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10/31/2005

私の頭の中の消しゴム

「私の頭の中の消しゴム」
(A Moment to Remember Eraser In My Head)

監督:イ・ジェハン 
韓国/2004年/117分

主演女優が魅せる様々な表情が見どころの、韓流というオブラートに包まれてノスタルジィさえ感じさせつつ、熱いパワーと勢いを感じさせるオタスケマン使用の恋愛スートーリー。儒教、不倫、赦し、父権。韓流ドラマ・映画が日本でヒットするワケとは? ついに韓流ヒットの構造が明らかになる!? ヨン様大人気の秘密に迫る! 実はおかんよりおとんが韓国に行きたがるのはなぜ?

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
もの忘れが多いスジンは不倫相手と駆け落ちに失敗した日、コンビニエンスストアで男性と出会い、恋に落ちて結婚する。
しかし、スジンは記憶が消えていく病が進行して、やがて夫のことさえもわからなくなっていく……。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△チェ・チョルス
 男性。建設工事現場監督

△キム・スジン
 女性。会社員。社長令嬢

△ソ・ヨンミン室長
 スジンの上司。不倫相手


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
主演女優が魅せる様々な表情が見どころの、韓流というオブラートに包まれてノスタルジィさえ感じさせつつ、熱いパワーと勢いを感じさせるオタスケマン使用の恋愛スートーリー。儒教、不倫、赦し、父権。韓流ドラマ・映画が日本でヒットするワケとは? ついに韓流ヒットの構造が明らかになる!? ヨン様大人気の秘密に迫る!実はおかんよりおとんが韓国に行きたがるのはなぜ?

■ オタスケマンとは?

ストーリー作りにおけるオタスケマンとは?子供、動物、病気、死。これらはトランプでいえばジョーカーみたいなものです。子供だから、動物だから、病気だから、死ぬんだから(死んだんだから)と言われたら、とりあえずどうすることもできないからです。

趣味だからと言われれば、いいご趣味ですね、のほかは言い様がないのと同じように、オタスケマンを使えばとりあえず無難に「劇的」にすることができます。

でも、だからといってオタスケマンばかりを使った作品がヒットするかというと、最近はかならずしもそうはいかないようです。

「赤い疑惑」に代表される「赤いシリーズ」という山口百恵主演の、日本の70年代を代表するドラマ群がありました。病気、災害、負傷といったあらゆる「不幸話」をてんこもりにしたこのシリーズは当時大ヒットしました。
しかし最近、30年ぶりにTBSでリメークされて放送されたましたが、予想以下の視聴率だったようです。

日本ではもう、不幸話を大マジメにしてもウケないのです。
つまり、オタスケマンだけではヒットを飛ばすことが難しくなっているのです。

かといってオタスケマンの効用が薄れたかというと、そうでもありません。ポイントはオタスケマンの使い方にあるのです。


■ 現代におけるオタスケマンの効果的な使い方

オタスケマンを大マジメに使ってもウケなくなった現代日本。ではどう使ったら効果的なのでしょうか。

参考になるのは映画「いま、会いにゆきます」です。

「いま、会いにゆきます」作品レビュー

オタスケマンをフル使用しつつも、ある「仕掛け」によってヒネリのある純愛物語になったこの作品は「不幸話」におけるターニング・ポイント的な作品です(そもそも「不幸話」とはいえませんが、ここでは便宜上「不幸話」とします)。

「いま、会いにゆきます」の大ヒットで日本における「不幸話」の使い方と方向性が見えてきたはずですが、赤いシリーズのリメイクにはそのあたりがほとんど反映されていなかったようです。

それはさておき、オタスケマンのほかの効果的な使い方に「観客にそれをオタスケマンと意識させない」というものがあります。

参考になるのは映画「「ぼくセザール 10歳半 1m39cm(MOI CESAR 10ANS1/2 1m39)」です。

「ぼくセザール 10歳半 1m39cm(MOI CESAR 10ANS1/2 1m39)」作品レビュー

この作品ではオタスケマンとして子供が使われています。しかしながら、子供目線でストーリーが進行していくために「子供というオタスケマン」を使っていることを観客に意識されにくいようになっています。これは観客の感情移入とリンクした巧みな技のひとつです。詳細は作品レビューどうぞ。

さて、ブームというのは20~30年周期でやってくるといいますから、70年代の「不幸話」が再びブームになってもおかしくないのに、なぜリメイク版「赤いシリーズ」がヒットしなかったのでしょうか。

「いま、会いにゆきます」や「ぼくセザール~」を例に検証した結果わかることは「不幸話を大真面目」にしてもウケないということです。

日本で「不幸」を題材にする場合は、SF的要素と組み合わせたり(「いま、会いにゆきます」)、自虐ネタとして笑いに転化する(ピン芸人ヒロシ)のです。
つまり、豪速球のストレートばかり投げていても、的がズレれば肩を痛めるだけなのです

でもでも、実は日本国内でも大真面目にオタスケマンを使って大ヒットしているものがあるんです!


■ 韓流の基本要素

大真面目にオタスケマンを使ってヒットしているものとは、韓流ドラマ・映画です。
これについて「私の頭の中の消しゴム」で検証してみましょう。

・階級差
スジンは社長令嬢です。一方チョルスはスジンの父が経営する建築会社で働く建築現場監督です。お嬢様とガテンな男の恋愛。異質と思えるふたりの劇的な出会いはラブ・ストーリーの基本ですね。

・親の反対
建設会社社長であるスジンの父は、いち労働者にすぎないチョルスと娘の結婚をよしとしません。「家はあるのか?」「明日から仕事にこなくていいからな」と娘から引き離そうとするスジン父。

・育った環境の違い
スジンは家族の愛に包まれた育ちました。一方チョルスは幼いときに母親に捨てられ、土建の棟梁の丁稚奉公として辛く厳しい日々送りながら育ちました。
人はひとりで生まれてひとりで生きていくもので人生は辛いものだ、というチョルスは母親を許すことができません。スジンはそんなチョルスに母親と会うよう強く勧めます。

・病気
出会いから結婚生活にいたるまで様々な障害(コンフリクト)を乗り越えてきたふたりに、ついに病気が襲いかかります。

こうしてみると「私の頭の中の消しゴム」には、いわゆる「ベタな題材」がてんこ盛りだということがおわかりいただけたと思います。

「電車男」にみるように、ベタこそヒットの可能性を大いに秘めているのですが、日本制作のドラマや映画においてはベタにするにもそれなりの仕掛けが必要です(お嬢様とヲタク青年の恋)。

映画「電車男」作品レビュー


■ 儒教と不倫と赦し

スジンは会社の上司と不倫して駆け落ちする予定でした。――不倫。あぁ、ありがちだね。と思ったアナタ。たしかにそのとおりですが、韓国で不倫というのはかなりすごいことなのです。

韓国では純潔を伝統的な美徳としていることもあり、また儒教的な規範が根底にあるので不倫に対するリアクションというのは日本人のそれとは温度差がかなりあるようです。

けっしてこの扉を開けてはいけないよ、といわれればドアのノブに手を伸ばしてみたくなるのが人というもの――。ということで、反道徳的かつ反社会的とされればされるほどに、熱く深く反応する対象のひとつが不倫なのです。
そんな不倫をしたスジンは、韓国社会において社長という立場もあって世間体が気になる父にとって頭痛のタネであるはずなのです。しかし父は娘の不倫という罪を赦して受け入れるのです。

許しという愛を受けたスジンは、母親を赦せないでいるチョルスに、自分が父に赦されたようにあなたも母親を赦すよう願うのです。

スジンはいいます。
赦すとは心の部屋をひとつ空けること――。


■ 父権が生きている国

韓国には父権が生きています。年上の男性というだけで敬意を払われるというのは、日本ではあまり見かけなくなっています。

日本では、大人たちの見栄や嘘がすでに子供たちにバレちゃってます。そして今は辛いけど、未来は良くなるという夢を見ながらお父ちゃんを盛り立てて逆境を乗り越えていこうという時代でもありません。

古き良きものは残しつつも、古き弊害をいかに早く取り壊すかが問題となっている日本において、年上の男性だからというだけで尊敬され敬意を払われるなんてことはほとんどなくなってきたといっていいでしょう。

だからおとうちゃんは韓国に旅行にいきたがります。父権がまだ生きている国に哀愁と憧れを抱くからです。


■ 韓流ドラマ・映画が日本でヒットするワケ

女性からみても、強くやさしい男というのは理想のひとつです。威張るだけの亭主にはうんざりだけど、イザというときは力強く家族を守ってくれて、普段はやさしさで包み込んでくれる。日本にそんな理想的な男がいるでしょうか。石原裕次郎みたいな男は、高度経済成長期のドラマや映画にしか登場しません。

仮に大マジメに不幸話を題材にして「裕次郎みたいな頼れる男」を復活させたとしても、観ているほうが気恥ずかしくなってしまいます。

でも、それが海外モノというオブラートに包まれることで受け入れ易くなります。音声は韓国語で字幕は日本語というのがいいのです。

日本語で聞いたら思わず身をよじりたくなるようなクサいセリフも、外国語の音声と日本語字幕になると素敵に聞こえてくるのです。

さらに、韓流ドラマや映画には、日本ががむちゃらに突っ走ってきた高度経済成長期の熱気やパワーを感じさせるものがあります。

出口の見えない不安な時代といわれてウン年……。そんな日本国内にあって昭和の勢いと熱気を思い起こさせてくれる韓流は、過ぎ去りし過去が思い出に変わったノスタルジィさえも感じさせてくれるのです。

こうした韓流の特徴を見事に体現しているのがペ・ヨンジュンです。微笑みというやさしさと、完璧な筋肉バディ(力強さ)を併せ持ったヨン様が大人気であるのには、大いに頷けますね。


■ 基本をコツコツと

作品の前半は、身分の違う二人の恋愛ストーリーを丁寧に描いています。身分の差、親の反対、家族との葛藤を克服していく度にふたりの愛の絆が深まっていく様子を、物忘れがひどいというペイ・オフ(伏線)をきっかけに出会う二人や、窓のない車でドライブという心ニクイ演出で丹念に描いています。

こうした前半のストーリーを観ていると、韓国のスタッフはハリウッド映画をはじめとして、古今東西の物語をよく勉強・研究して、奇抜なことをすることなく基本をコツコツと丁寧に積み重ねているのが伝わってきます。

チョルスがなかなか「愛している」と声に出して言わないあたりが「ゴースト」を彷彿とさせてちょっとベタ過ぎるかな、という気もしますが、それが韓流なのかもしれないですね。

また、チョルスが現場監督から建築士にステップアップしていくのを支えるスジンという構図も、サクセスストーリーの要素を取り入れると同時に、建築士→家を建てる→精神的に安らげるところという意味のHOMEを築く、というように作品内容とリンクしている様子を表すための計算された設定であることがわかります。

家を建てる→HOMEというの基本設定は他の映画でもよく目にすることができます

「海辺の家(LIFE AS A HOUSE)」作品レビュー

「砂と霧の家」

ちなみにスジンがチョルスの建築士試験終了まで帰らずに待っていたあたりでは「NANA」で奈々(ハチ公)が寒空のなかで恋人のバイトが終わるのを待っていたシーンを思い出しました。

帰っていいよと言われて、帰ったと思わせておいて実は待っている「けなげな女」を演出するなんてこと、女の子ならだれにだってそういうところにうんうんあるある!って頷いてしまいますよね。そんな細かい演出もちゃぁんとしていんですヨ。

「NANA」作品レビュー


■ ひとこと

スジン役のソン・ウェジンが、シーンや服装ごとに実に様々な表情を魅せてくれます。日本の俳優で例えるならば、あるときは竹内結子、あるときは西村知美、またあるときはユンソナ、またまたあるときはさとう珠緒。どれひとつとして同じ雰囲気のシーンがないのは、俳優として非常に多くの引き出しをもっていることの表れでしょう。

アルツハイマー病の症状についてはかなり正確に描写されているようです。

また、この作品は日本のドラマ「ピュアソウル」のリメイクだとか。

記憶を扱った恋愛映画をいくつか紹介しましょう。

「エターナル・サンシャイン(ETERNAL SUNSHINE OF THE SPOTLESS MIND)」作品レビュー

「バタフライ・エフェクト(THE BUTTERFLY EFFECT)」作品レビュー

「私の頭の中の消しゴム」は全体的にとても丁寧に作られた感動スートーリーです。でもラストシーンがちょっと作りすぎた感はあります。コンビニエンスストアとコーラという出会いのアイデアはすばらしのですが、そのために作り手もこれにこだわってしまったようです。例えばカードゲームの伏線を生かしてもう少し「偶然っぽく」さりげなくしたほうが余韻を残せて良かったと思うのですが……。そのあたりは韓流の「味」なのかもしれませんね。

ひさしぶりにまっさらに感動したい人、基本に立ち返ってストーリー作りや演出を勉強し直したい人にオススメです。

派手な愛憎劇や作品づくりにおける仕掛けを期待する人には向きません。


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10/25/2005

蝋人形の館(HOUSE OF WAX)

監督:ジャウム・コレット=セラ
アメリカ/2005年/113分 R-15

大掛かりなセットと手間をかけて作られたアメリカの典型的恐怖劇。「ステルス」の精神的・心理的背景を描いている? ジャパニーズホラー「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」との類似点やヒットの秘密も明らかに!

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
カーリーとその親友のペイジはそれぞれ恋人を連れ、またカーリーの兄ニックとその友人も一緒に大学フットボールの試合を観戦するために車で移動していた。こうして6人の若者たちは近道をして深夜の田舎道を走り、途中のでテントを張って一泊することにした。
翌朝、車のファンベルトが切れていたために、近くの町へやってきたカーリーとその恋人ウェイド。カーナビの地図にも載っていないそこ(ルイジアナ州の田舎町アンブローズという名の町)は、丘の上に蝋人形の館が建っている、人影がない閑散とした町だった。
蝋人形の館に足を踏み入れたときから、若者たちが次から次に襲われて命を落としていく。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△カーリー
 女性。大学卒業後にNYの出版社でインターンとして働く予定。

△ニック
 男性。カーリーの双子の兄。

△ペイジ
 女性。カーリーの親友

△ボー/ビンセント
 男性。町のガス・ステーションの経営者

△ウェイド
 男性。カーリーの恋人


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
大掛かりなセットと手間をかけて作られたアメリカの典型的恐怖劇。「ステルス」の精神的・心理的背景を描いている? ジャパニーズホラー「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」との類似点やヒットの秘密も明らかに!

■ 国や地域による「恐怖」の違いとは?

「蝋人形の館」はアメリカンホラーの典型です。ほかに似たような系統で比較的最近の作品では「クライモリ」があります。どちらも基本は「身体的な恐怖」です。

見知らぬ土地で、異質な者に襲われて傷を負わされたり殺されたりといった、直接的に身体に襲い掛かってくる危険に対する恐怖です。

農耕か狩猟かという大雑把な分け方をすると、アメリカ合衆国は「狩猟」タイプです。フロンティアを目指して西に進み、狩猟(土地を奪って)きたという歴史があります。奪う者がいるということは、奪われる者もいるということで、いつ自分が奪われる側になるかもわからないので自衛します。
すると、奪う奪われるの関係は、ほんのわずかの力関係で逆転することがあるので、いつもビクビクして暮らしていなければなりません。そのため、裕福な人たちは集まって共同で用心棒を雇って自分達が住む地域を警備させるなんてこともします。

そういうわけで、アメリカ的な恐怖の対象は「霊」や「お化け」よりも、見知らぬ異質(だと感じる)相手(人間)なのです。

アメリカ合衆国の恐怖作品をいくつか思い出してみてください。そのほとんどの典型は「若者数人が田舎で殺人鬼に襲われる」というものだということに気がつくでしょう。「ジェイソンシリーズ」も「死霊のはらわた」(←これはある意味コント)「クライモリ」そして「蝋人形の館」。どれもストーリーの基本型は同じです。

車で移動 → 見知らぬ土地 → 異質な他者 → 意味もわからず襲われる → 理不尽な恐怖 


■ アメリカ人にとってかなりこわい「理不尽な恐怖」

実は、直接的に身体に襲いかかっていくる危険は、表面的な恐怖に過ぎません。アメリカ人が一番怖いと感じるのはおそらく「理不尽な恐怖」なのです。

ジェイソンに襲われる若者たちも、「クライモリ」で森に迷い込んで襲われる若者たちも、なぜ自分達が襲われて殺されなかればならないのかわかりません。たしかなことは、見知らぬ土地に足を踏み入れてしまったために襲われているということです。だから登場人物たちはいつもこう言います「はやくここから抜けだそう」――と。そして脱出だけを試む者は次々に殺害されます。そこで、危険の元を潰そうと主人公たちが戦いを挑みます。こうして最後には恐怖の元を叩き潰して、主人公+ひとりといった人数だけが生き残るのです。


■ アメリカンホラーとベトナム戦争

アメリカンホラーの典型を、ベトナム戦争を例に考えてみましょう。

自国から遠く離れた異国(見知らぬ土地)でベトコン(異質な他者)と戦うアメリカ兵たち。自分達は世界の平和のために戦っている(正しいことをしている)のに、なぜ彼ら(ベトコン)は攻撃してくるのか。次から次に戦友が命を落としていくなか、異質な他者を排除しようとやっきになるが、地の利は相手にあるためにうまくいかない。それでも大事な戦友をひとりでも多く救い出して脱出しようとする。

これは、アメリカンホラーと構造が似ていませんか?


■ どこかにあるかもしれない恐怖の芽は早めに摘み採っておく?

「蝋人形の館」のレゾリューション(解決)シーンで、救急車をはじめとする車両や保安官達が町にたくさんやってきます。そして傷の手当てを受けている登場人物のひとりが「どうしていままでこの町のことに気がつかなかったんだ」ということを訊きます。すると保安官は「10年前に工場が閉鎖されてから地図にも載っていないのでわからなかった」といった意味のことを答えます。

知らない場所で、知らないうちに自分達の安全を脅かすものがある。もしそういうものをちょっとでも見つけたならば、それがやがて大きな危険になるまえに叩いておこう。

そんな、いつもビクビクせずにはいられない心裡がよく表れているのが例えば「ステルス」なのかもしれません。
「ステルス(STEALTH)」 作品レビュー


■ 「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」がアメリカ合衆国でヒットしたワケとは?

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」の恐怖の本質とはズバリ「理不尽な恐怖」です。これにいち早く気がついたのがサム・ライミさんです。「スパイダーマン」や「死霊のはらわた」の監督でもある彼は、呪怨にアメリカ人にとってすごく怖い要素をすぐに嗅ぎとったのでしょう、「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」のプロデューサーをしています。彼は監督としてだけでなく、プロデューサーとしても凄腕のようですね。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、主人公のアメリカ人女性カレンは見知らぬ土地(日本)で異質な他者(日本人)に出会い、ある一軒家に足を踏み入れたことから、意味もわからず襲われるようになります(理不尽な恐怖)。

そもそも、アメリカ人にとって不慣れな外国生活は不安に包まれて緊張感を強いられているためにそれだけで苦痛なのに、ある一軒家に足を踏み入れただけで襲われるとうのは、かなり恐ろしいものなのです。

こうしてみると「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」での日本を「蝋人形の館」でのルイジアナ州の田舎町アンブローズに置き換えてみることもできるでしょう。

さらに「呪い」という異国の異質なニオイがプンプンする要素が新鮮で、なおかつビデオデッキやテレビなどの電気製品で身近だと思っていた日本が実はとんでもないアメージングワールドだということで、やはり(?)摩訶不思議意な国だったのか! という思いも手伝って、アメリカ人にとっては新鮮な恐怖としてのインパクトが強かったようです。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、ある一軒家に足を踏み入れただけで、アメリカ人であろうと日本人ろうと襲われるのですから、まさにアメリカ人に合った(好みの)「理不尽な恐怖」をより一層異質な土地で体感させてくれたというのが「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」ヒットの要因だといえるでしょう。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」作品レビュー
清水崇監督/2004年/アメリカ/99分

新鮮な恐怖(1)―「呪怨(日本版)」―

新鮮な恐怖(2)―「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」―

みんなでワイワイ―「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」―


■ 映画のために作られた町 

ルイジアナ州の架空の町アンブローズは、映画の撮影のために作られた町です。映画のために町をひとつ作っちゃったんです。ガス・ステーション、ペットショップ、映画館、理髪店、雑貨店、民家、教会。それにトルーディーの蝋人形館。どれも映画のためだけに作られたというのですから、実はかなり大掛かりなセットを使っているのです。

さらに、蝋人形館のセットには20トンもの蝋が使われたとか。映画のクライマックスでドロドロと溶けて崩れていく蝋人形館のシーンはかなり貴重なものですよ。なにせあれだけたくさんの蝋が溶けていくことなんて日常生活ではまず見れませんから!

「蝋人形の館」で使われた人形はすべて、実際の人間の複製です。エキストラさんの体の型をとって、それを元にファイバーグラスとシリコンの型が作られたのです。というわけで、作品に登場する蝋人形とそっくりな外見の方が実在するということなんですね。

あなたの家の居間に、自分そっくりな蝋人形を一体いかがですか?(笑)

 
■ ひとこと

町の映画館では『何がジェーンに起ったか?』(1962年)が上映されています。作品の内容が、兄弟姉妹というキーワードで共通しているそうです。

アメリカンホラーのお約束、巨乳系のおネェちゃんが登場します。

いわゆる恐怖劇ですので、怖いものが苦手という方には向きません(あたりまえですね^^;)
それと、痛系のシーンがけっこうあります。

国や地域による恐怖の対象と描き方に興味がある方にはよいお手本となるでしょう。

TVドラマ「24 TWENTY FOUR」で人気のエリシャ・カスバート(カーリー役)のファンの方、ホテル王ヒルトンの令嬢でセレブリティのパリス・ヒルトンの噂の死に様(?)をご覧になりたい方はどうぞ。


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大ヒットにはワケがある! 『NANA』大ヒットの秘密を解き明かす特別緊急レポート!
「『NANA』と『下妻物語』(+「R2-D2」)に共通する大ヒットの秘密とは?」

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10/23/2005

カットバックで迫力倍増―「ステルス」―

インパクトのある広告を作りたい。もしくは手の込んだ広告を作ったのでより一層インパクトのある方法を使ってひとりでも多くの人に観てもらいたい。

そんなときに手本になる映画をご紹介しましょう。
今回の作品はこちら。

-------------------------------------------
「ステルス(STEALTH)」
監督:ロブ・コーエン
アメリカ/2005年/120分

〈ストーリー(概要)〉
アメリカ合衆国。近未来。
アメリカ海軍のテロ対策プロジェクトのひとつであるステルス戦闘機による任務には3人の優秀なパイロットが選ばれた。3人のチームに新しい仲間が加わることになった。それは最新鋭の人工知能を搭載した無人ステルス戦闘機だった。
ある日、雷にうたれた無人ステルス機は命令を無視して単独行動をはじめる。それを阻止しようとするパイロットたちのステルス機が次々と飛行不能になっていく。パイロットリーダーのベンはひとり、無人ステルス機を追跡する。

作品レビューはこちら
---------------------------------------------

女性パイロットのカーラは損傷を受けた自機(ステルス戦闘機)が操縦不能になり、緊急脱出します。

まだパラシュートを開きません。かなりの高度から脱出したので、しばらくは重力のままに降下していきます。

しかし、ちょうどカーラの上空でステルス戦闘機が木っ端微塵になってしまいました。戦闘機の災に包まれた細かい破片が雨あられのようにカーラに降り注ぎます。

もし破片に当たったら怪我どころでは済まないかもしれないし、開く前のパラシュートに当たって壊れたら……。

それに、パラシュートを開いて、災に包まれた破片が当たったら、あとは地面に激突するだけになってしまいます。

そこでカーラはパラシュートを開かなかればならないギリギリの高度まで待ちます。その間も高速で落下しながら、降り注ぐ破片を避けようとします。


「戦闘機の災に包まれた破片が自分に向かって降り注いできます」
「破片に当たった! なんとか体勢を整えています」
「降り注いでいます! すごい数です。避けられない」
「パラシュートを開くギリギリまで待ちます」
「高度計をセットしなおしました」
「まだ降り注いでいます。高度ギリギリです!」
「パラシュートを開きます!」
「破片がパラシュートに当たりました! 貫通!」
「地面に落ちます!」

といったような意味の内容の通信が、作戦本部に入りつづけます。

災に包まれた破片を必死に避けようとスカイダイビング中の迫力ある映像の間に、作戦本部でそれを聞いてもどうすることもできない司令官たちのカットが幾度も挿入されます。

しかもカーラが降下している場所は、アメリカ合衆国とは国交がない国です。なんとか無事に着地できたとしても、救援隊を送ることはできません。


「ステルス」の空中シーンの背景はすべてCGで制作されているそうです。

このカーラの脱出・落下シーンはとても迫力のある映像となっています。これだけでも映像はすごいのに、さらに迫力を増す仕掛けがあります。

その仕掛けとは、カーラの脱出・落下の音声実況をただ聞きつけるしかない作戦本部のカット挿入です。

現場と作戦室とのふたつの視点を観客に提供することで、迫力のある映像だけでなく、作戦本部の指揮官の身になって想像もさせる、という2重のハラハラ感を演出しているのです。

これは映画ではよく使われるカットバックまたはクロスカッティングといわれる手法です。カットバックとは、場面のシーンを交互に撮影(映写)することで、臨場感や緊張感やハラハラ感等の効果をもたらす撮影技法です。


いい商品がある。すごくオススメの商品がある。では商品の映像だけをテレビで流せばOKでしょうか。

例えばこんなのはどうでしょう。
ラジオやポットキャスティングで特徴的な音楽とメッセージを流しておきます。そして今度はその特徴的な音楽と共に商品の映像を流すのです。

これは、予告(音声)と本編(映像)のスムーズな連動による演出効果を狙った例です。


カットバック技法とはつまり、視点を2つ以上持たせるということです。

映像だけでなく、音声も流す。

商品のAという使い方だけでなく、Bという使い方も提案する。


映画の基本技法――カットバック。

これをビジネスや人生にもどんどん活かしていきましょう。


【要点】……………………………………………………

●映画の技法――カットバックを活用しよう。

●見せたいものがあるなら、そのものズバリを提示するだけでなく、相手の想像力も刺激する工夫をしよう。

●ふたつ以上のものを交互に提供して、臨場感や緊張感をアップさせよう。


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10/21/2005

ステルス(STEALTH)

監督:ロブ・コーエン
アメリカ/2005年/120分

【例えるなら)透明マント使って他人の庭で試験段階の自動調理器を使ってバーベキュー。機械が壊れて半焼き肉が他の庭へ飛び火! 肉を食べたくて回収に向かうも各庭はさらに燃えつづけ、番犬や住人に被害が広がる。肉を回収して自分のモノにしたらあとは知らん顔。二重にツッコめる典型的お約束作品。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
アメリカ合衆国。近未来。
アメリカ海軍のテロ対策プロジェクトのひとつであるステルス戦闘機による任務には3人の優秀なパイロットが選ばれた。3人のチームに新しい仲間が加わることになった。それは最新鋭の人工知能を搭載した無人ステルス戦闘機だった。
ある日、雷にうたれた無人ステルス機は命令を無視して単独行動をはじめる。それを阻止しようとするパイロットたちのステルス機が次々と飛行不能になっていく。パイロットリーダーのベンはひとり、無人ステルス機を追跡する。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ベン・ギャノン
 男性。海軍大尉。ステルス戦闘機のトップパイロット。

△カーラ・ウェイド
 女性。海軍大尉。ステルス戦闘機のパイロット。

△ヘンリー・パーセル
 男性。海軍大尉。ステルス戦闘機のパイロット。

▽エディ(E.D.I)
 人工知能搭載無人ステルス戦闘機


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
(例えるなら)透明マント使って他人の庭で試験段階の自動調理器を使ってバーベキュー。機械が壊れて半焼き肉が他の庭へ飛び火! 肉を食べたくて回収に向かうも各庭はさらに燃えつづけ、番犬や住人に被害が広がる。肉を回収して自分のモノにしたらあとは知らん顔。二重にツッコめる典型的お約束作品。

■ ツッコみどころ満載のお約束アメリカ合衆国プロパガンダ作品

ふつうに観たら、とんでもなく手間のかかった皮肉満載のコントみたいな作品だ。他人の庭で勝手にバーベキューしていろんなところを火事にして大好きな肉だけ回収してめでたしめでたし――そんなアホな! てなことをものすご~くお金をかけて、ものすご~い映像技術を使って、ものすご~く大真面目に作っている。それがハリウッドのものすご~いところだ。

ハリウッドでは定期的にアメリカ合衆国万歳のプロパガンダ作品が登場する。たとえば「インディペンデンスディ」「ティアーズ・オブ・ザ・サン」といった作品だ。これらの作品はアメリカの正義を旗印に他の国を助けたり、自国の安全を守るために戦う者を膨大な資金や最新の技術を投入して制作したものだ。
アメリカ合衆国はさまざまな人種、民族、宗教が入り混じっている国なので、アメリカ合衆国の正義と行動をわかりやすい形で示していく必要がある。そのためのひとつに使われれるのが映画なのである。

「ステルス」はやっていることはめちゃくちゃだが、格好良くみえる迫力ある映像作りは他の国ではとうていできないだろうと思わせるほどだ。


■ お約束の典型がぎっしり

危機が迫った。――世界の運命はこの3人の手に託された。

その3人の構成パターンはだいたい決まっている。白人男性。白人女性。そして黒人男性だ。アメリカ合衆国ではアフリカン・アメリカン(アフリカ系アメリカ人、アメリカ黒人)、いわゆる黒人の存在を抜きにはできない。いまやあらゆる要職にアフリカン・アメリカンが就いている。その一方で貧困層での割合は高く、作品中においての主要な登場人物のひとりはかならずといっていいほどアフリカン・アメリカンであり、映画の中での活躍に黒人の観客は胸躍らせるのだ。(日本人だって、ハリウッドで渡辺謙が活躍すれば嬉しいものだろう)

こうした典型的なメインキャラクター構成にあって、さらにが生まれる。ベンとカーラの仲が進展の兆しをみせるのだ。彼らは同僚であり(仕事による障害)、さらにカーラは海軍内では良き家柄とコネクションを持っており、実力でトップにのし上がってきた、叩き上げのベンとは身分が違うのである(身分の差による障害、ゆるされない愛、ロミオとジュリエット)。

そしてテクノロジーの反乱。人工知能搭載無人ステルス戦闘機エディが暴走するのだ。これもお約束。

さらに「ステルス」のすごいところは、エディの暴走はほんのきっかけに過ぎないとこうことだ。


■ 大きな悪役が存在しづらい時代に障害をどう作り出すか

テロや紛争といった時代に突入した現代にあって、映画でも巨大で明確な「悪」を設定することが難しくなっている。そんなわけで、待っていても危機は発生しない。ならば自分で作り出すしかないということで、自作した機械がなんと!落雷ひとつで暴走して危機と障害を作りだすことにしたのだ。

エディの暴走をきっかけにして、戦闘シーンがはじまり、パイロットのひとりのカーラが国交のない国にパラシュート降下することになる。

こうして一生懸命世界中に火種を振り撒いてるやん! っていうかステルス戦闘機とそれに関わる人達こそ世界の危機を作り出しているやん! とツッコむ作品を、どんだけ金かけてどんだけ最新技術使ってどんだけ大真面目に作ってるんや! と二重にツッコむ――そんな作品である。


■ エンドクレジットの後にもシーンがある

↑といった意味の文字が作品の冒頭に表示される。どんな作品でも最後まで席を立たないようにしているが、作品がはじまる前に予告するぐらいだから、よっぽどの仕掛けやサプライズがあるのかも、とちょっと思った。

ある意味、お約束過ぎてサプライズしまった。

「ステルス」は最後の最後まで「お約束」を忘れない。その徹底ぶりには脱帽だ。

補足:お約束とは言い換えれば、どこかで観た事があるけどそれがあるとなんとなく安心するようなもの。例)水戸黄門の印籠


■ マクロスの空中(宇宙)バトルシーンがCGで!

「超時空要塞マクロス」という日本のアニメーション作品がある。このアニメに登場するバルキリーという戦闘機(ロボットにも変形する)が空中戦(宇宙戦)でみせるミサイルの軌道の描き方が独特でインパクトのあるものであり、その世界(?)では有名だ。

そのマクロスのシーンを彷彿とさせるシーンを「ステルス」で観ることができる。

マクロスときいてピンときた方は「ステルス」の空中バトルシーンだけを目当てに観に行ってもいいだろう。


■ ひとこと

街中のビルひとつ崩して、周囲への被害ゼロってことにしてたような…そんなゼロなワケないだろう。もうブラックなコントとして観るしかないゾ。

戦闘機がメインなのに、空軍じゃなくて海軍が舞台。なんで? という疑問をお持ちの方にはこちらの記事がおススメ。いつもながら、または以上にますます読み応えアリまくりです↓
(まつさんの映画伝道師)「ステルス」 

マクロスにピンときた方や戦闘機に興味ある方向け。

アメリカ万歳は苦手もしくはうんざりな方、新鮮なサプライズを期待する方には向かないだろう。


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10/19/2005

映画で学ぶ、わかりやすくする方法

映画のはじまり10分ほどをセットアップということがあります。

例えば主人公Aがトレジャーハンターだとします。

森の洞窟の入り口に立つ主人公A。松明を手に暗い洞窟の奥へ入っていくとコウモリに襲われ足を滑らせて洞窟内の川へ転落。

たどり着いた先には宝の山!

しかし洞窟に住む熊に襲われて逃げる途中、古代人が仕掛けたトラップにかかって矢じりが飛んでくる中を落とし穴を避けて走り、洞窟が崩れ落ちる寸前に一髪脱出成功。

ホッと胸をなでおろし、懐から金の像を取り出す主人公A。

そこへ相棒がやって握手しますが、一瞬の隙をつかれて金の像を盗られてしまう。

金の像を取り戻すべく主人公Aの新たな冒険がはじまる……。


以上のセットアップはアドベンチャー映画の典型的なセットアップの例ですが、この十数分ほどにこれからはじまる物語に必要な情報がすべて詰っています。

ためしにどれでもいいですから数本の映画のセットアップだけを観てみてください。すると以下の事柄がセットアップに詰っていることがわかるでしょう。


・主人公の仕事は何で、何を大事にしていて、何をしようとしているのか。

・主人公の目的達成を妨げるのは障害となるものはなにか。

・これからどのような物語がはじまるのか。


これらをできる限り観客の興味をひきつつ、インパクトのある展開で、しかも当然浮かんでくるであろう疑問に丁寧に答えて、さらに次のストーリー展開を予告する。

これらすべてをわずか十数分に詰め込んでいるんです。


映画のセットアップとは、観客の興味をひきながら作品の世界にスムーズに招き入れて、必要な情報を提供しつつさらなる興味をそそるものなのです。

これはつまり「わかりやすくする」ための最も良き手本のひとつなのです。

映画を観る時間なんてないよ、という方でも、作品のセットアップだけでもじっくり観てください。

観るならハリウッド映画よいでしょう。

お勧めはピクサーのアニメーション作品群です。


なにも机の向かって書物を読むことだけが勉強ではありません。

ソファでお菓子を食べながらくつろぎながら映画を観ても学ぶことはたくさんあります。

わかりやすくするには、まずあなた自身が楽しむこと。

人は、お金にもならなく、楽しくないことに時間を割きたくないものです。

楽しませることは、わかりやすくする基本でもあるのです。


映画を観て学ぶならこちら。

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10/08/2005

シン・シティ(SIN CITY)

監督:ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
特別監督:クエンティン・タランティーノ
アメリカ/2005年/124分 
原作:フランク・ミラー『SIN CITY』

原作の世界観を損なわないためという意味のある特殊映像を施した、悪の中でこそ光る善を描く作品。コミックの映画化の手法としては斬新で、映像によって世界観を描く際のひとつの答えを見事に披露している。「愛、情熱、忠誠、栄誉」の描き方という名の周波数がかすりもしない人には全く受け入れがたく、一般的に不快に感じる描写や演出が多く含まれている。

ストーリー(概要)
―――――――――――――――――――――
〈エピソード1〉
仮出所中のマーヴが高級娼婦の美女ゴールディと一夜を共にする。翌朝、愛をくれたゴールディは殺害され、濡れ衣を着せられたマーヴは真犯人を見つけ出そうとするうちに、巨大な悪の中心部に迫っていく。

〈エピソード2〉
ドワイトは恋人につきまとうジャッキー・ボーイを追い払う。ジャッキー・ボーイたちは娼婦たちの自治区のオールドタウンに行き、トラブルを起こして娼婦たちに殺される。これが原因でオールド・タウンは窮地に陥り、ドワイトは娼婦たちのために一人立ち上がる。

〈エピソード3〉
老刑事ハーティガンは引退の日に、誘拐された少女ナンシーを救出するが、犯人が街の権力者の息子だったために相棒にも裏切られ、瀕死の重傷を負わされ、濡れ衣を着せられてしまう。8年後、出所したハーティガンは再びナンシーに危機が迫っていると感じ、彼女を守ろうとする。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△ハーティガン
 老刑事。

△マーヴ
 仮出所中の男。

△ドワイト
 娼婦たちを守る男

△ナンシー
 ストリッパー。幼い頃にハーティガンに救われる。

△ジャッキー・ボーイ
 娼婦たちの自治区オールド・タウンにトラブルをもたらす男

△ケビン
 殺し屋

△ザ・マン
 女を狙う殺人者

△シェリー
 ウェイトレス

△ゲイル
 娼婦。娼婦たちの自治区オールド・タウンのボス

△ロアーク・ジュニア
 悪臭を放つ悪人。街の権力者の息子。

△マヌート
 ギャングの用心棒。オールド・タウンをおびやかす。

△ゴールディ/ウェンディ
 ゴールディは高級娼婦。ウェンディはゴールディの姉妹

△ミホ
 娼婦街の剣士。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
原作の世界観を損なわないためという意味のある特殊映像を施した、悪の中でこそ光る善を描く作品。コミックの映画化の手法としては斬新で、映像によって世界観を描く際のひとつの答えを見事に披露している。「愛、情熱、忠誠、栄誉」の描き方という名の周波数がかすりもしない人には全く受け入れがたく、一般的に不快に感じる描写や演出が多く含まれている。

■ コミック(漫画)原作を映像化するということ

コミックを映像化する際のポイントのひとつに背景をどうするか、というのがある。
コミックには風景カットがあるが、登場人物たちの会話のカットでは、背景がまったく描かれていないことがある。コミックを実写で映像化すると、たとえ登場人物をアップで撮ったとしても背景が映り込んでしまう。

この点について「シン・シティ」と「タッチ」を見比べてみよう。
2作品を見比べると、コミックの世界観を損なわないために、映像化においても背景に気を配るという目的は同じでも、手法が違えばこれほど違いが出るものかと関心する。


■ 背景をセットで埋めるか、CGで作るか。

映画版「タッチ」では朝倉家の喫茶店から両家の共同出資で建てた子供部屋にいたるまで、原作とそっくりにセットを作って撮影しているのがわかる。そのため映画では、原作では背景が描かれていない会話シーンでも、必然的に背景が映り込んでいる。
すると、原作に忠実にしようとすればするほど、原作では描かれない部分(背景)が映り込んでしまい、原作の雰囲気とのギャップが生まれてしまうという現象が起きる。
「タッチ」作品レビュー 

ちなみに映画版「NANA」は実写でありながら、原作の世界観を細部にいたるまで忠実に描こうと徹底している様子がスクリーンから滲み出ている。もちろんNANAの原作者が実際の風景(調布の川沿いの建物、実在の店、井の頭公園を源泉とする川沿いの道〈?〉)を元に漫画を描いているであろうことから、そのとおりの場所で撮影すればそれはそのまま原作の世界となりやすいというのはあるだろう。
たとえそうであっても「NANA」はコミック読者のイメージどおりの映像を作ることに成功している。成功の要因は、つくる側の作品への思い入れや情熱が本物であるという点に尽きる。
「NANA」作品レビュー 

「シン・シティ」はアリカンコミックの革命児といわれるフランク・ミラーの最高傑作と評されるグラフィック・ノベルズの映画化である。もともとフランク・ミラーが映画化の話を聞いたとき、彼は映画化を受け入れる気は全くなかったという。しかし監督のロバート・ロドリゲスは原作の世界観を損なうことなく映像化できることを知ってもらうために作品のオープニングシーンを先に撮影したという。それを観たミラーは映画化を受け入れただけでなく、なんと共同監督までしているのだ。

このいきさつからも、映画「シン・シティ」がいかに原作の世界観を損なわない映像世界を構築しているかがおわかりいただけただろう。原作者の太鼓判もあり、さらに本人も監督している作品なのだから。

背景を含めた映像はCG処理され、コミックそのままに全く背景が映り込んでいないシーンもある。それがかえって忠実に原作の世界観を映像化しているといえよう。


■ 悪の中でこそ光る善

ここに白いライオンがいるとしよう。かなり珍しい。なぜならたいていのライオンは白色ではないからだ。もしライオンというものは白いものだ、という通説・常識になっていれば、ここに白いライオンがいても珍しくはない。(ジャングルや動物園以外にいれば珍しいが)

ほかのほとんどのライオンは白くないけど、ここにいるライオンは白いんだよ。ということだからこそ、ライオンが「白い」ということがより一層強調されるのだ。

では、Aとは何かを定義する方法のひとつに、他の物と比べる、というのがある。Aではない他の物――できればAとは正反対の物Bがいい。Bと対比することでAの特徴が浮き彫りになるからだ。

「シン・シティ」においてもこの手法が使われている。つまり、善を描くために道徳・宗教上の罪悪=sinに溢れた街を舞台にしているのだ。

旧約聖書のソドムとゴモラは、そこに10人の良き人がいれば天からの火で滅ぼされることはなかった。悪に染まったソドムとゴモラにおいて、正しき人・ロトの救出の様子は旧約聖書の中でも有名な箇所だ。滅ぼされる街から逃げる途中に振り返ったために塩の柱になったロトの妻。そして塩分が非常に高いことで有名な「死海」の近くにあったとされるソドムとゴモラ。

はたしてシン・シティには善なる者が何人いるのか。罪との対比で描かれる善の姿とは?


■ タランティーノのギャラは1ドル

特別監督のクエンティン・タランティーノがワンシーン撮影している。そのギャラはなんと1ドル。これはたらンティーノが監督した「キル・ビルVol.2」の音楽をロドリゲスが作曲した報酬が1ドルだったからだという。
ちなみにタランティーノが監督したのは、ドワイトとジャッキーが車に乗っているシーンだ。タランティーノらしい色(カラー)が出ているのですぐにわかるだろう。


■ 周波数がかすりもしない人には全く受け入れがたい作品

「愛、情熱、忠誠、栄誉」の描き方という名の周波数がかすりもしない人には、はじまり10分程で映画館を出たくなるだろう。たいていの普通の人は、観終わった直後は気持ちいいものではなく、どちらかというと「ツラい」だろう。

映画に「ほんわかのほほん」や「当たり障りのない癒し」を求める人には全く合わない作品だ。

新しいもの、刺激的なもの、映画における主題のさまざまな描き方を見てみたいという方には向いている。

繰り返しになるが、周波数が合わない観客には耳障りで不快な雑音としか感じられないリスクを背負った作品だ。よってファミリー向けではなく、一般的なデート向きでもない。はじめてのデートで観るような作品でもない。


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10/02/2005

人気者になるには?―「となりのサインフェルド」―

人気者の特徴は?

学校のクラスの人気者を思い浮かべてみよう。いつもクラスメイトを笑わせていたり、サッカーがうまかったり、勉強はあまりできないけれどバンドを組んで活躍していたりと、いろいろな人気者を思い浮かべることができるでしょう。

○○くん(さん)といえば「○○」だ。というように、人気者には特徴があります。

髪型がちょんまげだとか、いつも赤いシャツを着ているとか、東京都内の学校なのに高知弁を話すとか。

人気者の特徴は、その風貌だけにではなく、その活躍の仕方にもあります。


では人気者になるにはどうしたらよいのでしょう?

人気者の特徴をしっかりと掴んで取り入れればいいのです。


ここでマイケル・リチャーズを紹介しましょう。

彼はアメリカンコメディドラマ「となりのサインフェルド」に登場する大人気キャラクターであるクレイマーを演じる役者さんです。

彼が演じるクレイマーは、ドラマの主人公ジェリー・サインフェルドが住むアパートのお隣さんで、しょっちゅうジェリーの部屋に遠慮なくやってきては食べ物を分けてもらったり、日用品を借りたりします。

合鍵も持っているクレイマーは、ほんとうに唐突にドアを開けて入ってきます。

この登場シーンで彼はいつも大げさな動き(アクション)を披露します。一度だって「普通」に登場しません。

またクレイマーはいつもゆったりとした服を着ています。お気に入りのジャケットを着ていることが多いのですが、ビシっと着ている
のではなく、ゆったりと着流しているといったかんじなのです。


マリケル・リチャーズはこのクレイマー役で大ブレイクしました。

クレイマーという役を演じるにあたって彼は、人気者になるための2つの特徴としっかりと取り込んでいます。


∇ひとつは、独特で大げさな「動き(アクション)」です。

登場シーンだけでなく、クレイマーの「動き」はいついかなる時も独特です。長身の彼が体をクネクネさせたり、ピクピク痙攣みたいにしてみせてたり、そうかと思うと颯爽と登場してみせたり(それでもなぜか笑ってしまう)と、実にさまざまな「動き」を披露してい
ます。
こうした「動き」がすべてクレイマーというキャラクターを形成しているのです。


∇もうひとつは、クレイマーの格好・衣装です。

彼はドラマの撮影にはワンサイズ大きな服を着ていたそうです。いつもゆったりと着流したかのような服装はパッと見た目においてクレイマーというキャラクターを視聴者に印象づけています。
ストーリーの紹介や登場人物の紹介はこちら


マリケル・リチャーズの特徴についての記事はこちら
「ワンサイズ大きい服を愛用しているのは誰?」


マイケル・リチャーズが演じるクレイマーが登場するアメリカンコメディドラマの詳細はこちら
『となりのサインフェルドblog』


【要点】…………………………………………………………

●人気者には特徴がある

●人気者の特徴は、その風貌だけにではなく、その活躍の仕方にもある

●人気者の作り方――名前を聞いた人がすぐに「絵・画」と「動く映像」を思い浮かべることができるようにする。

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