« December 2006 | Main | February 2007 »

01/26/2007

映画「リトル・ミス・サンシャイン(LITTLE MISS SUNSHINE)」

映画「リトル・ミス・サンシャイン(LITTLE MISS SUNSHINE)」
監督:ジョナサン・デイトン 、ヴァレリー・ファリス
アメリカ/2006年/100分

深い愛と笑いで織り成す、家族の再生物語。食卓が物語る家族の姿。深い愛と笑いの関係。家族みんなの願いとは?

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
美少女コンテストの地方大会で繰上げ優勝した少女オリーヴとその家族が決勝大会が行われる会場へ長距離ドライブに出る。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
▽オリーヴ
女の子。美少女コンテスト地方大会2位。繰上げで1位に。

△リチャード
オリーヴの父親。フーヴァー家の長。独自の成功論を作り上げ、本の出版に奔走する。

▽シェリル
オリーヴの母親。

△フランク
オリーヴの伯父。プルースト研究者。ゲイ。

△ドウェーン
オリーヴの兄。ニーチェに心酔して沈黙の誓いを実行中で空軍パイロット志望。

△祖父
オリーヴの祖父。薬物中毒で福祉施設を追い出される。

コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
深い愛と笑いで織り成す、家族の再生物語。食卓が物語る家族の姿。深い愛と笑いの関係。家族みんなの願いとは?

■ 何気ない食卓

ある家族の夕食。
どこにでもある、ごくありふれた日常の時間で退屈だと思うかもしれません。でも、食卓こそ最も興味深いのです。

映画やドラマや小説でよく食卓のシーンがあるのは、それが便利で重要だから。

家族が食卓につき、食事をする。一見すると動きが乏しいように思える食卓シーンは、家族構成からキャラクターの性格、位置関係、夢、希望、苦手なものまで、あらゆる要素を観客に伝えることができんです。だからよく食卓のシーンが使われます。

沈黙の誓いをたててしゃべらない息子を立派だと皮肉る父親リチャード。

またチキンか! と夕食にケチをつけ、ゲイを見下すかのようなことを言う祖父。

自分は高名なプルースト学者だが愛に破れ自殺を図ったと少女に話してきかせるフランク。

フーヴァー家の現状が一目瞭然。もうハチャメチャな食卓ですね。

そんな家族のもとに、オリーヴが美少女コンテストの地方大会で、繰上げで1位になり、本大会への出場権を獲得したとの連絡が届きます。

そこで、一家揃って車でコンテスト会場まで行くことになったのです。


■ 深い愛と笑いの関係

レストランでも車の中でも、フーヴァー一家はそれぞれに勝手なことを言います。それは会話というより、無駄話に近いでしょう。

だれかが何かを言う度に、車の中でだれかが気分を悪くしたり、だれかが絶望したり。さらに車も故障したり。
それまで糸一本でかろうじてぶら下がっていた「家族」に次々に悪い知らせが届き、ますます状況は悪い方向へ。

そんな様子を観ておもしろいの? って思うかもしれませんが、これがおもしろいんですヨ。でもそのおもしろさは、人の不幸は蜜の味とかそういうネガティブなおもしろさ(?)とは違うんです。

みんな自分勝手で、なにひとつうまくいかないけれど、それでもオリーヴを決勝大会へ出場させるという共通の目的がある。みんなオリーヴが好きで、自分では気付いていないかもれないけれど、ほんとうは家族みんなが好き。それがしっかい根底にあるから、どんな不幸と思えることが起きても、それが笑いに転化されるんですね。

深い愛と笑いの関係。これがこの作品の一番のセールスポイントです。


■ 家族みんなの願いとは

ジョン・ベネちゃん事件により、アメリカ合衆国で美少女コンテストに熱中する親子たちの様子は日本でも度々紹介されるようになりました。

美少女コンテストの本大会ともなれば、その熱の入れようはたいへんなものだと想像できます。

けれどもフーヴァー一家は、本会場へオリーヴを連れて行くことに一生懸命で、審査時の立ち振る舞いやダンスについては、他の出場者家族ほど熱心ではないようです。なぜなら、会場で披露するダンスの振り付けをみてくれているのはおじいちゃん(グランパ)だけというのですから。

ふつうなら、美少女コンテストに夢中になりすぎた家族の可笑しさというのを全面に出していきそうなところを、あえて外しています。

美少女コンテストに出場するのだけれど、家族はバラバラで一家がひとつになって美少女コンテストで優勝を目指すというのではなく、目的はオリーヴの願いを叶えるため。

なんといってもオリーヴが美少女コンテストの本大会に出場することをたいへん喜んでいるからです。だから本大会に出場させたい。けっして美少女コンテストで優勝することが家族みんなの目的ではないんですね。

オリーヴの気持ちや願いを叶えることが第一なのです。オリーヴの願いを叶えることが唯一、家族みんなの願いでもあるのです。

だから、美少女コンテストへの長い道のりで数々の不幸とおもえることが起こっても、それが笑いになるんです。心が暖まるエピソードになるのです。

日本にかつてあったといわれるお受験(いまもあるのかな)。子供のためといいつつ、名門校に入学させること以外に価値観をもてない親たちの、笑えない有様とはまったく違いますね。

作品のはじめの夕食のシーンをよぉく観てください。美少女コンテスト本大会出場権を獲得したとの知らせを受けてたとき、家族が見守るなか父リチャードはオリーヴに、本大会に出場したいかと尋ねます。

このシーンでわかることは、バラバラな家族の唯一ともいえる願いがオリーヴの願いを叶えるこということ。

そして、オリーヴの願いを叶えたいと思っているなら、他の家族の願いだって叶えたいと心の奥底では思っているであろうことが観客に予感させる。だからこそ、ハチャメチャなフーヴァー一家を応援したくなる。

ほら、作品のはじめの食卓シーンで観客のハートはすでにガッチリと鷲づかみされているんですね。

だから食卓シーンは重要で興味深いのです。


■ ひとこと

旅の途中、ガスステーションにオリーヴがおいてきぼりにされてしまいます。でもオリーヴは不安そうな顔をみせることなく笑顔で待っているんです。そこへフーヴァー一家が乗った車が戻ってきます。

オリーヴは家族を信頼して安心しているのですね☆ 

デート    ◎
フラっと   ◎ 
脚本勉強  ◎
演出     ◎ 
リアル    ○ 
キャラクター ○
笑い     ◎
心      ◎   


| | Comments (0) | TrackBack (3)

01/19/2007

映画「大奥」

監督:林徹
日本/2006年/126分

表向きの主役と裏向きの主役。アナタはどっち派?(笑)「美味でございますぅ~」の名(?)セリフを聞き逃すな!☆

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
徳川家七代将軍家継の時代。大奥では天英院派と月光院派で対立していた。
そんな折、月光院の信頼厚く、若くして大奥総取締である絵島は、寺社詣の帰りに寄った歌舞伎演劇で役者・生
島新五郎に出会う。
それは、英院が老中が、間部と月光院を陥れるために仕組んだ罠だった。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
▽絵島
大奥総取締。江戸の町人出身。

▽天英院
先代将軍の正室

▽月光院
将軍家継の生母。町人出身。

△生島新五郎
歌舞伎役者

△間部詮房
将軍家継の後見人


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
表向きの主役と裏向きの主役。アナタはどっち派?(笑)「美味でございますぅ~」の名(?)セリフを聞き逃すな!☆

■ 恋愛の圧力釜効果

ドラマシリーズで人気だった「大奥」の映画化で、今回は悲恋物語が中心になっています。

大奥総取締でありながら、歌舞伎役者に恋をする。禁断の愛。制限されるが故に燃え上がる想い。

いうなれば「恋愛の圧力釜効果」が活かされています。


■ 裏向きの主役は

物語の重要な鍵を握る、天英院派の女を演じる杉田かおるさんがセリフのない、いい演技をしています。

もともと杉田かおるさんは存在感もあるので、高島礼子と同じ画面に出ても全く見劣りしないどころか、セリフ少なめな様子がかえってじわじわと彼女の心の内を想像させていいかんじです。

杉田かおるさん演じる女性は、天英院派で大奥の中でもそこそこの地位にいるようです。でも、天英院や月光院や大奥総取締といった地位には就くことができないであろう、そんな絶妙な立場です。上も見えるし、下もみえる。かといってなんでも自分の思い通りにする力はない。

このポジションが絶妙で、観客はそれと意識しなくても、なんとな~く共感していきます。

表向きの主役は仲間由紀恵さんですが、裏向きの主役は杉田かおるさんですね。


■ みどころは

史実を基にした作品なので、脚色や演出はあっても物語に大きなサプライズはありません。

物語の出来を楽しむというよりも、やはり出演者の魅力を堪能するというのが映画「大奥」の楽しみ方でしょう。

なんといっても主役の絵島を演じる仲間由紀恵さん。いま最も注目される旬の女優さんだといわれています。

仲間由紀恵さんにはあまり恋愛の匂いは感じませんが、そこが大奥総取締の絵島の役柄にマッチしていて、違和感無く観ることができました。

また、注目のシーンといえばこのふたつです。

芝居小屋の火事のあと、祭りで混雑する道を手をとりあって進む絵島と生島が、人混みに阻まれるようになって一度手を離してしまいます。

ふたりの距離は2、3メートル。そこで見つめ合い、決心したかのように絵島のほうから生島へ手を差し伸べます。生島はその手を取り、再び人混みの中を歩きはじめます。

後日、生島と過ごしたあの時間があれば、あとは余生と思えます、と月光院に告げる絵島。

ほかにも名場面集に入れたいシーンはいくつもあります。皆さんも自分なりの名場面をみつけてみてくださいね。


■ ひとこと

生島新五郎役の西島秀俊さんも、時代劇もなかなかいいですね。

昨年末にフジテレビで深田恭子主演のドラマ「大奥スペシャル~もうひとつの物語~」が放映されていましたね。これは6代将軍・家宣の時代のお話で、映画「大奥」の時代の3年前という設定です。

このドラマを7割方観たので、映画もその流れで映画を観たのですが、これってまたまた「思う壺夫くん状態」ですね。

だってドラマ「大奥スペシャル」での名(?)セリフ「美味でございますぅ~」が耳に残っていたもので……(笑)

もちろん映画「大奥」でもこの名セリフがきけるシーンがちゃんとありますヨ。

それにしてもドラマ「大奥スペシャル」での深田恭子の女中姿は妙に似合っていました。

一方、映画「大奥」は、豪華なドラマの域を出てはいないかなってかんじはありますね。

ちなみに月光院役の井川遥さんは、ほぼイメージどおりの役どころですが、彼女のイメージを逆手にとったうまいキャスティングの映画はこちら。ネタバレになりますので、以下のレビューに詳しいことは書いてませんが、映画を観ればすぐにわかりますヨ。観た人は、あぁあのシーンね、とすぐにピンとくるはず。

デート     ○
フラっと    △
脚本勉強  -
演出     ○
リアル    -
キャラクター ○
笑い     -
ファン    ○

| | Comments (5) | TrackBack (1)

01/06/2007

【のだめ式】キャラクターの作り方

ドラマ「のだめカンタービレ」(以下「のだめ」)を観たかな?

けっこう評判が良くて、視聴率も高かったようですね。

そこで今回は「のだめ」を例に、主要キャラクターの作り方をみてみましょう。

ドラマ「のだめカンタービレ」の主要キャラクターはふたり。

千秋真一と野田恵。

千秋真一は、いわゆるイケメンで、音大の女学生のアイドルで「千秋さまぁ~」なんて呼ばれてます。

野田恵は、くいしんぼうな変わり者で、友達から「のだめ~」なんて呼ばれています。


そもそも物語の舞台は音大。登場人物たちも音大生や音楽評論家や著名音楽家など、音楽に関わる人たちばかりです。

音楽の世界って、一般からしたらちょっと特殊な世界にみえますよね。

音大生というだけで、どこかゲイジュツの匂いを感じたり、アタイらパンピー(一般人)とは住む世界が違うお坊ちゃまお嬢ちゃまの集まりだろう? なんていう人もいるかもしれません。

音大を卒業してもプロのオーケストラに入れるのは一握りだというし、楽器の先生になったり、調律師になったりして音楽に関わる仕事に就ける者さえごく一部ともいいます。

短大や4大の経済系の学部を卒業するよりずっと就職には向いていないのが音大生というワケ。

それに有名な音楽の先生にレッスンをつけてもらうと、かなりの高額とか。新幹線や飛行機をつかってレッスンを受けに行くなんてよくあることだとか。

そんな知られざる音大生の生態とは? うーん、なかなか興味をそそられますね~。

そんなわけで「のだめ」にかなり変わり者のキャラクターが登場したとしても、パンピー(一般人)は、ある程度は納得してくれます。

だってあたいらとは住む世界が違うから(笑)というわけでもないですが、いわゆる一般人からしてみれば、音楽大学に通うというだけで、かなり普通ではないと思っているところがすくなからずあるからです。

それで、千秋さまは学園のアイドル「千秋さま」なんです。「千秋くん」ではありません。「千秋さま」です。

超イケメンでピアノが超上手の千秋さまは女学生たちの超人気者。でもそれは所詮、大学内でのお話。

学外ではちょっとうわさになっても、海外の留学経験もコンクール入賞経験もない千秋さまは、カッコイイ以外はほぼ無名の状態。

実は千秋さまはピアノだけでなく、ヴァイオリンも超上手で、目指しているのは指揮者なのです。そのため、もとからの音楽の才能はもちろんのことだけど、それに加えて幼い頃から猛勉強してきました。

超イケメンで音楽の才能がある千秋さまも、実は勉強の虫だったわけです。さらに、千秋さまには秘密があります。

それは飛行機恐怖症。
そのため海外に留学することができません。だったら船と鉄道で留学すれば? というツッコミはさておき、大事なことは音楽の才能に恵まれた者でも、弱点があるということです。

無名と飛行機恐怖症。この2つの弱点を克服するための強力なヘルパーが、世界的な指揮者フランツ・シュトレーゼマンとのだめです。

では野田恵こと「のだめ」はどうでしょう? 彼女はいつも友人のおべんとうを盗み食いしている、ピアノ科のおちこぼれだとみなされています。

愛嬌はありますが才色兼備とはいえず、部屋はゴミだらけでお風呂にはあまり入らず髪が臭う不潔系の天然娘といったかんじです。

千秋さまが完璧にみえる一方で、のだめはダメダメにみえるようになっています。

ところが、のだめは一度聴いた曲はすぐに暗譜して弾けてしまうという才能を持っています。


千秋さまは完璧(あこがれ)だけどひとつだけ弱点がある。

のだめはダメダメ(共感)だけどひとつだけ強点(?)がある。


ほら、主要キャラクターのふたりはそれぞれに視聴者が求める要素、つまり「あこがれ」「共感」する面をもっているのがわるでしょう。


千秋さまへの……あこがれ8 共感2

のだめへの ……共感8 あこがれ2


千秋さまとのだめがお互いに足りない部分を補なっていく。その過程が物語となっています。

あこがれだけの完璧なキャラクターには共感しずらい。

共感だけのダメダメキャラクターにはあこがれることはできない。

だからちょっとずつアンバランスにして、ふたつのキャラクターでお互いを支え合ってバランスがとれるようにします。

バランスがとれる状態とは「調和」ともいいます。

調和をもたらすキャラクターを置くという方法もありますが、主要なキャラクターの関係性によって調和をもたらすよう物語っていく方法は青春モノや恋愛モノとは相性がいいのです。

ドラマ「のだめカンタービレ」は音大生が主人公です。それぞれの「音色」を持ったキャラクターたちがオーケストラによって交わり、物語に「調和」をもたらす音楽を奏でる。

う~む、なかなかうまいことできていますな☆

| | Comments (2) | TrackBack (1)

« December 2006 | Main | February 2007 »