東宝の「ラフ」もジャニーズも使ってるアノ手法
映画「ラフ(ROUGH)」は東宝シンデレラガールの長澤まさみ主演の青春アイドル映画である。
「タッチ」「ラフ」とあだち充原作漫画の実写化作品でヒロインを演じた長澤まさみ。
というよりも、長澤まさみをより一層いかに魅力的に撮るかを中心に考えて作っているように感じるのが「タッチ」「ラフ」といった東宝作品群なのである。
長澤まさみの女優としての輝きはホンモノで、たとえ脚本や演出がグダグダであっても、主演女優の魅力でそんなことはたいしたことではないと思わせてしまうほどの魅力が彼女にはある。
そもども映画「ラフ」は、映画「タッチ」に比べればたいそう脚本や演出が良くなった。
それでも、長澤まさみという女優の魅力が突出している、長澤まさみによる長澤まさみのための長澤まさみを観にいく作品には違いない。
ならば長澤まさみだけを撮りつづけていればいいかというと、そうでもない。
今は命綱ともいえる長澤まさみの魅力を最大限にスクリーンいっぱいに表現しようとしつつも、受け継ぐもの、つまり次のスターを育てていかなければならない。
ジャニーズでいえば、有名人気アイドルグループの後ろで踊るジャニーズジュニアである。
先輩たちのステージのバックダンサーとして登場させ、メインのアイドルグループを目当てでやってきたファンたちの目にそれとなく触れさせることで、次のアイドルグループ誕生への布石をうっているのだ。
これと似たことを「ラフ」でもやっている。
それは第6回東宝シンデレラの黒瀬真奈美の登場である。彼女は「ラフ」で主人公達が寄宿する上鷺寮の寮母の娘・東海林緑という役で出演している。
絵が好きで寮の庭でいつもラフデッサンをしていていて、これが「ラフ」というタイトルの意味を観客に伝える役目を果たしている。
たいてい帽子を被って寮の庭の一角で静かにラフデッサンをしている東海林緑は、ふとしたときに主人公二ノ宮亜美の表情の変化をズバっといい当てる。
二ノ宮亜美が自分の気持ちを自分ではっきりと認識するきっかけになるこの短いけれどポイントを抑えたこのシーンに黒瀬真奈美を配置しているところが、新たなヒロイン誕生への布石なのである。
特に帽子を被らせているのがいい。
彼女が寮の庭にいつもいるので帽子を被ることに違和感を感じさせずに、観客にこの娘をもっとよく顔を見たい!と思わせる「じらし効果」があるからだ。
観客は長澤まさみを見にきたのであるが、いつのまにか庭の女の子もちょっと気になってくる。
そして作品のエンドロールが流れた後のオマケシーンでは、東海林緑が高校に入学して、寮母である母親に自分の晴れの制服姿を披露する。
もちろんこのときは帽子を被っておらず、いつも庭に座ってしずかにしていた東海林緑が寮の庭にいる母親にむかって笑顔で走ってくるのだ。
こういったシーンを最後に入れていることこそ、東宝がシンデレラガールを育てることにたいへん熱心であることがうかがいしれる。
長澤まさみという女優が注目され、すばらしいと絶賛されればされるほど、人気が出れば出るほど不安になるのものだ。
もし長澤まさみがいなくなったら?
芸能界を引退してしまったら?
どんなに順風満帆でも、次の手はしっかりうっておく。
ジャニーズがよく使うこの手法をぜひ活用しよう。
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