嫌われ松子の一生(Memories of Matsuko)
監督:中島哲也
日本/2006年/130分
原作:山田宗樹「嫌われ松子の一生」
新アトラクション「松子の世界」があったらいいなと思わせる、表現の可能性を広げる効果的なCGを使った、下妻のアナザーストーリーともいえる渾身の1作。監督のあふれる才能がほとばしり、未だ時代が追いついてこれないかもしれず、下妻の「青春」が大好きな人には少々期待ハズレになる可能性もアリ。配役の巧さはパワーアップ! 明日香と松子の対比が重要なポイント。中島監督は日本映画を代表する3監督のうちのひとりになるのは間違いない。
ストーリー(概要)
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20代前半で教師をクビになって家出した松子はソープ嬢になる。やがてヒモを殺害して服役。その松子が50代に河原で亡くなる。
川尻笙は父の妹・松子の住んでいたアパートを片付けることになる。笙は松子の人生を知る。
主な登場人物の紹介
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▽川尻松子
昭和22年・福岡県大野島生まれ。教師。風俗嬢。服役囚。理容師。
△川尻笙
松子の甥。歌手になるため上京。
△川尻紀夫
松子の兄。川尻笙の父親。
▽川尻久美
松子の妹。病弱でほとんど寝たきり。
△八女川徹也
作家の卵。太宰治に憧れている。松子の初めての同棲相手。
△岡野健夫
作家志望のサラリーマン。松子とは不倫関係に。
△小野寺
松子と同棲するヒモ男。
△島津賢治(荒川良々)
理容師。松子と同棲する。
△龍洋一
ヤクザ。松子の元教え子。
▽沢村めぐみ
松子の親友。AVソフト制作会社社長。
△大倉修二(ゴリ/ガレッジセール)
松子が住んでいるアパートの隣人。
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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新アトラクション「松子の世界」があったらいいなと思わせる、表現の可能性を広げる効果的なCGを使った、下妻のアナザーストーリーともいえる渾身の1作。監督のあふれる才能がほとばしり、未だ時代が追いついてこれないかもしれず、下妻の「青春」が大好きな人には少々期待ハズレになる可能性もアリ。配役の巧さはパワーアップ! 明日香と松子の対比が重要なポイント。中島監督は日本映画を代表する3監督のうちのひとりになるのは間違いない。
(以下「嫌われ松子の一生オフィシャルサイト」参照による内容を含む)
■ 魅せ方がスゴい!
波乱万丈な人生をおくった川尻松子の一生。とは言っても、松子のそれは「堕ちていく人生」の典型のようなものであり、古今東西幾度となく語られてきたきたストーリーのひとつに過ぎない。
これを普通のドラマにしたのでは、幅広い観客を得ることはできない。なぜなら、波乱万丈だけど不幸(に思える)女が死んだところからはじまる物語なんて、お金と時間を割いて観にいく映画の候補にはあげたくないと思えるからだ。
しかしこの作品の醍醐味は「川尻松子の人生をいかに魅せてもらえるか」にある。
■ ミュージッククリップ風シーンの効用
松子の人生における不幸エピソードをひとつずつドラマにしていたら、それこそいくら時間があっても収まりきらない。そこで「詞付きの音楽」を使ってエピソードを紹介している。
音楽なら1曲約3分~5分で終わる。その間に歌詞と映像と音楽でエピソードを紹介するというこの手法は、シークエンスの応用編といえる。
シークエンスとはシーンを繋げて作る、ストーリーの小さな単位といったものである。
例えば試験勉強をがんばる様子(電車の中で単語を覚えたり、夜食を食べながら勉強したり、昼食を食べながら参考書に目を通したり)を音楽と共にいくつかの短いシーンを繋げて約3分~7分ほどで表現するというものだ。
中島監督はこれを進化させた「詩付きの音楽」で作品に軽快なテンポをもたらした。
シークエンスを使わずに松子の人生をドラマ化しても、観ているほうはなかなかツラいものである。エピソードが多いために間延びするからだ。そこを「詩付きの音楽」を使って明るい色調で内容を伝えつつ、軽快なテンポで観客を飽きさせないようにしたのだ。
松子の刑務所服役時代を表現したAIの「What Is A Life」。ソープ嬢時代はBONNIE PINKの「LOVE IS BUBBLE」。不倫相手の岡野健夫との時代は毎週水曜日だけ会えることの喜びを歌った「Happy Wednesday」。ほかにも「詩付き音楽」がいくつか効果的に使われいてる。
■ CG合成のシーン
CGの使い方がイイ。
映画作品のCGについて語られるとき、これまでは「CGの出来栄えがどうか」が焦点だった。しかし、最近のコンピュータの発達によってCGの出来栄えはずいぶんと良くなった。
時代の流れでいうと、現在は出来栄えに関する「CGの技術」の時代から、いかに表現するかの「CGの使い方」の時代に移行したといっていいだろう。
ではCGをどう使うか。
日本映画においては大きく二つに分かれたように見てとれる。
ひとつは「ALWAYS 三丁目の夕日」型。過去の時代を再現するノスタルジック劇場の舞台装置としての使い方だ。
もうひとつは「嫌われ松子の一生」型。キャラクターの主観を表現する使い方だ。
例えば「昭和30年代という劇場」作りには昭和30年代の町並みという手本・元ネタがある。資料をもとにいかに当時の町並みに似せることができるかというCGの使い方は、CGの可能性を「昭和30年代の町並みの再現」に限定する。
しかし「松子の世界」は他のだれでもない松子だけの世界だ。その世界は松子だけが感じて見えている世界である。この松子の世界をいかに伝えるか。そこで活躍するのがCGなのである。
たとえ同じものを見ても、見る人によって違うように見えることもあるし、同じ人が同じものを見てもその状況・境遇・体調によって全く違うものに見えることもある。付き合い始めたばかりの恋人と見た富士山と、昨日恋人と別れたばかりでひとりで見る富士山とでは見え方・印象は違うだだろう。
こういった主観の世界は広い。主観の世界に定型はなく、限定もされない。モデルも元ネタもないからだ。CGの可能性を広げ、新たな表現を可能にする魅力的な使い方はどちらだろうか? 一目瞭然である。
■ 華やかにありたい
あの人の生き方は華やかだ。
そんなふうに言われたいものである。たとえ他人には華やかに見えなくても、自分にとって華やかであればそれでもいい。
他人からみれば不幸の連続であったとみられる松子の一生。しかし松子にしてみれば華やかなときはたくさんあった。
それを映像で表現するのは文字通り「花」である。ガーベラ。バラ。キキョウ、パンジーなど、色とりどりの花々が松子の主観世界には咲きほこっている。
花なんて食べれないし、すぐ枯れるからどこがいいんだか。という男性は多いが、意中の相手を口説くために「花」が重要なアイテムであることはよく知っている。
女性はいくつになっても華やかなお姫様みたいな人生をおくりたいと願うもの。そんな願望を体現したキャラクターをどこかで観たことがなかっただろうか?
■ お姫様のもうひとつの道
ヒラヒラのお洋服を着てお姫様みたいになりたい!
そんなキャラクターは中島監督の過去の作品「下妻物語」の主人公・竜ヶ崎桃子だ。
「下妻物語」の桃子は他者と出会って友情を育むが、新作「嫌われ松子の一生」の松子は他者と出会ってボロボロになっていく。
お姫様みたいな華やかで幸せな人生をおくりたいと思っていたとしても、開けた扉がひとつ違えば人生は大きく違ってしまう。そんな「もし」を華やかなエンターテイメントに仕上げた「嫌われ松子の一生」は、裏ディズニーリゾートみたいなものがあればアトラクション「松子の世界」ができることは間違いない。
つまり、ディズニーリゾートのアトラクションとして大盛況するであると予想できるほどに「世界」を構築しているということだ。
■ イメージと合う配役
タレントに対する観客のイメージを熟知した配役がこの作品の魅力だ。
たいてい、キャスティングには監督の思い入れや芸能界・タレント所属事務所その他の事情が大きく作用しそうなものだが、中島監督はCMを手がけてきた人であるからだろ、視聴者や観客があるタレントについてどのようなイメージを持っているかをよく知っている。
それが最もよく表れているのが、わずか数秒ほどの出演時間しかない岡野健夫(劇団ひとり)の妻役に女性お笑いコンビ・オアシズの大久保さんをキャスティングしたことだ。平凡な主婦の雰囲気を持ちつつ、夫の不倫の匂いには敏感そうなイメージを持つ大久保さんをキャスティングするあたりに配役のウマさが凝縮されている。
ほかにも教頭役にお笑いコンビ・カンニングの竹山隆範さん。松子に好意を持つ同僚男性教師・佐伯俊二役に谷原章介さん。女囚役に土屋アンナさん。片平なぎさ役に片平なぎささん(笑)。どなたもまさにハマリ役だ。片平さんは本人だし(笑)
また歌手のBONNIE PINKさんは中洲「白夜」のソープ嬢・綾乃役でも出演している。
そして川尻笙の彼女役・明日香役に柴咲コウさん。明日香は毎日がつまらないのは恋人の川尻笙のせいではなく、だれかになにもしてあげれない自分のせいだと気づいたと笙の留守電に延々と語り、わたし決めた、青年海外協力隊員として海外に行きます、と宣言する
。
こういった役は柴咲コウさんがもし芸能界に入っていなかったら池袋の片隅で実際に言っていそうでおもわず笑ってしまうほどハマっている。
■ 希望を見い出すものとは
松子は荒川の近くのアパートで、亡くなった妹・久美を思い浮かべて彼女を散髪するイメージをする。イメージどうりにできた時、わたしはまだやれる、と希望が湧き上がる。
希望を見出すのに必要だったのは、訓練による技術(散髪)と、愛し愛される人だ。
愛してくれる人や愛する人(松子にとっての妹・久美)に自分が何をしてあげられるか。松子は妹・久美の髪を切ってあげることができたのだ(想像上ではあるけれど)。
愛する人になにかをしてあげられること。――そこに希望が生まれる。
ここで対比されるのが、柴咲コウ演じる明日香が、だれかになにかをしてあげることで自分の存在意義を見い出そうと、青年海外協力隊員になろうと決意したシーンだ。
対比される重要なポイントは、明日香には海外青年協力隊員になった姿のカットが無いのだが、松子には希望を見出して親友・沢村めぐみの名刺を探しにアパートを飛び出して階段を滑り落ちながらも河原に行くシーンがある点だ。
片方は決意したところまでしかないが、もう片方は転びながらも実際に歩き出したのだ。
明日香が街の雑踏の一角で決意して、留守電に一方的にメッセージをふきこむのは「ありがち」だ。自分の言いたいことをひとしきり独白した明日香はスッキリしたかのように電話を切る。それを留守電モードで他の作業をしながら聞いていた笙はあわてて明日香に折り返し電話するが、わずか5秒前に切られたにもかかわらず電話は話し中でつながらない。たぶん、明日香はほかの知り合いや友人にも同じような内容の電話をかけている最中なのだろうと思わせる。
明日香が残したのは笙へのメッセージではなく、自分の気持ちをスッキリさせるため,、語って気持ちよくなるための独白だ。ダイアローグではなくモノローグである。だからこそ、部屋の中で作業をしながら明日香の電話をなんとなく聞いている笙が「青年海外協力隊」というフレーズにおもわずズッコケそうになったところは作品中で唯一のベタな笑いを誘えているのである。
松子がアパートの階段を滑り落ちて地面に倒れながらも、再び立ち上がって歩き出す「行動」が描かれているところは、こうした明日香の決意だけのシーンと対比されることで、希望に向かって進む主人公の姿がより強調されているのだ。
思い出してほしい。「下妻物語」の桃子だって、親友イチゴのために原チャリを飛ばして助けに行った(行動した)ではないか。
それにしても柴咲コウさんはこうしたベタな役どころがモロにハマる役者だ。それがタレントとしての売りだろうが、こうした対比で使われると、ベタはベタでもいろいろあるなかで、この場合は「空虚なベタさかげん」が強調されてちょっとかわいそうにさえ見える。所属事務所的にはOKなのか?(笑)
■ ひとこと
「下妻物語」とセットで観れば、同じ思いや願いをもっていても出会った人や状況によって人生はどちらへも転がっていく様子が描かれているように思えるだろう。それは「嫌われ松子の一生」の冒頭のナレーションによっても暗示されているので聞き逃さないようにしよう。
だれしも自分の世界を持つことはいいことだが、その世界の一部でも他者と共有できればもっといい。「下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も、いうならば「他者との出会い」の物語である。そういった意味で今作は「下妻物語」のアナザーストーリーといったところだ。
中島監督は「輪廻」の清水崇監督と共に日本を代表する映画監督になるだろう。そこに第3の男として劇団ひとりも加わることを予言しておこう。
今作は「下妻物語」の青春の部分をたいそう気に入った人には期待はずれになるかもしれない。だが「下妻物語」のアナザーストーリーとして観れば、奥深い「ザ・ワールド」を存分に堪能できるにちがいない。
日本の映画づくりにおけるさまざまなしがらみの外に監督の意識があるのだろうと思わせる、ノビノビと真剣に持てるすべてを注ぎ込んだ気迫が伝わる傑作である。
俳優ファン ◎
ファミリー ×
デート △
フラっと ◎
脚本勉強 ○
笑い ○
リアル追求 -
謎解き -
人間ドラマ ○
社会 ○
映像 ◎
先進性 ◎
![]() | 嫌われ松子の一生 (上) 山田 宗樹 幻冬舎 2004-08 by G-Tools |
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Comments
TB感謝・多謝
この作品、あとを引く映画ですね。
しかし、
いつもながら、素晴らしいレビューですね。
熟読させていただきました。
TB送りましたが、ココログさんへのTB
上手く行かないことが多くて・・・ご容赦を。
Posted by: スナッチャー | 06/01/2006 at 17:43
TBありがとうございました!
すごく気合の入ったレビューですね~。
楽しく読ませていただきました。
ほんと、配役の妙でしたね。
でも、エンドロールで初めて気づいた人、多数でした・・・。
Posted by: pinyon | 06/01/2006 at 18:19
こんばんは。
TBありがとうございました。
相変わらずの中島ワールドでしたね。
下妻は大好きだったのですが、松子も楽しめました。
中島監督すごいなぁと感心しっぱなしでした。
Posted by: こーいち | 06/02/2006 at 02:45
>スナッチャーさん
コメントさんきゅうです。
そうなんです、観た後に余韻がいつまでも残るような、ふとしたときに思い出すシーンがあったりするような奥深い作品ですね☆
>Pinyonさん
コメントサンクスです。
エンドロールにおもわず身を乗り出して見入っちゃいますよね。しかし多彩なタレントさん出演で豪華な作品ですよね。
>こーいちさん
コメントサンキュです。
中島監督はホントすごいですね!
スゴイしかいえないぐらいスゴいです。
お気に入りの監督さんです☆
Posted by: わかスト@管理人たか | 06/04/2006 at 00:52
A Distinct Lack of Imagination
There was a guy riding through the desert on his camel. He had been traveling so long that he felt the need to have sex. Obviously there were no women in the desert so the man turned to his camel.
He tried to position himself to have sex with his camel but the camel ran away. The man ran to catch up to the camel and got back on and started to ride again. Soon he was feeling the urge to have sex again so once again he turned to his camel. The camel refused by running away. So he caught up to it again and go on it again.
Finally after riding the camel through the whole desert the man came to a road. There was a broken down car with three big chested beautiful blondes sitting in it.
He went up to them and asked the women if they needed any help.
The hottest girl said , "If you fix our car we will do anything you want."
The man luckily knew a thing or two about cars and fixed it in a flash.
When he finished are three girls asked, "How could we ever repay you Mr."
After thinking for a short while he replied, "Could you hold my camel?"
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Posted by: cyberKhaiz | 06/14/2006 at 11:34
Two friends, a blonde and a redhead, are walking down the street and pass a flower shop where the redhead saw her boyfriend buying flowers.
Redhead sighed and said, "Oh, crap, my boyfriend is buying me flowers again."
The blonde looked quizzically at her and said, "You don't like getting flowers from your boyfriend?"
The redhead said, "I love getting flowers, but he always has expectations after giving me flowers, and I just don't feel like spending the next three days on my back with my legs in the air."
The blonde says, "Don't you have a vase?"
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Posted by: amnesac28 | 06/20/2006 at 07:05