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01/10/2006

あらしのよるに

監督:杉井ギサブロー
日本/2005年/107分
原作・脚本:きむらゆういち『あらしのよるに』講談社刊 

明確なテーマを持って新モデルを提示する数少ない日本映画(アニメ)。オオカミとヤギでさえ友情を……なのだから「あらし」を待ち望む声が広がれば……。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
嵐の夜に友達になった狼と山羊が共に暮らせる場所を捜し求める。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ガブ
 狼

△メイ
 子ヤギ


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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明確なテーマを持って新モデルを提示する数少ない日本映画(アニメ)。オオカミとヤギでさえ友情を……なのだから「あらし」を待ち望む声が広がれば……。

■ 種族を超えた友情

オオカミという種とヤギという種を超えて友情は成り立つか。ガブがたまにメイをおいしそうと思うことはあるけれど、ふたりは当然のように友情を大事にします。

たとえ種族は違っても同じ地域の森に棲む生き物が出会い、友情を温め合う。

これを例えばこのように言い換えたらどうでしょう。

肌の色も話す言葉も違うふたりがあらしのよるに出会って友達になる。

そういうことがあってももちろんいいですよね。というかそれまで他人だった二人が出会って友達になるって素敵なことだと思いませんか?

でもガブはオオカミという種。メイはヤギという種です。

食物連鎖という自然界の掟に従えば、ガブとメイの友情はありえないことかもしれません。

それでもガブとメイは友情を育むことをやめようとはしません。


■ オオカミとヤギでさえ友情を……

オオカミとヤギという「種」が違う動物でさえ、友情が成り立つのだしたら、同じ人間同士で友情が成り立たないはずがありませんよね。

たとえ肌の色も話す言葉も違っても……。


■ 種族にとって「友情」はサバイバルのための道具

ガブとメイが仲良くしていることがお互いの群れに知られたことで、オオカミの長とヤギの長はそれぞれ同じことを考えつきます。

それは、ガブとメイをもう一度会わせて、相手の群れの情報を探らせるというのです。

種族という枠組の内で考えれば、ガブとメイの友情はサバイバルのための情報を得るための道具の他には使い道を見出せません。


■ 新天地を求めて

たとえ友情が生まれても、それを育んでいくためには新天地を探すしか道はない。そこで険しい山越えをすることを決意するガブとメイ。

オオカミとヤギが一緒に生きていくことができる緑の森を求めてガブとメイは旅立ちます。(しかしオオカミの群れがガブとメイを追ってきます)

さて、ガブとメイの友情の障害となっているものはなんでしょう?

それは「種族という枠」です。

サバイバルのために必要だと小さな頃から教えられてきた「群れ」で生きるという術が、友情を育んで共に生きる道を塞ごうとしているのです。

これはつまり「種族という枠」が「群れ」以外で生きる術を見出そうとはしないために起こる「障害」なのです。


■ 新モデル発表

新天地を求めて歩き出したメイは、ガブにこんなかんじの意味のことを言います。

「これからはガブとずぅ~と一緒にいられるからうれしい」

もしこれが他のヤギだったら違うでしょう。自分の種族が集まる群れに戻ることを第一に考えるでしょう。まして、元の群れに戻れなくなったら落ち込んでしまうでしょう。

でもメイは違います。これからはガブとずぅっと一緒にいられるから嬉しい、と喜ぶのです。ガブも「そうでやんスねぇ☆」といった意味の返事をして一緒に喜びます。

ガブは群れのなかにあってはかならずしも優遇されていたとはいえず、むしろ他のオオカミにバカにされていたところもあります。

しかしメイはおばあちゃんに暖かく育てられ、心から心配してくれる友人ヤギもいました。

それにもかかわらず、新しい友情を育むために群れを離れなければならなくなったメイは、ガブとこれからずぅっと一緒にいられることをうれしく思うのです。

つまりこの物語は新オオカミと新ヤギの出現という「新しいモデル」を提示しているのです。


■ 際立って異質な日本映画

現代日本映画の特徴のひとつは「ALWAYS 三丁目の夕日」に顕著にみられるように「なにかを忘れさせるもの」を題材にしています。

つまり、過去を振り返えらせてなつかしがらせたり、昔はすべてが良かったかのような錯覚を起こさせて気持ちよくさせる映画が全盛なのです。

ヒットを狙うという意味では上手ですが、そんな様相を呈した日本映画にあって「あらしのよるに」は新オオカミと新ヤギの出現という「新しいモデル」を提示しています。

こういった「モデルを提示できる」日本映画はとても少ないので貴重です。

他の「新モデル」を提示している日本映画としてすぐに思いつくのは「下妻物語」と「ロボコン」ですね。

「下妻物語」作品レビュー

「ロボコン」作品レビュー


■ アニメとしても異質

「あらしのよるに」はアニメ作品としても異質です。

例えば少年漫画・アニメの典型は「勧善懲悪」です。主人公が「善」で他の登場人物が「悪」。悪が現れると主人公がこれを倒す。するともっと強い「悪」が現れる。これを倒す。するともっともっと強い「悪」が現れる……。という繰り返しです。

このパターンは楽ですし、悪を倒す主人公のグッズや悪役キャラクターはおもちゃとして売ることができます。そのため多くの漫画やアニメ作品はこのパターンでできています。

しかし「あらしの夜に」のメインキャラクターはオオカミとヤギです。オオカミやヤギはコスプレはしておらず(眼帯しているオオカミはいたが)、特徴のあるキャラクターを登場させて商品を売ろうという意気込みのようなものはあまり感じられませんでした。

それはおそらく原作者にはしっかりとした「つたえたいこと」があるからなのだと思います。

もちろんキャラクターが売れればそれだけ作品の宣伝にもなります。でも優先順位としてまず「伝えたいこと」があり、キャラクター商品を売ることが第1位ではないようです。

そういった意味で、日本のアニメとしてもかなり異質な作品ともいえるでしょう。


■ ひとこと

いま必要なものは「あらし」だということをじっくりと感じさせてくれる作品です。

テーマはとてもいいのですが、ストーリーの展開があまりスムーズではありません。緩急はそれぞれまとめて配置すると良いのですが、細切れな緩急がちりばめられているといったようで、車でいえばクラッチがうまくつながら
ないでガクンガクンしてしまうかのような印象を受けました。

また、凝った内容ではないので致し方ないとは思うのですが、、展開がすべてみえみえです。そのため、長い上映時間ではないのですがちょっと長く感じました。


俳優ファン △  KABAちゃん、小林麻耶(アナウンサー)も声優してるヨ 
ファミリー  向  ぜひ観にいきましょう「ザスーラ」もよろしく!  
デート    向  なかなかGOOD
フラっと   △  ふらっとは行きにくいかな 
脚本勉強 △  アイデアとテーマが命の作品なので展開方法は△
笑い    △  笑わせようとはあまりしていないがそこそこ笑える
リアル追求 不向 オオカミとヤギが話してますから! 
謎解き    不向  そういう性格の作品ではない
人間ドラマ  不向  オオカミとヤギの話ですから! 


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Comments

TBありがとうございました★
非常に細かく分析されてらっしゃるのですね!
すごいです
さわわはなぜメイがおばあちゃんを置いてまでガブを選んだのか、いまだにわからずで・・・
これが愛ならわかるんですけどね(^-^;)

Posted by: さわわ | 01/10/2006 at 22:47

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