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06/06/2006

ジャケット(THE JACKET)

監督:ジョン・メイバリー
アメリカ・ドイツ/2005年/103分

過去の無い男が未来を生きる生まれ変わりの物語。例えるなら、デザイン画も素材もけっしてわるくないが裁縫職人がまだ修行中、といった印象。


ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
1992年。湾岸戦争で頭部を負傷したジャックは、記憶障害のために殺人事件に巻き込まれたことで精神病院に送られる。
そこで受けた実験的治療法の最中に、15年後の2007年ににタイムスリップした彼は自分の死を知り、その原因を突き止めようとする。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ジャック
 退役軍人。

▽ジャッキー
 1992年にジャックが会った少女。
 2007年には、ウェイトレスをする若い女性。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
過去の無い男が未来を生きる生まれ変わりの物語。例えるなら、デザイン画も素材もけっしてわるくないが裁縫職人がまだ修行中、といった印象。

■プレミスは魅力的だが……。

死んだことがある人の言葉を、目の前にいる死んだ本人から聞いたことはあるだろうか?

早い話が死人と会話したことがあるかということだ。

主人公が捜し求めるものが自分の死因だというのはありえなさそうであるが、それに近いことはある。

自分はいつ運命の人とめぐり会うのか。いつ結婚するのかというのは占い師に訊きたいことの上位にあがることからもわかるように、自分について知りたいことをあげていけば、いつしかたどり着くこと。それは自分がいつどのように死ぬのかということだ。

そんな誰しも少しは興味ある事柄をプレミスにしたまでは良かった。

Premise:(ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア)


■SFだからといってなんでもアリにはならない

SFだからタイムマシンが存在したっていい。しかし、人間関係を何でもアリにしてはマズい。SFのウソはあくまで時代設定や状況設定やモノ設定に限られるべきだ。

人間の「気持」ちにウソがあるとSFのウソさえ台無しになってしまう。


■ウソが通用しない、人間の気持ちの部分に「?」がある

幼い子供の頃に数回会っただけのオジさん(お兄さん)のことを覚えているだけでなく、その死因を調べているというのは、いくらなんでもありえなく思えてしまう。

この会った回数についてもタイムトラベルのパラドックスによって変動するので曖昧になるのだが、なんにせよ、幼い頃に数回会っただけの相手が15年後に現れてわずかの間一緒にいただけで、もう愛し合ってしまうのである。
実際の日常では惹かれあう2人に時間は関係ないともいえるかもしれない。だが映画ではそうはいかない。ふたりが惹かれあうきっかけと過程をちゃんと描かなければ観客は納得(感情移入)できないからだ。

ジャックの死因というミステリーよりも、ふたりがなぜ惹かれあったのかのほうがミステリーに思えてしまうのだ。


■ 過去の無い男が未来を生きる生まれ変わりの物語

ジャックについては湾岸戦争に兵士として派遣されていたことぐらいしか情報がない。

ジャックがどのあたりの階級の兵士だったのかはよくわからない。
例えばベトナム戦争におけるアメリカ軍では若い10代後半の兵卒が多かったという。

国にいても良い待遇の仕事にありつけない若者の多くが兵士として最前線に送られるというのは、はおそらく湾岸戦争でもあったことだろう。

士官でもなさそうなジャックも、そうした多勢の例にもれず、どこにでもいる若者だったのだ。いうなれば、特に他人に語れるほどの人生を歩んできたわけでもない、どこにでもいるごくありがちなアメリカの若者のひとりであったということだ。

過去が語られない、過去のない男が未来において、たとえ未来では自分は既に死んでいようとも、新たな一歩を踏み出そうとする、ひとりの名もなき(厳密には名前はあるが)男の生まれ変わりの話なのである。

それは、大多数の人々のことであり、わたしやあなたのことかもしれない。


■ ひとこと

いろいろ見たり読んだり聞いたりする、若くて好奇心旺盛な者は次から次に「こんなんあったらおもろくない?」とアイデアがいくらでも浮かんでくる。

そこから先は、これはおもしろいかも! というアイデアを形にするセンス技術があるかないか、が分かれ道となる。

「ジャケット」については、魅力的なアイデアが浮かんだのはいいがそれを形にする技術がもうあと2,3歩といったところだ。

センスはけっしてわるくない。俳優たちだって今一番COOLな面々だ。

タイムトラベル作品が好きな方。
アイデアはあるがどのように形にすればいいのかと考えている方。
脚本を勉強している方。
こういった人はそれぞれに楽しめるだろう。

例えるなら、デザイン画も素材もけっしてわるくないが裁縫職人がまだ修行中、といった印象の作品である。

俳優ファン ◎
ファミリー  ×
デート    △
フラっと   ◎
脚本勉強 ◎
笑い     -
リアル追求 -
謎解き   △
人間ドラマ ×
社会     △
センス   ○

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Comments

こんにちは。お久し振りです。
弊ブログへのトラックバック、ありがとうございました。
こちらからもコメントとトラックバックのお返しを失礼致します。

映画内容を深く掘り下げた貴ブログの文章を拝見させて頂きました。
この作品は、1992年と2007年という時空を超え行き来する設定は面白くなりそうな物語ながら、時折挿入される思わせ振りな過剰画像処理や全体の詰めの甘い仕上がりが残念に感じられますが、エンディングは印象深く、またエイドリアン・ブロディさんとキーラ・ナイトレイさんの演技が良かったです。
そして、細部を確認したいという事もあり、DVD化されてからもう一度じっくりと観直したい作品ではあります。

また遊びに来させて頂きます。
改めまして、今度共、よろしくお願い致します。
ではまた。

Posted by: たろ | 06/06/2006 at 17:07

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