スピリット(SPIRIT)
監督:ロニー・ユー
香港・アメリカ/2006年/103分
ドラゴンボール方程式(少年誌パターン)からの卒業を目指すも、物語の基本型にすっぽりハマッて目新しさはない。なにか裏がありそうな題材選びに、ジェット・リーの行く末が気になるところだ(余計なお世話?)。
ストーリー(概要)
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20世紀初頭。欧米列強が進出してきた中国。ひたすら強くなることを望み、やがて天津一の挌闘家になったフォは、その強さのために家族を失う。町を離れ、田舎での農夫生活で考え方が変わり、強さの意味について知るようになる。
主な登場人物の紹介
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△霍元甲(フォ・ユァンジア)
中国人武術家
△田中安野
日本人武術家
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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ドラゴンボール方程式(少年誌パターン)からの卒業を目指すも、物語の基本型にすっぽりハマッて目新しさはない。なにか裏がありそうな題材選びに、ジェット・リーの行く末が気になるところだ(余計なお世話?)。
■ ジェット・リーのヒーロー像を追い求める歩みと重ねて
ジェット・リーがハリウッドに進出してからの作品を振り返ってみよう。初期は「リーサルウェポン4」で得意のカンフーで出演。その後「ロミオ・マスト・ダイ」で主演。以後「ザ・ワン」「キス・オブ・ザ・ドラゴン」「HERO」「ブラック・ダイヤモンド」「ダニー・ザ・ドッグ」と続く。
この中でのひとつめの山は「ザ・ワン」である。「ザ・ワン」では、最強のジェット・リーの最強の相手はジェット・リーしかいないということで、異世界の自分と戦うというSF作品であった。
マーシャルアーツを扱ういわゆる格闘モノの作品には、単純な方程式が当てはまる。
どんな方程式か。それを理解するには漫画作品「ドラゴンボール」を考えてみればわかりやすい。ドラゴンボールの形はシンプルだ。
主人公の前に敵が現れる。
↓
敵を倒す。
↓
するともっと新たな敵が現れる。
↓
この敵を倒す。
↓
するともっと強い新たな敵が現れる。
この繰り返しである。
つまり、単純な方程式とは「次から次に強い敵を出現させてこれを倒す」ということだ。
74年から79年まで(途中の77年欠場)5回連続で中国全国武術大会総合優勝という実績を持つジェット・リーという最強の格闘家の最大最強の相手はジェット・リーしかいないというのは、方程式上、いtかは行き着くべき終着駅でもあったといえよう。
そもそもひとつめの山場となった作品「ザ・ワン」というタイトルがすごい。「ザ」がついている点に注目だ。これはつまり「唯一絶対の」という意味を持つ。というわけで「ザ・ワン」とは、ふつうは「全知全能の神」を表すときに使う。
「ザ・ワン」では「強さを求めて行き着いたところは神の領域」というのが宣伝の売りなのだろうが、ではその先ではどんな作品に出演しているのか。
「ザ・ワン」の後はリュック・ベッソン脚本の「キス・オブ・ザ・ドラゴン」にチョイと主演してみたり、中国
が誇るチャン・イーモウ監督の「HERO」に出演したりする。そしてハリウッドアクション娯楽作「ブラック・ダイヤモンド」に主演する。
そしてふたつめの山は「ダニー・ザ・ドッグ」である。強さを追求してもドラゴンボール方程式からは抜けられ
ないことにおそらく早い段階から気付いていたジェット・リーは、持ち味のアクションを活用しながらも、よりドラマ性を前面に押し出そうとしてモーガン・フリーマンと共演した。
こうして「ドラゴンボール方程式」からの脱却を試行錯誤している様子は、彼自身が思い描いていたヒーロー像の変遷とみてとることができる。
「ザ・ワン」では片手をポケットに入れたまま相手を倒すというシーンがある。余裕のある圧倒的な強さを見せつけていかに格好良く映るか。そんなことばかりに意識を集中していたような印象だ。
ところがそんなふうにカッコつけようとすればするほどカッコ悪く見えるということに気づいたのか、今度は弱さを持った主人公を演じはじめた。その表れが「ダニー・ザ・ドッグ」である。
「ダニー・ザ・ドッグ」のジェット・リーは首輪を付けられて「ご主人様おかえりなさい☆萌ぇ~」ではなく、ご主人様のいうなりに相手を倒すという、まさに飼いならされた野犬のような、しかしながら少年の心をもった優しい男を演じている。
「弱さをもった主人公=ヒーロー」の資質を取り入れたことで、実際に人ウン十倍「強さ」にこだわって生きてきた彼の中で「ほんとうの強さとは?」という思いが膨らんでいったのかもしれない。
そしてジェット・リー最新作は実在の格闘家をモテルとした新ヒーロー物語「スピリット」となった。
■ 目新しさはない
「スピリット」のストーリーには目新しきものはない。力に溺れた男が愛する者を失い、それから立ち直る再生の物語だ。
似た作品で思いつくのは「ラストサムライ」だ。トム・クルーズ演じるアメリカ南北戦争の英雄(軍人)は、心に傷を追って投げやりな気分で極東の島国にやってくる。そこで敵に捕まり、田舎の農村で過ごすうちに武士道精神に出会い、立ち直っていくという再生の物語だ。
「ラストサムライ」にみられるように、こうした「再生の物語」というのはよくある物語の型のため「スピリット」の印象は薄くなりがちである。
■ 紅一点
「ラストサムライ」もそうだが、こういった再生の物語の型の特徴のひとつに特徴的な要素がある。それは、主人公が心を癒されたり勇気づけられたりするといった、いわばヘルパーの役割として登場するのが若く魅力的な女性だ。
「ラストサムライ」では小雪演じる村の長の妹(だったと思う)であり、「スピリット」では農村の眼の不自由な若く美しい女性だ。この女性が好演しているおかげで、マーシャルアーツ系作品でありながら文字通りの紅一点として、しとやかでありながら、にじみ出るようなさわやかさと、内なる力強さをもって作品に奥行きをある程度持たせている。
ちなみにこの女性の外見は日本の女優・中越典子さんに似ていると思うのだが、いかがだろう。
■ ひとこと
なぜジェット・リーが、実在の格闘家を描いた作品に主演しているのか。といったあたりを考えると、そこにはなにやらいろいろと裏読みができそうな気がするが、残念ながらそのあたりについては「匂い」がするだけで、詳しく解説できるレベルにはない。アジア、中国情勢に詳しい方ならピンとくるテーマがありそうだ。
小難しいことなど考えずに、ヒューマンドラマちっくなヒーロー格闘モノ作品として軽い気持ちで観るのがベストなのかもしれない。
俳優ファン ○ 中村獅堂がチャンバラ披露
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Comments
こんばんは!TBありがとうございました!
あたしは、ハリウッド映画でのジェット・リー、見ていられなかったので、この作品は、とても楽しめました。
李連杰の最高傑作だと思っています。
またよろしくお願いしますね。
Posted by: 猫姫少佐現品限り | 03/25/2006 22:30
こんばんは。
TBありがとうございました(^^)
確かに、スン・リーは、中越典子さんに似てましたねっ!
私も思いました~(笑)
でも、とても美しくて透明感がありましたね。
前髪は、気になりましたが・・・。
こちらからも、TBさせて頂きます♪
Posted by: 空 | 03/25/2006 23:08
>猫姫少佐現品限りさん
コメントありがとうございます。
ジェットリーの技のキレはやはりスゴいですね!今後ともよろしくです。
>空さん
コメントとTBありがとうございます。
前髪が素敵な彼女はスン・リーさんというんえすネ。中越典子さんだと言われても信じてしまいそうです(^^)
Posted by: わかスト@管理人たか | 03/26/2006 20:52
どうもこんばんは。TBサンクスです。ジェット・リーの作品たくさん見られてるんですねー。
ダニー・ザ・ドッグはちょっと見てみたいと思ってました。
展開とか役キャラとかも非常にわかりやす過ぎたところがもの足りなさを感じた作品ではありました。とかいって、結構楽しんでみましたけどねん。
Posted by: goma | 03/26/2006 21:58
>gomaさん
コメントありがとうございます。
ほんとだ! いつの間にかジェットリー出演作をたくさん観ていました(^^)
ダニーザドッグではジェットリーの子供っぽい雰囲気も観れますよ。
Posted by: わかスト@管理人たか | 03/31/2006 11:14