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会社とスタッフが共に歩む~「フラガール」~

映画「フラガール」作品レビュー


石炭を掘っていた会社が温泉集客施設を作る。なんとも大胆なシフトだ。しかしやらないわけにはいかない。会社の存続と労働者の生活がかかっているのだから。


映画「フラガール」には描かれていないが、フラダンスの伴奏を担当するバンドマンも元炭鉱で働いていた人たちだったという。


炭鉱夫で楽器が演奏できた人がどのくらの割合でいたのかわからないが、いたとしても楽器演奏は趣味のレベルだったのではないか。


毎日シャベルやツルハシを持って穴を掘っていた人が、弦楽器の弦を指でおさえなければならない。演奏のまえに楽譜の読み方から学ばなかればならなかったかもしれない。


しかも当時(昭和40年代)はフラがどんな踊りなのかを知る人は田舎町では皆無に等しかったようだ。


半裸で腰を振ってヘラヘラ笑うおかしな踊りとしか思われていなかったフラの伴奏をする決心をすることが、炭鉱で働いてきた者にとってどれほど大変だったことだろう。


男は汗水たらして穴を掘り、女は男を助けて家を守る。という生活を長く続けてきた男達にとって、女たちの踊りを楽器の演奏でサポートするいわば脇役(実際は音楽と踊りは対等であるはずだ)かのような伴奏をしなけらばならないというのを屈辱と感じた人もいたかもしれない。


楽器を演奏するよりも炭鉱で穴を掘っていたほうが何倍も楽だと心底思ったかもしれない。


それでも楽器を練習した。


自分にはとうていできないと思っていたことでも、必要に迫られればできるのだ。


とはいってもどうしても楽器の演奏が向かない者もいる。そういう人は植物担当として南国の木々を世話した(映画「フラガール」には炭鉱夫からハワイアンセンターの植物担当になった男が登場する)。


植物担当のほうが楽器を演奏するよりも楽かというそうでもない。


東北の田舎町の寒さに、オープン前で給湯設備がうまく機能しないときなど、炭鉱町をリアカーを引いて周り、ストーブを借りてきて、南国産の木々の周りに置いて暖めたという。


このように、フラダンスの伴奏となる演奏も、南国風情を醸し出す南国木々の世話も、元炭鉱夫がしたのである。


炭鉱から温泉レジャー施設運営へ。


とうてい無理だと思うことでも会社はシフトした。炭鉱労働者をただ「きる」のではなく、元炭鉱労働者をハワイアンセンターの従業員として採用するよう努めたのである。そのために一から楽器の練習をさせ、炭鉱町の娘たちにフラを教えたのだ。


常磐ハワイアンセンターが今日まで営業しているのは(現在は「スパリゾートハワイアンズ」と名称変更している)、外からフラダンサーを連れてくることなく、外からバンドを連れてくることなく、自社の従業員を育てあげ、一緒に成長してきた歴史があるからだ。


あなたの(あなたが勤めている)会社は、自社の従業員を大事にしているだろうか。


あなたでなくてはならないと思わせるものが会社にあるだろうか。


明日から会社がこれまでとは別の新形態のビジネスに転換するとき、全くの素人となるあなたを引続き使ってくれるだろうか。


★ 顧客のほうを向くには、まず会社で働く人々の心を掴まなくてはならない。

★ 会社とそこで働く者は、共に歩むこと(供ではない)。


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