« 映画「バベル(BABEL)」 | Main | 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド (PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END)」 »

05/25/2007

映画「リーピング(THE REAPING)」

監督:スティーヴン・ホプキンス
アメリカ/2007年/100分

「出エジプト記十の災い」の知識が必須の「信仰の物語」。作品の作り方としては素直。イスラエルの「過ぎ越しの祭り」の由来を知っている人はスグに観に行っても大丈夫。「いなご少女現る」って強烈コピーがたまらない(笑)。イナゴ大量発生シーンは迫力満点だ!

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
超常現象を科学的に解明する大学教授キャサリンのもとに、ある日依頼がくる。それは、ルイジアナの奥深くの小さな町ヘイブンで起こる不可解な事件を調査してほしいというものだった。
ヘイブンの町では、ひとりの男の子が死に、川の水が赤色に変わったという。
調査をはじめたキャサリンは、町の人々に忌み嫌われている少女ローレンに出会う。
町では出エジプト記の十の災いにそっくりな現象が次々に起こりはじめていた。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
▽キャサリン・ウィンター
大学教授。元聖職者。
 
△ダグ・ブラックウェル
ヘイブンの教師。

△ベン
キャサリンの仕事上のパートナー

▽ローレン
少女。ヘイブンの町に災いをもたらしたとして、町の人々に忌み嫌われている。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
「出エジプト記十の災い」の知識が必須の「信仰の物語」。作品の作り方としては素直。イスラエルの「過ぎ越しの祭り」の由来を知っている人はスグに観に行っても大丈夫。「いなご少女現る」って強烈コピーがたまらない(笑)。イナゴ大量発生シーンは迫力満点だ!

■ だれがエジプトを出るのか

出エジプト記の十の災いってなに? という人は頭に「?」マークばかりが浮かんでしまうと思いますので、まずは出エジプトの経緯を簡略に説明しますね。

まずは「出エジプト」。だれがエジプトを出るのかというと、イスラエルの民がエジプトを出るときのお話だから「出エジプト記」なのですね。エジプトを出てどこへいくのか、約束の地「カナン」へいくのです。

その前に、なぜイスラエルの民がエジプトにいるのかを簡単に説明しましょう。

アブラハム→イサク→ヤコブの子であるヨセフは、兄たちの怒りにふれ、商人の一隊に銀二十枚で売られてしまいます。

ちなみにこのシーンは映画「グラディエーター」で主人公マキシマスが商人隊に連れられて砂漠を進むシーンに象徴的に用いられていますね。

商人隊はエジプトへ行き、そこでヨセフは奴隷として売られます。
奴隷となったヨセフは、やがて王の夢(7年間豊作が続き、次の7年間は飢饉が続く)を解き明かします。これによってヨセフはエジプトの総理大臣になります。

夢のとおりに7年間豊作が続き、次の7年間は飢饉がつづきます。でもヨセフが王の夢を解き明かしたことによって食糧をたくさん蓄えていたエジプトには、近隣からみんなが食糧を買いにきました。

そこでヨセフを頼って、ヤコブとその息子たちの家族がやってきてエジプトのゴセンに住みつきます。

ちなみに、その過程でヨセフはかつて自分を商人隊に売った兄たちと再会するわけです。何十年もたっているわけですから兄たちはエジプトの総理大臣がまさか自分の弟だとは夢にも思わないから気づかないんです。

そこでヨセフはしばらく正体を明かさずに、兄たちの様子をみるんですね。やがて正体を明かしたヨセフは、兄たちと和解する。ここにも「赦し」が表れています。「スパイダーマン」「ゲゲゲの鬼太郎」が赦しの物語だというのはもう皆さんご存知だと思いますが、そういった「赦し」のテーマヨセフの物語にしっかりとあるのですね。


■ 葦で編んだかごに入った赤ん坊

さて、ヤコブの一族がエジプトに住み始んでから何百年もたつと、イスラエルの民は増え続け、エジプトでとてつもない数になりました。これに脅威を感じたエジプト王は、イスラエルの民を奴隷として酷使します。そして、イスラエル人に生まれる男の子はすべてナイル川に投げ込めという法律を作ります。

そんなとき生まれたイスラエル人の男の赤ちゃんは、葦で編んだかごに入れられ、川に水浴びにやってきたエジプト王の娘のひとりに取り上げられます。

こうしてなんとか命拾いした赤ん坊は、イスラエルの王子として育てられます。彼はモーセと名づけられました。

青年となったモーセがある日、馬車に乗って出かけると、ひとりのエジプト人がイスラエル人の奴隷を打ち倒すのを見て、そのエジプト人を殺します。


■ 燃えているのになくならない柴

それがきっかけで砂漠に逃れたモーセの目の前で、柴が燃えはじめます。ところが火は燃えているのに、いっこうに柴はなくなりません。そのとき火のなかから神の声がきこえ、イスラエルの民をエジプトから導き出し、アブラハムの子孫に与えると約束した地に連れて行くよう言われました。


■ 出エジプト記の十の災い

モーセがエジプトの王に話をしにいくと、王はさらにイスラエルの民に重労働を課します。事態はますます悪くなる一方です。そこで神はイスラエルの民を救うためにエジプトに災いを起こしました。

(1)ナイル川を血に変える

(2)蛙の大量発生

(3)ふよの大量発生

(4)あぶの大量発生

(5)疫病の発生

(6)腫れ物

(7)雷の発生とひょうを降らせる

(8)イナゴの大量発生

(9)三日間、闇が包み込む

(10)長子の皆殺し


■ 聖書との相違点と類似点

ヘイブンの町でも出エジプト記の十の災いと同じ現象が順番どうりに次々と起こります。

唯一違うのは(10)の長男の皆殺しですね。

聖書では長男だけですが「リーピング」では長男だけでなく長女も殺されます。

また、聖書では死の天使がエジプト中を通り、すべての家の長男が死にますが、「リーピング」では天使の役割を持った登場人物がキーになりつつも、直接的には天から降る火によって長男長女たちが焼き尽くされます。

天から降る火は、おそらく「ソドム」と「ゴモラ」に、硫黄と火が雨のように降ったのを意識してのことでしょう。

ちなみにソドムとゴモラのイメージは、映画「バットマン ビギンズ(BATMAN BEGINS)」にもみることができます。聖書にはソドムとゴモラが硫黄と火によって滅ぼされたあとには「地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた」(創世記19章28節)とあります。ゴッサムシティのいたるところから垂直に高く噴き出す水蒸気の様子はこれを真似たものでしょう。

また「バットマン ビギンズ(BATMAN BEGINS)」での腐敗したゴッサムシティには幾人かの正しい者がいます。レイチェル・ドッドソンやジム・ゴードン、それに旧市街の子供たちなどです。彼らは、ソドムにいた良き人・ロトの家族を象徴しています。

さらにちなみにソドムとゴモラは映画「ヴィレッジ(THE VILLAGE)」においても、都市と農村の対比でキリスト教文化圏で生まれ育った人にはイメージされやすいものとなっています。


■ 過ぎ越しの祭りの由来

出エジプト記では(10)番目の災いから逃れる術があります。それは、家畜の中から健康なよい子羊か山羊を選び、それを殺してその血を家のかもいと柱にぬることです。

かもいと柱につけた血は、神に忠実であることしるしなので、死の天使が血のしるしがある家は過ぎ越してくださるのです。

こうしてイスラエルの民は10番目の災いの夜に神に守られたことを思い起こす祭りを行うのです。これがイスラエルの「過ぎ越しの祭り」です。

映画「ヴィレッジ(THE VILLAGE)」には、家の扉に赤いマークをつけておくと、口に出してはならない存在(Those We Don't SpeakOf)である、村を取り囲む森に住む「彼ら」が過ぎ越してくれるという設定があります。これはもちろん出エジプトの十の災いの10番目そのまんまですね。


■ 「いなご少女現る」って!

だれがつけたキャッチコピーか知りませんが……すんごいです。

タカはこのコピーを読んだだけで、観ようと決めました!

出エジプトの十の災いを題材にしているのを知ったのは、その後です。

そのぐらいヤバい(いい意味で)コピーですネ。

イナゴの大群のシーンは圧巻です。映像技術もこうして使われると本望(?)なのではないでしょうか。


■ その他

作品としていい線いってるようですが、出エジプトの十の災いをほとんど知らない人には、恐怖の意味が不明なため、頭に「?」が浮かぶでしょう。

私は小さな頃から何度も出エジプトの十の災いの話を聞いていたので、映画とはいえ災いが映像化されていることに、なんだかゾッとしました。

十の災いを知っている人は、災いの意味を知っているわけですから、物語のオチはなんとなく予想が付きやすいでしょう。そういったところでは予想どおりというかんじですが、ワッ! とびっくりさせる細かな演出はさすが職人技というかんじでマル印です。


デート      ×抱きつくのを期待するならアリかも
フラっと     ×聖書の知識が必要
脚本勉強    △けっこう素直なオチ
演出       ○驚かせる職人技アリ
笑い       ×だけど「いなご少女」には座布団十枚!
役者       ○スワンクってやっぱり味がある
映像       ◎これぞ特殊映像技術の本領発揮!
キリスト教文化 ◎十の災いの知識が必要  
ファミリー     ×おとん、イナゴってうまいんかぁ?
キャッチフレーズ ◎「いなご少女現る」ってスゴっ!


|

« 映画「バベル(BABEL)」 | Main | 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド (PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END)」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21326/15199394

Listed below are links to weblogs that reference 映画「リーピング(THE REAPING)」:

» リーピング [タクシードライバー耕作の映画鑑賞日誌]
原題 THE REAPING 製作年度 2007年 製作国 アメリカ 上映時間 100分 監督 スティーヴン・ホプキンス 製作総指揮 ブルース・バーマン、エリック・オルセン、スティーヴ・リチャーズ 脚本 ケイリー・W・ヘイズ 、チャド・ヘイズ 音楽 ジョン・フリッゼル ....... [Read More]

Tracked on 05/25/2007 at 21:48

» リーピング (2007) THE REAPING 100分 [極私的映画論+α]
 パンフによると・・・ 「リーピング」って 1.刈り取り 2.(善悪の)報いを受けること 3.世界の終末における最後の審判 って意味があるそうです。 [Read More]

Tracked on 05/25/2007 at 22:54

» 映画「リーピング」を試写会にて鑑賞。 [masalaの辛口映画館]
 17日、eiga.com主催の「リーピング」の試写会に参加した。 場所はワーナーブラザーズ映画試写室。客入りは8割くらいで、スタジアム形式の試写室の為スクリーンが高めに設置されているせいか、1番前の席は敬遠されて誰も座っていない。後ろのソファーや補助...... [Read More]

Tracked on 05/25/2007 at 23:02

» 映画「リーピング」 [しょうちゃんの映画ブログ]
2007年38本目の劇場鑑賞です。公開翌日観ました。「ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方」のスティーヴン・ホプキンス監督作品。オカルト・テイストのスーパーナチュラル・スリラー。家族の悲劇的な死が原因で信仰心をなくした元宣教師のヒロインが、小...... [Read More]

Tracked on 05/25/2007 at 23:15

» リーピング [描きたいアレコレ・やや甘口]
『リーピング』タイトルだけでも、何の映画かよく分からない。 『イナゴ少女、現る』『あなたのクラスにも、いませんか』(←コレもよく分からない) このキャッチコピーのせいか、中高生の女の子同士もチラホラ。 あ... [Read More]

Tracked on 05/25/2007 at 23:17

» リーピング [そーれりぽーと]
バッタの群れが人に襲い掛かる予告編に胸を躍らせて『リーピング』を観てきました。 ★★★ 昆虫の出てくるホラーっぽい映画という事で、『フェノミナ』を想像していたら全く違う。 10の災厄が題材のオカルト映画。 バッタのイメージが先行していたので、ヒラリー・スワンクが出ている事は劇場に着いてから知りました。 なんでオスカー女優がこんな映画に出ているのかは不明だけど、知らなかったからちょっと儲けた感じ。 彼女が出ていなければ、途中で寝ていたかもしれない。 ネタバレ無しでは書けないので以降ネタバレで。... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 00:23

» 感想/リーピング(試写) [APRIL FOOLS]
なんか中期FFっぽ〜い! 『リーピング』5月19日緊急公開。各地で起こる奇跡や神秘的とされる現象を、科学で解明する大学教授キャサリン。彼女は過去の事件により、神への信仰を捨てていた。そんなキャサリンの元にとある町から調査の依頼が。それは真っ赤に染まった川の謎を解いて欲しいというもの。町では、その現象の根源はある少女ではないかというウワサだった。 リーピング その世界観はなんだかゲームの世界みたい。科学信者の女主人公、デカイ黒人助手、カギを握る青い目の少女っていう、キャラデザがまずそう(衣装含... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 01:28

» 『リーピング』 [唐揚げ大好き!]
? 『リーピング』 ? イナゴ少女、現る。 ? イナゴ少女、どぉーんっっっ!!! 確かにイナゴは出てくるけどね、十の災いで推した方が良かったんじゃない? かつて聖職者だったキャサリンがある事がキッカケで信仰を捨ててしまう。 M.ナイト.シャマランの『サイン』... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 04:12

» 映画 【ホリデイ】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「ホリデイ」 ナンシー・メイヤーズ監督によるロマンティック・コメディ。 アマンダ(キャメロン・ディアス)とアイリス(ケイト・ウィンスレット)はそれぞれクリスマス直前に恋に破れて傷心。そんなときネットで“ホーム・エクスチェンジ”を知り、二週間だけお互いの家や車など全てを交換することを試みることになった。 ロスに住むリッチな女社長、映画音楽作曲家の男、そしてロンドン郊外に住む女性新聞記者とその兄の雑誌編集者。そんな彼らが繰り広げるたった二週間のバカンスが、ありえない夢物語と分かっていても... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 13:14

» リーピング観てきました。イナゴの映画じゃないんですね。 [よしなしごと]
 ちょっとラゾーナ川崎で買い物する用事があったので、その帰りに109シネマズに。ちょうど時間があうのがリーピングだったので観てきました。テレビCMを見ると、B級映画の臭いがぷんぷんしていたので不安だったんですけどね。... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 14:17

» リーピング [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
史上最恐の少女が、生まれてしまった。武器は、1000,000,000匹のイナゴ!!。 アフリカのスーダン在住のコスティガン牧師(スティーヴン・レイ)の元で宣教活動に赴いたキャサリン・ウィンター(ヒラリー・スワンク)は、ある事件が契機となり現在はルイジア...... [Read More]

Tracked on 05/26/2007 at 23:20

» リーピング [eclipse的な独り言 ]
 ヒラリー・スワンク。演技がうまいのは認めます。でも映画選びはあまり上手ではな [Read More]

Tracked on 05/27/2007 at 06:56

» リーピング [UkiUkiれいんぼーデイ]
どんだけぇぇぇ〜!!! も、どんだけぇ〜、ありえないイナゴの大群の数ぅ!!! 虫嫌いの私にはサブイボ(鳥肌)ものでした! 全くノーマークだったこの映画。 映画館のチラシをチラ見しただけでしたが、ヒラリー・スワンク出演だったので鑑賞してきました。 イナゴの大群を自在に操ることができる少女の話かと思いきや・・・ 旧約聖書に記された「十の災い」をモチーフにしてるんです。 ・・・て、言われても、こっちは知らんがなぁ〜、その旧約聖書にどんな災いが書かれてるのか。 ... [Read More]

Tracked on 05/27/2007 at 16:42

» 「リーピング」怖いけど途中で醒める [soramove]
「リーピング」★★★ ヒラリー・スワンク、デヴィッド・モリッシー主演 スティーヴン・ホプキンス 監督、2007年アメリカ 宗教と不思議な現象を研究している主人公は かつてアフリカで医療ボランティアをしていたとき、 蔓延する病気の生け贄で 夫と娘を失っ...... [Read More]

Tracked on 05/30/2007 at 21:14

« 映画「バベル(BABEL)」 | Main | 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド (PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END)」 »