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ステイ(STAY)

監督:マーク・フォースター
アメリカ/2005年/101分

ラストにグッとくる、感動を呼び起こす装置としてイリュージョンを使った作品。ズボン丈が短かったり、双子や三つ子がよく出現するのにも意味がある。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
精神科医サムの患者ヘンリーは21歳の誕生日の真夜中に自殺すると予告して姿を消した。
サムは残された3日間、ヘンリーを探す。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△サム・フォスター
 男性(精神科医)

△ライラ 
 女性(画家)

△ヘンリー・レサム
 男性。学生。美術専攻。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
ラストにグッとくる、感動を呼び起こす装置としてイリュージョンを使った作品。ズボン丈が短かったり、双子や三つ子がよく出現するのにも意味がある。

■ なかなか直球(正直)

この種の作品はなにを語ってもネタバレになってしまうので、深いことは書けない。

ではどこから「ステイ」の魅力を語ろうか。ということで宣伝文句からいこうと思う。

「ステイ」は「感動のイリュージョン・スリラー」と宣伝している。これはなかなか直球というか正直だ。

イリュージョンとは幻影・幻想。その名のとおり、作品の約8~9割ほどは幻影・幻想としか思えないような映像が淡々と続く。

そこでこう考えてみよう。
アナタはあるショーを見に行く。そのショーがマジックショーだとわかって観るのと、マジックショーだとは知らずに観るのとではショーの楽しみ方や満足度が違ってくるにちがいない。

これを「ステイ」と「ジャケット」とを比較することでご説明しよう。


■ 注目すべきは「予告」

「ジェケット」を読み解く有力な説に「死人の見た夢の話だった」というのがある。
これについては以下の関連記事を参照願いたい。

目からウロコの「ジャケット」解説

マニア向け? 謎解きのスッキリ感を得にくい「ジャケット」

とはいえ、これはひとつの説であって、その「夢度合い」については観る者によって変化する。これは作り手が、観客がいかようにも解釈ができるようあえて「あいまい」な表現をしている箇所が多々あるためで、鑑賞後の推測・会話の楽しみを提供しているといえよう。

そして、今回注目していただきたいのは予告である。

「ジェケット」の宣伝では「未来と過去を行き来しながら繰り広げる予測不可能な物語」とある。これを読んですぐに思い浮かぶのはタイムリップだ。

しかしながら、人間の意識もまた未来と過去を行き来する。すると、過去という記憶と未来への願望を織り交ぜてあたかもタイムスリップ作品かのように観客に思わせて如何様にも解釈ができるように作ったのが「ジャケット」といえるのである。

一方「ステイ」の宣伝には先ほども触れたように「感動のイリュージョン・スリラー」とある。イリュージョンと言い切っている。

「ジャケット」がミスリードを仕掛けるかのようにタイムスリップを匂わせたのとは正反対に、はじめから「イリュージョン」だと宣言・予告しているのだ。

「ジャケット」の予告 → タイムスリップを匂わせる

「ステイ」の予告   → イリュージョンだとはっきりいう

なんのショーだかはっきりとはわからずに観るか、マジックショーだとわかって観るか。
もちろんそれぞれの楽しみ方はある。

(そういえば物語中においてもヘンリーは自分の自殺を予告する)


■ あなたはどっち派?

「ジャケット」と「ステイ」。両作品を理解するポイントは「イリュージョンの使い方」にある。

「ジャケット」はイリュージョン自体を謎に設定するという使い方をした。

「ステイ」は感動を呼び起こす装置としてイリュージョンを使った。

・イリュージョンだとバレないようにする隠れマジシャン。

・イリュージョンで観客を楽しませるマジシャン。

さて、あなたはどちらのマジシャンのショーを観たいだろうか?


■ ひとこと

観客に謎解きを委ねるという性格の作品に「隠された記憶」がある。これは、はっきりと観客の解釈に委ねるとしている作品である。

観る人の数だけストーリーが存在するという意味ではどんな映画作品であれ、解釈は観客に委ねられているのであるが「ジャケット」と「ステイ」の比較に限って言えば、解釈を委ねる前の根本となる前提に違いがある。

例えるならば、マジシャンであること、イリュージョンであることをショーの前に知らせるのかどうか、ということだ。

マジックショーならばその内容を楽しめばいい。

ショー自体が謎ならば、ショーの正体をめぐってあれこれ想像を膨らませて楽しめばいい。

「ジェケット」と「ステイ」。どちらが好きかといえば、個人的には感動を呼び起こす装置としてイリュージョンを使った「ステイ」だ。

それは「the EYE」(←パート1)が感動を描くためにホラーの手法を使ったのと同じように、「ステイ」が手段としてイリュージョンを用いることで、描きたい・提供したい・体験してもらいたいものは「感動」であるというところが私好みだからである。

さて「ステイ」を観ている最中に思ったことがある。

サムのズボンの裾が短いのは、それってオシャレ? 

双子や三つ子がよく出てくるのはなぜ?

サムとヘンリーが瞬間移動した?

これらにもちゃんと意味があるのでお見逃しのないように。

「隠された記憶」作品レビュー

「the EYE」作品レビュー


俳優ファン ◎
ファミリー -
デート    ○
フラっと   ◎
脚本勉強  △
笑い     -
リアル追求 -
謎解き    ◎
人間ドラマ  ◎
社会     ○
アクション  -


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Comments

こんにちは。TBありがとうございます。
宣伝文句を知らなかったので、道中惑わせられっぱなしでした。

Posted by: もじゃ | 06/24/2006 01:53

TBありがとうございました。
こちらからもTBさせていただきます。
非常に興味深いレビューで楽しませていただきました。
1度しか観ないと分からない映画というより、観れば観るほど、解釈が変わってきて楽しめる映画だと思いました。

Posted by: ともみ | 06/27/2006 11:24

>もじゃさん
コメントありがとうございます。
まさにイリュージョンですよね。私もあまり予備知識なしで観たので惑わされましたヨ。

>ともみさん
コメント・TBありがとうございます。
そういえば恵比寿ガーデンシネマではチケット半券で割引料金で観れると書いてあったような気がします。いい意味で昆布系の作品ですね☆

Posted by: わかスト@管理人たか | 06/28/2006 16:02

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