな顔芸(?)にますますのめり込んでいく……。

ニコラス・ケイジ扮するクリス・ジョンソンがFBIの戦術チームの指揮を執りながら大真面目にテロリスト集団を追い詰めていけばいくほど、まるでコントのワンシーンかのように笑えて仕方がないのだ。

ニコラス・ケイジのほかに笑いを誘う要因はFBI捜査官のカリー・フェリスだ。演じるジュリアン・ムーアは演技派女優として知られている。

芝居が上手過ぎるぐらい上手なので「フォーガットン」という映画では、彼女の演技のおかげで前半はものスゴく緊張感が高まった。だが後半は「ワォ!」と映画館の椅子からズリ落ちそうになるぐらいのオチを用意してくれたことは、みなさんの記憶にも比較的新しいだろう。

「フォーガットン」を観たことがある人は、クリス・ジョンソン(ニコラス・ケイジ)と一緒に真剣な表情で真面目に捜査するカリー・フェリス(ジュリアン・ムーア)の姿がなんとも滑稽に思えてくるだろう。


■ 実は深イイ作品

なんだかようわからんけど笑える作品だ、と紹介してきたが、その反面で「NEXT-ネクスト-」はとても深イイ作品である。

「運命の人だと確信した彼・彼女は、なぜ去ってしまったのか」という問いを入り口にこの作品と付き合いはじめるならば、なんともせつないラブストーリーと、人間の内面と葛藤を描いたドラマをみせてくれるのだから。


■ 七瀬とクリスはわかりあえる同じ境遇に

「手紙を隠すならレターボックス」

隠したい「何か」を隠す場所は、探す側が「まさかここには隠すまい」と思えるところが一番みつかりにくい。

だからドラマ「七瀬ふたたび」に登場する未知能力者たちの多くは、マジックバーで働いている。

「NEXT-ネクスト-」のクリス・ジョンソンもラスベガスでマジシャンをしている。

寂れたショーにマジシャンとして出演しても、儲けはたかが知れている。それでも予知能力のことが人に知られないよう、目立たずにひっそりと生活している。

未知能力のことを隠して生きることは、とてもつない「孤独」と付き合うことを意味する。

2分先のことがわかる予知能力を使ってつぎつぎに先を見通したならば、相手はまるで自分の心の内を見透かされたと感じるだろう。

あなたが次にすることをすべてわかっている男・女が傍にいたらどうだろう?

自分のことをなにもかも見透かされていると感じたら、おそろしくてそんな男・女とは一緒にいられないと感じるにちがいない。

つまり、2分先の未来がみえるクリス・ジョンソンは、ドラマ「七瀬ふたたび」の火田七瀬と同じ境遇にあるのだ。
七瀬は相手の心が読める。それが人に知られたら、気味悪がられ、恐れられて誰も近寄ってこないだろうから、クリス・ジョンソンの境遇となんら変わらないのである。

――孤独。

だからこそ七瀬は父親以外では、手段はどうあれ自分の安全を第一に考えてくれる予知能力者の青年・岩渕恒介に深い想いを寄せるのだ。

だからこそクリス・ジョンソンは唯一、自分以外の人間の未来がみえるその女性――リズ――に会いたいと願い、会ったことも話したこともない彼女に深い想いを寄せるのだ。


■ 人生とは失敗の連続

人生は失敗の連続。しかし失敗に打ちひしがれては、先に進めない。

クリス・ジョンソンはリズを救うためにさまざまな未来を幾通りも見る。その多くが失敗(ときに死も)であるが、失敗を通してみつけた「道」を選びとって進んでいく。

リズを救うためにたくさんの未来を見て失敗を繰り返しながら進んでいくクライマックスのシーンは、ひとりの人間の人生の縮図を特殊効果映像で表現しているかのようで、スリリングでスピーディでありながらたいへん深い世界を感じさせる。

もちろん、こういったシーンでもなぜか笑えてしまうのだから、なんとも不思議な映画作品だ。


■ その他

原作がフィリップ・K・ディックだからといって、シリアスなSF作品を期待すべきではありません。

そもそもニコラス・ケイジが出演する作品は、どんな種類の映画であれ、お約束ともいうべき「楽しみ方」が存在します。

それをひとことでいうなら「ニコラス・ケイジワールド」ともいうべき「味」を堪能するのがもっとも正解に近い楽しみ方です。

どこにでもある田舎のモーテルとその周辺で2分先の未来がみえる男が繰り広げるサバイバルアクションのシーンは、迫力の映像のオンパレードでハラハラドキドキの連続。

クライマックスには「マトリックス」もネオも真っ青の「弾丸避けアクション」も披露してくれます。

どっちかっていったら「マトリックス」よりもイケてるんじゃないか。そんなふうにさえ思わせるニコラス・ケイジは、やっぱりスゴい!

「NEXT-ネクスト-」を楽しむためにはちょっとした準備運動が必要です。頭の体操をして脳のコリをほぐしておくとよいでしょう。

ニコラス・ケイジと笑いが好きなら、きっと気に入ってもらえると思います。

「NEXT-ネクスト-」のおもしろさを伝えるのはたいへんむずかしいのですが、タカはじゅうぶんに楽しませてもらいました。

ちなみにこの作品でニコラス・ケイジの奥さんが韓国人の観光客役でカメオ出演していますヨ。

デート        ○
フラッと       ○
演出         ○
キャラクター     ○
笑い         ○
映像         ○
SF超大作の期待 ×
ファミリー    -


▼クリスマスのほんとうの意味
<あなたは他に見たことがあるだろうか?
冒頭に人名が次々につづく系図が載っている物語の本を――。>
知っているようで知らないイエス・キリストの誕生の意味についてお話しましょう。


映画メルマガ発行しています。
ズバッと映画紹介や濃い~映画批評ならこのメルマガ。ドラマ、演劇、小説と多肢にわたる物語解説は他ではちょっと読めないゾ。日本ではほとんど知らされない映画に込められたキリスト教文化や歴史を解き明かす、巷で噂のまぐまぐ!殿堂入り映画レビューマガジンがこれ!

まぐまぐ!殿堂入りマガジン
▼「基本3分!映画レビュー わかりやすい映画案内」


| | Comments (0) | TrackBack (0)

12/12/2008

『Mr.インクレディブル』が教えてくれる、子供の才能を限りなく伸ばす方法<7ヶ条>

荒川静香さんがトリノ冬季オリンピックの女子フィギュアスケート金メダリストになった最初のきっかけとは?

自分の子供が将来の金メダリストになれるきっかけとチャンスは、アナタが作り出だしてあげることができるのです。


「『Mr.インクレディブル』が教えてくれる、子供の才能を限りなく伸ばす方法」

【子供の才能を限りなく伸ばすための<7ヶ条>】

〔1〕タラント(才能)を活かしなさい

〔2〕「チーム」の一員として活躍させなさい

〔3〕不安を払拭して、子のサポートに集中しなさい

〔4〕子供が「視点」を得れるようサポートしなさい

〔5〕遊びにいかせなさい

〔6〕「実際にはやり直しがきかない」ことを教えなさい

〔7〕チームワークで困難を乗り越えなさい


▼「『Mr.インクレディブル』が教えてくれる、子供の才能を限りなく伸ばす方法<7ヶ条>」

「Mr.インクレディブル(THE INCREDIBLES)」
ブラッド・バード監督/アメリカ合衆国/2004 年/115 分

この物語の主な登場人物たちはスーパー・ヒーローです。彼等にはそれぞれに特殊能力があります。
 
夫のMr.インクレディブルは怪力。

妻のエラスティガールは伸縮自在のボディ(漫画「ワンピース」のルフィみたいな、もしくは「怪物くん」の伸びる手足)。

娘のヴァイオレットは特殊バリアーと透明になれるボディ。

息子のダッシュは目にもとまらぬ動き。
 
このように、登場人物それぞれに特徴となる特殊能力が振り分けられています。

しかし、インクレディブル一家やほかのヒーローにしても、一人でなんでもできる万能ヒーローというのは登場しません。みんなそれぞれが特殊能力を持っていますが、それ以外は普通の一般市民と同じなのです。

主人公はスーパー・ヒーローの一家ですが、彼らは日常でだれもが経験するような問題(ヴァリオレットの恋、ダッシュが自分の能力を活かせないもどかしさを感じている)を抱え、ひとりの人間として悩んだり考えたり行動したりしています。

そんな姉弟が父親を助ける過程で自分の能力を発揮して、新しい能力を発見します。自分の新たな可能性を見い出して自信が持てるようになるのです。


〔1〕タラント(才能)を活かしなさい

さて、ここまで読んでみて、Mr.インクレディブル一家と自分の家庭と似ているな、と思った方もいらっしゃるでしょう。

そうです、なにもスーパーヒーローの一家でなくても、だれにでもタラントが与えられているのです。ある人は5タラントかもしれないし、ある人は1タラントかもしれません。
 
ではここで、新約聖書のマタイによる福音書25 章14 節から30 節に載っているタラントのたとえ話をご紹介しましょう。


「タラントのたとえ話」―――――――――――――――――――――
 
ある人が旅に出るとき、3 人の僕(しもべ)にそれぞれの能力に応じて5タラント、2 タラント、1 タラントを預けた。

5 タラントと2 タラントを渡された者はそれで商売をして倍にした。

1 タラントを渡された者は地を掘って主人の金を隠しておいた。

僕(しもべ)の主人が帰ってきた。

5タラントと2タラントを渡されていた者はそれぞれ倍に増やしたことで主人に「良い忠実な僕よ」と、多くのものを管理するよう言われた。

1 タラントを渡されていた者は地に埋めておいたことで主人に「悪い怠惰な僕よ」と言われた。

1タラントは取り上げられ、10 タラント持っている者に与えられた。
――――――――――――――――――――――――――――――――


この例え話からわかるのは、大事なのは与えられたタラントを活かすことだということです。

そもそもMr.インクレディブル一家では、子供たちに特殊能力を使うことを禁じていました。

なぜなら、自分の子には普通の子と同じように育ってほしいと願っていたからです。

子供のタラントが何であるかがわかっているにもかかわらず、そのタラントを活かしてはいけない、と言い聞かせていたのです。

そのため、息子のダッシュくんは運動会の競走で能力を最大限に使うことができずにいました。

ダッシュくんは思います。
大人はいつも「何事にもベストを尽くせ」と言うけど、ベストを尽くしちゃいけない(思いっきり走っちゃいけない)なんて……。

やがてMr.インクレディブル一家に危機が訪れたとき、母・エラスティガールがこんなふうなことを言います。
「いざとなったらおもいっきり走りなさい」

やがて、いざとなってダッシュくんがスーパーダッシュをします。そのスピードがものすごく速い! あまりの速さにダッシュくんは自分でも気がつかなかった能力を発見してしまうほどです。(なんと水上を走る!)

自分が得意だと思っていたことを思いきってやってみたら、自分の中に眠っていた、自分でも気づかなかった能力を引き出したのです。

こうして自分の能力を格段にアップさせたスーパーヒーロー達が力を合わせて困難を乗り切るのが「Mr.インクレディブル」という物語なのです。

ちなみに聖書で水上を歩くエピソードは新約聖書の4福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)のうちマタイ、マルコ、ヨハネそれぞれの福音書に記されています。


「水上を歩くイエス」――――――――――――――――――――――

湖に漕ぎ出した舟に乗ったイエスの弟子たちに逆風が吹きつけます。一生懸命に漕いでも舟は進みません。その様子を見たイエスは、夜明けの4時頃に弟子たちのところに向かいます。

月光の中、湖の上を歩いてこちらにやってくる人影を見た弟子たちは、それを幽霊だと思って恐れます。しかしそれがイエスだとわかると、
弟子のペテロは「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」と願います。

イエスに「おいでなさい」と言われたペテロは舟から降りて水の上を歩いてイエスのところに行きます。しかし風に恐れをなしておぼれかけます。

ペテロはイエスに手をつかまれて救われ「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と言われます。

そしてふたりが舟に乗り込むと風はやんでしまいます。
――――――――――――――――――――――――――――――――


〔2〕「チーム」の一員として活躍させなさい

さて、スーパーヒーローたちが力を合わせるというのはつまり「チームとなる」ということです。

チームの一員となるには、それぞれがある分野における能力を持っていなければなりません。

さまざまな分野の能力を持った人たちが集まってお互いの不得意な部分を補い合うことで困難に立ち向かう。そのためのチームだからです。

現代社会は複雑です。すべての分野に精通してなんでもできる万能人間はいません。

スケートの金メダリストであると同時に体操と水泳の金メダリストであって、なおかつノーベル賞受賞者でF1レーサーという人はまずいないでしょう。

では「チーム」の一員として活躍するためには、いったいどうすればよいのでしょうか。

その答えは、ある分野のエキスパートになること、です。

そのためにはタラントを活かすことが必要です。


〔3〕不安を払拭して、子のサポートに集中しなさい

当初のインクレディブル夫妻は、自分の子供にどんなタラントがあるかわかっていながらも、他の子供たちと同じように生活してもらいたいという願いから、タラントを封印するように言い聞かせてきました。

しかし一家が困難に直面したときに、これを乗り越えることができたのは、個々のタラントを活かしたチームの活躍があってこそなのです。

ひとつの物事に集中している子供を見ると、親は不安になります。もっと幅広い教養を身に付けてほしいと思うからです。

では、そもそも様々な分野を広く浅く知る目的とはなんでしょうか?

広く社会を知ってもらいたいから?

では、広く社会を知ってどうしてほしいのでしょうか? 

子供たちが様々な分野に目を向けることで、興味あるものや集中できるものを見つけてほしい。そんな願いの裏返しが「幅広い教養を身に付けてほしい」という言葉に込められているのではないでしょうか(広く浅く知るだけだったら大人になってからでもできますから)。

すでに集中できるものがある子供の場合に、親が言ってあげられることは「それをおもいっきりやりなさい」ということなのです。


〔4〕子供が「視点」を得れるようサポートしなさい

「ある道」をある程度極めてみると「そこから見える社会という視点」を手に入れることができます。

これは、人から聞いたり本を読んだりしただけでは手に入れることが難しい視点です。

社会を見渡すには視点が必要です。教室で書物を読んで世界を想像することも必要ですが、それに加えて教室を出て山に登り、頂上から周りの世界を眺めてみることも必要です。

Mr.インクレディブル一家の子供は(末っ子を除き)どんな能力があるのかがある程度わかっているにもかかわらず、当初はそのタレントを活かすことができませんでした。

ではあなたの子供はどうでしょう?

将来生まれてくるであろうあなたのこどもはどうでしょう?

もうどんな能力があるかわかっていますか?

もしまだわかっていないなら、いろんな野山(←たとえとしての野山)に連れていってあげましょう。

そうすれば、ある山に興味を示すかもしれません。そして、その山を登り始めるかもしれません。

でもすぐに登るのをやめて、ほかの山に登りはじめるかもしれません。

それでいいのです。

たとえ登頂(成功)できなくても、この山は自分が登るべき山ではないことを知ることができた、というのが大事だからです。


〔5〕遊びにいかせなさい

はじめは、親はもちろん子供自身だって、どんなタレントを持っているのかわかりません。

親にできることは、少しでも早く子供が自分のタレントを見つけられるようサポートをすることです。そしてタレントを伸ばす手助けをすることです。

トリノ冬季オリンピックの女子フィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんがスケートを始めたのは5歳のときです。

たまたま遊びに行ったスケートに興味を持ち、ちびっ子スケート教室に入り、小学校に入学してから本格的にフィギュアスケートに取り組みました。

たまたま遊びに行ったスケート、というのがポイントです。

おそらく彼女は本やテレビでフィギュアスケートのことは知っていたでしょう。しかしそれだけではなく、実際にスケートをするために遊びに行った、というのが重要です。

そこで自分のタラントに気づいたことがフィギュアスケート荒川静香選手の原点なのです。


〔6〕「実際にはやり直しがきかない」ことを教えなさい

「人生はいつでもやり直しがきく」というのには、オマケが付きます。

正確には「人生は【心の持ち様・気持ち】によってはいつでもやり直しがきく」ということです。

実際は、やり直しがきかないと言っていいでしょう。たとえば還暦を過ぎてからヨットで世界一周を果たした人がいたとしましょう。でもその人はおそらく還暦を過ぎてはじめてヨットを含めたスポーツ関連のなにかを始めたわけでないでしょう。

比較的若い頃からなにかのスポーツをして体を鍛えて、船の操縦技術を学んで船舶免許も取ったのです。

そうした過程があるからこそ還暦を過ぎてからヨットで世界一周を果たすことができた、といえるでしょう。


〔7〕チームワークで困難を乗り越えなさい
 
さあ、Mr.インクレディブルをご覧になったことがない方はもちろん、観たことがある方も、もう一度観てみましょう。

そうすれば、各キャラクターが内的葛藤(Internal Conflicts)を持ちつつも、使うことを禁じられていた特殊能力(タラント)を思いっきり使って自信を持つことで内的葛藤を解消していく様子が、各キャラクターの「見せ場(ヴァイオレットの特殊バリアー、ダッシュのスーパーダッシュ)」を通して描かれていることにあらためて気づくでしょう。

ちなみに邦題は「Mr. インクレディブル」ですが、原題は「THE INCREDIBLES」です。

原題は「すばらしき人々」もしくは「インクレディブル家の人々」といったように訳せます。

つまり、インクレディブル家を中心として、相棒のフロゾンをも含めたすばらしき人々の物語という意味なのです。

(邦題では、Mr.インクレディブルというひとりのスーパー・ヒーローの伝記みたいに思えてしまうかもしれないですね)

つまり、タレント(能力)持った個人が家族というチームワークで困難を乗り越える物語なのです。

あなたの子供がチームの一員になれるかどうかは、タレントを見つけ、それを伸ばして活かせるかどうかにかかっています。

★人生を有利におくるには、少しでも早くタラントをみつけて、その能力を伸ばしつづけることが必要なのです。

------------------------------------

Mr.インクレディブル(THE INCREDIBLES)」作品レビュー
●アメリカ社会を映し出す魔法の鏡。映像技術、ストーリー、キャラクター、世界観構築をバランス良くまとめるストーリーテラーとしての卓越した技術。これを例えるなら「魔法」です。魔法で作ったエンタティメント作品であるとともにドキュメンタリーとしての映画の効力も併せ持っている、アメリカ社会を描く作品です。

B0009DC7YUMr.インクレディブル [DVD]
ブラッド・バード クレイグ・T.ネルソン ホリー・ハンター
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント 2005-06-15

by G-Tools

| | Comments (1) | TrackBack (1)

12/07/2008

映画「ジャンパー(JUMPER)」


監督:ダグ・リーマン
アメリカ/2008年/88分
原作:スティーヴン・グールド『ジャンパー』

もしも「スーパー赤ん坊」が暴れたらの巻。主人公はアメリカ合衆国?「Mr.インクレディブル」と見比べるとおもしろい。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
普通の目立たない高校生のデヴィッドは、同級生のミリーに好意を持っていた。

ある日、凍った川に転落。気がつくと一瞬にして図書館の床にズブ濡れになって倒れていたデヴィッドは、自分が持つテレポートの能力に気がつく。

家を出たデヴィッドは能力を使って金を手に入れ、ニューヨークで気ままに暮らしていたが、そこにジャンパーを抹殺しようとする組織にメンバーが襲ってくる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△デヴィッド・ライス
青年。世界中のどこへでも瞬間移動できるテレポーター(ジャンパー)。

▽ミリー・ハリス
デヴィッドの高校生時代の同級生。デヴィッドが想いを寄せる女性。

△ローランド・コックス
「ジャンパー」たちを悪として抹殺を使命とする組織「パラディン」の中心人物。

▽グリフィン・オコナー
青年。ジャンパーのひとり。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
――――――――――――――――――――――
もしも「スーパー赤ん坊」が暴れたらの巻。主人公はアメリカ合衆国?「Mr.インクレディブル」と見比べるとおもしろい。

■ デヴィッドはそんなに嫌味な男だろうか

「ジャンパー」公開当時の作品のレビューや感想の多くには、主人公デヴィッドの行動に共感できないという内容が目立っていた。

瞬間移動できるジャンパーの能力を使って銀行から大金を奪い、ニューヨークの高級住宅に住んで気が向いたときに行きたい場所に行って遊びまわっている男。

テレビのニュース番組で、洪水で流される車の屋根の上でどうすることもできない被災者が映し出されていても全く気にもとめない男。

高校時代に好きだった女の子に会い、彼女が学生時代に行きたがっていたイタリアのローマへファーストクラスの飛行機で連れて行き、高級ホテルに一緒に泊まってイチャつく男。

なんて自分勝手な男だ! というのがデヴィッドに対する観客の大方の感想だろう。


■ もしも宝くじが当たったら?

だが、もしも自分がジャンパーの能力を手にいれたらどうするだろう、と考えてみよう。

「ジャンパー」というのが突拍子もないと思うなら、もしも自分が年末ジャンボ宝くじに当たったらどうするかと考えてみよう。

年末ジャンボ宝くじの高額当選をはたしても数億円を手に入れることができるだけだが、ジャンパーのデヴィッドは瞬間移動をして、いつでもいくらでも大金を手に入れることができる。

金額の違いこそあれ、億という金額は自由を意味する。


■ 人がもっとも自由を実感するとき

人がもっとも自由を実感するのはどんなときか。

それは経済的不安を完全に払拭したと感じるときである。

多くの人はお金を得るために、持てる技術や時間を売る。

思い立ったときに好きな場所に行き、好きなモノを買い、食べたいものを食べることができるようになれば、まずは一通りそれをしてみたいと思うのが普通だろう。多くの人にそんな自由はないのだから。

決まった時間に決まった場所に行き、決まったことをしなければならない。それが時間を切り売りする多くの人間の現実だからだ。

宝くじであれ瞬間移動であれ、手に入れることができる億という金額は、庶民にとって「自由」を意味する。

それまで手に入れられるとは思ってもみなかった「自由」を手に入れた人間がどんな行動をとるか。

おそらくデヴィッドと同じようなことをするだろう。

デヴィッドがジャンパーの能力を使ってする行いは、だれでもするであろうことだと考えることもできる。

才能に運も含めるなら、宝くじに当たったのも運=才能であるから、自分の才能を活かしてお金を儲けようとするのは当然と考えるに違いない。

だからといってデヴィッドが銀行から大金を盗んだのは行き過ぎの行為のように感じかもしれないが、そもそも人間とは弱いものである。

「力」を持った人間はそれを使って「自由」を得る誘惑に打ち勝つことは、たいへん難しい。

インサイダー取引。横領。空出張。領収書改ざん。こんな誘惑にさえ打ち勝つのは難しいのが人間なのだ。

窮地に陥り、命の危険が目前に差し迫ったデヴィッドが「俺はだれも傷つけていないのに……(なんでこんな目にあうんだ)」といったようなことを言うシーンがある。

デヴィッドはジャンパーの能力を使うことは大きな罪とは思っていない。与えられた才能(足らんと)を活かして、ちょっとしたイタズラぐらいの軽い気持ちで銀行から大金を手に入れただけ。人を傷つけようなんて思ってない。

ところが「パラディン」のローランドは、ジャンパーの能力は人間が手に入れてはならないものであり、放っておけばやがて大きな悪となるから、いまのうちにその芽を摘んでおくのだという。


■ 歴史にみる最高権力者の呼び名

世界には様々な国がある。国によって最高権力者の呼び名はまちまちだ。

大統領。首相。書記長。議長。なかには大佐も。

ある国では大統領と首相のふたつの役職が存在する。

そして、ある時代のある国では大統領と首相を兼任する役職名がある。

それは「総統」だ。

日本で一般的に総統が使われるのは中華民国の国家元首とドイツのアドルフ・ヒトラーとイタリアのベニート・ムッソリーニ、それにスペインのフランシスコ・フランコの場合に限られる。

国家の最高指導者の地位と権力を持つ「総統」として有名なアドルフ・ヒトラー。彼の暗殺計画を題材とした手塚治虫の有名な漫画作品に「アドルフに告ぐ」があることからも、強大な力を持った人物はときに強大な悪とみなされ、恐れられ、命を狙われる。

どの時代でもどの国は地域でも、独裁者と呼ばれる者の出現と暗殺、そして次なる独裁者の出現と暗殺の繰り返しは、歴史の至るところにみることができる。


■ 自由の代償

そういうわけで強大な力を持ったジャンパーは常に暗殺の危険にさらされているのだが、デヴィッドは自分が命を狙われているとはこれっぽちも思っていない。

宝くじに当たったらどんなにすばらしいバラ色の人生が開けるだろうと多くの人は思いをはせるが、まさか宝くじが当たったら自分の命が狙われるとはなかなか考えないものだ。

お笑い芸人コンビの「カラテカ」の矢部太郎は、バラエティ番組の企画で1000万円借金したその全額の札束を透明なバッグに入れて東京の街を歩いて買い物をした。

透明バッグに入った札束は人目をひき、矢部太郎は道ですれ違う人がみんな敵にみえてきたとコメントしていた。
透明バックに札束を入れて持ち運ぶ矢部太郎が都会で買い物をするうちにどのようになっていったのか……。彼の場合はあくまで借金で1000万円なので「自由」とはいえないが、大金を得たことで周囲を見る目が変わり、身の危険を感じるようになることは、この一例をみても想像できるだろう。


■ もしも「スーパー赤ん坊」が暴れたら

デヴィッドがジャンパーの能力を自身のために使い続けるのを、仮に強大な力を持つ赤ん坊が好き勝手暴れまわっているかのように捉えると、どんなことがみえてくるだろう。

デヴィッドが幼いころに母親が家を出ていった後、父親は息子のことを心配しつつもその気持ちはうまく伝わらない。

つまり幼い頃に母親が出て行ってからというもの、デヴィッドは心の拠り所を失ったままで青年になり、自分でも認識できないほどの強大な力を手に入れた。

若いうちは自分の欲望を満たすためにジャンパーの能力を使うだけかもしれない。しかしその力が強大であるがゆえに、若いがゆえに、多くに人に危険を与える可能性が高いとして「パラディン」に追われるのだ。

これはアメリカ合衆国のことを皮肉っているようにもみえる。

世界の国々のなかでは、アメリカ合衆国は歴史が浅い。建国わずか230年ほどだ。

ウン千年の歴史を持つ国からみればまだ青年、いや赤ん坊のようなもの。

その赤ん坊が強大な力を持っているとしたら?

デヴィッドは高校生の頃にはじめて意識してジャンプするまで、クラスでも目立たない、同級生にからかわれる素朴で地味な少年だった。

それがジャンパーの力を使いこなせるようになって10年ほど経つと、小奇麗な格好で堂々として、かつて自分をからかった同級生と再会したときは、取っ組み合たり殴りあったりの喧嘩をしてみせるまでになった。

素朴で気のいい少年が力を得て小洒落た青年となって同級生と喧嘩するぐらいならカワイイが……。

母親のぬくもりをじゅうぶんに知らない屈折した感情を抱いたまま成長したアメリカ人の青年がその気持ちひとつで世界を危機に陥れる。

そんな世界の危機を救うのは「パラディン」という組織だという。「パラディン」のメンバーがどんな人種・国籍なのかはわからないが、リーダー格のローランドはどうやらアメリカ人らしい。

仮に「パラディン」がアメリカ合衆国の機関のひとつだとすると、世界の危機を救うのはやっぱりお・れ・た・ちアメリカ合衆国! ということになるだろう。

世界を危機に陥れるのもアメリカ合衆国(デヴィッド)なら、その危機を救うのもアメリカ合衆国(パラディン)というわけ。

こんなお約束の構図はアメリカ映画にはよくある。「ジャンパー」もその例にもれずというわけだ。

ちなみに、この構図をとてもわかりやく上手に描いているのがピクサーの「Mr.インクレディブル」である。


■ その他

幼い頃に出て行った母親。気持ちをうまく伝えられなかった父親と息子。

幼い頃に両親を亡くしたグリフィンと彼が大切にする金庫。

親子の絆や秘密。そして金庫。

こられを掘り下げたり上手に使ったりすればもっと心に響く作品になったことでしょう。

人間ドラマの部分はとってつけただけで、ジャンプする特殊効果の映像に力を入れ過ぎたように感じます。

極端な話、ジャンパーがジャンプするのは2,3回でもいいんです。

ジャンプできるというウソ(フィクション)を観客は受け入れているのですから、ジャンプしまくる必要はないのです。

むしろジャンプする映像が多ければ多いほど、ジャンプという特殊能力のありあがたみとインパクトはどんどん薄れていきます。

ここぞ! というギリギリのところまでジャンプを引き伸ばす。

落語でも真打ちが出るのは後のほうです。はじめは二つ目が登場して、その後にいよいよ真打登場となります。

スターウォーズのエピソード4でも、主人公がフォースを使って作戦を成功させるのはクライマックスです。

見習い同然のジェダイの騎士がフォースを習得してその力を発揮するのはクライマックスまで大事にとってあるのです。

「ジャンパー」のアイデアはいい。けれど、もう少し作り込んでほしかったな、と思います。

(三部作の構想もあるようですから、第1作は壮大な物語のはじめの部分だけなのかもしれません。)

デート      △
フラッと     △
演出       △
キャラクター   △
笑い       -
映像       ○
ファミリー    -

映画メルマガ発行しています。
ズバッと映画紹介や濃い~映画批評ならこのメルマガ。ドラマ、演劇、小説と多肢にわたる物語解説は他ではちょっと読めないゾ。日本ではほとんど知らされない映画に込められたキリスト教文化や歴史を解き明かす、巷で噂のまぐまぐ!殿堂入り映画レビューマガジンがこれ!

まぐまぐ!殿堂入りマガジン
▼「基本3分!映画レビュー わかりやすい映画案内」

| | Comments (0) | TrackBack (1)

12/05/2008

映画「レイクサイド マーダーケース」

監督:青山真治
日本/2004年/119分
原作:東野圭吾「レイクサイド」

古めかしさと懐かしさが作者の狙い? 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる、数少ない作家の作品が原作。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
湖畔の別荘に集まった3家族と塾講師。
名門中学校への受験対策のための合宿中に殺人事件が起きる。
中学受験への影響を恐れた親たちは死体を湖に沈めようとする。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△並木俊介

▽美菜子
並木俊介の妻

▽高階英里子
並木俊介の愛人


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
――――――――――――――――――――――
古めかしさと懐かしさが作者の狙い? 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる、数少ない作家の作品が原作。

■ 限定された空間劇

並木俊介という登場人物は、湖畔の別荘とその周辺という限定された空間で起きる殺人事件という舞台に、私たちを導入する格好の材料である。

限定された空間で起こる殺人事件。こういった物語で重要なのは登場人物だ。

役所広司、薬師丸ひろ子、豊川悦司、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、眞野裕子。

名の知れた名優たちが出演していることだけをとってみても、この作品のおもしろさは折り紙付きではないかと思えるだろう。

しかしこういった限定空間劇には、彼らの他に忘れてはならない重要な登場人物が必要である。

それは「観客」だ。

一般的な物語がそうであるように「レイクサイド マーダーケース」においても主要登場人物のひとりが観客の視点を引き受けている。

主要登場人物のひとりとは、いうまでもなく並木俊介だ。


■「お受験」という仕掛け(前フリ)

お受験。

なんだかなつかしい言葉だと思うかもしれない。

エスカレーター式に大学まで進める名門私立校に早い時期に入れてしまいさえすれば、よっぽどのことがないかぎり名門私立大学出身という経歴を我が子に与えることができる。

だから幼稚舎といった段階から名門私立校に入校させることが事実上不可能な家庭にとって、唯一といっていいチャンスは中学入試なのである。

名門私立校出身の経歴を手に入れる、最初で最後のチャンス。それが中学受験だというのだ。

学歴信仰は崩壊したという人がいる。だが、学歴に代わる確固たる指針をみつけられないでいる人たちにとって、学歴は依然として唯一の拠り所であり、目標となりえるのだ。

とはいえそんな「お受験」というものに疑問を持つ父親がいる。――並木俊介である。

彼はお受験に熱中する父母たちを、一歩ひいたところからみつめる存在だ。それはつまり、私たち観客の視点でもある。

かといって並木俊介は品行方正な聖人というわけではない。高階英里子という若くて綺麗な女性の愛人がいることからもわかるとおり、必ずしも理想的な夫・父親というわけでない、ひとりの男性なのだ。

これまた私たちのことでもある。私たちはけっして聖人と呼ばれるような人間ではなく、誘惑に弱いどこにでもいる並木俊介とたいして変わりのない人間なのだから……。


■ それぞれの「親の道」

どこにでもいる男・並木俊介=観客が、自分の息子や娘のためにできることとは何なのか。

子は親の背中を見て育つ。とはどこぞの誰かの名言だが、親は背中を見せるだけでなく、子のためにできる限りのことをしたいと願うもの。

だからこそ、子供が少しでも有利に人生をおくれるよう有名私立校出身の経歴を与えようとするならば「勉強しなさい」と口をすっぱくして言いつづけることのほかに自分に何ができるだろうかと考える。もしその答えを知ったなら、それを見逃すだろうか。

名門中学校の受験では受験者の学力試験結果だけでなく、親子揃っての面接が重視されるという。

学力試験については塾に行かせたり家庭教師をつけたりする以外に親ができることはほとんどないが、面接については親の頑張り次第でなんとかなるかもしれない。

名門校が望むような受け答えができるよう模擬面接を繰り返すのも、親の力でなんとかしたいという思いが報われる可能性がもっとも高いのが面接だと考えているからだ。

さらに、面接以外にできることもあるとしたら? 

たとえその行為が人の道を外れたものであったとしても、子にはみせられない背中であったとしても、親としてできる精一杯のことができる、それが自分なりの「親の道」であると自分に言い聞かせることができそうなものがあるとしたら?


■ 人間にとっての最大の謎

人は謎があればそれを解きたいと願う生き物である。

では、人間にとっての最大の謎とはなんだろう。

それは「人間」である。

原作者の東野圭吾という作家の推理小説における最大のミステリーは殺人トリックでも真犯人でもない。

最大のミステリーは「人間」なのだ。

殺人トリックやアリバイといったものは、人の興味をひきつけてその謎を論理的、科学的に解き明かすことによって読者にカタルシスを与え、犯行動機という「人間というミステリー」に光をあてる、そのための仕掛けにすぎない。

そもそもふつうの人は「人間というミステリー」になんぞ、普段は見向きもしない。

どんな事件・事故がニュースで流れようとも、それが「人間というミステリー」を解き明かす鍵であるなどと、思いもしない。

「お受験」ときいたとき、あなたはどう思っただろう?

なつかしい言葉の響きだと感じたかもしれない。推理小説の題材としてはすでに古めかしいものだと感じたかもしれない。

まさにそれこそが作者の狙いだとしたら?

古臭く、自分とは関係が薄いどこぞの話。

それこそまさに、湖畔の別荘に集まった3家族と塾講師といった当事者のなかにあっても「お受験」そのものを一歩ひいた立場でみつめている並木俊介、つまり私たち「読者・観客」が、世の中で日々起こる事件・事故に対する捉え方そのものではないだろうか。


■ 人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる

先に、限定された空間で起こる殺人事件といった物語で重要なのは登場人物だ、という話をした。

名の知れた名優たちの他にも忘れてはならない重要な登場人物が必要であり、それは「観客」である。だから観客の視点を代表する主要登場人物が必要だという話だ。

並木俊介がこの物語の主人公であり、彼の視点で物語世界を見つめたその瞬間から、あなた(観客)はこの作品に肩までどっぷり浸かったといっていい。

あとは「人間というミステリー劇場」をじっくり堪能するだけである。

人にとっての最大のミステリーに立ち会える時間を提供してくれる作家はそうはいない。日常を切り取る装置。それが推理小説であるなら、ときには日常を切り取り、人間というミステリーにどっぷり浸かってみるのもいいだろう。


■ その他

東野圭吾はたいへん才能豊かで並外れた筆力を持つ作家です。人間というミステリーをミステリーの手法で描き出す、正統派のミステリー作家であるともいえるでしょう。

帝都大学理工学部物理学科助教授の湯川学が活躍するフジテレビのドラマ「ガリレオ」も東野圭吾の著作「探偵ガリレオ」「予知夢」を原作としたものです。

そして映画「容疑者Xの献身」も東野圭吾の推理小説が原作ですね。これはフジテレビのドラマ「ガリレオ」の劇場版として、同ドラマのキャスト・スタッフによって映画化したものです。

人気作家のため、ドラマ化や映画化された作品がたくさんあります。タカは一部しか観た(読んだ)ことはありませんが、どの作品もいいですね。この作家の作品には当たり外れが無さそう、もしくは少なそうです。

デート      △
フラッと     ○
演出       ○
キャラクター   ◎
笑い       -
映像       ○
ファミリー    ○


映画メルマガ発行しています。
ズバッと映画紹介や濃い~映画批評ならこのメルマガ。ドラマ、演劇、小説と多肢にわたる物語解説は他ではちょっと読めないゾ。日本ではほとんど知らされない映画に込められたキリスト教文化や歴史を解き明かす、巷で噂のまぐまぐ!殿堂入り映画レビューマガジンがこれ!

まぐまぐ!殿堂入りマガジン
▼「基本3分!映画レビュー わかりやすい映画案内」


レイクサイド マーダーケース [DVD]
レイクサイド マーダーケース [DVD]東野圭吾

ポニーキャニオン 2006-07-19
売り上げランキング : 27325
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« November 2008 | Main | January 2009 »