「サイレントヒル」の評判がいいワケ
映画「サイレントヒル」のクチコミでの評判が上々だ。
ウェブログの映画レビューをはじめとするネットのクチコミをみてまわると、おおむね評判がいい。
「サイレントヒル」はホラーであり、かなりグロテスクな描写もあって惨たらしいと思えるようなシーンもある。
それにもかかわらず、映画館はカップルや若い女性の姿が多いという声もきこえてくる。
私が足を運んだ映画館でも、ホラー作品の上映館では普段あまり見かけない客層(ファミリーや若い女性客)が多かった。
ゲーム「サイレントヒル」は4作あり、全世界でシリーズ累計530万本以上を売り上げた。そのためゲームファンの関心が高かったことからウェブログをはじめとするネット上での作品への感想・レビューが多くUPされたようだ。
では、なぜ「サイレントヒル」は評判が上々なのか。
それは、ゲームをプレイしたことがある人にとって最も大事なところがしっかり押さえられているからだ。
最も大事なこと、それは「雰囲気」だ。
ビデオゲーム(テレビゲーム)は映像も音もある。それだけに作品の世界観を小説よりも限定されている。
小説は基本的に文章だけなので、読者の脳内世界に浮かび上がった作品世界という雰囲気は読み手の数だけ多種多様だ。そのため、小説が映画化された場合、作品世界感について自分がイメージしたものと多少ちがっていたとしても、ある程度は許容範囲となる。
ところが原作が映像を含む作品の場合、今回の例ではビデオ(テレビ)ゲームの映画化ということになると、小説の映画化とおなじ許容範囲とはならない。
ゲームをプレイしたことがある人が、自分が感じ取った作品世界の雰囲気のイメージと合うと判断できる許容範囲は小説のそれよりもはるかに狭くなる。
なぜなら、ビデオ(テレビ)ゲームは文字のほかに映像も音もあるため、作品世界のイメージがほぼ固められているからだ。
映画「サイレントヒル」は評判がいい理由のひとつは、ゲーム版の雰囲気をとてもよく表現しているところにある。
監督はゲーム版がたいへん好きで、映画化にかなり力を入れたようだ。するとゲーム好きな人が映画化にあたってなにを一番重視するかを監督はよく理解していたことになる。
そういった熱心なファンの期待にじゅうぶんに応えることは作品の宣伝にきわめておおきな効果がある。映画の感想やレビューを書いてUPするのは、もともそ映画好きか、その作品を好きな人がおおいからだ。
こんにち、映画の宣伝を真にうけて観にいく作品を決める人はずいぶん少なくなった。
映画作品のテレビCMで、作品を観た観客の感想という形をとって宣伝しているのをよくみかけるのは、人が信頼しやすいのは宣伝マンの言葉ではなく、自分に近い一般の観客だということをある程度知っているからだ。
とはいえ、映画のテレビCMなので作品に肯定的な感想を述べる観客のカットしか使っていないのはあたりまえだが……。
いまどき、制作会社や宣伝会社からお金を貰って宣伝している有名人や評論家やライターの言葉を鵜呑みにする人をみつけるのは日本で太陽族をみつけるよりも難しい。
観客のリアルな感想はどうなの? というのを皆は知りたいのだ。
映画「サイレントヒル」については原作がビデオ(テレビ)ゲームのため、積極的に作品について感想を述べる(書く)、マーケティングのイノベータ理論でいうところの「アーリーアダプタ 」が重要なのだ。
アーリーアダプタは、ある商品・サービスが良いと感じたら、いち早くそれを手に入れ、感想をまわりの人々に話すからだ。
作品の性質を見極めて、よい宣伝になりうる可能性が最も高いポイントをしっかりおさえること――ゲームにおける「作品世界の雰囲気」――が大切なのだ。
というわけで映画「サイレントヒル」は、ゲームをプレイしたことがない人にとっては、主人公の身のまわりでいったいなにが起こっているのかわからないまま物語が進んでいくので戸惑うことになる。
しかし、こうした戸惑いは不安感を煽られて主人公と同じような気分を味わえるので、それを味わえるならばゲームをプレイしたことがない人でもじゅうぶんに作品を堪能できるだろう。
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