映画「トランスフォーマー(TRANSFORMERS)」
監督:マイケル・ベイ
アメリカ/2007年/144分
贅沢すぎる舞台を用意したお笑い劇(前半)。VFXによる映像革命に度肝抜かれるというよりも、そのシステム化された娯楽系プロパガンダ方程式と、それを映画というカタチにする膨大な資金力と実行力に度肝抜かれるといったほうがいい。女子諸君の好みには合わず、デートには向かない。
ストーリー(概要)
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宇宙。未知の星から、あらゆるテクノロジー機器に姿を変えられる金属生命体が地球にやってくる。力の源であるキューブをめぐり、善玉ロボットたち+人間たちと、悪玉ロボットたちが戦を繰り広げる。
主な登場人物の紹介
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△サム・ウィトウィッキー
高校生。
▽ミカエラ・ペインズ
高校生。サムの同級生。
△レノックス
米陸軍大尉
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悪役ロボットたち↓
∴メガトロン
∴バリケード
∴スタースクリーム
∴ブラックアウト
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善役ロボットたち↓
∵オプティマス・プライム
∵バンブルビー
∵ジャズ
∵アイアンハイド
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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贅沢すぎる舞台を用意したお笑い劇(前半)。VFXによる映像革命に度肝抜かれるというよりも、そのシステム化された娯楽系プロパガンダ方程式と、それを映画というカタチにする膨大な資金力と実行力に度肝抜かれるといったほうがいい。女子諸君の好みには合わず、デートには向かない。
■ トランスフォーマーってなに?
「アルマゲドン」「パール・ハーバー」のマイケル・ベイと、「JAWS/ジョーズ」「E.T.」「宇宙戦争」のスティーヴン・スピルバーグが組んだ夏の超大作映画として登場の「トランスフォーマー」。
トランスフォーマーは、日本のおもちゃメーカー・タカラトミーの変形ロボット玩具シリーズの名前だ。
トランスフォーマーが日本生まれの米国育ちと言われるのは、日本国内で売られていたロボットを米国で「TRANSFORMERS」として発売したところ、米国でヒットして日本に逆輸入されたことによる。
米国で有名なロボット玩具を米国で巨匠と言われる監督やプロデューサーが手を組んで作ったのが映画「トランスフォーマー」というわけだ。
だから、日本でいうところのガンダムが実写映画になったようなものだと思えばいい。けれど大きな違いがある。ガンダムでは基本的に人間が活躍するのに対し、トランスフォーマーは人間とロボットの両方が活躍する。
「トランスフォーマー」のロボットたちは生命体。人間が操縦するロボットではなく、ロボット自体が意思を持った金属生命体なのだ。
■ 既知と未知でわかる善悪の構図
日本のアニメ・機動戦士ガンダムのロボットたちはしゃべらない。人間がロボットの中に入って操縦する。ロボットはあくまで機械だ。
だから地球連邦軍とジオン公国の戦いは、人間同士の戦いである。人間は人間を知っている(哲学的な部分は抜きにして)わけだからおおまかにいえば「既知」である。
トランスフォーマーのロボットたちはしゃべる。だから地球人と地球外生命体の戦いは、地球人にとっては「未知」だ。未知なる敵との戦いである。
では「既知」と「未知」を、乗り物を例に考えてみよう。
■ 車=善
トランスフォーマーの善役ロボットたちは主に車に変形する。日常で一般人が乗る、乗用車やスポーツカーやトラックといった車だ。
乗用車やスポーツカーやトラックは身近にある。通勤通学に乗用車に乗る人もいるし、デートやドライブにスポーツカーに乗る人もいるし、。仕事でトラックに乗る人もいる。車はとても身近な機械だ。
いつも身近にあって、普段は意識していなくても、それが壊れたり無くなったりしたら、たいへん不便に感じる。どこへ行くにも一緒の相棒。それが車だ。特に一部の都市部を除いて車社会といわれる米国では(日本も同じようなものだが)そうである。
身近な相棒には親しみを感じる。自分の車に名前を付けたり、土足禁止にしたり、チューンナップを施したりする。だから善役ロボットたちの多くは車に変形するのだ。
■ 軍用乗り物=悪
一方の悪役ロボットたちは主に軍用ヘリコプターや戦闘機や戦車に変形する。
戦車が街中を走ったり、軍用ヘリコプターや戦闘機が街の上空を飛行したりというのは頻繁にあることではない。軍備の必要性の是非はさておき、軍用の乗り物は外的危機の脅威に対抗するためにある。
外敵による危機の象徴。それが軍用ヘリコプターや戦闘機や戦車だ。悪役ロボットの変形がこれらであるのは、たいへんわかりやすい善悪の区別のためである。
そうすると、比較的身近な車は「既知」で、比較的疎遠な軍用の乗り物は「未知」となる。
車に象徴される既知なる味方とともに、軍用の乗り物に象徴される未知なる敵を倒す。そんな図式となる。
■ システム化された娯楽系プロパガンダ方程式
軍用の乗り物といっても、それは悪役ロボットたちが変形したもの。いうなればニセモノである。ニセモノである未知なる敵を、ホンモノの軍用兵器で倒す。それも民間人と民間車(?)の協力を得て。
作り手にとっては、なんと理想的なプロパガンダ映画であろうか。
米軍が協力しているため、軍用兵器による派手な戦闘シーンが多い。これを米国と敵対する国に観せたなら、あんな軍隊にはとてもじゃないが敵いそうもない、と思わせることができそうだ。
街中を戦車やミサイル搭載車や兵士たちで埋め尽くして軍事パレードする必要はないのだ。娯楽映画を作って、日本をはじめとする世界各国で収益を得つつ、軍事的優位性を世界にアピールできるのだから。
おそろしいまでにシステマチックなプロパガンダ。
映画「トランスフォーマー」はVFXによる映像革命に度肝抜かれるというよりも、そのシステム化された娯楽系プロパガンダ方程式と、それを映画というカタチにする膨大な資金力と実行力に度肝抜かれるといったほうがいい。
■ 自虐風刺ネタもアリ?
トランスフォーマーのしゃべるロボットたちは「未知」だが、かといって皆が悪ではない。未知だからといって皆が悪ではないとエクスキューズするわけではないのかもしれないが、オプティマス・プライムをはじめとする善いロボットたちもいる。
とはいえ、ずいぶん都合のいい設定だ。こう考えてみよう
よく故障するけど、いつも一緒の「相棒=自分の車」がしゃべったら?
なんだかうれしく感じるだろう。
しゃべることを許された機械は、それが「身近で役に立つもの=車」なら善になり「外敵危機となるもの=軍用乗り物」なら悪になる。
もしも、その日その時がきてほしくはないと、いつも思っているもの=外敵がしゃべったら?
沈黙の恐怖もあるが、外敵が語りかけてくるというのも怖い。そのほうが直接的な恐怖と憎悪を生みやすい。
トランスフォーマーの物語世界の米国は、悪役ロボットであるメガトロンが冷凍漬けにされて動かないときは、その機械の体からあらゆるテクノロジーを吸収して米国発展のために使ってきた。都合よく利用してきたわけだ。
そして、思い通りに利用できているときは、なんともノーテンキである。
メガトロンが冷凍保存されている倉庫の職員かなにかのひとりは、このロボット(メガトロン)が我々に脅威を与えるものは思わなかった、といった意味のことを言う。
冷凍されているために動かない、しゃべらない。そういった危機の要因になるとは思えないものは大いに利用する。
ところがあるとき気がついたら動き出して、おまけにしゃべって、自分たちを危機に陥れる。危険はなく、脅威にはなり得ないと思っていたのに……! こんなに怖いものはない(だろう)。
このあたりの、米国人にとっての恐怖については、特別レポート「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」徹底解説~ハリウッドがジャパンホラーを買いたがる理由~』にもあるとおりだが、米国人に限らず身近に潜む恐怖というのはけっこう効果的だ。
ビデオテープや携帯電話の着信を恐怖の題材とした作品がヒットしたのも表面的なわかりやすい例といえよう。既にレポートを読んだ人はおわかりだろうが、深層的な例は「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」にみることができる。
そんなこんなで映画「トランスフォーマー」は風刺ちっくな部分もありつつ、日本のロボットという元ネタを使って映画をつくり、その日本でも公開して収益を上げ、しっかり世界へ向けてプロパガンダもしているチャッカリモノである。
■ その他
前半はけっこう笑いがある。こんなに愛すべきおバカ映画は、なかなか無いぞと思わせてもくれる。
それと、この作品は男子向けだ。
スティーブン・スピルバーグの映画集団ドリームワークスのアニメ作品「シュレック」でのチャーミング王子はヒーローではない。それまでのアニメの王道でいえばアングロサクソン系で金髪で若いマッチョなイケメンくんは善役ヒーローと相場が決まっていた。
ところがチャーミング王子はどちらかというと悪役だ。
映画「トランスフォーマー」でも、いわゆるイケメンくんは引き立て役になっている。活躍するのはクラスの皆から馬鹿にされているかのような、いわゆるヲタク系の青年だ。
ヲタクがカッコイイみたいな風潮が最近の米国内にあるのかどうかはわからないが、イケメンイ=善役という王道をあえて外し、さえないヲタク青年にセクシーな美女がなびくという、男心をくすぐる話になっている。
終盤はロボットの戦闘シーンが長く続くことからも、ほぼ完璧に男の子向けの作品だといっていい。
女の子が共感したり、素敵! わかるわかる! と思ったりする余地は、まず無い。
よっぽどの亭主関白系のカップルでないかぎり、デートでこの作品を選ぶのは控えたほうがよさそうだ。
映像は、細かいところは見ないでねといわんばかりの早回しっぽいロボット変形をはじめ、ちょいと早過ぎな印象を受ける。特にラストにむけてのロボットたちの格闘・戦闘シーンは映像が走り過ぎだろう。適度に息つぎできる間を入れてほしい。
私はこういった映像のスゴさ云々よりも、たとえ地味に見えても観客の心の中に浮かぶ映像を喚起する作品のほうが好みなので、作品の後半での次から次に続く市街地でのロボット戦闘シーンの連続には、とんこつラーメンの食べ過ぎて少々胸焼けするかのようであった。大好きなラーメンでも、食べすぎは……(>_<)
善役のロボットたちがカラフルで、おもちゃチックなところも愛嬌かな。
ロボット好き、軍事モノ好き、戦闘作品好きにはたまらないだろう。
小難しいことなど考えずに頭をカラッポにして観るのがちょうどいい。
とはいえ、こういうプロパガンダ作品を親子で観るのは、ちょっとした米国社会科見学のつもりならアリだが……。
親子で純粋に楽しめるという人もいるようだが、この夏に親子で観るなら「レミーのおいしいレストラン」や「夕凪の街 桜の国」を観るほうを大いにおすすめする。
▼タカラトミー TRANSFORMERS OFFICIAL SITE GENERATION ONE
デート × 男子向け
フラっと ×
脚本勉強 △
演出 ○
役者 ○
プロパガンダ ◎ 米国はこういうのは得意ですね
映像 ○ 早回しっぽくてよくわからないかも
笑い ○ 前半はベタにかなり笑える
ファミリー △ プチ社会科見学のつもりならアリかな
ロボットファン ◎ ロボット萌ぇ~にはたまらない
しみじみ ×
余韻 ×


