レミーのおいしいキャラクター設定
ピクサーの最新作「レミーのおいしいレストラン」の予告編はもう観ましたか?
7月28日公開予定なので、そろそろ予告編のバージョンも増えてきて、いろんな映画館で目にすることも多くなってきたでしょう。
「レミーのおいしいレストラン」の監督はブラッド・バード。「Mr.インクレディブル」や「アイアン・ジャイアント」の監督です。
実は「Mr.インクレディブル」は、すごい風刺作品です。なんの風刺か?
いうまでもなくアメリカ合衆国の風刺です。しかも風刺といわれなければ、そうとは気づかないで、お気楽エンタテイメント作品として観ることでもできます。
「アイアン・ジャイアント」もそうですが、子供向け作品のようでありながら、風刺作品でもある。だから大人が観てもおもしろい。
子供も大人も楽しめる作品を撮る監督、それがブラッド・バードなんですね。
彼は「Mr.インクレディブル」を撮るために外部からピクサーにやってきました。
「Mr.インクレディブル」はピクサーにとって記念すべき作品です。
なぜなら「Mr.インクレディブル」はピクサー初の人間(スーパー・ヒーロー)が主人公の作品だからです。
「Mr.インクレディブル」以前のピクサー作品はモンスターや魚などが主人公でした。
だから「Mr.インクレディブル」はそれまでのピクサー作品とはちょっと雰囲気が違います。アクション描写もどちらかというと過激なほう。上映時間も過去最長です。
そんな監督のことだから「レミーのおいしいレストラン」も、子供向け限定のお料理作品じゃないことは容易に想像できます。
さて「レミーのおいしいレストラン」について、ひとつおもしろいことがわかりました。
それは、ねずみのレミーの設定です。
レミーは食べ物にたいへん興味を持っていて、愛読書は天才シェフ著の「誰でも名シェフ」です。
でも「ねずみ」なんですね。ここまでは皆さんもご存知でしょう。
今回のポイントは、レミーのデザインです。
当初、レミーは二本足で立って歩く設定だった。けれども「ネズミを人間のように描くのは間違い」として設定を変更したそうです。
ディズニーの動物キャラクターの多くは二足歩行です。ミッキやミニーが四つん這いでディズニーリゾート内を動き回っていたらどう?
ちょっとホラーちっくかもしれないですね^^;
だからディズニーのキャラクターの多くは二足歩行。つまり人間のように描かれることが多いんですね。
ところがレミーはちゃんとねずみっぽい動きをする。というかねずみと同じように動きます(予告編を観るかぎりいわゆるねずみの動きをする)。
さすがピクサーの異端児(←勝手に異端児扱い^^;)ブラッド・バード監督。
新しい風を受け入れ、日々おもしいものを作ろうとするピクサーの社風も感じます。
そしてもうひとつ、レミーの設定でおもしろいことがあります。
レミーは人間の言語を理解するけれども、話すことはできません。
これはたいへん興味深いですね。
ねずみがベラベラしゃべったら、ちょっと雰囲気が違ってきます。
まるでドリームワークスの「シュレックシリーズ」みたいになっちゃうでしょう。
しゃべる動物キャラというのも魅力的ですが、観客の心の中で作られるキャラクターというのは、なるべく内面を見せないほうがいいんです。
登場キャラクターが人間の場合は、しゃべらないわけにはいかないので、キャラクターの内語(思っていること。漫画でいうところの点線のフキダシ)やナレーションをなるべく使わずに、観客にキャラクターの心情を想像してもらう工夫をします。
登場キャラクターが動物だけの場合は、人間の言葉をしゃべります。
でも登場キャラクターが人間と動物の両方いる場合は、動物はしゃべらない設定にします。
すると、観客は動物の心情を推測しようとします。
観客が動物キャラクターの心情を想像できるようになれば、愛されるキャラクターの確立となります。
ブラッド・バード監督は、どうしたら観客に受け入れられるキャラクターをつくりあげることができるかを、ちゃんと考えているんですね。
だからレミーは人間の言語を理解するけれども、話すことはできないのです。
このあたりの基本事項をあえて外しているのがドリームワークスのシュレックシリーズですね。
基本事項さえわかっていれば、それを守ろうとも破ろうとも、意図的にできるわけです。
なんとなく動物キャラがしゃべるとか、なんとなく動物だからしゃべらないとか、そういうことではダメなんですね。
ちゃぁんとわかっててやってる。それが大事です。
▼「Mr.インクレディブル(THE INCREDIBLES)」作品レビュー


