ステルス(STEALTH)
監督:ロブ・コーエン
アメリカ/2005年/120分
【例えるなら)透明マント使って他人の庭で試験段階の自動調理器を使ってバーベキュー。機械が壊れて半焼き肉が他の庭へ飛び火! 肉を食べたくて回収に向かうも各庭はさらに燃えつづけ、番犬や住人に被害が広がる。肉を回収して自分のモノにしたらあとは知らん顔。二重にツッコめる典型的お約束作品。
ストーリー(概要)
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アメリカ合衆国。近未来。
アメリカ海軍のテロ対策プロジェクトのひとつであるステルス戦闘機による任務には3人の優秀なパイロットが選ばれた。3人のチームに新しい仲間が加わることになった。それは最新鋭の人工知能を搭載した無人ステルス戦闘機だった。
ある日、雷にうたれた無人ステルス機は命令を無視して単独行動をはじめる。それを阻止しようとするパイロットたちのステルス機が次々と飛行不能になっていく。パイロットリーダーのベンはひとり、無人ステルス機を追跡する。
主な登場人物の紹介
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△ベン・ギャノン
男性。海軍大尉。ステルス戦闘機のトップパイロット。
△カーラ・ウェイド
女性。海軍大尉。ステルス戦闘機のパイロット。
△ヘンリー・パーセル
男性。海軍大尉。ステルス戦闘機のパイロット。
▽エディ(E.D.I)
人工知能搭載無人ステルス戦闘機
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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(例えるなら)透明マント使って他人の庭で試験段階の自動調理器を使ってバーベキュー。機械が壊れて半焼き肉が他の庭へ飛び火! 肉を食べたくて回収に向かうも各庭はさらに燃えつづけ、番犬や住人に被害が広がる。肉を回収して自分のモノにしたらあとは知らん顔。二重にツッコめる典型的お約束作品。
■ ツッコみどころ満載のお約束アメリカ合衆国プロパガンダ作品
ふつうに観たら、とんでもなく手間のかかった皮肉満載のコントみたいな作品だ。他人の庭で勝手にバーベキューしていろんなところを火事にして大好きな肉だけ回収してめでたしめでたし――そんなアホな! てなことをものすご~くお金をかけて、ものすご~い映像技術を使って、ものすご~く大真面目に作っている。それがハリウッドのものすご~いところだ。
ハリウッドでは定期的にアメリカ合衆国万歳のプロパガンダ作品が登場する。たとえば「インディペンデンスディ」「ティアーズ・オブ・ザ・サン」といった作品だ。これらの作品はアメリカの正義を旗印に他の国を助けたり、自国の安全を守るために戦う者を膨大な資金や最新の技術を投入して制作したものだ。
アメリカ合衆国はさまざまな人種、民族、宗教が入り混じっている国なので、アメリカ合衆国の正義と行動をわかりやすい形で示していく必要がある。そのためのひとつに使われれるのが映画なのである。
「ステルス」はやっていることはめちゃくちゃだが、格好良くみえる迫力ある映像作りは他の国ではとうていできないだろうと思わせるほどだ。
■ お約束の典型がぎっしり
危機が迫った。――世界の運命はこの3人の手に託された。
その3人の構成パターンはだいたい決まっている。白人男性。白人女性。そして黒人男性だ。アメリカ合衆国ではアフリカン・アメリカン(アフリカ系アメリカ人、アメリカ黒人)、いわゆる黒人の存在を抜きにはできない。いまやあらゆる要職にアフリカン・アメリカンが就いている。その一方で貧困層での割合は高く、作品中においての主要な登場人物のひとりはかならずといっていいほどアフリカン・アメリカンであり、映画の中での活躍に黒人の観客は胸躍らせるのだ。(日本人だって、ハリウッドで渡辺謙が活躍すれば嬉しいものだろう)
こうした典型的なメインキャラクター構成にあって、さらに恋が生まれる。ベンとカーラの仲が進展の兆しをみせるのだ。彼らは同僚であり(仕事による障害)、さらにカーラは海軍内では良き家柄とコネクションを持っており、実力でトップにのし上がってきた、叩き上げのベンとは身分が違うのである(身分の差による障害、ゆるされない愛、ロミオとジュリエット)。
そしてテクノロジーの反乱。人工知能搭載無人ステルス戦闘機エディが暴走するのだ。これもお約束。
さらに「ステルス」のすごいところは、エディの暴走はほんのきっかけに過ぎないとこうことだ。
■ 大きな悪役が存在しづらい時代に障害をどう作り出すか
テロや紛争といった時代に突入した現代にあって、映画でも巨大で明確な「悪」を設定することが難しくなっている。そんなわけで、待っていても危機は発生しない。ならば自分で作り出すしかないということで、自作した機械がなんと!落雷ひとつで暴走して危機と障害を作りだすことにしたのだ。
エディの暴走をきっかけにして、戦闘シーンがはじまり、パイロットのひとりのカーラが国交のない国にパラシュート降下することになる。
こうして一生懸命世界中に火種を振り撒いてるやん! っていうかステルス戦闘機とそれに関わる人達こそ世界の危機を作り出しているやん! とツッコむ作品を、どんだけ金かけてどんだけ最新技術使ってどんだけ大真面目に作ってるんや! と二重にツッコむ――そんな作品である。
■ エンドクレジットの後にもシーンがある
↑といった意味の文字が作品の冒頭に表示される。どんな作品でも最後まで席を立たないようにしているが、作品がはじまる前に予告するぐらいだから、よっぽどの仕掛けやサプライズがあるのかも、とちょっと思った。
ある意味、お約束過ぎてサプライズしまった。
「ステルス」は最後の最後まで「お約束」を忘れない。その徹底ぶりには脱帽だ。
補足:お約束とは言い換えれば、どこかで観た事があるけどそれがあるとなんとなく安心するようなもの。例)水戸黄門の印籠
■ マクロスの空中(宇宙)バトルシーンがCGで!
「超時空要塞マクロス」という日本のアニメーション作品がある。このアニメに登場するバルキリーという戦闘機(ロボットにも変形する)が空中戦(宇宙戦)でみせるミサイルの軌道の描き方が独特でインパクトのあるものであり、その世界(?)では有名だ。
そのマクロスのシーンを彷彿とさせるシーンを「ステルス」で観ることができる。
マクロスときいてピンときた方は「ステルス」の空中バトルシーンだけを目当てに観に行ってもいいだろう。
■ ひとこと
街中のビルひとつ崩して、周囲への被害ゼロってことにしてたような…そんなゼロなワケないだろう。もうブラックなコントとして観るしかないゾ。
戦闘機がメインなのに、空軍じゃなくて海軍が舞台。なんで? という疑問をお持ちの方にはこちらの記事がおススメ。いつもながら、または以上にますます読み応えアリまくりです↓
(まつさんの映画伝道師)「ステルス」
マクロスにピンときた方や戦闘機に興味ある方向け。
アメリカ万歳は苦手もしくはうんざりな方、新鮮なサプライズを期待する方には向かないだろう。
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Comments
TBありがとうございました。
ストーリーのヒネリが少ないですね。
でも、アクションはOK.
TBします。
Posted by: abroaddiary | 10/23/2005 02:17
トラックバックあrがとうございます。で、またまたお勧めいただき恐縮です。
この映画はド迫力エアバトルに大音響で映画館鑑賞にはむいているのですが、如何せん描写に問題ありまして・・・フィクションなんだから目くじら立てるなといわれそうですが、被爆国に住むものとして目くじらたててみました(^^;
Posted by: まつさん | 10/23/2005 03:50
>abroaddiary さん
コメントありがとうございます。
CGを使った映像は斬新でしたよね。デジタルドメインが背景をCGで作ってるとか。いやはや映像技術の進歩はすごいですネ。
>まつさん
コメントありがとうございます。いつもお世話様です。ほんとうは日本で上映しちゃマズイんじゃないのかとも思える内容や描写ですよね。そのあたりをきちんと書いてらっしゃるまつさんの記事はキラリと光っておりました!
Posted by: | 10/23/2005 12:13
TBありがとうございました。
何事も『わかりやすく』ということ、とても大切ですよね。この土日も映画を観てきたのですが、TBして頂いた後でしたので、1本の映画をただ見るのではなく、「で、何が言いたいんだ??」ということを考えながら、いつもとは少し異なった視点で映画をみることができたと思いました。ありがとうございました。
Posted by: 凛音(りおんたいむ) | 10/24/2005 09:21
こんにちはTB有り難うございました。こちらからもさせて頂きました。
ストーリーはアメリカ万歳的な物でしたね。簡単で先が読めすぎちゃったんですが、たまにはいいかなと思ってます。
また遊びにきます!
Posted by: masu | 10/24/2005 13:41
>masuさん
コメントありがとうございます。
そうですね、お約束が満載ですが、それもまた「味」ですから☆よろしくです☆
Posted by: わかスト@管理人たか | 10/26/2005 16:30
>凛音(りおんたいむ)さん
コメントありがとうございます。
そうですね、人によって観方はいろいろですし、作るほうもいろいろな狙いがあるでしょうから、そのあたりを推測しながら観ると、どんな作品も推理モノみたいにも楽しめますよね☆
今後ともよろしくです☆
Posted by: わかスト@管理人たか | 10/26/2005 16:33
TBありがとです~。
すばらしい例えだと思います(笑)
Posted by: ♂ | 10/27/2005 00:43