映画「プレステージ(THE PRESTIGE)」
監督:クリストファー・ノーラン
アメリカ/2006年/130分
原作:クリストファー・プリースト『奇術師』
実は正統派でヒントも親切設計。監督と映画作品自体がアンジャー(グレート・ダントン)。知的好奇心をそそられたいという人にはうってつけ。
ストーリー(概要)
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19世紀末のロンドン。奇術のライバル同士のアンジャーとボーデンは腕を競い合っていた。
そんなおり、アンジャーの妻が脱出マジックの失敗で亡くなる。アンジャーは妻の死その責任がボーデンにあるとして憎しみを募らせ、復讐を決意する。
追い詰められたボーデンもアンジャーへの憎しみを膨らませていく。
そんなある日、アンジャーの舞台で「瞬間移動」のタネを知ろうと地下へ降りたボーデンは、アンジャーの死を目撃する。
アンジャー殺しの犯人として首吊り刑を待つ身となったボーデンは、アンジャーの瞬間移動のトリックに疑問を持ちはじめる。
主な登場人物の紹介
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△ロバート・アンジャー(グレート・ダントン)
奇術師
△アフルレッド・ボーデン(THEプロフェッサー)
奇術師
▽オリヴィア
奇術ショーの助手
△ニコラ・ステラ
発明家
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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実は正統派でヒントも親切設計。監督と映画作品自体がアンジャー(グレート・ダントン)。知的好奇心をそそられたいという人にはうってつけ。
■ 映画とマジックは似ている
なんと申しましょう。いえ、なんとも申し上げられませぬ。なぜなら、物語の結末に触れてしまっては作品の旨みを台無しにしてしまうのですから。
それでは映画レビューにならぬではないか。はい、だから本来ならばこういった作品はレビューをしないのが正解なのでしょう。とはいいながも、それでもなにかしら書くのが誠の「記述師」でございましょう。
うぉっほん。そんな駄洒落はさておき、この作品の上映前には観客へ「オチは他の人には秘密にしてね」といったような意味のお願いがあります。
「シックス・センス」にも同じようなものがありましたね。そうすると期待するわけですよ。ラストにとんでもない衝撃的なオチがあるにちがいない――と。
よぉ~し、ならば自分がその謎をラストにさしかかる前に解いてやろうじゃないの。と意気込むわけです。しかも作品の題材が奇術とくれば、こりゃぁ相当なオチにちがいないと思う。
そんな期待を持たせるのには、意味があります。
そもそもマジック自体が「観客の期待値」の大きさにかかっているのだから、はじめにすべきことはこれからスゴいことをお目にかけますよ、といって集客すること。コレ、当然ですね。
これは一般的な映画作品にもあてはまります。人々の興味と期待を膨らませて、映画館にきてもらう。ほら、マジックも映画も似たようなところがあるのがおわかりいただけるでしょう。
■ 箱
大きな箱が登場します。これはアンジャーがアメリカで仕入れてきた新作で使う道具です。
「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」のレビューで、キャラクターという名の箱は開けないほうがいい、という話をしたのを覚えていますか?
▼「パイレーツ ワールド・エンド」宝箱は開けないほうがいいの意味
「プレステージ」では、そのものズバリ! 大きな箱が登場します。箱を作った人でさえ、いますぐ箱を破壊することを強くすすめるという、なんとも気になる箱です。
アンジャーはその箱と共にロンドンに帰国します。いったい何の箱? 舞台で使う装置が入った箱です。それで何ができるの? いままでだれも見た事のないショーをお見せできます。
実はこの箱の中の装置でなにができるかは、作品の冒頭からちゃんと目を凝らしてみていれば、ちゃぁんと提示されています。
箱の装置がなんなのかがわからないようにしているわけではありません。いやむしろ、作品の途中にある発明家ステラの1回目の実験のシーンで、箱の装置で何ができるかがピンとくるようにしてあるといってもいいでしょう。さらに2回目の実験で箱の装置で何ができるかは明らかにされます。
というわけで、箱は別に秘密でもなんでもないんですね。秘密ではないのだけれども、変わった形の大きな箱と登場が出てくると、なんだかスゴく気になる。使わずに破壊したほうがいいというオマケ付きなものだから、ますます気になる。
これが正統な箱の使い方です。秘密でもなんでもないものでも、箱に入れて工夫すれば、立派な秘密になる。それはアンジャーがマジックを華やかに演出することに優れていることと重なります。
■ 作品自体がアンジャー
ボーデンはマジックのタネを考え付く発想力に優れています。けれどもそれを魅せる工夫をすることは苦手なほう。
アンジャーはマジックを華やかに演出することに優れています。けれどもタネを考え付つくことは苦手なほう。
「プレステージ」という作品は、というかクリストファー・ノーランという監督は、ボーデン型でしょうか。それともアンジャー型でしょうか。
おそらくアンジャー型でしょう。
クリストファー・ノーラン監督の代表作に「メメント」という作品があります。数分の記憶しか維持できない男が主人公のこの作品は、時間の単位ごとに頭の中で組み立て直しながら観るという、頭の体操みたいでありつつもたいへん衝撃的な物語構成で知られた作品です。
どんな構成か。系でいえばクエンティン・タランティーノ監督作「レザボアドッグス」「パルプ・フィクション」「ジャッキー・ブラウン」またはガイ・リッチー監督作「スナッチ」といったところです。
これらの作品に共通するのは、作品中の各シーンの時間軸の使い方が「過去→未来」という一本筋ではないことです。シーンがどこにつながっているのか、過去のどのシーンなのかを見極めて頭の中で組み立てていく楽しさにあふれた作品群です。
さて「メメント」は作品内容としてはビックリネタではありませんが、オーソドックスな時間軸を逆手に取ったとでもいいましょうか、その時間軸を操る物語構築方法と撮影方法がビックリなのです。
アンジャーの普段のマジックも斬新なものではありません。マジックをタネを考えるのは得意ではないアンジャーですが、華麗なパフォーマンスで舞台を盛り上げます。だからアンジャーこと「グレート・ダントン」はロンドンで最も人気があるマジシャンのひとりとなるのです。
こうしてみると、クリストファー・ノーランという監督はアンジャー型だというのがおわかりいただけたと思います。
古今東西のさまざまな物語を研究している。だからこそ基本的な物語の型は決まった数しかないといわれながらも、どうやったら魅力的な作品にできるかを考え、物語構築方法にひねりを加えることで人々の注目を集める作品を作り出すことができる。
それがクリストファー・ノーラン監督です。
彼の作品は非常に多種多様な解釈と深読みができる。たいへん知的好奇心を刺激されます。
聖書の物語を彷彿とさせるシーンと演出がいたるところにみつけることができる「バットマン ビギンズ」が彼の監督作品というのも「なるほど!」と思われずにはいられません。
▼「バットマン ビギンズ(BATMAN BEGINS)」作品レビュー
ですから「プレステージ」も、社会学や哲学といったところで非常に深い解釈ができるような匂いがします。
どんなところが? それはお話できません。なぜなら作品のラストを明かさずにはできない話になってきますので。
■ その他
映画作品の結末は誰にも言わないでください、とのことですが、結末はまぁ正統派といったかんじです。推理好きな人ならヒントがけっこう親切ですので予想できますが、それを物語構築方法で華麗にみせるといったところかな。
マジックと映画に共通する仕掛けを、マジックを題材に映画で表現するというところに意味があるので「結末言わないで云々」は、なんというかそれ自体が「仕掛け」なんですね。
なんだか、まどろっこしいかんじになってしまいましたが、知的好奇心をそそられたい、という人にはうってつけの作品です。
そうそう、基本的にSF作品です。SF作品として基本に忠実です。SFだからなんでもアリではなく、ひとつだけSFにしています。しかも間に「奇術」というクッションを挟んでSFの要素をオブラートで包んでいます。
SFだと認識していないと、期待はずれ、なんていうふうに感じてしまうかもしれません。
そのあたりが、感想の分かれ目じゃないかなぁと思います。
時間軸を操る物語構成はわかりやすい親切なものですが、過去→未来という流れの作品しか観た事がない人や「水戸黄門」系以外の作品を観ない人にとっては、少々しんどい頭の体操となってしまいかねませんのでご注意くださいませ。
普通にドラマや映画を観る人なら、ヘーキですよん。
デート △
フラっと ×
脚本勉強 △
演出 ○
笑い ×
役者 ○
映像 -
アクション -
ファミリー ×
お気楽 ×
SF ○
知的好奇心 ○


