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05/13/2007

映画「ゲゲゲの鬼太郎」

監督:本木克英
日本/2007年/103分
原作:水木しげる

ありえねぇ~」で読み解くヒーロー・鬼太郎。「反復讐系」「共存系」はスパイダーマンの数歩先をゆく。日米のヒーロー進化論は日本が魁!妖怪塾(なんのこっちゃ)。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
小学生の健太が妖怪ポストに手紙を投函する。

手紙を受け取った鬼太郎は人間を助けるべくテーマパーク建設工事に伴う地上げに利用される妖怪たちを追い払う。

一方、妖怪石を盗み出したねずみ男は換金のため質屋へ。そこへやってきた晴彦は妖怪石に心を奪われそのまま持ち去った。

妖怪石を父・晴彦から託された健太はかたくなにそれを隠しつづける。そのために鬼太郎が妖怪石を盗んだとしされ、満月の夜までに石を取り戻さなければ目玉おやじと砂かけ婆が釜茹でにされる窮地に立たされる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ゲゲゲの鬼太郎
幽霊族の末裔。
 
▽三浦実花
人間。女子高生。現実派。

△健太
人間。三浦実花の弟。

▽猫娘
半妖怪。鬼太郎の幼なじみ。

△ねずみ男
金に弱く、不潔。鬼太郎とは腐れ縁。

△目玉おやじ
鬼太郎の父親。

▽砂かけ婆
妖怪界にてアパート経営している妖怪。

△子なき爺
泣きながら石になる妖怪。

▽天狐
妖怪石を封じ込めた神聖な妖怪。

△輪入道
妖怪。妖怪機関車を動かす。

△晴彦
人間。実花と健太の父親。

△空狐
邪悪な、狐の妖怪。

----------------
★妖怪石
人間たちの邪心と妖怪たちの怨念が宿ったパワーストーン。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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「ありえねぇ~」で読み解くヒーロー・鬼太郎。「反復讐系」「共存系」はスパイダーマンの数歩先をゆく。日米のヒーロー進化論は日本が魁!妖怪塾(なんのこっちゃ)。

■ スパイダーマンと基本は同じ

どちらも、ふつうの人間は持っていない特殊能力みたいなものを持っているが、スパイダーマンと鬼太郎が同じというのはどういうわけか?

実はヒーローが同じというのではなく、テーマがとても似ているのだ。

テーマはずばり「復讐」「許し(赦し)」「共存」「共栄」。

スパイダーマンシリーズの登場キャラクターたちは復讐心を燃やし、他人を許すことがなかなかできないでいる。そのために「心の隙間」につけ込まれて「スターウォーズ風」にいうなら「ダークサイド」へ堕ちていく。

「ゲゲゲの鬼太郎」の、狐の妖怪たちは、テーマパーク建設工事で稲荷神社を破壊され、住処を奪われた。ついで(?)に妖怪石も盗まれた。

だまっちゃいられない。だから妖怪石と住処の奪還のため戦う。

ん? これってアメリカ合衆国の映画に似ていないか。

マフィアに家族を奪われた男が、たったひとりで戦いを挑む。みたいな。

やられたらやりかえす。復讐だ。復讐の物語に観客は拍手喝采を送る。胸がスカッとするからだ。

そんな「復讐系」作品を多量に生産してきたアメリカ映画のなかで、一見するとお気楽ヒーロー映画に思えるスパイダーマンシリーズは明らかに、異質だ。

スパイダーマンシリーズは、よくある「復讐系」ではないからだ。復讐が成功して拍手喝采のハッピーエンドではなく「許し(赦し)」の物語となっている。いわば「反復讐系」。またの名を「共存系」とでもいおうか。

憎しみは憎しみしか産まない。憎しみの連鎖という呪縛にとりつかれた例は世界中のいたるところにある。

それに対して「許し(赦し)」と「共存」を図ろうというのがスパイダーマンシリーズのメッセージであるわけだ。

さて「ゲゲゲの鬼太郎」は、どういったところで「反復讐系」・「共存系」だとみてとれるのだろうか。


■ セリフでわかりやすく提示してくれる

テーマパーク建設工事で稲荷神社を破壊され、住処を奪われた狐の妖怪たち。彼らの大ボスは天狐。まぁ女神さまみたいなものだと思ってもらえればいい。

天狐は「どの世界にも悪い人はいる。住処を奪われたなら他へ移ればいい。人間たちと折り合いをつけよう」といった意味のことをいう。

それに反発する子ボスの空狐は、天狐にエイっ! と骨抜き(無力化)にされてしまう。

仮にスパイダーマンシリーズが制作された国を空狐とするならば、そこに天狐は存在しない。空狐を止める力のある者はいないのだ。

それをエンタメ的かつ風刺的に取り扱って社会を映す鏡としたのがスパイダーマンシリーズだ。だからスパイダーマンはお気楽ヒーロー作品のようで奥が深い。

一方で、天狐の言葉にあるように、やられたからやりかえすのではなく、なんとか折り合いをつけて共存を目指そうというメッセージが直接的なセリフとしてわかりやく出ているのが「ゲゲゲの鬼太郎」だ。

それが「反復讐系」「共存系」たる所以である。


■ 一歩も二歩も先をゆくヒーロー

アメリカ合衆国のヒーロー、スパイダーマンは復讐心から開放されて許し(赦し)の心を持つところで第3作が幕を閉じた。

「ゲゲゲの鬼太郎」のスゴいところは、その先を行っているところだ。

鬼太郎はもうずいぶん昔から、妖怪たちから「妖怪のくせに人間に味方ばかりする野郎だ」と陰口をたたかれながら生きてきた。それを一向に気にするふうもなく、たいてい昼寝をしている。

ふたつの相容れないと思われている世界の橋渡しをするという、まさにこれからのヒーロー像を、ずいぶん昔から鬼太郎は実行してきたわけである。ヒーロー活動履歴が長いのだ。時代がやっと追いついてきたといったかんじかな。

スパイダーマンの「どんだけ~」先を行っているのだろう?

それにもかかわらず、先駆者であると自慢するわけでもなく、のんびり昼寝したり、目玉おやじに湯を注いだり、猫娘とクラブ(サッカークラブとかスイミングクラブのクラブではない)で踊り明かしたりする鬼太郎って、もぅ悟りをひらいているってカンジだ。

そりゃそうだ。スパイダーマン(ピーター)は大学生だから二十歳そこそこ。一方の鬼太郎は三百五十歳ぐらいというから、年季がまるっきり違う。


■ 空気を読める人になろう

健太は父・晴彦から、だれにも秘密にしろと言われて託された妖怪石をかたくなに隠し続ける。

健太が妖怪石を持っていることをわかっている鬼太郎も、無理に石を取ろうとはしない。自分のみならず、父・目玉親父と仲間の砂かけ婆が釜茹で500年(年数違ったかも)の刑になる窮地に立たされようとも。なんとも寛大だ! 
大好きな父親との約束とはいえ、直接関係のない妖怪たちを巻き込んで危険な目にあわせ、あろうことか妖怪石を盗んだ濡れ衣までかけられてしまった鬼太郎を見て、いくら小学生とはいえなんとも思わないわけはないだろう。

いや小学生だからこそ、状況を読んだり空気を読んだりする勘は大人より鋭いはずだ。

子どもだからなんにもわからない、というのは、自分が子供のころのことを忘れたしまった大人がよく言うセリフだ。

実際には子どもほどよく周囲を観察している者はいない。このクラスで力を持っているのは担任の先生ではなく、サッカー部の加藤くんでもなく、図書委員の杉浦さんだ。といったものを感じ取る嗅覚がなければ小学校には一日たりとも通えない。

大人とくらべて子供の自分は比較的無力だと自覚しているからこそ、大人の何倍も周囲の人々を観察する。だから子供はとても勘が鋭くて、敏感だ。そのためにストレスで心身を疲労させてしまうこともある。

というわけで、健太のような振る舞いの小学生はふつうならまずありえない。妖怪の存在(特に目玉おやじの存在)に、ありえねぇ~、といったかんじで小さくつぶやいた三浦実花に、鬼太郎はこう言い返したっていいはずだ。

「健太みたいな小学生って、ありえねぇ~」


■ 生前どんだけぇ~よ晴彦!

人生なにが起こるかわからない。会社のリストラで解雇されることもあるかもしれない。一昔前なら、リストラによる解雇ときくと、かわいそうとかまじめに働いてきたのに、といった同情論が多かった。

しかし時代は変わり、終身雇用制などだれも信じていないようになると、リストラによる解雇に対する同情度はひと昔前とはずいぶん変化している。

「スパイダーマンシリーズ」の悪役たちは、心の隙間につけ込まれたら、とりあえず悪のパワーで好き放題に暴れまくる。

一方、晴彦は心の隙間につけこまれて妖怪石を奪っても、パワーアップするどころか、弱って死んでしまう。

観客に、かわいそうと同情(共感)してもらうには作り手にそれなりの技術が必要だ。同情の余地はあっても、そこにもうひと工夫なければ共感(応援)はしてもらえない。

晴彦がどんなに健太や実花のことを大事に思っているかという涙を誘いたいシーンを用意しても、シラけてしまう。なぜなら晴彦に共感できていないからだ。

晴彦の親類・友人・知人はだれも実花と健太を助けに現れない。やってきたのは妖怪ばかり。

おとんよ、いくら窃盗犯として死んだからって、生前どんだけぇ~信頼されてなかったんや~。

人間たちから見放された姉弟。

それを助けたのは、姉弟にはなんの恩も義理もない妖怪。

オイっ! 鬼太郎、格好よそぎるゾ!(^^)


■ 許す(赦す)鬼太郎

妖怪石を盗んだとしてねずみ男に濡れ衣をかけられた鬼太郎。

ふつうだったらねずみ男とは絶交だ。というか、ねずみ男は復讐すべき敵だ。

それにもかかわらず鬼太郎は、ねずみ男を許す(赦す)。

ありえねぇ~。

アンタ、ただモンじゃないよ。

フッ、ぼくは妖怪。だてに三百五十年生きてないよ。

そんな声がきこえてきそうだ。

まぁ、ありえねぇ~からこそ鬼太郎なのだ。ありえねぇ~からこそヒーローなのだね。

たぶん「スパイダーマンシリーズ」でサム・ライミ監督が描きたかったヒーローの究極形は鬼太郎じゃないだろうか。

まちがいないっ!(←ちょい古?)


■ その他

鬼太郎役のウエンツ瑛士くんは、小池徹平くんとの「WaT」で紅白出場も果たした歌手・俳優・芸人(?)だ。

テレビ番組「うたばん」では「ホラッチョ」と呼ばれている彼は、しゃべりもできるのでバラエティ番組によく出演している。

なんかほうっておけない。ツッコミたくなる色男という「おいしい」ポジションを若くして得たタレントだ。

映画「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌にもなっている「Awaking Emotion 8/5」はウエンツくんが歌っているゾ。

そして全国のお父さんたちよ、おまたせ~。巷で大評判の猫娘のダンスはどうなんや? という声にお答えしよう。

「猫娘ダンス」というタイトルの映画のつもりで観み行ってもいいとだけ言っておこう。

猫娘ダンスはエンドロールに登場するぐらいなのだが、たとえ作品の途中から寝ていても、エンドロールにはばっちり目を覚まして見なければならない(笑)

こういうのを「一見の価値アリ」というのだな。

猫娘役の田中麗奈ファンならば、ぜひ映画「暗いところで待ち合わせ」も観ることとをおすすめする。

映画「暗いところで待ち合わせ」作品レビュー

それにしても猫娘に、パァーと遊びにいこうよぉ、と何度もせがまれているにもかかわらず、ほっといてくれとばかりにゴロゴロしている鬼太郎よ、なんという果報者であろうか(笑)。


デート     △ びみょ~ 
フラっと    △ 
脚本勉強   △ 
演出      △ 
笑い      △ 
役者      ○ イメージどおりのキャスティングを堪能すべし
ダンス     ○ 猫娘のダンスだけでも一見の価値アリ!
ヒーロー    ◎ 数歩先ゆくヒーローなり

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