戦国自衛隊1549
手塚昌明監督/日本/2005年/119分
原案:半村良
原作:福井晴敏
『戦国自衛隊』(1979)のリメイク作品
富士山麓で開催、牧場主催ラリー大会! 本物ラリーカー揃えてギャラリーの戦国騎馬隊も一緒によ~いドン! 「円谷がんばれ!」「大鵬対柏戸」「紅白歌合戦」←これらに共感するならドンピシャリ。ターゲット層は精神的・気分的にという意味でのエルダーパーソンでしょ。
物語の紹介
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人工磁場発生器の実験中に的場1佐率いる第三特別実験中隊が460年前の戦国時代にタイムスリップした。そして過去への干渉によって虚数空間ホールが日本各地で出現する。
元自衛隊員の鹿島はタイムスリップした部隊を救出するため、新たに編成されたロメオ隊に参加してタイムスリップを敢行する。
主な登場人物の紹介
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△鹿島勇祐
居酒屋店主。元自衛隊隊員
△神崎怜
女性。自衛隊員。二尉。
△的場毅(織田信長)
自衛隊員。1佐。
△飯沼七兵衛
戦国武士。齋藤道三家臣。
△斉藤道三
戦国武将
△森彰彦
自衛隊員。3佐。ロメオ隊(救出隊)隊長
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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富士山麓で開催、牧場主催ラリー大会! 本物ラリーカー揃えてギャラリーの戦国騎馬隊も一緒によ~いドン! 「円谷がんばれ!」「大鵬対柏戸」「紅白歌合戦」」←これらに共感するならドンピシャリ。ターゲット層は精神的・気分的にという意味でのエルダーパーソンでしょ
‡ リメイクでは2つの事柄を追加 ‡
ラリーでいうと、ナビゲーターは車酔。地図には2つのチェックポイント(2度のタイムスリップと時間制限)記載のみ。ゴールが載ってる地図(歴史・運命)は開催前に予め優勝予定者の手に(運命・歴史は変え
られない)。
歴史という名の地図の一部に落書きしてみたよ! みたいな……。
そもそも1979年の「戦国自衛隊」は、自衛隊が日本の戦国時代にタイムスリップしたら? という「If(もしも~)」の作品でした。
この作品をリメイクすることになって、新たに2つの事柄が追加されました。ひとつは2度タイムスリップすること。もうひとつは制限時間があること。
これによって、過去に行ってから74時間27分後にまた元の時代に戻ってこれるようにしました。
2つの新しい設定で、主人公・鹿島には、わかりやすい目的ができました。それは、タイムスリップした的場1佐の隊を救出してまた元の時代に戻ってくることです。
わかりやすさでいうと、テレビ(ビデオ)ゲームのドラゴンクエストでいうところの「魔王を倒す」というシンプルさですね。
では、自衛官を辞めて居酒屋の店長をしている鹿島がなぜ的場1佐部隊の救出に参加するのでしょう。
‡ 主人公の動機 ‡
的場1佐は鹿島の元上官でした(昔の階級でいう大佐)。よく知っていて信頼していた上官なんです。その的場1佐がタイムスリップしてしまったと聞いて、できることなら救出したいという思いがあります。
でも、神崎2尉(中尉)や森3佐(少佐)の話を聞いてみると、どうやらタイムスリップした自衛隊員の救出だけが目的ではないらしいんです。過去で的場1佐たちが歴史に干渉しているためと思われる虚数空間ホールが日本各地で出現しており、このままだと現代世界が崩壊してしまいかねないのでなんとかしなきゃ、というのが本当の目的のようです。
尊敬している上官やかつての同僚たちを救出するつもりが、いつの間にか世界を救おうというデッカい話になっちゃってます。
鹿島はこれに違和感を覚え「おれは的場1佐を救出するというから話を聞きにきたのになんだか違うことになっているようだ」といってその場を後にします。
後日、居酒屋に戦国武者が尋ねて(←日常になかなかないネ!)きて、彼と話すうちに、鹿島やっぱり救出隊に参加することにします。
ここで注目すべきポイントは、いつのまにか「世界を救う」っていうデッカい話になっているってところです。
‡ お祭り大好き? ‡
軍事ネタ。デッカい話。SF。最近の日本映画でよくありがちな題材と組み合わせです。もしやと思ったら、原作は福井晴敏さんでした。
最近の福井さん原作の映画作品「ローレライ」でもそうでしたが、話がデッカいんですね。「日本を救え」みたいな。
「戦国自衛隊1549」では日本だけじゃなく「世界を救え」というようにスケールアップしてます。
テレビのトーク番組(さまぁ~ずの三村さんと吉田栄作さんがホスト役)に福井さんが出ていました。昔、大きめの町に出て映画を観るのが自分にとっては一大イベントでワクワクしたものだというようなお話をしておられました。
スケールの大きい、一年に一度ぐらいしか映画を観ないようなおばちゃんが観に行くデッカいお祭りみたいな映画が好きで、そういうのを書きたい、とのこと。好きな映画は「ダイ・ハード」と答えていたと思います(違ってたらごめんなさい)。
福井さんとさまぁ~ずの三村さんはほぼ同じ思いで、好きな映画もハリウッドの大作でした。
そんななかで吉田栄作さんの好きな作品は「ロッキー」とか。それもパート1。ハリウッド映画というよりも、アメリカ映画という感じが好きだとか。
ほぉ☆ハリウッド映画ではなくアメリカ映画という表現っておもしろいですネ。ロッキーはまさにそんなかんじです☆
それはさておき、福井さんはお祭りみたいな作品が好きなんですね。福井さんは1968年東京都墨田区生まれ。
この年代生まれの子供時代では、まだ携帯電話もインターネットもありませんでした。まして郊外や田舎育ちの少年少女たちにとっては、都会は毎日がお祭りのようなスゴいところだ、という憧れがあったでしょう。(いまでも一般的に大阪や東京への憧れというのはあるでしょう)
テレビアニメや漫画をたくさん観たり読んだりして育った少年少女が、コンピュータの発達とインターネットの発展によって自分が憧れていた世界(お祭り)を作れるようになるというのはとても嬉しいでしょう。
‡ 祭りの変遷 ‡
かつて共同体というものが人々の生活に密着して機能していた時代には、祭は「日常」に対する「ハレ(晴れ)」の日でした。こうした祭はかつて共同体によって営まれていたのです。
都市部への労働力集中によって共同体が主体となったこうした「祭」は影をひそめていきます。
祭は「共同体」から「個人」へと移り変わりました。
「共同体と祭」について参考になる「座頭市」レビュー
皆さんもすきなバンドやアーティストのコンサートやライブに行ったり、好きなお笑い芸人のライブに行ったり、好きな芝居を観に行ったりすることがあるでしょう。
現代は、興味や好みによって、個々がそれぞれに「祭」に参加しているのです。
自分だけが盛り上がっていると思っていた「祭」も、インターネットの発展によって、世界中からその「祭」に参加する人をみつけることができる時代なのです。
‡ ターゲット層はエルダーパーソン ‡
そんな時代にあって、一年に1本映画を観るか観ないかのおばちゃんが観るような大作を! ということは「戦国自衛隊1549」のターゲット層は高度経済成長期を紅白歌合戦や大鵬対柏戸で心躍らせたあたりなのでしょう。
狙いとしてはいいのではないでしょうか。
私が観たのは銀座の映画館で、場所柄もあり、またレディースディでしたが、客席はほぼ満席。高年層の割合が高く、10代~20代前半の観客は両親と一緒に、またはおじいちゃんやおばあちゃんの付き添いに少し、といったようでした。
‡ 運命(歴史)は変えられない ‡
タイムトラベルを題材にした映画は数多くあります。そういった作品の主人公がタイムトラベルをする目的に共通することは、自分と自分に関係する身近な人のために、ということです。
「タイムライン」(レビュー)は父を助けるため。
「タイムマシン」(レビュー)と「バタフライエフェクト」(レビュー)は愛する人を救うため。
目的を果す過程ではなるべく歴史に干渉しないように、というのも共通しています。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にいたっては、干渉してしまった過去の出来事を修正しようと奮闘する物語ともいえます。
「戦国自衛隊1549」はかつての同僚を助けるためという建前と、世界を救うという本音の2層構造になっています。
目的 → 友を救うため
方法 → 極力歴史に干渉しない方法で
ではなく、
目的 → 世界を救うため
方法 → 極力歴史に干渉しない方法で
となっています。
そして、結果的には友(的場1佐)を救えません。というか鹿島が手を下しちゃいます。
こうして裏・本音の目的である世界を救うことに犠牲を払って成功します。
任務を果した鹿島と神崎2尉は、隊員たちから敬礼されます。
そういえば、ハリウッド映画に似たようなシーンを観たことがあるような気もしますね。
建前と本音って、このあたりも日本的かもしれませんね。
‡ 「見せ場」の魅せ方 ‡
前作では使えなかった本物の自衛隊機が登場します。登場するだけじゃなくて、ミサイルで破壊しちゃいます。でも、それに至る緊張感とかドキドキ感とか「あぶなぁい! 早く! もう少し!」とか思う隙もなく、構え、狙いよ~し、発射! とトントン拍子に車やヘリコプターが破壊されます。
こういったシーンは映画の予告編にも採用されている、いわゆる「見せ場」なんだろうなと思わせるのですが、その「見せ場」の使い方が……。
1「危機が迫る(ワクワク)」
↓
2「主人公がそれを阻止しようとするが邪魔が入る」
↓
3「危機がさらに迫る(ワクワクドキドキ)
↓
4「主人公が邪魔を排すと今度はヒロインがピンチに」
↓
5「危機がもうすぐそこまできている(ワクワクドキドキワクワク)」
↓
6「主人公がヒロインを助ける」
↓
7「危機が目の前に!!(ワクドキワクドキワクドキワクドキ!)」
↓
8「間一髪で危機を回避成功!!☆」
「見せ場」の基本はこんなかんじです。1番から順番に進んでいくから「見せ場」になるのですが「戦国自衛隊1549」ではいきなり7番から始まります。
本物の自衛隊機を登場させたからスゴいのではなく、それを使えばどのくらいハラハラドキドキさせることができるのか、つまりどんな「見せ場」つくれるかがポイントです。
たとえば、山奥の人口約300人の農村にアントニオ猪木がやってきた!(もちろん春一番じゃないぞ)とします。
猪木が村に来て、だれもいない田んぼの真中で「それでは皆さんご唱和ください」といきなりはじめても……。
村内回って夜にプロレスファンの村長さんと村民の皆さんとご飯食べてお酒飲んでワイワイして、「それでは皆さんご唱和くだい~」ってはじめたら、猪木さんってどこの村の?っておばあちゃんもとりあえず、いち、にぃ、さん、ダァー!! ってやっちゃうでしょ☆
アントニオ猪木さんが歩いているだけで涙流して感動するのはコアなファンですヨ。(歩いているだけで存在感すごくて、うぉ~☆ ってはなるだろうけどネ)
デカイだけの人はたくさんいるけど、アントニオ猪木はそれだけじゃないってみんな知っているから、彼が登場しただけで「うぉ~☆」ってなるんです。そしてリングがあればもっと最高。リングがなくてもビンタとマイクがあれば最高に盛り上がります。
もちろんアントニオ猪木ってだけでもスゴいんです。でも猪木が出てきてしゃべってビンタして、そして「いちぃ、にぃ、さん、ダァー!」ってするからいいんです。
見せ場については、「サハラ」作品レビューの「クライマックスの盛り上げ方」が基本の良きお手本です。
∇「サハラ 死の砂漠を脱出せよ(SAHARA)」作品レビュー
‡ その他 ‡
人工磁場発生器の実験中に意図せずに過去の戦場へ送られた自衛隊。その過去では的場1佐は自衛隊員であることをやめる決意をします。つまり、専守防衛ではこの世界では生き残れないし、何もできないというのです。力を見せつけることができる強い者だけが生き延びることができる、それがこの世界(1549年の日本戦国時代)だというのです。
そんな的場隊を救うという名目で、世界を救うという目的で派遣されるロメオ隊は、歴史という秩序を保つために奮闘します。
原作者としてはこのあたりを自衛隊の海外派兵にからめて云々というような観方をしてほしいのかもしれませんが、大牧場主が役者にコスプレさせて、本物のラリーカーを使ってお馬さんと競争させるイベントに行くというノリで観るのがいいでしょう。
映画制作においてはスポンサーや協力してくれるところの意向に、ある程度沿った設定や内容にするなど、いろいろ考えなければならないこともあるでしょう。そのためか、主人公鹿島の行動の基となる動機がわかりずらくなっています。。
とにかく本物の軍事車両やヘリコプターを使った映画がみたいという方。とにかく甲冑姿に刀を差したお侍さんが出ている映画がみたいという方。前作「戦国自衛隊」と見比べてみたいという方。そういった方にはいいでしょう。
骨太な人間ドラマを期待する方。熱い男の友情物語を期待する方。兵器や戦場のリアリティを期待する方。これらの方には向きません。
今回は少し辛口ですね(~_~;)
年配の方にとっては、数少ない「観れそうな映画」なのかもしれません。
でも時代劇じゃなくても、おもしろい映画はたくさんありますから☆
字幕読むのがめんどうですって?
では日本映画でオススメの作品をご紹介しますね。
「座頭市」レビュー(←設定は時代劇。構造は西部劇。その中身は?)
「戦国自衛隊1549」の制作費15億円。エキストラ3,000人。お馬さん延べ500頭。天母城(あんもじょう)総工費2.2億円。
なにげに本編よりも予告編のほうがよい出来です。
辛口レビューなのは、もちろん、がんばってほしいから。おもしろいもの作ろうって気持ちは伝わってきましたよ。制作費の5分の1でもいいからかけて、もう少し違った方向でがんばってみてもいいでしょう。
「ばんばれ! 電車男!」
アレ……?☆
ちなみに「電車男」のレビューはこちら
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Comments
骨太な人間ドラマを期待する方。熱い男の友情物語を期待する方。兵器や戦場のリアリティを期待する方。これらの方には向きません
自分はコレに該当したんでしょうなぁ…。
期待値が高かっただけに、がっかりしちゃいまして。すごく残念でしたです(泣)
Posted by: chishi | 07/22/2005 00:20
>chishiさん
ご無沙汰です☆コメントありがとうございます。
自分も期待が高く、楽しみにしていたのですが……。
期待のハズれ方次第では、思わぬみっけもん☆みたいになる場合もあるのですが、そうもいきませんでした。
コントな視点で観賞に臨むとよかったのかもしれません。そしたら高得点かも(^^)
Posted by: わかスト@管理人たか | 07/22/2005 11:35
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