映画「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記(NATIONAL TREASURE:BOOK OF SECRETS)」
監督:ジョン・タートルトーブ
アメリカ/2007年/124分
お気楽観光案内ビデオのようでありながら、国の宝とは何かをさりげな~く問題提起? 宝探しの暗号は余興。みどころは親子、夫婦、恋人たちの会話の掛け合いにアリ。
ストーリー(概要)
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アメリカ大統領リンカーンを暗殺したジョン・ウィルクス・ブースの日記の、失われていた数ページが発見された。
そこにはベン・ゲイツの祖先が秘密結社ゴールデン・サークル騎士団の一員としてリンカーン暗殺の指揮をとったと読み取れる記述があった。
ベン・ゲイツはゲイツ家の汚名をそそぐため、黄金都市を探し求める。
主な登場人物の紹介
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△ベン・ゲイツ
冒険家。歴史学者。
▽アビゲイル・チェイス
ベンの恋人。
△ライリー・プール
ベンの相棒。凄腕ハッカー。
△パトリック・ゲイツ
ベンの父親。暗号学者。
△ジェブ・ウィルキンソン
トレジャーハンター
▽エミリー・アップルトン
ベンの母親。歴史研究者。
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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お気楽観光案内ビデオのようでありながら、国の宝とは何かをさりげな~く問題提起? 宝探しの暗号は余興。みどころは親子、夫婦、恋人たちの会話の掛け合いにアリ。
■ 千円札に描かれた見知らぬ人
千円札の夏目漱石氏の顔を中央で二つ折りにする。
右顔と左顔を見比べてみよう。
片方の顔のアナタは……誰?
実はその見慣れない顔は○○だと言われている。
思わず千円札を探したアナタ!
アナタに限らず、暗号好きな人はけっこういる。
そもそも人生は暗号に満ちているのだ(マジ?)
どうしてアナタの夫(妻)は、アナタと結婚したのだろう。
どうしてアナタの彼(彼女)は、アナタと付き合っているのだろう。
他人であった人と一緒にいる不思議。
夫(妻)、彼(彼女)との出会いにはきっと自分にとって意味があるにちがいない。そう思ったからこそ、その相手と付き合ったり、結婚したりしたのではないだろうか?
他人との出会いに、なにかしらの意味を求めずにはいられない。それが人間だ。
日記の切れ端に、なにかしら他の意味が隠されているのでないかと考えずにはいられない。それが冒険家だ。
とはいえ冒険家は、一部の特別な者を指すいい方ではない。
だれもが人生の幸せを捜し求める冒険家なのである。
■ 日本の顔は?
幸せの青い鳥は実は近くにいたとか、長い間捜し求めていたお宝は実は自分の家族だったとか、そんなオチが大半の宝探し作品群のなかで、ナショナル・トレジャーシリーズではちゃぁんと金銀宝石といった類の財宝を発見する。
さらに財宝探しの過程で父子の絆、夫婦の絆、男女の絆、相棒の絆を再確認し合う。なんとも都合のよろしいハッピーエンドへ向けてズンズンと物語が進行していく。
宝探しのための暗号は余興みたいなもので、作品を楽しむポイントは親子、夫婦、恋人たちの会話の掛け合いだ。
それができるのも、ひと癖もふた癖もあるような俳優たちが出演しているからであって、ナショナルトレジャーとはそもそも米国で活躍するこれらの俳優たちのことかもしれない。
ルーク・スカイウォーカー。ランボー。スーパーマン。スパイダーマン。
ラシュモア山に彫られた ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーン。
アメリカ合衆国を思い浮かべるとき、こうしたキャラクターや人物たちの顔が頭をよぎるのではないだろうか。
世界の人々が日本を思い浮かべるとき、はたして何が頭をよぎるだろう?
■ その他
アビゲイル・チェイス役のダイアン・クルーガーは綺麗で色気もありますネ。
端整さでは日本のタレントでいうと加藤愛を連想させます。ダイアン・クルーガーはそれに加えて色気があるんです。そんな魅力を活かした、大統領執務室での展開はけっこう笑えます。
日本はアメリカ合衆国よりも長い歴史があるのですから、他国の人が楽しめるような歴史系謎解き作品をがんばって作れるようになると、ソフトの充実に大きく貢献できるでしょう。
どうせ日本の歴史やワビサビは外国人にやぁわかるまい。といっているようでは、いつまで経っても経済はそこそこ良くても文化やマナーは最低といわれ続けるのです。
マナーには、他人に自分のことを知ってもらう最低限のことをする、ということも含まれます。相手に自分(たち)を知ってもらうことで、どう振舞えばいいのかをお互いに知ることができるからです。
相手が何を考えているのかまったくわからなければ、不安になります。
相手にいつまでも不安な状態で居させ続けるのは失礼です。パーティに招待した客人をだれにも紹介せずに放っておくようなものです。これもマナー違反ですね。
日本で生まれ育った人たちにさえわかって受け入れられればそれでいいというだけでは、マナー意識が低いと思われてもいたし方ありません。
アメリカ合衆国の歴史は数百年と若いですが、それでも歴史や暗号を題材に楽しませながら内外にメッセージを送ろうとする。その意欲と実行力については、日本も見習ってもいいのではないでしょうか。
それから、キャラクターの顔が見えるというのは、国内外に対して象徴的に用いられる理念や目標といったものが提示されているということです。それが機能しているかどうかはともかく、すでにコントにしかなっていないとしても、形だけでもある、もしくは提示しようとしているということです。
人は理念や目標、いいかえれば希望がなくては生きにくいですから、そういう意味で「顔がみえるかどうか」は大事なのです。
顔が見えなくては、希望がなくては、目標がなくては、理念がなくては、生きる意味さえも失いかねません。
とはいえそんな小難しそうなことなど考えずに「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」はお気楽観光案内ビデオのつもりで笑いながら観るぐらいのほうがいいですネ。
デート ○ 無難な選択
フラっと △
脚本勉強 ○
演出 △
キャラクター ○ キャラこそお宝?
映像 △ セットの安っぽさが魅力に!?
おバカ ○
笑い ○
ファミリー △
アクション △ カーチェイスもあるぞ