ポール・ヴァーホーヴェン監督の力作!
「ブラックブック(ZWARTBOEK/BLACK BOOK)」
第二次世界大戦ナチス・ドイツ占領下のオランダを舞台として、家族をナチスに殺されたユダヤ人女性歌手の復讐を描く作品。
「インビジブル(2000)」「スターシップ・トゥルーパーズ(1997)」のポール・ヴァーホーヴェン監督作品だ。
オランダ/ドイツ/イギリス/ベルギーが制作とのことで、かなりの制作費がかかったとおもわれる気合の入った作品となっている。
戦時下の過酷な状況を舞台とした作品では、主人公のサバイバルが焦点となっている場合が多い。生き延びるだけでも奇跡であった当時の状況下を描いた作品に「戦場のピアニスト」や「シンドラーのリスト」や「トンネル」などがある。
▼「戦場のピアニスト(THE PIANIST)」作品レビュー
「ブラックブック」はもちろんサバイバルが基本だが、さらに家族ナチスに殺されたユダヤ人女性歌手が復讐のためにナチスの将校に近づくのだ。
オランダのレジスタンスを中心にユダヤ人女性を描いた本作品は、息をつかせぬ展開とペースで上映時間144分という長さをまったく感じさせない。
たとえば「これは観なければならないものだ」といわれると、作品のつくりはどうあれ、姿勢を正してちゃんと観なければならないもの、という捉え方をしてしまいがちだ。
だから作り手のほうも、観てもらうために必要なことがじゅうぶんでないまま作品を完成させてしまうことがある。ほんとうに多くの人々に観てもらいたい、伝えたいメッセージを持っていればいるものほど、観てもらうための方策・方法がじゅうぶんに練られることがないままに作品づくりが進行してまうことがあるのだ。
「これはたとえ長くつまらなく思えてもちゃんと観なければならない」と言われたら、観る前から身構えてしまう。そうなっては作品のメッセージを受け止めることは難しくなる。
これを「伝えたいことが重要であればあるほど相手に伝わりづらくなるデフレスパイラル」とでも名づけようか。
こうしたデフレスパイラルに陥っている作品はけっこう多い。
しかし「ブラックブック」にその心配は無用だ。
「ブラックブック」は戦時下を扱った作品でありながら、観客をひきつけて物語を観せつづける工夫と意欲にみなぎっているからだ。


