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キャッチ ア ウェーブ(CATCH A WAVE)」

監督:高橋伸之
日本/2006年/116分
原作・脚本:豊田和真「キャッチ ア ウェーブ」(角川学芸出版)

粗削りは計算か? 少年・少女の心を持って素直な気持ちで「現役」の空想に共振できればその波にノレる青春物語。「旬」の加藤ローサが絵に描いたヒロインを好演!

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
高校1年の夏。友人ふたりと共に、ひと夏を海で過ごそうと湘南・七里ケ浜にやってきた大洋たち。そこでサーフィンに魅了された彼らは、サーフィンショップで住み込みのアルバイトをすることになる。
大洋は地元の女の子・ジュリアと出会い、恋とサーフィンに明け暮れる。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△佐々木大洋
男子高校生

▽ジュリア
女子高校生

△デューク川原
サーフショップ店長

△小林誠人、田口浩輔
男子高校生。大洋の友人。

△ニック
バイリンガルのサーファー。横須賀から湘南にやってきては好
き勝手やっている。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
粗削りは計算か? 少年・少女の心を持って素直な気持ちで「現役」の空想に共振できればその波にノレる青春物語。「旬」の加藤ローサが絵に描いたヒロインを好演!

■ 青春を謳歌したと豪語する自称遊び人にはウケない

原作・脚本は豊田和真さん。なんと原作は、豊田さんが高校1年の夏に書き上げた同名小説なのだ。

高校1年の夏、あなたはどのように過ごしただろうか?

海、花火、クラブ遊び、バイク旅行……。はたまた坊主頭で球技に没頭。

そんな高校1年のひと夏の過ごし方がある一方で、ひたすら小説を書きつづけた高校1年の夏があった!

実際はクラブ通いや夏山登山の合間に小説を書いたのかもしれないが、高校1年の夏に小説を書くというのは生半可なことではない。

高校1年のときの感性は、高校1年のときにしかない。その感性で書き上げた小説こそ、まさに豊田さんの青春なのだ。そこには「こんなのあったらいいなぁ」と空想した願望がいっぱい詰まっている。

空想にふけるよりもまず行動! といって高校1年の夏を遊びまくった人にはこの作品はいまいちピンとこないだろう。


■ 空想=妄想が共有されるには

自分だけが楽しめる空想。

これがあるとないでは人生は大きく違う。他人にはわからないけれど、自分だけにはわかる、楽しくてしょうがないことがひとつでもあれば、その人生はそんなにわるくはない。

だが、自分だけの空想だとおもっていたものが、他人と分かち合えたらどうだろう。

人生はもっと楽しくなるにちがいない。

「キャッチ ア ウェーブ」の原動力は空想=妄想だが、いくつかのキーワードを絡めることで、他人にも共有できる妄想=空想になり得ている。

キーワードとは、海、サーフィン、夏、恋、友情、出会い、別れ、といったものだ。

高校1年の夏を、恋に遊びにスポーツに勉強にと満喫したと胸を張れる者がはたしてどれだけいるだろう。

日本中の大半の高校生は、地方の田舎にあって、都会にある遊びスポットもなく、サーフィンがすぐできるような海もなく、農道で胸がキュンとなるような異性にめぐり合うこともなく、勉強ができるわけでもなく、スポーツに没頭するわけでもなく、楽器演奏や歌をうたうわけでもなくダラダラしていたら宿題だけがたまっていつのまにか夏休みが終わっていた、なぁんてことはありがちだ。

そんなワカモノ(かつて含む)の空想=妄想を掬い上げた作品に必要なのは、共感できる「現役」である。


■ 現役(ホンモノ)だけが揺り動かせる

青春物語といわれるものの多くが、いわゆるOBによって書かれたものというのはよくあることだ。

本作のように高校生が主人公のストーリーを、高校生ではない者、つまり現役ではなくOBが自分の高校時代を回想しつつ、空想(妄想)を取り込んで売れるよう演出して書くというのが青春モノのよくあるカタチである。

メチャメチャ恋愛モノの青春小説の作者が、実はおじさんやおばさんだった、というのはごく普通のことだ。

ところが「キャッチ ア ウェーブ」は現役の高校生が書いた小説だ。もとから映像化(映画)を意識して、音楽を聴きながらサーフショップの店長に竹中直人をイメージしながら書いたというこの作品は、豊田さんの高校1年の夏に誕生した物語なのだ(作品の内容のことでなく、高校1年の夏に作品を書いたという意味)

現役が書いた作品だからこそ、多くの人の気持ちを揺さぶり、日本サーフィン連盟(JPSA)やDef Techの協力を得ることができたのである。


■ 粗削りは計算された味?

作品のストーリーに意外性はない。キャラクターもありがちに配置されただけで奥深さはない。

たとえば、バイリンガルのサーファー3人組のリーダー・ニックは、横須賀から湘南の海にやってきて空き放題やっている。いわゆる悪役である。もし、彼の「事情」というものを少しでも描けば、ただの悪役では終わらずにキャラクターに深みを与えることができたかもしれない。

またサーフショップ店長のデューク川原が、失った家族を取り戻すというサブプロットがあったらもっと良かったのにと思う。

これらが原作者の歳のせいだという人もいるだろうが、基本的に年齢は関係ない。原作者が高校1年のときに書いた作品ということで、あえて粗削りと思われるままにした「計算」=「戦略」かもしれないのだ。

というのは、原作は未読なのでなんともいえないが、たとえ原作がほんとうに粗削りだとしても、映像化(映画化)の際に経験豊かなスタッフが手を入れることでもう少しスマートにできたはずだ。

だがそれをあえてやらずに、原作者に脚本も書いてもらったのは、原作者の豊田さんが、若さゆえととられるであろう「粗削り」をセールスポイントにしようという狙いがあるのかもしれない。はたしてどこまでこれを意識・計算して書いたかはどうかはわからないが……。

だが、「粗削りさ」とうのは青春というテーマにピッタリなのだから、それはそれで作品のテーマにガッチリ合っている。やはり計算か……?


■ 加藤ローサの上質プロモーションビデオ

青春映画のヒロイン役ほど重要なものはない。

この点、ヒロイン役のジュリア役は加藤ローサさんはまさにドンピシャリである。

芸能人に限らずだが、人には「旬」というものがある。その人が一番輝くタイミングといのが人生において幾度かあるとすると「キャッチ ア ウェーブ」における加藤ローサさんはまさに「旬」である。


■ ひとこと

サーフィンシーンはかなり気合が入ってがんばっているのが伝わってくる。浜でのシーンは千葉、下田、新島でロケをしたという。実際の台風のときにも撮影したそうだ。

役者では坂口憲二がサーフィンができるということで、彼のサーフシーンだけ顔がよく見えるほど役者に近寄って撮影している。

ほかにDef TechのMicroもサーフィンをやるそうで、映画ではサーファー役で出演している。ジュリアの母親役のとよた真帆さんは、原作者の叔母だそうである。そしてニック役は三船敏郎氏の御孫さんの三船力也さんだ。

横須賀基地内でも撮影しているようで、普段はなかなか見れない米軍基地内の様子もすこし伺い知れる。基地内にはボーリング場もあったり、映画も上映したりしている。

ちなみに関東地方や米軍基地がある地域ではAFN(在日米軍向けラジオ放送)を聞けば、基地内での映画上映内容・時間の案内を流していたり、中古品の売買情報を流していたりするので、ちょっとだけ米軍基地内の様子を感じることができる(関東地方ではAMラジオ810)。

主人公3人がサーフィンをやりはじめる基本となる動機が「モテたい」というのがリアルでよかった。

ちょっと気恥ずかしくなってしまうような内容の作品だが、少年・少女の心を少しでも持っていて素直な気持ちで観るなら、なかなかイイ作品である。


俳優ファン ◎ 加藤ローサプロモーション映像
ファミリー  △
デート    ◎ アナタと彼氏・彼女が少年・少女の心を持っているなら
フラっと   ○ 
脚本勉強  △ これを元に脚本をリライトして詰めていけば……。
笑い     △ 竹中直人がんばるもちょっと浮いてる?
リアル追求 △ 俳優本人で波乗りしてるのは坂口憲二だけっぽい
謎解き    -
人間ドラマ  △ 
社会     -
映像     ○ 波があまりない日本の海で、がんばってます。

4046519630キャッチ・ア・ウェーブ
豊田 和真
角川学芸出版 2005-04

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