映画ヒット作に共通のキーワード
先日、米ペンシルベニア州のキリスト教系一派「アーミッシュ」の学校で襲撃事件があった。
アーミッシュ(Amish)とはアメリカ合衆国のペンシルバニア州やオハイオ州に居住するキリスト教の一派であり、近代以前の生活様式を営む人々のことをいう。
電気や電話を使用せずに、動力としては風車や水車や馬車を使う。ボタン類のない質素な服装でいることが多いようだ。また、写真を撮ったり撮られたりすることを避けることが多いともいう。
映画に登場するアーミッシュとして有名なのは、ハリソン・フォードが出演している映画『刑事ジョン.ブック/目撃者』である。
事件を目撃した子供がアーミッシュであったため、刑事役のハリソンフォードは村に身を寄せるというストーリーで、事件とそれ追う刑事という「暴力」と、質素な共同生活をするアーミッシュの村という「非暴力」の対比を際立たせた秀作となっている。
アメリカ合衆国と、そこで暮らすアーミッシュの人々というのは、わかりやすい対比の構図を作ることができる。
ではどのような対比か。
それは「暴力と非暴力」「都市と村」といったものである。
これらキーワードを用いた作品に、シャマラン監督の『ヴィレッジ』がある。
『ヴィレッジ』の村がアーミッシュだとはされていない。だが、村の生活様式はアーミッシュを彷彿とさせる。
アーミッシュとは違うであろうところのひとつは、外部との交流である。
アーミッシュの成人は車を運転しないが、旅行等では車や飛行機も利用するというから、共同体の外との交流は普通にあるようだ。
一方、映画『ヴィレッジ』の村は、共同体の外とは一切関係を持たない。外から村へ人がやってくることもないし、村から外へ人が出て行くこともない。
また『ヴィレッジ』の村では貨幣を使わないことからも、森に囲まれた村人たちは外部との交流を絶っていることがわかる。
アーミッシュにしても、映画『ヴィレッジ』の村にしても、世俗とはかけ離れたかのような共同体に象徴される「対比の構図」は映画づくりにはよく用いられる。
じつは対比の構図は多くのヒット作に用いられているのだ。
例えば以下のようなものだ。
●大企業の御曹司と普通の娘(身分違いという対比)
【韓流ドラマにありがち】
●大富豪と娼婦の恋(身分違いという対比)
【「プリティ・ウーマン」】
●一流企業勤務の美しいお嬢様とアキバ系ヲタクの
(系の違いという対比【映画「電車男」作品レビュー】
●過去からやってきた貴族と現代NYキャリアウーマンの恋
(時代・身分の違いという対比)【「ニューヨークの恋人」】
●会えばけんかの、身長が高めの女の子と身長が低めの男の子の恋
(身長差という対比)【映画「ラブ☆コン」作品レビュー】
もっと身近なものでは、いわゆるバディ(相棒)モノと呼ばれる作品がある。西部劇や刑事ドラマにおける相棒といったものだ。
ほら「海猿」シリーズでも、2人1組として活動する潜水士が、お互いのことをバディと言っていたのを覚えている方は多いだろう。
こういった作品では、主人公ふたりはとうてい相容れないかのような正反対のキャラクター設定となっていることが多い。
これをお笑い芸人で考えてみよう。
日本のお笑い芸人は、たいていコンビで活躍する。コンビの片方はボケ。もう片方はツッコミだ。もし両方ボケ、または両方ツッコミであったならどうだろう。なにかとやりにくいにちがいない。
さらに、芸人同士でキャラクターがかぶらないようにすることも大事だ。
「歌って踊れるデブ」というおいしいポジションを得た芸人(タレント)はそれで仕事が入ってくるようになるが「歌って踊れてモノマネができる芸人」がいつ現れるともわからないので心配する。
なぜ心配するのか?
それは、際立ったポジションを確立することで、他と対比して自分を売り込むチャンスが奪われるかもしれないと考えるからだ。
つまり「対比」される一方というポジションを確立したい、確立したら奪われたくないと思うからである。
AときたらB。BときたらA。AかBのどちらかに真っ先に自分の名(コンビ名)があがればしめたもの。
お笑い芸人にみるのと同じように映画でも「対比」というのはたいへんよく用いられている。
わかりやすい対比を設定して、キャラクターに肉付けすれば、あとは勝手にストーリーが進んでいく、という言い方もあながちうそではない。
そのくらい「対比」設定というのは有効だということだ。
映画を観るときに頭の片隅にでも「対比」というキーワードを入れておこう。意外な作品も対比をうまく使っていることに気付くことだろう。
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