映画「クローズ ZERO」
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監督:三池崇史
日本/2007年/130分
原作:高橋『クローズ』
男って、いくつになっても子どもよね。男子高校生もおっちゃんもジィちゃんも、みんな大好き「数のゲーム」。いつものことながら山田孝之が存在感アリアリ。
ストーリー(概要)
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不良学生が集まる鈴蘭高等学校。鈴蘭制覇を目的に転校してきた源治は、めっぽう強い。
やがて源治は鈴蘭高校で一大勢力をつくりあげ、最大規模を誇る芹沢グループに戦いを挑む。
主な登場人物の紹介
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△滝谷源治
男子学生。
△片桐拳
鈴蘭OBのチンピラ。
▽逢沢ルカ
八百屋の娘。
△芹沢多摩雄
男子学生。芹沢軍団のボス。
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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男って、いくつになっても子どもよね。男子高校生もおっちゃんもジィちゃんも、みんな大好き「数のゲーム」。いつものことながら山田孝之が存在感アリアリ。
■ 鈴蘭制覇がみんなの願いになるまで
鈴蘭時代には名も無き男だった片桐。鈴蘭卒業後、組に入っても後輩に顎で使われる名も無き(に等しい)チンピラ。
どの世界でも名を轟かすことができない男。それが片桐だ。
小栗旬くんのカッコいいところが見たぁ~い、という黄色い声援のなか、片桐というキャラクターの出番は源治(小栗旬)の次に多いぐらいだ。
腕っぷしも弱く、才覚もない。そんな片桐に唯一あるもの。それは、人情と男気だ。
怪我をしている源治と、逢沢ルカが不良たちにからまれたとき、片桐はふたりを安全なところへ逃がし、自らは盾になってみせる。
もちろん喧嘩は弱いのでボコボコにされる。
腕っぷしがめっぽう強い、ボーン。
腕っぷしがめっぽう弱い、片桐。
そんな正反対のようにみえるふたりに共通しているのは、大事な人を守るという男気だ。
源治にしても、片桐の自分に対するおもいやりを深く感じ入る。そして、片桐が託してくれた夢でもある鈴蘭のてっぺん目指して走り出すのだ。
そもそも、源治が鈴蘭のてっぺんを目指す動機は、親父を超えたいからというありがちなもので、イマイチ共感しづらい。
不良高校の番長になったからってそれがどうした? と思ってしまいがちだが、山があれば頂上を目指したくなるもの。それがどんなに小さく、たとえ丘だったとしてもだ。
そこで、人情キャラ片桐を登場させ、鈴蘭のてっぺんを獲るのが源治だけの願いではなく、友情や人情に裏打ちされたみんなの願いだと思わせるよう工夫している。
ところで鈴蘭のてっぺんから見える景色ってどんなかんじだろう?
■ 数のゲームを楽しむ
あの山のてっぺんに登ったら、向こう側になにがみえるんだろう?
そんなことを思いながらてっぺんにのぼってみたら、向こう隣の山のてっぺんから自分と同じような顔してこっちを見てる冴えない奴がいた……。
それでもてっぺんに登りたがるのは、純粋に登山が好きだからというのに加えて、数のゲームを楽しめるからだ。
民主躍進。衆参ねじれ現象。党首会談。大連立構想。
芹沢軍団。GPSグループ。バイク武装集団。
どちらも基本はおなじようなものだ。
源治がどんなに腕っぷしが強くても、ひとりでは鈴蘭のてっぺんには登れない。人数を集めて芹沢グループに対抗しなければならないからだ。
三国志で例えるなら、関羽と張飛がどんなに強くても、劉備玄徳たちは群雄割拠の中では強い一集団にすぎない。そこに軍師・諸葛孔明を迎えて天下三分の計を立てると、蜀漢建国への具体的な歩みがはじまる。ただ強いだけでは一匹狼でしかない。いつまでたってもてっぺんは狙えないのだ。
そんな典型が源治だ。
けれども源治には、劉備玄徳がそうであったように、人を惹きつける魅力を持っていた。だから片桐と仲良くなった。学校ではクラスのボスを倒し、徐々に源治に付く中ボスたちが増えていく。やがては芹沢グループの次に大きなGPSというグループを形成するようになる。
こういうゲーム。なんだかんだいって、男はけっこう好きである。
3分映画中学の間宮兄弟っていやぁ、泣く子も黙る最恐コンビだぜぃ。
3分映画商事の間宮さんといえば、業界でも知らぬ人はいない敏腕部長じゃないか。
3分映画党の間宮幹事長といえば、党の中でも最大派閥をとりしきる人物で、財界にも顔がきく大物ですね。
どれもこれも、只野、あ、いや「ただの間宮さん」ではイマイチなのだ。
3分映画中学だったり、3分映画商事だったり、3分映画党だったりといった、どこかのグループの一員であることが「数のゲーム」のおもしろさの醍醐味なのだ。
そんなゲームの魅力を存分に楽しみたいなら「クローズ ZERO」はうってつけだ。
若者向けの作品のようでありながら、政治家と呼ばれる人たちや政治に興味ある人たちも、口では不良学生の話などくだらんというかもしれないが、作品がDVDになったら秘書に買ってこさせて夜中にこっそり妻子に隠れて観てみるか、などと思っていてもなんら不思議はない。
男って、いくつになっても子どもよね。そこがかわいいんだけどネ。
そんなお姉ぇサマもクラブのママも楽しめる、それが「クローズ ZERO」である。
■ キャラクター設定はご愛嬌
綺麗で、男に守られる役割だけのキャラクター、逢沢ルカ。
病気で手術が必要な、芹沢軍団の幹部で芹沢のマブダチの男子学生。
卑怯な手を使うヤクザの親分も、なぜか片桐には人情深い。
そんな、とってつけただけのキャラクター設定はご愛嬌。
数のゲームをより一層楽しむための、鈴蘭のてっぺんを目指す男たちに観客が少しでも共感できるような動機を与えることが目的の、こういったキャラクター設定は、かるく右から左へ(笑)受け流しておくのが正解です。
■ その他
前半の生徒たちの殴り合いのアクションシーンは「痛さを伴わない迫力映像」としてはイイ線いってるんじゃないかな。
さらに前半は笑いも多いですね。多少無理して笑いをとろうとしている感はありますが、お笑い芸人バッドボーイズのふたりが出てきたあたりで笑いはピークを迎え、しばらくは「鈴蘭的お笑いワールド」に浸たれます。
しかし後半、笑いは影をひそめ、それと呼応するかのように「痛さを伴わないアクション迫力映像」もみられなくなっていきます。
後半からラストに芹沢軍団とGPS軍団の大乱闘シーンがありますが、そこはけっこう普通っぽいアクションになっています。フルマラソンでいえば35キロ地点で失速してしまったかのようで残念!
主人公源治役は小栗旬さん。これまで、やさしい男前高校生という印象が強かった俳優さんですが、体も大きそうですし、けっこう不良っぽい格好が似合います。
しかし共演の山田孝之さんが存在感ありすぎて、小栗旬さんは少し薄まってしまった感じですね。
ちなみに、吉本興業所属のお笑い芸人コンビ「バッドボーイズ」の佐田正樹さんは、福岡で最大勢力を誇っていた暴走族の元総長。佐田さんの相方、大溝清人さんは元暴走族の連絡隊長です。
デート △
フラっと △ 原作漫画未読でもオッケー
脚本勉強 △ 原作を元にオリジナルストーリーにしたのはGOOD
演出 △
キャラクター △
映像 △
笑い ○ 人間ボウリングの球デカッ!
ファミリー -
アクション △ 痛くない殴り合い
やんちゃボーズ ◎
政治家 ◎
男子諸君 ◎