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映画「ディスタービア(DISTURBIA)」

B001G9EBK4ディスタービア [DVD]
シャイア・ラブーフ, サラ・ローマー, D.J.カルーソ
角川エンタテインメント 2009-06-19

by G-Tools

監督:D・J・カルーソー
アメリカ/2007年/104分

父と息子の和解からはじまる、隣人を愛し、家族を愛する心優しい青年の青春物語。過去の作品から学び、現代的な味付けをして、アイデアを形にした作品。「視線の交差」と「制約から救出への転換」が見事。綱渡りの恋を成就させる秘訣とは?

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
最愛の父親を自動車事故で亡くしたケール。
教師の心無い言葉がきっかけで学校で暴力を振るってしまったケールは、裁判所から3ヶ月の自宅軟禁処分を言い渡される。
こうしてケールは、半径30メールを越えると自動的に通報される監視システムを足に装着しながら生活することになった。
テレビのニュースで赤毛の女性ばかりが行方不明になる事件を報じるなか、退屈しのぎに近所の覗き見をはじめたケールはある晩、事件の容疑者と同じ車種で、なおかつ同じ特徴を持つ車に乗って深夜に帰宅した隣家の住人ターナーと、血まみれのゴミ袋を目撃する。
ケールは友人たちと協力して隣のターナー家の覗き見をつづけることにする。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ケール
男子学生。

▽ジュリー
ケールの母親

△ターナー
男性。ケールの家の隣家の住人

▽アシュリー
女子学生。ケールの同級生。ケールの家の隣家に越してきた。

△ロニー
男子学生。ケールの同級生で親友。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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父と息子の和解からはじまる、隣人を愛し、家族を愛する心優しい青年の青春物語。過去の作品から学び、現代的な味付けをして、アイデアを形にした作品。「視線の交差」と「制約から救出への転換」が見事。綱渡りの恋を成就させる秘訣とは?

■ 物語は、終わりからはじまる

物語は終わりからはじまる?

なんのこっちゃ? と思われただろう。

どういうことかというと、ありがちな物語だとクライマックスにもってくるシーンを「ディスタービア」では冒頭(セットアップ)に持ってきているのだ。

具体的には主人公の青年ケールと、その父親との釣りのシーンだ。

これはいわゆる父親と息子の和解。べつに喧嘩しているわけではなくとも、父親と息子の関係はなんともギクシャクしているのはありがちだ。

冒頭のシーン。友人との約束よりも父親との釣りを優先させたケールに礼を言う父親。ケールも父親との釣りを楽しんでいる様子が描かれる。

和解という(雰囲気を持った)ハッピーエンドからはじまる物語。それは家族(父親)を失い、自分の道をも見失いかけている青年の再生の物語だ。


■ 止まって気づくもの

自宅軟禁で学校へも通えない。それどころか半径30メールの行動範囲しかないケールは、自宅でインターネットに接続したテレビゲームをしたり、テレビを見たりしている。

そんな日々をみかねた母親は、テレビゲームの契約を打ち切ってしまう。

暇を潰す術がなくなったと感じたケールは、自宅の周囲に目を配るようになる。すると隣人たちがどんな人たちで、どんな生活スタイルを持っているかがわかってくる。

いままで身近にありながらも気にもとめなかった世界を知ったのだ(新世界との対面)。

そして、新世界の異変に気づくまで長い時間はかからなかった。


■ 隣人を愛し、家族を愛する心優しい青年

隣人宅の異変など普通なら気づきもしない。たとえ気づいたとしても、それは他人のこと。自分に危害や迷惑が及ばないかぎり関わろうとしないのが大半だろう。

だがケールは違った。隣に越してきたキュートな女の子と積極的に関わろうとするのと平行して、殺人事件に関与しているとおぼしき隣人の中年男性にも目を光らせるのだ。

これはケールが元来、品行方正に関して問題のある人間ではなく、隣人を愛し、家族を愛する心優しい青年だからだ。

父親の死をきっかけに勉強にも身が入らず、授業中にボォーとしていることがある。そして偏見による心ない教師の言葉によって自宅軟禁処分となったケール。彼は元来、悪い人間ではない。

そんなことが身にしみるほどわかるよう、セットアップから気を使ってケールの人物像を作り上げている。そのおかげで、ティーンエイジャーの好奇心と正義感に、半径30メートルの制限というスパイスが絶妙に絡まって、観客の興味と共感を得ることに成功している。

 
■ 願望(空想・妄想)にプラスするもの

こんなのあったらいいなぁ。そんな空想(妄想)が詰め込まれている。

お隣に、美人でキュートな同年代の女の子が引っ越してきたらいいなぁ。

さらに、お隣が殺人鬼だとわかって、それを暴いて被害の拡大を防くヒーローになれたらいいなぁ。

そんな都合のいい願望が叶うワケがない。

だが、叶ってしまうのが映画だ。

とはいえ、ノーマルモードで叶えてもいまひとつおもしろくない。

そこでヒッチコックの「裏窓」を彷彿とさせる設定のために、自宅軟禁処分を受けて半径30メールの行動範囲しかない青年を登場させる。

ロケーションを限定させると同時に、恋人や友人の助けを借りることで空間的な広がりも要所要所で感じさせることができる。

それは、足首に装着させられた監視システムをはじめ、携帯電話や小型ビデオカメラをはじめとする現代的機器を使うことで可能になった。

これによって「ディスタービア」がヒッチコックの「裏窓」を真似しただけの作品ではなく、時代とアイデアという要素を加えた新たなエンターテイメント作品となったのである。


■ 見る者と見られる者

ケールは半径30メールを越えると自動的に通報される監視システムを足に装着しながら生活している。

つまり、監視されているのだ。

監視されているケールが、隣家の住人ターナーを監視する。

そしてターナーもまた、自分に注意を向ける隣人ケールとその友人に気づき、監視する。

幾重にも折り重なる「視線」が複雑に交差して物語はクライマックスへと収束されていく。

やがてケールは、自分や恋人や友人の危機を周囲に知らせるために半径30メートルの境界線の外へ出ようとする。
半径30メートルの行動範囲が「制約」から「救出」へと転換する。

ま、まいぅ~!(うまい、上手の意味)。


■ 綱渡りの恋

ケールは隣家に引っ越してきた女の子アシュリーを好きになる。

いつも彼女を見ている。そのため、彼女が家でどんなふうにすごしていて、どんな癖があって、どんなときにどんな行動をするのかを知っている。

さらに、そういった知っていることをケールはアシュリーに打ち明けて口説くのだ。

これって、ひとつ間違えばストーカーである。

ところがアシュリーはそれを、自分を深く理解してくれている最高に素敵な言葉だと感じる。

もちろんこのシーンまでに、様々な恋の下準備のシーンはある。

そうでなければ、アシュリーがケールに少しでも好意を持っていなければ、身も凍るストーカー劇になってしまう。
これをご都合主義といえばそれまでだが、現実にだって好きな人が自分のことを知っていてくれればうれしいもの。
興味がない人や関わりたくない人が自分のことを知っていたら、気持ち悪いとおもうもの。

「恋は綱渡り」(←名言?or迷言?)

でも、綱渡りの前にできることはあるはず。下準備こそ、綱渡りの恋を成就させる肝なのだ。

下準備や段取りがちゃんとできる人は、実生活でもポイントが高いだろう。映画も同じである。


■ その他

ドキドキする心臓の高まり。甘酸っぱい恋。嫉妬。友情。正義。信念。そして行動(アクション)。

過去の作品から学び、現代的な味付けをして、アイデアを形にする。

米国でヒットしたのも、じゅうぶんにうなづけますネ。

日本でも、もっともっと話題になってヒットしてもよさそうなのに……。

米国の映画にはつまらない作品も多々ありますが、それはどこの国の映画だってそうです。

でも、だからこそ「おもしろいもの」を「おもしろがれる」、つまり「楽しむスキル」のようなものはけっこう研ぎすまされているのでしょう。

その表れが「ディスタービア」の米国でのヒット、というワケ。

日本でも、たとえば「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」が大ヒットするようになれば「楽しむスキル」の上達が目にみえてきたといえるでしょう。

そんな日がくることを願いつつ、今回はここまで。

▼「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」作品レビュー

デート      ◎ 
フラっと     ◎ 
脚本勉強    ◎
演出       ○
キャラクター   ○
映像       △ 
笑い       △
ファミリー    ○ お子様向けという意味ではない
アクション    ○
ほのぼの    ×



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