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03/31/2006

マンダレイ(MANDERLAY)

監督:ラース・フォン・トリアー
デンマーク/スウェーデン/オランダ/フランス/ドイツ/アメリカ/
2005年/139分

たとえ女芸人「だいたひかる」のネタ、○○だと思うのはわたしだけ?を学習したとしても、振りはじめた旗を降ろせない愚かさと滑稽さを、成長する主人公を通して描くアメリカ3部作の第2作。骨太でパンチの効いた作品で見応え度120パーセント!

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
1933年。アメリカ合衆国南部のアラバマ州。ギャングの一団が車を連ねて移動中、マンダレイという名の農園の前で一休みする。そこへアフリカンアメリカンの女性が助けを求めてやってきた。ギャングのボスの娘で理想主義で正義感の強いグレースは、70年前に終わっているはずの奴隷制度が存続してるのを目の当たりにする。そこでグレースは「ドッグウィル」で学ん得た力を用いて「マンダレイ」に自由をもたらそうとする。

主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△グレース
 若い女性

△ウィレルム 
 お喋り黒人

△ティモシー
 誇り高き黒人

△グレースの父
 マフィアのボス

△女主人
 マンダレイ農園の女主人

コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
たとえ女芸人「だいたひかる」のネタ、○○だと思うのはわたしだけ?を学習したとしても、振りはじめた旗を降ろせない愚かさと滑稽さを、成長する主人公を通して描くアメリカ3部作の第2作。骨太でパンチの効いた作品で見応え度120パーセント!

■ シンプルゆえに力強く効果的なセット

体育館みたいなところに家や道を示す白い線を引いただけ。
まるで小さな子供が大きな紙の上に街の図を描いてミニカーを走らせて遊ぶ様子を思い起こさせるその空間で役者たちが見えないドアを開けたり花壇に花を植えたりしながら進む物語があった。

――「ドッグウィル」。

ニコール・キッドマンが主演したこの作品はナレーションを多用した演出と小説風の章立て構成とで独特の雰囲気を醸し出した話題作だ。
派手なCGシーンや有名地でのロケが当たり前になった映画のなかにあって「ドッグウィル」のシンプルがゆえに想像力をかきたてられる映像の新鮮さは、観客の多くに強烈な印象を与えた。

その続編がこの「マンダレイ」である。

「アメリカ3部作」の第2作目にあたるこの作品の舞台はアメリカ合衆国南部のアラバマ州の「マンダレイ」という農園が舞台だ。

マンダレイでは70年前に終わっているはずの奴隷制度が存続しているのを目の当たりにしたグレースは「ドッグウィル」で学ん得た力を用いて「マンダレイ」に自由をもたらそうとするのである。

■ 良き人の「正義」とは?

良き信仰をもった良き人が力をもったら?

「the EYE」のレビューで使った例えた話に「車を持てば幸せか?」というのがある。

たとえば、車がない生活を想像してみよう。
自分が生活している圏内(村、町)に車がないという人は世界にたくさんいる。
たしかに車は便利だ。たくさんの荷物を運べるし、遠くに早く移動することもできる。だが車がないからといって不幸とは限らない。車がなくても馬があるとしよう。住んでいる地域は山岳地帯で、人々は猟で生活している。車が通れる道はない。車を持っていても走らせる道はない。走らせるためには山の木々を切り倒して道を舗装しなければならない。車のエンジン音で獲物が逃げてしまう。
そうなると、車を持っていることがはたして幸せだろうか。

つまり、車を持っているから幸せという考えはひとつの見方にすぎないのだ。

さて、女芸人「だいたひかる」のネタではないが、

たまたま通りかかっただけの、よく知らない村に車(という名の正義)があれば便利(良い)と思うのはもしかしたらわたしだけ…?
 
とふと思ってみるぐらいの想像力があればどうだろうというのが「マンダレイ」の肝である。

善意ある「力」を持った善人が空回りすることほど困ったものはない。なぜなら「あの人は悪気はないのよ」と言われたら「そうですか」としかいえなくなるだろう。それは「まぁ子供のいたずらですから」と言われるのに近い。

子供が玩具の刀で斬りつけてきたら、斬られたフリをして一緒に遊ぶことはできるが、本物の刀や、バスーカ砲(「天才たけしの元気が出るテレビ」の高田純次の寝起きバズーカではない)でも持ち出されたときには、どうにもやっかいだ、どころの話ではない。

「やんちゃ」の域をとうに超えた子供をいったいだれが監督・子守り・躾るのか。

ひとりで「やんちゃッ子」をしていた子供が、やがて「数」という力に目覚めた少年となってグループを作る。集まってカードゲームをするだけでは物足りないのでバイクに乗ってツーリングをしてみる。田舎道をのんびり走るよりも夜中に街中を大きな音をたてて走るほうを好み、己の正義を貫くために全国制覇を目指す。

全国制覇の方法は、格闘ビデオゲームで全国チャンピオンを決める。というのであればまだいいが、そうもいかずに木刀の登場となる。

やがて木刀からやがてもっと強力な武器へと変わっていくと……。

こうして発生する少年グループ同士の対立と、それを抑えるグループも、基本となるやり方はみな同じだ。つまり、より大きな強い力を使おうとするのである。

少年グループAのヘッド(頭)の言う事も、少年グループBのヘッドの言う事も、少年グループを抑えようとするグループのヘッド(頭)の言う事も、それぞれにとっての「正義」に過ぎない。

たとえこのことに気付いたヘッド(頭)がいたとしても、全国制覇の旗をおろすわけにはいかない。なぜなら旗をおろせば、ただでさえ勝手なことばかりして手に余るメンバーたちを統率できなくなるからだ。旗を掲げているかぎりは、対立グループを意識してたとえ一時期であっても統率がとれるからだ。

旗を掲げつづけるために必要なのは、作られた「正義」と、より強い「力」だ。

たとえ本人さえその「正義」なんぞこれっぽちも信じていなくても、この「正義が世界を救う」という旗を振りつづけなければならなくなるのである。

さて「マンダレイ」における真の善人とは誰だろうか。
おそらくそれに最も近いのは女主人かもしれない。
そしてグレースもその可能性を秘めているといっていいだろう。なぜなら彼女はまだ若く、成長途中なのだから。

■ 社会の姿を表す「ママの法律」

社会で楽に生きるための秘訣が「ママの法律」に記されてる。

それは「役割」に関するものだ。

それぞれが自分に与えられた役割(父親、母親、上司、部下、子供等)を演じることによって、社会に参加する。役割という仮面を時と場所によっていくつも付け替えることで、社会と折り合いをつけながらお互いに楽に生きていく。その方法が「ママの法律」の本に記されているのである。

■ ひとこと

139分。
上映時間だけみると長く思うだろうが、まったく飽きさせない展開でこれほど集中して映画を観たのはずいぶんと久しぶりであった。

セットは「ドッグウィル」よりも増えて高低の空間的広がりも感じさせるようになった。

それでも、はじめて観る人には衝撃的であろう。

「マンダレイ」を観る前にぜひ「ドッグウィル」を観ておこう。なぜなら「マンダレイ」はアメリカ3部作の第2作目だからだ。

第1作「ドッグヴィル(DOGVILLE)」作品レビュー

骨太でパンチの効いた作品に出会いたいならぜひ観るといい。

「マンダレイ」とセットで観たら意外と面白い組み合わせになる作品は「フライトプラン」だ。

「フライトプラン」作品レビュー

俳優ファン ○ 
ファミリー  ×
デート    × 
フラっと   ◎ 
脚本勉強  ◎ 
笑い     ○ もう笑うしかないという観方も
リアル追求 ◎ 風刺
謎解き    ○
人間ドラマ ◎ 
社会     ◎

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