ザスーラ(ZATHURA)
監督:ジョン・ファブロー
アメリカ/2005年/110分
![]() | ザスーラ [DVD] ジョシュ・ハッチャーソン (千葉皓敬), ジョナ・ボボ (海鋒拓也), ダックス・シェパード (咲野俊介), ジョン・ファブロー ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2008-06-25 by G-Tools |
レトロとCG映像とパラレルワールド。同じような気分にあって同じような題材を使ってもこれほどの違いが!「ALWAYS 三丁目の夕日」との比較でみえてくる日米の大きな違いとは? たとえ後ろ向きに転んだように見えても、タダでは起きない「ど根性」を堪能しよう。家族で観るなら迷わず「ザスーラ」!
ストーリー(概要)
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パパは仕事で外出。兄・ウォルターは最近一緒に遊んでくれない。そんなとき弟のダニーは家の地下室で古いボードゲーム「ザスーラ」をみつける。ゲームをはじめるとカードが出きた。ザスーラは、そこに書かれたことが実際に起こるゲームだったのだ。
主な登場人物の紹介
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△ウォルター
10歳。兄。
△ダニー
6歳。弟。
△宇宙飛行士
男。青年。
△リサ
女性。ウォルターとダニーの姉。
△パパ
ウォルター、ダニー、リサの父親。
△ゾーガン
エイリアン。凶暴で肉食。火や熱を求めて宇宙をさまよう。
△ロボット
ウォルターのロボット。
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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レトロとCG映像とパラレルワールド。同じような気分にあって同じような題材を使ってもこれほどの違いが!「ALWAYS 三丁目の夕日」との比較でみえてくる日米の大きな違いとは? たとえ後ろ向きに転んだように見えても、タダでは起きない「ど根性」を堪能しよう。家族で観るなら迷わず「ザスーラ」!
■ 元ネタをどう活かすか
「ザスーラ」の作品のプレミス(Premise ストーリーが発展していくための基礎となるアイデア)は1995年に公開された「ジュマンジ」と同じです。ボードゲームの世界が現実にも起こるというこのプレミスをそのままに、今度は舞台を宇宙にもってきたのです。
たとえ元ネタは同じでも「ザスーラ」は魅力あるものとなっています。
そもそも私は「ジュマンジ」を観ていません。映画の予告編を観ても、イマイチ興味がわかなかったのです。当時はCG映像が注目を集めはじめたばかりの頃で、いままで見たこともないような映像が「売り」だったように感じたからです。
ところが今作「ザスーラ」の予告編は違いました。2005年現在は、すでにCG映像は多くの映画作品に使われてもう目新しくい技術ではありません。たた映像がすごいというだけではだれも見向きもしなくなった時代において「ザスーラ」は目立っていました。
■ 宇宙船ではなく「家」
SFアドベンチャー作品で、主人公たちの乗り物が宇宙船ではなく「家」。
それだけで私は心をわしづかみにされてしまいました。
SFアドベンチャーで家族を題材にした作品は過去にもありました。例えば60年代のTVシリーズ「宇宙家族ロビンソン」。これをリメイクした劇場用映画作品「ロスト・イン・スペース」。
宇宙を舞台に家族の活躍と絆を描いたこれらの作品でも、登場人物たちの乗り物は宇宙船です。つまり「船」です。人生という名の宇宙の航海を共にする家族を乗せた「船」です。
比喩では人生という航海をする「船」ですが、実際に住むのは「家」です。数々の作品でもまた「家族」という題材で重要な役割を果たしているのは「家」です。
さて「ザスーラ」でも主人公たちは宇宙を旅しますが、登場人物たちが乗るのは「家」です。宇宙空間にぽっかりと浮かぶ「家」――。普通だったらありえません。いえ、普通の宇宙SF映画だってありえません。さらにこの「家」をエイリアンのゾーガンの船が襲うのです。
「家」と「エイリアンの宇宙船」がランデブー。
CG映像でしかできない、いままで観たことがない映像で大きなインパクトを与えています。
少なくとも私には大きなインパクトでした。宇宙空間に浮かぶ家。この映像だけで、この作品を観ようと決めました。
(ちなみにエイリアンのゾーガンの宇宙船は「ガンダム」のララァ搭乗機、通称トンガリ帽子とも呼ばれた「エルメス」に形がちょっと似ています)
■ 「兄弟関係」に焦点。
冷凍された姉という設定が、兄弟の心を映し出す鏡になる。
家族みんなが抱えている様々な問題を浮き彫りにして丁寧に描きたい、という思いがあっても、それを1本の作品中にすべて詰め込むには、かなりの技量が必要なばかりか、家族の構成員の数だけ間延びして焦点がぼやけてしまうかもしれなないというリスクがつきまといます。
この点について「ザスーラ」では兄ウォルターと弟ダニーの兄弟関係に焦点を絞っています。
古い家の庭でキャッチボールをするパパと兄と弟。ここから兄と弟の関係がペイオフ(Pay off 初めに提供されて後に劇的に使われる情報や工夫)されるのです。
ペイオフの具体例としては「2階の部屋で寝ている姉のリサが、パパに弟たちの面倒をみて火の元にだけは気をつけるんだぞ、と念を押され」たり「すねたときや兄に追いかけられたときにダニーが逃げ込むダムウェーター(貨物用の小型エレベーター)」で地下室へ行っ」たりするといったものです。
地球へ戻るという共通の目的ができたにもかかわらず、相変わらずというより、以前にも増して兄弟喧嘩がエスカレートするウォルターとダニー。ふたりの間に入って調整する宇宙飛行士が大事な役割を果たすことになります。
ウォルターとダニーは喧嘩ばかりしていますが、実はふたりとも家族想いのやさしい子です。
いつも口うるさくて、できれば2階の部屋でずぅっと寝ていてほしいとふたりに思われている姉のリサが冷凍睡眠カードでコチコチに固まってしまったときも、兄弟はなんとかして助けようとします。凍ったまま2階から1階に滑り落ちたきた姉を兄弟が力をあわせて2階へ持ち上げ(引きずって?)て、お姉ちゃんはだいじょぶなの?と気にかけます。
これはいつも喧嘩ばかりしているウォルターとダニーも、心の底ではかけがえないのない兄弟・家族として大事に思っていることを暗示して観客に伝えているのです。
■ 特徴的なマークとなる「絵(画)」とは?
どこにでもある、ごくありふれた街中でみつけた緑の看板とコーヒーの香り。
こう聞いてすぐに思い浮かぶのはスターバックスコーヒーでしょう。
○○といえば○○というような特徴的なマークとなるものがあれば、他と区別化できます。
「ザスーラ」では、SFアドベンチャーというありふれた宇宙空間に「家」という特徴的な「絵(画)」を出現させました。これだけでも特徴がありますが、実はもうひとつ小さいけれどピリリと効くオマケが付いているのです。
作品中で幾度も挿入される、宇宙空間に浮かぶ家のカットをよく観てください。(私の記憶が確かなら)あるカットから後のすべてのカットに、家のほかにもうひとつ「ある物」一緒に映っています。それは家の近くをふぁ~りと浮遊しています。それはどこの家にもありそうなもので、ウォルターのものかもしれませんし、ダニーのものかもしれません。
それはズバリ、自転車です。
橋から下を覗き込むと、川底に沈んだ自転車が見えることがあります。だれかが乗っていたであろう自転車が川底に捨てられている様はもの悲しくもあり、川に捨てる人の心の寂しさをおもうと思わずため息が出てしまいます。
でも、自転車が宇宙空間に浮いているとしたら?
これがなんともコミカルなのです。宇宙を漂う家にオマケのように付随する自転車。これが「ザスーラ」の特徴的なマークとなって観客の深い意識の底に入り込みます。
作品を観て自転車に気が付いた人は、わたしのように(笑)だれかに話したくなることでしょう。←口コミ効果!
そして自転車にもちゃんと、文字通りの「オチ」がありますヨ。
■ レトロとCG映像の使い方
~「ALWAYS 三丁目の夕日」と比較して~
ゲーム「ザスーラ」にしてもロボットにしても、この作品に出てくる「物」はどこかしらレトロです。「家」だって古くて地下室と2階をつなぐダムウェーター(貨物用の小型エレベーター)があったり、地下室には年代ものっぽい暖房用熱源装置があります。これはいわゆるセントラルヒーティング(中央暖房方式)といって、主に住宅の地下室に暖房用の熱源装置を設置して、家中をめぐらした配管やダクトで温風を各部屋や居間に送るシステムです。
おもわず「なつかしい!」と言ってしまうようなレトロさが作品の「味」となっています。
レトロとCG映像で、兄弟を焦点にコミカルかつゲーム性豊かに家族を描いています。
さて「レトロとCG映像」と聞いて、最近の日本映画で思い出すのが「ALWAYS 三丁目の夕日」です。
ザスーラと同じく「レトロとCG映像」を使っても、これほどの違いが出るのはたいへん興味深いでしょう。
どちらの作品も、社会派というよりは、お気楽コメディ作品です。現実社会を直視することなく、お気楽に楽しみたいという、いわゆる現実逃避の手段のひとつとしてこれらの作品を観る方がほとんでしょう。
でも、この二つの作品には決定的な違いがあります。
その違いとは「再生」です。
古いゲームによって宇宙空間というパラレルワールドに飛ばされた主人公たちが、隕石群来襲、クルー凍結、ロボット故障、ゾーガン来襲といった危機・困難を乗り越えて兄弟関係修復を達成。家族としてあらたな一歩を踏み出すのが「ザスーラ」です。
「兄弟の不和」と「家族のすれ違い」→ 困難 → 克服 → 修復と再生 → 新たな旅立ち
一方、映画という装置によって昭和33年というパラレルワールドに行った観客たちが、集団就職で上京・慣れない都会暮らし、身寄りのない男の子とそれを引き取る作家志望青年の日常、母親探し、といったきれいな部分だけをすくいとった日常を垣間見て一時のノスタルジィに浸りながら経済成長という共通した「希望」があった時代をなつかしむのが「ALWAYS三丁目の夕日」です。
「集団就職」と「身寄りのない子」→ 出会い → 生活 → 馴染み → ・・・
レトロとCG映像でパラレルワールドへ、というプレミスはほぼ同じでも、一方は「再生」、もう一方は一時的なノスタルジィに浸って懐かしんだままで終わります。
この2作品のうち、どちらか1作品を子供に観てもらうなら、迷わず「ザスーラ」です。
「ザスーラ」にはダークな部分はほとんどありません。最近の一般には子供向けと思われてる作品、例えば「ハリーポッター」シリーズが実はかなりダークな面があるのはみなさんもお気づきでしょう。
本来、子供に限らず人間にはダークな面もあります。様々な面をもちつつ、そのときの状況や本人の考え方や気持ちで如何様にも変化するのが「人」というものではないでしょうか。
そういった意味で「ザスーラ」はあえてダークな面は取り入れず「楽しくコミカルに家族の再生を」描いています。
「ALWAYS 三丁目の夕日」もきれいなものだけで固めた作品ですが共同体としての「スローガン」といった希望があった時代を懐かしむだけで「再生」というキーワードは含まれていません。もちろん、テーマパークに行って一時的にそのときだけ楽しみたいという欲求には十分に応えてくれるでしょう。
■ 同じような気分にあっても、作品には大きな違いがある。
イラク駐留米軍の死者が2000名を超えました。
日本は出口のない不安という言葉に象徴されるような時代の雰囲気に包まれています。
こうなると、アメリカ合衆国と日本のどちらでも、現実を直視せずに済むものがヒットします。
アメリカ合衆国でも日本でも最近は「なにかを忘れさせるもの」がヒットします。つまり、現実を直視せずに済むものです。そういった欲求を満たすものとして娯楽作品があるのですが、優れた作品はそれだけではないのです。
一見すると現実を直視せずに済みそうな作品でも、観終わったときにはただの気晴らしでもなぐさめでもなく、新たな一歩を踏み出したくなるような、現実の問題に立ち向かう勇気をいつのまにか与えられたかのような作品は、人々の心のにも深く残るのです。
「ザスーラ」と「ALWAYS 三丁目の夕日」はどちらも一見すると現実逃避の作品に思えるでしょう。
レトロとCG映像とパラレルワールドという似た題材を使っていて、親子で観れそうな雰囲気であることから、日米の違いこそあれ、作品の性格は同じだと思われのは致し方ないと思います。
でも、観終わったあとに残るものがあるのは「ザスーラ」です。
「ザスーラ」のラストでは、パパと娘・息子たちは家を出ます(出発)。
「ALWAYS 三丁目の夕日」では、鈴木一家が丘の上で夕日を眺めています(静観)
「出発」という行動。
「沈む夕日を眺める」という静観。
このように、一見すると同じような作品でも、作品の終わりは正反対です。
日米が同じような気分に包まれていて、同じような題材や構造を持つ作品を作っても、そこには大きな違いが現れました。
一見すると後ろ向きの現実逃避の娯楽作品のようでありながら、映画作品を観て「再生」を図り、新たな一歩を踏み出す「行動」へつなげようという「意識」を「ザスーラ」からは読み取ることができます。
たとえ後ろ向きに転んでも、タダでは起きない「ど根性」があるのです。
■ ひとこと
子供向けといってしまえばそれまでだけど、例えばあなたがテレビを点けたら偶然に「志村けんのバカ殿様」が放送していたら観ますか?
私は観ます。志村けんさんの笑いはだれにでもわかる笑いです。パパもママもおじいちゃんもおばあちゃんも息子も娘もみんなが一緒に楽しめます。
「ザスーラ」もそうです。楽しめるだけじゃなくて、家族とは? 兄弟とは? という、ちょっと教訓的なお話として観れるのです。それはまるで現代のおとぎ話のようでもあります。
子供と一緒になにか映画を観ようと思っているパパさんママさんへ。
「ザスーラ」をオススメします!
何気に姉のリサのキャラクターが重要です。お笑い担当の役割をしっかり担っています。
もちろんウォルターとダニーの演技あってこそというのは言うまでないですネ。
笑いの「間」の基本がぎっしり詰っています。お笑いの勉強にも最適です。
ほんと、いろんな意味で「うまい」ですね!
俳優ファン 中向 ティム・ロビンスのパパぶりがみれる
ファミリー 向 パパもママも安心して見れるよ
デート 向 楽しく盛り上がれるよ
フラっと 向 年末にいい拾い物をしたのぉ
脚本勉強 向 基本の教科書としよう
笑い 向 前フリ、登場シーンをみよ。全編コント!
リアル追求 不向 宇宙にお家が漂ってますから!
謎解き 不向 お約束連発です。
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Comments
トラバありがとうございました。
なるほどと思う言葉がいっぱい詰まった解説ですね。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by: tomo | 12/20/2005 01:22
>tomoさん
コメントありがとうございます。
テーマパークって表現いいですね。それに記事のタイトルがどれも個性的で勉強になります!こちらこそよろしくです★
Posted by: わかスト@管理人たか | 12/20/2005 20:06
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