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05/31/2006

嫌われ松子の一生(Memories of Matsuko)

監督:中島哲也
日本/2006年/130分
原作:山田宗樹「嫌われ松子の一生」

新アトラクション「松子の世界」があったらいいなと思わせる、表現の可能性を広げる効果的なCGを使った、下妻のアナザーストーリーともいえる渾身の1作。監督のあふれる才能がほとばしり、未だ時代が追いついてこれないかもしれず、下妻の「青春」が大好きな人には少々期待ハズレになる可能性もアリ。配役の巧さはパワーアップ! 明日香と松子の対比が重要なポイント。中島監督は日本映画を代表する3監督のうちのひとりになるのは間違いない。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
20代前半で教師をクビになって家出した松子はソープ嬢になる。やがてヒモを殺害して服役。その松子が50代に河原で亡くなる。
川尻笙は父の妹・松子の住んでいたアパートを片付けることになる。笙は松子の人生を知る。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
▽川尻松子
 昭和22年・福岡県大野島生まれ。教師。風俗嬢。服役囚。理容師。

△川尻笙
 松子の甥。歌手になるため上京。

△川尻紀夫
 松子の兄。川尻笙の父親。

▽川尻久美
 松子の妹。病弱でほとんど寝たきり。

△八女川徹也
 作家の卵。太宰治に憧れている。松子の初めての同棲相手。

△岡野健夫
 作家志望のサラリーマン。松子とは不倫関係に。

△小野寺
 松子と同棲するヒモ男。

△島津賢治(荒川良々)
 理容師。松子と同棲する。

△龍洋一
 ヤクザ。松子の元教え子。

▽沢村めぐみ
 松子の親友。AVソフト制作会社社長。

△大倉修二(ゴリ/ガレッジセール)
 松子が住んでいるアパートの隣人。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
新アトラクション「松子の世界」があったらいいなと思わせる、表現の可能性を広げる効果的なCGを使った、下妻のアナザーストーリーともいえる渾身の1作。監督のあふれる才能がほとばしり、未だ時代が追いついてこれないかもしれず、下妻の「青春」が大好きな人には少々期待ハズレになる可能性もアリ。配役の巧さはパワーアップ! 明日香と松子の対比が重要なポイント。中島監督は日本映画を代表する3監督のうちのひとりになるのは間違いない。

(以下「嫌われ松子の一生オフィシャルサイト」参照による内容を含む)

■ 魅せ方がスゴい!

波乱万丈な人生をおくった川尻松子の一生。とは言っても、松子のそれは「堕ちていく人生」の典型のようなものであり、古今東西幾度となく語られてきたきたストーリーのひとつに過ぎない。

これを普通のドラマにしたのでは、幅広い観客を得ることはできない。なぜなら、波乱万丈だけど不幸(に思える)女が死んだところからはじまる物語なんて、お金と時間を割いて観にいく映画の候補にはあげたくないと思えるからだ。

しかしこの作品の醍醐味は「川尻松子の人生をいかに魅せてもらえるか」にある。


■ ミュージッククリップ風シーンの効用

松子の人生における不幸エピソードをひとつずつドラマにしていたら、それこそいくら時間があっても収まりきらない。そこで「詞付きの音楽」を使ってエピソードを紹介している。

音楽なら1曲約3分~5分で終わる。その間に歌詞と映像と音楽でエピソードを紹介するというこの手法は、シークエンスの応用編といえる。

シークエンスとはシーンを繋げて作る、ストーリーの小さな単位といったものである。
例えば試験勉強をがんばる様子(電車の中で単語を覚えたり、夜食を食べながら勉強したり、昼食を食べながら参考書に目を通したり)を音楽と共にいくつかの短いシーンを繋げて約3分~7分ほどで表現するというものだ。

中島監督はこれを進化させた「詩付きの音楽」で作品に軽快なテンポをもたらした。

シークエンスを使わずに松子の人生をドラマ化しても、観ているほうはなかなかツラいものである。エピソードが多いために間延びするからだ。そこを「詩付きの音楽」を使って明るい色調で内容を伝えつつ、軽快なテンポで観客を飽きさせないようにしたのだ。

松子の刑務所服役時代を表現したAIの「What Is A Life」。ソープ嬢時代はBONNIE PINKの「LOVE IS BUBBLE」。不倫相手の岡野健夫との時代は毎週水曜日だけ会えることの喜びを歌った「Happy Wednesday」。ほかにも「詩付き音楽」がいくつか効果的に使われいてる。


■ CG合成のシーン

CGの使い方がイイ。

映画作品のCGについて語られるとき、これまでは「CGの出来栄えがどうか」が焦点だった。しかし、最近のコンピュータの発達によってCGの出来栄えはずいぶんと良くなった。

時代の流れでいうと、現在は出来栄えに関する「CGの技術」の時代から、いかに表現するかの「CGの使い方」の時代に移行したといっていいだろう。

ではCGをどう使うか。
日本映画においては大きく二つに分かれたように見てとれる。

ひとつは「ALWAYS 三丁目の夕日」型。過去の時代を再現するノスタルジック劇場の舞台装置としての使い方だ。

もうひとつは「嫌われ松子の一生」型。キャラクターの主観を表現する使い方だ。

例えば「昭和30年代という劇場」作りには昭和30年代の町並みという手本・元ネタがある。資料をもとにいかに当時の町並みに似せることができるかというCGの使い方は、CGの可能性を「昭和30年代の町並みの再現」に限定する。

しかし「松子の世界」は他のだれでもない松子だけの世界だ。その世界は松子だけが感じて見えている世界である。この松子の世界をいかに伝えるか。そこで活躍するのがCGなのである。

たとえ同じものを見ても、見る人によって違うように見えることもあるし、同じ人が同じものを見てもその状況・境遇・体調によって全く違うものに見えることもある。付き合い始めたばかりの恋人と見た富士山と、昨日恋人と別れたばかりでひとりで見る富士山とでは見え方・印象は違うだだろう。

こういった主観の世界は広い。主観の世界に定型はなく、限定もされない。モデルも元ネタもないからだ。CGの可能性を広げ、新たな表現を可能にする魅力的な使い方はどちらだろうか? 一目瞭然である。


■ 華やかにありたい

あの人の生き方は華やかだ。

そんなふうに言われたいものである。たとえ他人には華やかに見えなくても、自分にとって華やかであればそれでもいい。

他人からみれば不幸の連続であったとみられる松子の一生。しかし松子にしてみれば華やかなときはたくさんあった。

それを映像で表現するのは文字通り「花」である。ガーベラ。バラ。キキョウ、パンジーなど、色とりどりの花々が松子の主観世界には咲きほこっている。

花なんて食べれないし、すぐ枯れるからどこがいいんだか。という男性は多いが、意中の相手を口説くために「花」が重要なアイテムであることはよく知っている。

女性はいくつになっても華やかなお姫様みたいな人生をおくりたいと願うもの。そんな願望を体現したキャラクターをどこかで観たことがなかっただろうか?


■ お姫様のもうひとつの道

ヒラヒラのお洋服を着てお姫様みたいになりたい! 

そんなキャラクターは中島監督の過去の作品「下妻物語」の主人公・竜ヶ崎桃子だ。

「下妻物語」作品レビュー

「下妻物語」の桃子は他者と出会って友情を育むが、新作「嫌われ松子の一生」の松子は他者と出会ってボロボロになっていく。

お姫様みたいな華やかで幸せな人生をおくりたいと思っていたとしても、開けた扉がひとつ違えば人生は大きく違ってしまう。そんな「もし」を華やかなエンターテイメントに仕上げた「嫌われ松子の一生」は、裏ディズニーリゾートみたいなものがあればアトラクション「松子の世界」ができることは間違いない。

つまり、ディズニーリゾートのアトラクションとして大盛況するであると予想できるほどに「世界」を構築しているということだ。


■ イメージと合う配役

タレントに対する観客のイメージを熟知した配役がこの作品の魅力だ。

たいてい、キャスティングには監督の思い入れや芸能界・タレント所属事務所その他の事情が大きく作用しそうなものだが、中島監督はCMを手がけてきた人であるからだろ、視聴者や観客があるタレントについてどのようなイメージを持っているかをよく知っている。

それが最もよく表れているのが、わずか数秒ほどの出演時間しかない岡野健夫(劇団ひとり)の妻役に女性お笑いコンビ・オアシズの大久保さんをキャスティングしたことだ。平凡な主婦の雰囲気を持ちつつ、夫の不倫の匂いには敏感そうなイメージを持つ大久保さんをキャスティングするあたりに配役のウマさが凝縮されている。

ほかにも教頭役にお笑いコンビ・カンニングの竹山隆範さん。松子に好意を持つ同僚男性教師・佐伯俊二役に谷原章介さん。女囚役に土屋アンナさん。片平なぎさ役に片平なぎささん(笑)。どなたもまさにハマリ役だ。片平さんは本人だし(笑)

また歌手のBONNIE PINKさんは中洲「白夜」のソープ嬢・綾乃役でも出演している。

そして川尻笙の彼女役・明日香役に柴咲コウさん。明日香は毎日がつまらないのは恋人の川尻笙のせいではなく、だれかになにもしてあげれない自分のせいだと気づいたと笙の留守電に延々と語り、わたし決めた、青年海外協力隊員として海外に行きます、と宣言する

こういった役は柴咲コウさんがもし芸能界に入っていなかったら池袋の片隅で実際に言っていそうでおもわず笑ってしまうほどハマっている。


■ 希望を見い出すものとは

松子は荒川の近くのアパートで、亡くなった妹・久美を思い浮かべて彼女を散髪するイメージをする。イメージどうりにできた時、わたしはまだやれる、と希望が湧き上がる。

希望を見出すのに必要だったのは、訓練による技術(散髪)と、愛し愛される人だ。

愛してくれる人や愛する人(松子にとっての妹・久美)に自分が何をしてあげられるか。松子は妹・久美の髪を切ってあげることができたのだ(想像上ではあるけれど)。

愛する人になにかをしてあげられること。――そこに希望が生まれる。

ここで対比されるのが、柴咲コウ演じる明日香が、だれかになにかをしてあげることで自分の存在意義を見い出そうと、青年海外協力隊員になろうと決意したシーンだ。

対比される重要なポイントは、明日香には海外青年協力隊員になった姿のカットが無いのだが、松子には希望を見出して親友・沢村めぐみの名刺を探しにアパートを飛び出して階段を滑り落ちながらも河原に行くシーンがある点だ。

片方は決意したところまでしかないが、もう片方は転びながらも実際に歩き出したのだ。

明日香が街の雑踏の一角で決意して、留守電に一方的にメッセージをふきこむのは「ありがち」だ。自分の言いたいことをひとしきり独白した明日香はスッキリしたかのように電話を切る。それを留守電モードで他の作業をしながら聞いていた笙はあわてて明日香に折り返し電話するが、わずか5秒前に切られたにもかかわらず電話は話し中でつながらない。たぶん、明日香はほかの知り合いや友人にも同じような内容の電話をかけている最中なのだろうと思わせる。

明日香が残したのは笙へのメッセージではなく、自分の気持ちをスッキリさせるため,、語って気持ちよくなるための独白だ。ダイアローグではなくモノローグである。だからこそ、部屋の中で作業をしながら明日香の電話をなんとなく聞いている笙が「青年海外協力隊」というフレーズにおもわずズッコケそうになったところは作品中で唯一のベタな笑いを誘えているのである。

松子がアパートの階段を滑り落ちて地面に倒れながらも、再び立ち上がって歩き出す「行動」が描かれているところは、こうした明日香の決意だけのシーンと対比されることで、希望に向かって進む主人公の姿がより強調されているのだ。

思い出してほしい。「下妻物語」の桃子だって、親友イチゴのために原チャリを飛ばして助けに行った(行動した)ではないか。

それにしても柴咲コウさんはこうしたベタな役どころがモロにハマる役者だ。それがタレントとしての売りだろうが、こうした対比で使われると、ベタはベタでもいろいろあるなかで、この場合は「空虚なベタさかげん」が強調されてちょっとかわいそうにさえ見える。所属事務所的にはOKなのか?(笑)


■ ひとこと

「下妻物語」とセットで観れば、同じ思いや願いをもっていても出会った人や状況によって人生はどちらへも転がっていく様子が描かれているように思えるだろう。それは「嫌われ松子の一生」の冒頭のナレーションによっても暗示されているので聞き逃さないようにしよう。

だれしも自分の世界を持つことはいいことだが、その世界の一部でも他者と共有できればもっといい。「下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も、いうならば「他者との出会い」の物語である。そういった意味で今作は「下妻物語」のアナザーストーリーといったところだ。

中島監督は「輪廻」の清水崇監督と共に日本を代表する映画監督になるだろう。そこに第3の男として劇団ひとりも加わることを予言しておこう。

今作は「下妻物語」の青春の部分をたいそう気に入った人には期待はずれになるかもしれない。だが「下妻物語」のアナザーストーリーとして観れば、奥深い「ザ・ワールド」を存分に堪能できるにちがいない。

日本の映画づくりにおけるさまざまなしがらみの外に監督の意識があるのだろうと思わせる、ノビノビと真剣に持てるすべてを注ぎ込んだ気迫が伝わる傑作である。


俳優ファン ◎
ファミリー  ×
デート    △
フラっと   ◎
脚本勉強  ○
笑い     ○
リアル追求 -
謎解き   -
人間ドラマ ○
社会     ○
映像     ◎
先進性   ◎

4344405617嫌われ松子の一生 (上)
山田 宗樹
幻冬舎 2004-08

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05/28/2006

デカ皿にのったチョコバナナワッフル


ちょっと前に行ったのだけど、横浜・みなとみらい地区の赤レンガ倉庫2号館1階にあるカフェ・レストラン「Cafe Madu」 で甘いものを食べようと注文したのがチョコバナナワッフル。


これがデカい!


これ、パスタ用の容器ですか? ってくらいの大きさの皿にワッフルが3つ並べてあり、その上にアイスとクリーム。そのまわりにバナナが配置されたそれを、ナイフとフォーク(スプーンも)を使い、パッと見はまるでお肉をたべているかのよう。


ちょっと甘いものを、のつもりがガッツリ食べてお腹いっぱいモードになったけど、おいしかったのでヨカッタ×2☆


ちなみに店内の円柱型の水槽にはクラゲが泳いでいました。

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05/24/2006

キャッチ ア ウェーブ(CATCH A WAVE)」

監督:高橋伸之
日本/2006年/116分
原作・脚本:豊田和真「キャッチ ア ウェーブ」(角川学芸出版)

粗削りは計算か? 少年・少女の心を持って素直な気持ちで「現役」の空想に共振できればその波にノレる青春物語。「旬」の加藤ローサが絵に描いたヒロインを好演!

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
高校1年の夏。友人ふたりと共に、ひと夏を海で過ごそうと湘南・七里ケ浜にやってきた大洋たち。そこでサーフィンに魅了された彼らは、サーフィンショップで住み込みのアルバイトをすることになる。
大洋は地元の女の子・ジュリアと出会い、恋とサーフィンに明け暮れる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△佐々木大洋
男子高校生

▽ジュリア
女子高校生

△デューク川原
サーフショップ店長

△小林誠人、田口浩輔
男子高校生。大洋の友人。

△ニック
バイリンガルのサーファー。横須賀から湘南にやってきては好
き勝手やっている。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
粗削りは計算か? 少年・少女の心を持って素直な気持ちで「現役」の空想に共振できればその波にノレる青春物語。「旬」の加藤ローサが絵に描いたヒロインを好演!

■ 青春を謳歌したと豪語する自称遊び人にはウケない

原作・脚本は豊田和真さん。なんと原作は、豊田さんが高校1年の夏に書き上げた同名小説なのだ。

高校1年の夏、あなたはどのように過ごしただろうか?

海、花火、クラブ遊び、バイク旅行……。はたまた坊主頭で球技に没頭。

そんな高校1年のひと夏の過ごし方がある一方で、ひたすら小説を書きつづけた高校1年の夏があった!

実際はクラブ通いや夏山登山の合間に小説を書いたのかもしれないが、高校1年の夏に小説を書くというのは生半可なことではない。

高校1年のときの感性は、高校1年のときにしかない。その感性で書き上げた小説こそ、まさに豊田さんの青春なのだ。そこには「こんなのあったらいいなぁ」と空想した願望がいっぱい詰まっている。

空想にふけるよりもまず行動! といって高校1年の夏を遊びまくった人にはこの作品はいまいちピンとこないだろう。


■ 空想=妄想が共有されるには

自分だけが楽しめる空想。

これがあるとないでは人生は大きく違う。他人にはわからないけれど、自分だけにはわかる、楽しくてしょうがないことがひとつでもあれば、その人生はそんなにわるくはない。

だが、自分だけの空想だとおもっていたものが、他人と分かち合えたらどうだろう。

人生はもっと楽しくなるにちがいない。

「キャッチ ア ウェーブ」の原動力は空想=妄想だが、いくつかのキーワードを絡めることで、他人にも共有できる妄想=空想になり得ている。

キーワードとは、海、サーフィン、夏、恋、友情、出会い、別れ、といったものだ。

高校1年の夏を、恋に遊びにスポーツに勉強にと満喫したと胸を張れる者がはたしてどれだけいるだろう。

日本中の大半の高校生は、地方の田舎にあって、都会にある遊びスポットもなく、サーフィンがすぐできるような海もなく、農道で胸がキュンとなるような異性にめぐり合うこともなく、勉強ができるわけでもなく、スポーツに没頭するわけでもなく、楽器演奏や歌をうたうわけでもなくダラダラしていたら宿題だけがたまっていつのまにか夏休みが終わっていた、なぁんてことはありがちだ。

そんなワカモノ(かつて含む)の空想=妄想を掬い上げた作品に必要なのは、共感できる「現役」である。


■ 現役(ホンモノ)だけが揺り動かせる

青春物語といわれるものの多くが、いわゆるOBによって書かれたものというのはよくあることだ。

本作のように高校生が主人公のストーリーを、高校生ではない者、つまり現役ではなくOBが自分の高校時代を回想しつつ、空想(妄想)を取り込んで売れるよう演出して書くというのが青春モノのよくあるカタチである。

メチャメチャ恋愛モノの青春小説の作者が、実はおじさんやおばさんだった、というのはごく普通のことだ。

ところが「キャッチ ア ウェーブ」は現役の高校生が書いた小説だ。もとから映像化(映画)を意識して、音楽を聴きながらサーフショップの店長に竹中直人をイメージしながら書いたというこの作品は、豊田さんの高校1年の夏に誕生した物語なのだ(作品の内容のことでなく、高校1年の夏に作品を書いたという意味)

現役が書いた作品だからこそ、多くの人の気持ちを揺さぶり、日本サーフィン連盟(JPSA)やDef Techの協力を得ることができたのである。


■ 粗削りは計算された味?

作品のストーリーに意外性はない。キャラクターもありがちに配置されただけで奥深さはない。

たとえば、バイリンガルのサーファー3人組のリーダー・ニックは、横須賀から湘南の海にやってきて空き放題やっている。いわゆる悪役である。もし、彼の「事情」というものを少しでも描けば、ただの悪役では終わらずにキャラクターに深みを与えることができたかもしれない。

またサーフショップ店長のデューク川原が、失った家族を取り戻すというサブプロットがあったらもっと良かったのにと思う。

これらが原作者の歳のせいだという人もいるだろうが、基本的に年齢は関係ない。原作者が高校1年のときに書いた作品ということで、あえて粗削りと思われるままにした「計算」=「戦略」かもしれないのだ。

というのは、原作は未読なのでなんともいえないが、たとえ原作がほんとうに粗削りだとしても、映像化(映画化)の際に経験豊かなスタッフが手を入れることでもう少しスマートにできたはずだ。

だがそれをあえてやらずに、原作者に脚本も書いてもらったのは、原作者の豊田さんが、若さゆえととられるであろう「粗削り」をセールスポイントにしようという狙いがあるのかもしれない。はたしてどこまでこれを意識・計算して書いたかはどうかはわからないが……。

だが、「粗削りさ」とうのは青春というテーマにピッタリなのだから、それはそれで作品のテーマにガッチリ合っている。やはり計算か……?


■ 加藤ローサの上質プロモーションビデオ

青春映画のヒロイン役ほど重要なものはない。

この点、ヒロイン役のジュリア役は加藤ローサさんはまさにドンピシャリである。

芸能人に限らずだが、人には「旬」というものがある。その人が一番輝くタイミングといのが人生において幾度かあるとすると「キャッチ ア ウェーブ」における加藤ローサさんはまさに「旬」である。


■ ひとこと

サーフィンシーンはかなり気合が入ってがんばっているのが伝わってくる。浜でのシーンは千葉、下田、新島でロケをしたという。実際の台風のときにも撮影したそうだ。

役者では坂口憲二がサーフィンができるということで、彼のサーフシーンだけ顔がよく見えるほど役者に近寄って撮影している。

ほかにDef TechのMicroもサーフィンをやるそうで、映画ではサーファー役で出演している。ジュリアの母親役のとよた真帆さんは、原作者の叔母だそうである。そしてニック役は三船敏郎氏の御孫さんの三船力也さんだ。

横須賀基地内でも撮影しているようで、普段はなかなか見れない米軍基地内の様子もすこし伺い知れる。基地内にはボーリング場もあったり、映画も上映したりしている。

ちなみに関東地方や米軍基地がある地域ではAFN(在日米軍向けラジオ放送)を聞けば、基地内での映画上映内容・時間の案内を流していたり、中古品の売買情報を流していたりするので、ちょっとだけ米軍基地内の様子を感じることができる(関東地方ではAMラジオ810)。

主人公3人がサーフィンをやりはじめる基本となる動機が「モテたい」というのがリアルでよかった。

ちょっと気恥ずかしくなってしまうような内容の作品だが、少年・少女の心を少しでも持っていて素直な気持ちで観るなら、なかなかイイ作品である。


俳優ファン ◎ 加藤ローサプロモーション映像
ファミリー  △
デート    ◎ アナタと彼氏・彼女が少年・少女の心を持っているなら
フラっと   ○ 
脚本勉強  △ これを元に脚本をリライトして詰めていけば……。
笑い     △ 竹中直人がんばるもちょっと浮いてる?
リアル追求 △ 俳優本人で波乗りしてるのは坂口憲二だけっぽい
謎解き    -
人間ドラマ  △ 
社会     -
映像     ○ 波があまりない日本の海で、がんばってます。

4046519630キャッチ・ア・ウェーブ
豊田 和真
角川学芸出版 2005-04

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工作船展示館にいってみた


ドラマ「海猿」のロケ地の一部は横浜・みなとみらい地区辺りであることがテレビの画面から察しがついていました。


その後たまたま横浜に行くことがあり、赤レンガパークから見る海の方向に、なんと横浜海上防災基地施設があり、海上保安庁の船がみえたのです。


大輔くん(海猿シリーズの主人公の名前)はここを拠点に勤務していたのだね。


それからしばらくして、知人から海上保安資料館横浜館があることを聞きました。

なんでも平成13年12月22日に発生した九州南西海域不審船が展示されているというのでさっそく行ってみました。


不審船はおもったよりも大きかった(室内にあるのでそうかんじるだけかもしれないけど)。


船体には弾痕があり、工作船の後部の観音開きのドアの中に入っていた上陸用小型舟艇も展示されています。

展示室には、船を上部からも見れるように通路が作られていて、下から上からとあらゆる角度から見学することができます。


引揚げられた、船の遺品の数々のなかには漁火に偽装するためだと思われる明かりの装置がありました。


こういった、漁船に偽装する船が実際に日本の近海を航行していた(いる)ことを知ることも必要ですが、それを少しでも実感するひとつの方法として、実際に不審船を見学するというのは意味のあることだと思います。


赤レンガパークの端から海上保安資料館横浜館に入ることができます。大きく「工作船展示館」と書いてありますのですぐにわかるでしょう。


入場無料ですので、横浜みなとみらい地区に行った時はぜひ寄ってみるとよいでしょう。

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05/19/2006

『ダ・ヴィンチ・コード』ガイド~重要な「M」が7倍わかる~

ある国の市では上映を禁止する決議を採択したり、バチカンは映画を見ないよう声明したりする、いま話題の「ダ・ヴィンチ・コード」がいよいよ20日から公開です。

原作を読んでいないあなたも、読んだあなたも、映画を見る前にぜひ知っておいたほうがいい予備知識があります。

「ダ・ヴィンチ・コード」を読み解く最大・重要なポイントは「M」の理解です。

重要なポイント。それは「M」――マグダラのマリアなのです。

作品をより深く楽しむためには「マグダラのマリア」がなぜ重要なのかをよく認識することが必要です。

驚くべきことに「M」が示すものは「ナルニア国物語」の中にも存在します!

「ナルニア国物語」の背景にもキリスト教文化が深くかかわっっていることは有名ですが、実はそこにもしっかりと「M」が描かれているのです。

両作品を楽しむ重要なポイントは、ふたつの話題作に共通する「M」なんですね。

そこで、暗に象徴される「M」にまるわる両作品の共通点を、聖書のエピソードを交えて解説しちゃいます。こういったものは他ではまずお目にかかれません。

『ダ・ヴィンチコード』においてなぜ「マグダラのマリア」が重要なのか。

その答えはこのレポート↓の中にある!

『ダ・ヴィンチ・コード』ガイド~重要な「M」が7倍わかるレポート~


このレポートを読めば「ダ・ヴィンチ・コード」において「マグダラのマリア」がいかに重要かをよりよく理解することができます。

「ナルニア国物語」を未見でもわかるようになっているのでご安心あれ。

『ダ・ヴィンチ・コード』をより良く・深く理解したい方へ。

原作を読んでないけど、話題だから観ておこうかなという人も、このレポートを読んで重要なポイントをしっかり抑えてから行きましょう。

一緒に観にいく人にも教えてあげられる「M」にまつわる予備知識が得られるのはこのレポートだけ!

『ダ・ヴィンチコード』レポート「マグダラのマリア」版はここでしか手に入りません。

もしあなたが話題作を存分に楽しみたいなら、いますぐダウンロードすることをお勧めします。

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旭山動物園


テレビのドラマ仕立ての番組で、行動展示で有名な旭山動物園の物語が放映していました。

旭山動物園の噂(月間入場者数で上野動物園を抜いた。展示方法に特徴がある等)はよく小耳に挟んでいたのでその番組を観てみました。

それで再確認した大切なこと。

それは、来場者に動物のことを知ってもらおうと思ったら、その動物の一番身近にて、一番よく知っている者の意見・提案に耳を傾けるということ。

テレビ番組の内容によると、旭山動物園の園長はどんな展示方法がよいかを飼育係のみんなに訊いてみたのです。

動物と一番身近に接している者だからこそ、動物のためにも、来園者のためにもなる動物園のアイデアを出すことができる。

この最も大事なポイントをわかっていて、さらにそれを活かすことができたから旭山動物園の盛況に繋がったのだと思います。

飼育員の意見に耳を傾ける。

これに気づくことが第一ステップです。このステップに気付かない、またはこのステップに足を乗せようとしない場合が多々あるなかで、この第一ステップにしっかりと立つことはすべてのはじまりです。

しかし第一ステップに立つフリをするのはありがちです。つまり、現場の人間の声に耳を傾けます(傾けています)というアピールを形としてだけするということです。

ところが重要な第二ステップに足を乗せる段階になると、ごく一部になってしまいます。第二ステップとは現場の人間(飼育員)のアイデア・意見を「活かす」ことです。

旭山動物園の園長は飼育員の意見・アイデアをもって実際に市長にプレゼンテーションします。これが成功して、動物園に新しい施設を作るための予算が出ることになるのです。(第二ステップ達成)

その後も飼育員の意見・アイデアを豊富にとりいれた新施設を次々に作っていくと、来園者に大変好評となったのです。(第三ステップ〈結果〉)

旭山動物園における飼育員とは、例えるならば「翻訳者」です。

動物の一番近いところにいて一番よくわかっているAさん。Aさんは人間(人間も動物の一種だけど)なので、来園者の立場にもなれます。

動物と人間の両方にとってベストな環境を整えるためには、両方のことを熟知する必要があります。
動物と人間の間に立って「翻訳」することで、動物のためにも、人間のためにもなる施設を作ることに成功した旭山動物園は、あらゆる業種で活かせる良き手本なのです。

重要なポイントは、第一ステップだけでなく第二ステップに立つこと。

一番やってはいけないのは、第一ステップに立つフリだけをすること。

ぜひ旭山動物園に行ってみたいです!


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05/17/2006

ねるとん告白タイム効果でわかる、海猿人気の秘密

フジテレビと東宝を中心とした伊藤英明、加藤愛主演の「海猿」シリーズは三部作なら成る。

第1作は映画「海猿」。第2作は連続テレビドラマ。そして第3作が映画「LIMIT OF LOVE 海猿」である(映画でいえば第2作)。

さて「海猿シリーズ」にする利点はなにか?

最大の利点といえるものは、ズバリ「観客の感情移入」である。

映画「海猿」では主人公仙崎が潜水士になるべく訓練する日々が描かれる。そこではセールスの仕事をしていた仙崎がなぜ海上保安官になったのか。そしてなぜ潜水士になろうと思ったのかというバックグラウンドが、女性・環菜との出会いを通して描かれる。

主人公のバックグランドを知り、潜水士になる動機を知った観客の多くは、目標をもってがんばる仙崎を応援したくなる。

そこに恋(環菜)も絡んでくるようになると、まさに「恋に仕事に」一生懸命な仙崎をますます応援したくなるというわけである。

さらに環菜にしても、潜水士になるべくばんばっている仙崎と出会うことで、自分がほんとうにやりたいことにチャレンジする勇気を持ち、一歩踏み出すきっけかを得ることができたのである。
具体的にはファッション雑誌の編集員から、アパレルメーカーでファッションデザイナーをめざすといった転職だ。

潜水士をめざす仙崎。
ファッションデザイナーをめざす環菜。

映画「海猿」での主目的は、メインキャラクターのふたりのどちらにおいても観客の感情移入を成功させることにあったとみてとれる。

そして第2作の連続テレビドラマは、横浜管区に潜水士として配属された仙崎の出発と、アパレルメーカーで新米アシスタントとしてファッションデザイナーを目指して出発した環菜の様子が描かれる。

連続ドラマの利点というのは、週1回約3ヶ月にわたってドラマ放送があることだ。定期的にドラマを観ることで、親密感が増すという仕掛けだ。

かつて1987年から1994年まで放送していた、高視聴率を誇る集団お見合いお見合いテレビ番組(フジテレビ系列)「ねるとん紅鯨団」以下ねるとん)に例えるならば、映画「海猿」はいわば自己紹介による第一印象。連続ドラマはフリータイムによるアピールとアプローチ。そして「LIMIT OF LOVE 海猿」告白タイムによる結末である。

自己紹介でおもしろいキャラクター「A」をみつけたアナタは、フリータイムで「A」が意中の人にうまくアプローチできるかどうか気になって観つづける。

さて、あなたはこの後の告白タイムを観ずにテレビのチャンネルを変えるだろうか?

告白タイムで「A」が緊張と不安と期待が入り混じった複雑な表情のなか、上手に喋れずに噛んだりしながら、けっしてスマートとはいえないながらも一生懸命に告白する姿を固唾を飲んで見守ることだろう。

「A」がスマートに告白できなければできない程「A」を応援したくなる。それはきっと「A」の不器用さと弱さを敏感に感じ取ったアナタは彼のなかに自分とおなじ部分を少しでも感じとったからかもしれない。

こういった過程を「感情移入」という。


「LIMIT OF LOVE 海猿」を単体の映画作品として観ると、ストーリー構築や演出に限っていえば、お世辞にも上手とはいえない。

なにかありそうでなにもなかった消化不良気味の、偶然フェリーに乗り合わせていた女性テレビレポーター。

とってつけた感が拭いきれない乗客(海老原真一)とフェリー売店店員(本間恵)。

都合よく船内に取り残されるバディ・吉岡。

プロポーズ中は船内の爆発も傾きもストップする「ご都合時間ワールド」。

さらに、わざわざ偶然にフェリーに乗っていた設定にしたフィアンセ・環菜をそのまま下船させたのはなぜだろうか?

有名作「タイタニック」と同じような展開になって類似性を指摘されるのを避けたかったのか。たとえそうだとしても、せっかく船に乗っていたという設定にしたのだから、危機的状況(ストーリーにおける障害)をふたりで乗り越えるほうがストーリ展開はよっぽど楽になる。

それをあえてやらなかったのはおそらく第1作映画「海猿」と連続ドラマによって、既に仙崎と環菜の間には障害を乗り越えた信頼関係がほぼ築き上がられており、あとは最後の一押しを
するだけの状態にあるのだという自信の表れだと推測できる。

ふたたび「ねるとん」で例えれば、告白タイムでの「LIMIT OFLOVE 海猿」はけっしてスマートではないが、既に充分に感情移入したファンにとっては不器用・不恰好なことなどたいして気にならないばかりが、それがかえって告白(プロポーズ)を劇的に盛り上げてくる要素になっているといえよう。

「ねるとん」は驚くべきことに毎週土曜日23:00~23:30の30分間番組であった。30分番組のエッセンスを抽出して、三部構成にして成功した作品。――それが「海猿シリーズ」だ。

「LIMIT OF LOVE 海猿」の作りが拙いように見えるのも実は計算のうち?

そういえば「ねるとん」も「海猿シリーズ」も、どちらもフジテレビ系列である。

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05/09/2006

LIMIT OF LOVE 海猿

監督:羽住英一郎
日本/2005年/117分
原作:佐藤秀峰「海猿」(小学館)

ファン育成の肥沃な土壌を持った海洋版「走れメロス!」の信頼物語。脇役の活かし方が少し物足りないものの「海猿シリーズ」を通してブランド化に成功した、良質エンタテインメント海洋大作。海猿に協力の稀有なフェリー会社とは?

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
鹿児島・第十管区機動救難隊員の海上保安官(潜水士)である仙崎大輔は、鹿児島沖3キロでの大型フェリー・くろーばー号の座礁事故のため、乗客救助へ向かう。
フェリーに乗っていたフィアンセの伊沢環菜を船から退避させた仙崎が船内を捜索中、男性乗客1名と女性船内売店店員1名を誘導中にバディ.吉岡と合流。その直後、車の爆発による衝撃で4名は2階の一室に閉じ込められる。仙崎たちは船内からの脱出を試みる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△仙崎大輔
海上保安官。潜水士。

▽伊沢環菜
ファッション雑誌編集員。ファッションデザイナー。

△吉岡哲也
海上保安官。潜水士。仙崎のバディ(相棒)。

△海老原真一
中古車販売業者。

▽本間恵
カーフェリー売店店員。妊婦。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
ファン育成の肥沃な土壌を持った海洋版「走れメロス!」の信頼物語。脇役の活かし方が少し物足りないものの「海猿シリーズ」を通してブランド化に成功した、良質エンタテインメント海洋大作。海猿に協力の稀有なフェリー会社とは?

■ 着眼点がいい

「海猿」シリーズはまず、着眼点がいい。
主人公は海上保安官の潜水士である。日本列島はその名のとおり多くの島々から成り、海に囲まれている。
海は日本で生まれ育った人にとって身近なものである。そんな海での安全を守るために日々働いているのが海上保安官だ。

海は海上だけでなく海中もある。海中は一般の人々にとってはあまり馴染みがないために、かえって好奇心が刺激される。

そんな海の世界で働く若者の恋と仕事と友情の青春物語。いままでありそうであまりなかった隙間を見つけただけでもすばらしい。


■ ファン育成の肥沃な土壌がしっかり育成されている

「海猿」シリーズというぐらいなので、ご存知の方も多いだろうが「海猿」は三部作なら成る。第1作は映画「海猿」。第2作は連続テレビドラマ。そして第3作が映画「LIMIT OF LOVE 海猿」。

フジテレビと東宝を中心とした伊藤英明、加藤愛主演の「海猿」は、映画2本によって真中のドラマを挟む、いわばサンドイッチ型だ。

原作は佐藤秀峰氏の「海猿」(小学館)であり、役者とも観客も充分に「海猿ワールド」に親しんでいるおかげで「LIMIT OF LOVE 海猿」では大型フェリー事故を題材とした仙崎と環菜の恋愛にスポットを集中することができた。

つまり、登場人物の紹介と感情移入のための役割を持ったシーンをほとんど作らないままフェリー事故へと進めることができたのだ。それは「海猿」シリーズを既に読んだり観たりしている観客が多いであろうことがあらかじめ推測できていたからこそできた技である。


■ 脇役に深みを!

今作は「海猿」シリーズの完結編ということで主人公2人に焦点を当てているが、もう少し脇役に活躍の場やプロットを用意してもよかったと思う。

具体定期には鹿児島・第十管区機動救難隊隊長(石黒賢)の活躍シーンがあってもよかっただろう。また、地元テレビ局の女性レポーターがなにか重要な役割を担いそうでなんにもなかった! というのは、本作はミステリーではないのだからミスリーディングのための登場人物ともいえず「?」といったところだ。

仙崎たちと共に船に取り残される妊婦の本間恵にしても、お腹の子供の父親像の片鱗さえもみせないため、ストーリー上におけるサバイバルを盛り上げる為の障害(オブスタクル)にするためにとってつけたようなキャラクターに思えてしまう。

限定された空間におけるサバイバルというのは、一種の圧力釜効果を生む。これによって普段は隠れたている内面が露になり、数々の衝突を繰り返していくことでキャラクターの内面の変化が行動となって表れる過程というのがパニックムービーの醍醐味だ。

そのためにはキャラクターの味付けが重要となる。ところが本間恵の内面を推測しようにも、手がかりとなるのは「妊婦」と「恋愛研究会」だけだ。

一方、海老原真一についてはの手がかりは「離婚」「子供に会いたい」「会社設立」と3つまり、本間恵に比べればフェリー事故に遭遇したことでキャラクターがあるひとつの決心をするきっかけにはなっている。――が、この決心についても意外性はなく、海老原真一でなくてはならないと観客を十分に納得させるだけの味付けはなされていない。わかりやすくいえば、あぁありそうだな、といった、とってつけたようなキャラクター設定なのだ。

こうしてみると脇役がその本来の役割をほとんど発揮していないにもかからず、そんなことなど気にならないのは、先にも言及したとおり、本作は第3作でのため主人公2人の恋愛にどのような決着が着くのかに多くの観客の関心が集まっているからに他ならない。
とはいっても、もう少し脇役に活躍と深みがほしかった……。


■ 海洋映画では稀のフェリー会社

「タイタニック」にしても実際の船会社からの協力は得られていない。なぜなら沈むことがわかっている船の映画に協力するのは船会社にとってはよい宣伝にはならないと判断するためだ。

しかし日本には沈没することがわかっている海洋映画に自社の船を撮影で使うことにOKを出して協力したフェリー会社がある。

それは宮崎カーフェリー株式会社だ。

そしてもちろん「海猿」シリーズで協力関係を築いてきた海上保安庁。今作でも多数の巡視船やヘリコプターを撮影に使われている。

海洋映画と船会社についてはこちらの記事に詳細をまとめたのでどうぞ。

海猿に協力の稀有なフェリー会社


■ 信頼の物語

仙崎大輔伊沢環菜の恋愛物語と受け止められがちだが、実はこれは「信頼の物語」である。

仙崎は過去2度にわたってバディ(相棒)を失った(ちなみに実際に海上保安庁の潜水士が勤務中に亡くなったことはないという)。

今度のバディ.吉岡とは横浜時代からの同僚だ。仙崎たち潜水士に活躍をみて、自らも訓練を受けて潜水士になった経緯がある。

3人目となるバディ吉岡が船内にひとり取り残されると仙崎は、乗客たちを避難させるために一旦バディのもとを離れることにするが、信じて待っていろ、必ず戻ってくるとバディと固い握手をする。

また仙崎は地上へ避難させたフィアンセの環菜にも必ず帰ると約束する。

なにがあっても約束を守るために行動する者。それを待つ者。どちらも相手を信じる心がなくてはならない。

信頼のふたつのかたち。すなわちバディを見捨てずに迎えにいき、婚約者のもとへ帰る。このふたつを通して描くのは「信頼の物語」なのである。例えるなら「海洋版『走れメロス』」といったところだ。


■ ひとこと

私が観たのは平日の昼の回にもかかあらず、その映画館は全席指定制になっていた。いつもは人気作でも平日にも指定席というのは、海猿人気を映画館側もしっかりと認識していることの現れだろう。

実際、おそらくその映画館でいちばんおおきなスクリーンの中央の席はほぼ埋まっていた。平日昼間の回としては大盛況である。

脇役の用い方についてあれこれ書いたが、何を観ようかと考えるまでもなく本作を選んでOKだとオススメできるのは間違いない。

脇役については、好きな作品でよく出来ているからこそ細かいところにもあえてちゃんと触れておいたということで、本作をおススメする障害には当然にならない。

幅広い人におススメできる理由のひとつは、エンタテイメントに徹していやらしさなく提供できているところによる。シリーズとしてしっかりした基盤がある海猿だけに、無理に気負う必要がないのが功を奏している。

さらにスクリーンに「海猿」の文字が出ただけで、なんとなくジーンとくるというのは、すでに「海猿ブランド」が確立されているからだ。

ブランド化に成功した日本海洋大作映画。それが『LIMIT OFLOVE 海猿』である。

原作から映画へ。そして連続ドラマから最終章は再び映画という試みは成功したのである。

▼関連記事
「ねるとん告白タイム効果でわかる、海猿人気の秘密」

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05/08/2006

ニュー・ワールド(The NEW WORLD)

監督:テレンス・マリック
アメリカ/2005年/135分

映像が綺麗な環境ビデオみたいな……。意気込まずにゆったりしっとり観ましょう。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
1607年。英国船が北アメリカ・ヴァージニアに上陸する。
英国人ジョン・スミス大尉はネイティブアメリカンの族長の娘・ポカホンタスと恋に落ちる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ジョン・スミス
男性。大尉。

▽ポカホンタス
女性。ネイティブアメリカンの族長の娘。

△ジョン・ロルフ
男性。イギリス紳士。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
映像が綺麗な環境ビデオみたいな……。意気込まずにゆったりしっとり観ましょう。

■ ヒーリングビデオ?

水面に映った森の木々。美しくも物悲しい映像の数々が観客のまぶたを重たくしていき……。

英国の入植者とネイティブアメリカンとの戦闘シーンもあるのだけど、まるで環境ビデオやヒーリングビデオを見たかのようです。


■ 偶然の一致? チラシの構図

「ニュー・ワールド」と「LIMIT OF LOVE 海猿」のチラシの絵がとてもよく似ています。

どちらも向かって左側に男性、右側に女性。両者が向き合い、おでこをつき合わせて、男性が女性の手または腕に触れているという構図です。

構図は似ていますが、内容としてはどちらかというと「ニューワールド」は恋愛モノで「「LIMIT OF LOVE 海猿」は海洋アクションです。

たまたま偶然に似たような構図になったのかな。
だからとーした、と言われるとどうもないのだけど……。


■ ポカホンタス

ポカホンタスの話は、入植者側に都合のいいように作られたものだという説があります。

歴史とは勝者がつくるもの。

三国志のラストで魏が勝つのも、三国を統一したのが魏(→西晋)だから。
ところが蜀が三国を統一したとする書物もあるとか。

勝者が自分の都合のいいように書き記して、敗者の記録を抹消した。そして残ったものが勝者の書→それが歴史というもの。

ポカホンタスというネイティブアメリカンの娘が英国入植者の男性と恋に落ちて……という話がもしも作り話だったとしたら、ロマンスを作り上げて美談にすると都合がいい人たちがいたということでしょう。


■ ひとこと

今回はレビューが短いって?
それこそがもっともよくこの作品を表しているのですヨ。

つまり、物語はよく知られたもの(ポカホンタスがスミスを救った)がすべてなのであまり懲りようがないのです。
凝るとしたら、監督さんが「シン・レッド・ライン」を撮った人なので、映像や音楽に凝っていいます。
そのあたりを承知したうえで、あまり意気込まずに観るとよいでしょう。


俳優ファン △
ファミリー  -
デート    △
フラっと   △
脚本勉強  -
笑い     ×
リアル追求 -
謎解き   ×
人間ドラマ △ 
社会     △
映像     ○


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遠くの存在と思えるあの人との距離を劇的に縮めるには?
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05/07/2006

たてもの園『千と千尋の神隠し』裏ガイド

たてもの園『千と千尋の神隠し』プチ裏ガイド~【裏の裏】特別ヒント付~


カオナシが生まれた場所。

千尋が迷い込んだ世界。

両親がブタになり、千尋が千になったあの世界への入り口――。

宮崎駿監督が「千と千尋の神隠し」誕生のインスピレーションを受けた
といわれる場所を、あなたはもう訪れましたか?

その場所こそ、東京都小金井市の小金井公園内になる江戸東京たてもの園なのです。

江戸東京たてもの園内の子宝湯は、宮崎駿監督作品「千と千尋の神隠し」に登場する油屋のイメージ元になった場所だといわれています。

男湯と女湯のどちらも見学できますよ。

でも皆さん、服は脱がずに見学してくださいね。

江戸東京たてもの園に行く方にときの便利情報をお伝えします。

脱いだり履いたりしやすい靴で行きましょう。建物内はどこも靴を脱ぐのが基本となっていますので。

車で行かれる方は、サンダルみたいなものを持って行って、現地で使うと便利かもしれませんね。

そして、子宝湯(油屋)といった、一般によく知られている箇所から、ちょっと気付きにくい箇所やほぼ気づかないであろう個所まで。

さらに、訪れただけではみつかりにくい【裏の裏】のイメージ元ヒントが付いた「『千と千尋の神隠し』イメージ元プチ裏ガイド』レポートもありますので、予習してから行くとよいでしょう。

たてもの園『千と千尋の神隠し』プチ裏ガイド~【裏の裏】特別ヒント付~

子供に教えてあげればパパの株もうなぎのぼりまちがいなし!?

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海猿に協力の稀有なフェリー会社

人気漫画「海猿」の実写版となる『LIMIT OF LOVE 海猿』は、第3作目にあたる。

第1作は「海猿」。第2作は連続テレビドラマ。そして第3作が「LIMIT OF LOVE 海猿」。

第1作以前に幾度がスペシャルドラマ化されていたような気もするが、フジテレビと東宝を中心とした伊藤英明、加藤愛主演の「海猿」は、映画2本によって真中のドラマを挟む、いわばサンドイッチ型だ。これは、日本ではおそらくはじめての試みではないだろうか。

第1作、第2作と実写シリーズはすべて観ているが、実はレビューはひとつも書いていない。

映画・ドラマなどの映像作品を観ても、様々な事情でレビューが書けない場合がある。

(1)時間がない。
(2)書くつもりでいたが、いつの間にか書かずにそのまま。
(3)レビューを書くまでもない作品
(4)書きたくて仕方ないが、書きたいことがたくさんありすぎて書けない(未完のまま)

ざっとあげた以上の理由のうちで「海猿」シリーズについては(4)が当てはまる。

「海猿」について書くなら、ぜひとも原作をすべて読んでからと思いつつ、3巻ぐらいまでしか読んでいない……。

そしてなにより「海猿」シリーズがとても好きなので、クールな視点で作品のレビューを書くことができないと感じてしまうのだ。

第1作にしろ、第2作の連続ドラマにしても、見入るではなく「魅入って」しまうので、なにを書いてもベタ誉めになってしまうような気がする。

主演のふたり、伊藤英明と加藤愛がお気に入りの俳優だというのもある。

なんにせよ、単純にとても好きな作品なのだ。

そんなシリーズ第3作の『LIMIT OF LOVE 海猿』はなんと海洋映画である。もともと主人公が海上保安官なのだから海洋モノなのはあたりまえなのだが、水を扱う実写作品というのはそれなりに気合が必要なのだ。

ハリウッド映画でもそうだが、水を扱う作品はそれだけ製作費がかさむ。撮影には危険が伴うため、いろいろな保険代も高くなる。セットも大掛かりなものにならざるを得ない傾向がある。

なぜなら、船が襲撃されたり沈んだりする作品に喜んで自社の船を使っていいといってくれる船関連会社をみつけるのが困難だからだ。海難事故・事件などといった、会社のイメージダウンになるのではないかと船会社が危惧するからだ。

そのため本物の船をつかって撮影できないので、船の実寸大のセットを作る。そしてCGと組み合わせるということになる。セット、CG、俳優と撮影にかかる保険。どれも費用がかかるものばかりだ。

ならば『LIMIT OF LOVE 海猿』で使われる大型フェリーはすべてセットか、というとそうではない。なんと実際のフェリーを使って撮影されているというのだ。

沈没することがわかっている映画の撮影に自社の船を使うことを承諾する船会社などあるわけがないと思うものだが、なんと日本にはあったのだ!

それは宮崎カーフェリー株式会社である。

撮影に船を使わせてほしいという依頼の電話を受けた宮崎カーフェリーの女性社員はOKと返事をしたという。
撮影スタッフが、映画では船は沈没しますがほんとうにいいんですか?と念を押してもその女性社員はOKと返事した。当然のように上司には反対されたが、結果的には宮崎カーフェリーの船が撮影に使われることになったのだ。

女性社員はなぜOKを出したのか。
なぜって彼女は主演の伊藤英明のファンだからと笑顔で答えた。

さて、宮崎カーフェリーが運航するフェリーは「みやざきエキスプレス」と「おおさかエキスプレス」の2隻。
どちらも全長170メートル。総トン数約10,000トン。まさに大型フェリーだ。

はじめに『LIMIT OF LOVE 海猿』でフェリーが使われると聞いてとき、もっと小さなカーフェリーだと思った。
本州と四国を結ぶ瀬戸内海を行き来するカーフェリーぐらいかなと思ったのだ。

だが、スケールが違った!

宮崎カーフェリーはどのくらい大きいのか。

神奈川県の久里浜と千葉県の金里を結ぶ東京湾フェリー株式会社の東京湾を横断するフェリーに乗った事がある。東京湾フェリーのフェリー3隻は全長約80メートル。総トン数が3000トン前後だ。
港で次から次に車を積み込んでいく様子を見ていると、予想以上に多くの車を載せることができるのがわかる。

東京と伊豆の島々を結ぶ東海汽船の船「かめりあ丸」と「さるびあ丸」は全長約100メートル。総トン数4000~500
0トンである。
たしか「さるびあ丸」は夏には東京湾納涼船にも使われる船だが、どちらにしてもかなり大きな船である。

しかし宮崎カーフェリーは、こららの船をはるかにしのぐ10,000トン級の船である。

スケールの大きさからしても、じゅうぶんに海洋大作といえるのだ。

「海猿」シリーズは、原作、映画、連続ドラマがあるため、作り手も観客もキャラクターの性格をよく知っている。

主人公仙崎が潜水士になる訓練プログラムに参加して、街で環菜と出会うところから知っている観客は、登場人物の成長と共に作品を観つづけてきた。

第3作を観る観客のほとんどはいわば仙崎と環菜の応援団員なのだ。

もちろん、はじめて「海猿」シリーズを観る人にもわかるように作られているにちがいない。

なんとも観るのがたのしみな一本だ。

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05/04/2006

KID「4秒殺KO」とミヒャエル・ハネケ「隠された記憶」

HERO’S2006 

山本“KID”徳郁 × 宮田和幸

4秒……。

開始ゴング直後、KIDが猛ダッシュ。二段モーションジャンピングキックで左ひざが宮田を直撃!

KIDと宮田は共にレスリング出身。相手の得意な戦い方と動き方をお互いに熟知していたにちがいない。

「タックルで来るのは分かっていた。跳べば相手の前から消えることになると思った。ジャンプ力と瞬発力は誰にも負けないからね」(山本“KID”徳郁談)

体格では宮田に劣るKID。テイクダウンされれば不利になる可能性がほかのどの選手よりも高いことはじゅうぶんするぎるほどわかっていたはずだ。

同じレスリング出身だからといって、なにもレスリングにこだわる必要はない。相手がタックルでくるとわかっているなら、それに対して有効な手を使えばいい。

じゃんけんで相手がチョキを出すことがわかっているなら、グーを出せばいいだけのこと。
そう考えると至極当たり前でシンプルだ。

しかしこの作戦を考えて実行するのは並大抵のことではない。

ところがKIDは相手の強み(タックル)こそ、相手の最大の弱点になりうる可能性があり、たとえヒザが当たらなくてプレッシャーにはなるという作戦を立て、実行し、そして見事に成功した。

KIDはその格闘センスの良さと驚異の当てカンの良さで知られているが、クレバーな格闘家の中でも際立って明晰な分析力と判断力を持っている。そしてなによりそれを実行できる強靭な肉体と反射神経がある。

KIDを映画監督で例えるなら、ミヒャエル・ハネケ監督だ。

現在、渋谷ユーロスペースで公開中の「隠された記憶」の監督である。

いわゆる典型的なハリウッド映画の手法に慣らされた観客にしてみれば「隠された記憶」はまるでKIDのようだ。

ありきたりの映画は音楽や効果音やカメラワークで場面を盛り上げる。
さぁここで笑って。さぁここで泣いて。さぁここでハラハラドキドキして――といったように。

これに対して「隠された記憶」では音楽や効果音は一切ない。カメラさえも必要以上には動かない。

ハリウッドに代表される多くの映画が、音楽や効果音やカメラワークで観客の感情の起伏をコントロールしようとするのはわかりきっている。ならばあえてそれらを用いないことで、観客に驚きと言い知れぬ緊張感を与えることに成功している作品。それが「隠された記憶」だ。

レスリング出身同士の寝技はどうなる? KID得意の打撃は?

そんな観客の予想と期待を、ゴング開始猛ダッシュでジャンピングキック!左ひざ直撃。その間4秒!

こんな結末をいったいだれが予想できたろう。

レスリングや打撃という「方法」にこだわっていた観客は、4秒という「時間」に圧倒された。

KID対宮田戦の「4秒」と「隠された記憶」をセットで観てほしい。

試合後に「ヤバイ、カッコよすぎる俺」と微笑むKIDと、映画作品の裏でしてやったりと笑むミヒャエル・ハネケ監督の顔が浮かんでくるはずだ。

「隠された記憶」作品レビュー

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05/03/2006

隠された記憶

監督:ミヒャエル・ハネケ
フランス・オーストリア・ドイツ・イタリア/2005年/119分

人が人であるための過程=人生の時間と機会を提供する作品。「楽(ラク)」を「楽しい」と感じるならばツマラナく、「楽(ラク)」を「ツマラナイ」と感じるならばこの上なく堪能できる。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
フランスの中産階級でインテリのジョルジュの元に送り主不明のビデオテープが届く。ビデオテープにはジョルジュの家が延々と映っている。
次々と送られ来るビデオテープによってジョルジュは記憶の奥に隠した、幼い頃の記憶から逃れられなくななっていく。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ジョルジュ
男性。テレビ局キャスター

△アン
女性。出版社に勤める。ジョルジュの妻。

△ピエロ
少年。ジョルジュの息子。

△マジッド
ジョルジュが子供の頃、同じ家にいた同年代の男。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
人が人であるための過程=人生の時間と機会を提供する作品。「楽(ラク)」を「楽しい」と感じるならばツマラナく、「楽(ラク)」を「ツマラナイ」と感じるならばこの上なく堪能できる。


■ 映画とは?

映画とはなんだろう?

映画をなぜ見るのか?

その答えは映画に限らず小説でも同じだ。つまり「それを読んだり観たりする人の数だけ答えがある」ということだ。

例えば友人と映画を観たとしよう。
映画を見終わったあとで、あのシーンで私はこう思った。でも友人は違うように感じた。そういった会話をすることで、様々な見方を楽しむ。それが映画の楽しみ方のひとつだ。

付き合い始めのカップルが映画を観るのはどうしてだろうか?

映画を観て感じた事をお互いに話し合うことで、お互いをより深く知り合うためだ。


■「AはBである」は絶対か?

AはBであるという性格の映画に慣らされた人にとって「隠された記憶」はツマラナイという言葉で片付けてしまうことだろう。

「隠された記憶」楽ではないからだ。他の言葉でいうならば親切ではないからだ。

多くの映画では、ここでは怖がってね、ここでは笑ってね、ここでは泣いてね、と誘導してくれる。どのように誘導されるのか。それは、音楽や効果音によってだ。

作品の重要なアイテムや登場人物はなにかを、カメラが教えてくれる。つまり、カメラが動いたり、ズームしたりしてヒントとなるアイテムや登場人物を目立たせるのだ。

だから観客は音楽・効果音とカメラに頼りっきりで映画を観ることになる。ほらここで泣くんだよ、という誘導によって涙を流す。そんな映画がはびこっている。

ここは泣くところと提供されたシーンが、あまりにもベタな誘導を行っているとシラけてしまって、逆に笑えることがある。

韓流悲恋作品を家でDVDで観てゲラゲラ笑っている人もけっこういるんじゃないかと思う。もし、韓流悲恋作品をカップルで観に行って彼女が泣いているのに、彼氏が大爆笑していたらどうだろう?

感情のスイッチがお互いに別のところに付いていることがわかったので別れて、もっと気の合うベターな相手にめぐりあうことができるかもしれない。

話を戻せば、AがBであると決めている作品に慣れてしまうと、だれかの思う壺夫くんと思う壺子ちゃんになりやすいのである。

音楽も効果音もカメラも自己主張しない「隠された記憶」の監督が投げかけるテーマのひとつはこのあたりにあるのだと思う。


■ 緊張感

長回しワンカットを多様しながら、これほどの緊張感を持たせるのは天才のなしうる技といってもいい。
これができる日本人監督ですぐに思う浮かぶのは北野武監督だ。

何気ないどこにでもある日常の風景に緊張感を持たせることがでるか。これができるかできないかで監督の力量がわかってしまうものである。


■ 人生はなぞなぞ

ある人はいう。

人はどこからきてどこへいくのか。人はなぜ生まれてきたのか。

人はその答えをみつけようとする。それが人生だ――と。

たとえばこう思ったとしよう。なぜAさんは毎日蝶ネクタイをつけて会社にいくのか。そんな疑問が浮かび、あれこれ答えを考えてみる。やがて蝶ネクタイのなぞが解けたとき、アナタはAさんについてひとつ知るのである。

ある事柄や人について「なぜ?」と疑問が浮かぶ。それを解こうと調べたり、話したり、考えをめぐらしたりする。その答えはさまざまだ。だがひとつ確かなことがある。それは、答えへ至る過程を通して、人は対象の事柄や人をより深く知ることができるということだ。

なぞに出会い、それを解こうとする作業は、物事や人に関わる作業である。これをコミュニケーションという。

もし、なんの疑問も抱かずに、決まったことを決まったように作業するだけの毎日だったら?

もし、アナタが新しく車を買うとしたら、どんな車がいいだろう?
動けばいいだけなら、どの車でもいい。でもアナタはきっと、運転することが楽しくなるような車を買うだろう。人や物の移動という目的だけでなく、その車に乗っていることに満足するような意味を求めるのが人間だからだ。

聖句に「人はパンだけで生きるものではなく(マタイ伝4章4節)」「人はパンだけでは生きず(申命記8章3節)」とある。

謎はそれ自体を解くこと以外に、その謎の背景に思いをめぐらすことによって深い洞察力を養い、自分が生きる世界やコミュニティや他人に対する理解を深めていくのである。こうしたコミュニケーションによって己をも知っていく、それが人生のひとつの形である。

「隠された記憶」は観客が謎を解くという作品だ。人が人であるための過程=人生の時間と機会を提供する作品なのだ。


■ ひとこと

衝撃のラストカットという宣伝がされているので、ウォーリーを探せ! じゃないが注意深く観てみよう。
しかし、ラストカットでなにかに気がついたとしても、それがすべての謎を解いてくれる万能の魔法のカギではない。

ラストですべての謎解きは行われない。観客に解釈を委ねているのである。これこそ映画の本来の姿でもある。

もしあなたが「隠された記憶」を観てツマラナイと感じるようなら「決められていることによって楽」をしている部分があるのかもしれない。

「楽(ラク)」を「楽しい」と感じるなら「隠された記憶」はツマラナイだろう。

「楽(ラク)」を「ツマラナイ」と感じるならば「隠された記憶」はこの上なく堪能できるだろう。

「ALWAYS三丁目の夕日」「水戸黄門」「インディペンデンス・ディ」といった類の作品が大好きでたまらないという方は観ないほうがいい。わけがわからないからと映画を記憶から消して、まったく無駄な119分間を過ごしたと感じるだろうから。
 
俳優ファン ◎
ファミリー  -
デート    -
フラっと   -
脚本勉強  ◎
笑い     -
リアル追求 ◎
謎解き   ◎
人間ドラマ ◎ 
社会     ◎

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