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06/29/2005

ヒロインのつくり方―「NANA」―

「NANA」って漫画作品。原作:矢沢あい。

映画になるということで(主演は中島美嘉・宮崎あおい)原作漫画を読んでいます。

とくに奈々ちゃん(ハチ、ハチ子)のキャラクターがいいですね。奈々は楽器ができるわけじゃないし、皆に聴かせる歌がうたえるわけじゃない。勉強できる優等生でもない。

でも、ナナと出会って、いろんな人と恋をします。

不器用。ちょっと天然。でも計算もする。弱い自分。そんな等身大の悩みや想いが描かれています。

一見するとナナにはカリスマ性があって、ヒーロー(というかヒロイン?)の素質アリアリのようですが、実は奈々のほうがその素質はあるんです。

たとえば「ロード・オブ・ザ・リング」の主人公フロドなんて、剣術や武術に優れているわけじゃないし、魔法が使えるわけじゃない。だからこそヒーローなんです。

「NANA」読破したら、レビュー書こうかと思います。

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矢沢 あい

Nana (11) Nana (12) NANA7.8―ナナ&ハチPremium fan book! Paradise kiss (1) Paradise kiss (3)

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06/22/2005

戦国自衛隊1549

手塚昌明監督/日本/2005年/119分

原案:半村良
原作:福井晴敏

『戦国自衛隊』(1979)のリメイク作品

富士山麓で開催、牧場主催ラリー大会! 本物ラリーカー揃えてギャラリーの戦国騎馬隊も一緒によ~いドン! 「円谷がんばれ!」「大鵬対柏戸」「紅白歌合戦」←これらに共感するならドンピシャリ。ターゲット層は精神的・気分的にという意味でのエルダーパーソンでしょ。

物語の紹介
―――――――――――――――――――――
人工磁場発生器の実験中に的場1佐率いる第三特別実験中隊が460年前の戦国時代にタイムスリップした。そして過去への干渉によって虚数空間ホールが日本各地で出現する。
元自衛隊員の鹿島はタイムスリップした部隊を救出するため、新たに編成されたロメオ隊に参加してタイムスリップを敢行する。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△鹿島勇祐
 居酒屋店主。元自衛隊隊員

△神崎怜
 女性。自衛隊員。二尉。

△的場毅(織田信長)
 自衛隊員。1佐。

△飯沼七兵衛
 戦国武士。齋藤道三家臣。

△斉藤道三
 戦国武将

△森彰彦
 自衛隊員。3佐。ロメオ隊(救出隊)隊長


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
富士山麓で開催、牧場主催ラリー大会! 本物ラリーカー揃えてギャラリーの戦国騎馬隊も一緒によ~いドン! 「円谷がんばれ!」「大鵬対柏戸」「紅白歌合戦」」←これらに共感するならドンピシャリ。ターゲット層は精神的・気分的にという意味でのエルダーパーソンでしょ


‡ リメイクでは2つの事柄を追加 ‡

ラリーでいうと、ナビゲーターは車酔。地図には2つのチェックポイント(2度のタイムスリップと時間制限)記載のみ。ゴールが載ってる地図(歴史・運命)は開催前に予め優勝予定者の手に(運命・歴史は変え
られない)。

歴史という名の地図の一部に落書きしてみたよ! みたいな……。

そもそも1979年の「戦国自衛隊」は、自衛隊が日本の戦国時代にタイムスリップしたら? という「If(もしも~)」の作品でした。

この作品をリメイクすることになって、新たに2つの事柄が追加されました。ひとつは2度タイムスリップすること。もうひとつは制限時間があること。

これによって、過去に行ってから74時間27分後にまた元の時代に戻ってこれるようにしました。
2つの新しい設定で、主人公・鹿島には、わかりやすい目的ができました。それは、タイムスリップした的場1佐の隊を救出してまた元の時代に戻ってくることです。
わかりやすさでいうと、テレビ(ビデオ)ゲームのドラゴンクエストでいうところの「魔王を倒す」というシンプルさですね。

では、自衛官を辞めて居酒屋の店長をしている鹿島がなぜ的場1佐部隊の救出に参加するのでしょう。


‡ 主人公の動機 ‡

的場1佐は鹿島の元上官でした(昔の階級でいう大佐)。よく知っていて信頼していた上官なんです。その的場1佐がタイムスリップしてしまったと聞いて、できることなら救出したいという思いがあります。

でも、神崎2尉(中尉)や森3佐(少佐)の話を聞いてみると、どうやらタイムスリップした自衛隊員の救出だけが目的ではないらしいんです。過去で的場1佐たちが歴史に干渉しているためと思われる虚数空間ホールが日本各地で出現しており、このままだと現代世界が崩壊してしまいかねないのでなんとかしなきゃ、というのが本当の目的のようです。

尊敬している上官やかつての同僚たちを救出するつもりが、いつの間にか世界を救おうというデッカい話になっちゃってます。

鹿島はこれに違和感を覚え「おれは的場1佐を救出するというから話を聞きにきたのになんだか違うことになっているようだ」といってその場を後にします。

後日、居酒屋に戦国武者が尋ねて(←日常になかなかないネ!)きて、彼と話すうちに、鹿島やっぱり救出隊に参加することにします。

ここで注目すべきポイントは、いつのまにか「世界を救う」っていうデッカい話になっているってところです。


‡ お祭り大好き? ‡

軍事ネタ。デッカい話。SF。最近の日本映画でよくありがちな題材と組み合わせです。もしやと思ったら、原作は福井晴敏さんでした。

最近の福井さん原作の映画作品「ローレライ」でもそうでしたが、話がデッカいんですね。「日本を救え」みたいな。

「ローレライ(LORELEI)」作品レビュー

「戦国自衛隊1549」では日本だけじゃなく「世界を救え」というようにスケールアップしてます。

テレビのトーク番組(さまぁ~ずの三村さんと吉田栄作さんがホスト役)に福井さんが出ていました。昔、大きめの町に出て映画を観るのが自分にとっては一大イベントでワクワクしたものだというようなお話をしておられました。

スケールの大きい、一年に一度ぐらいしか映画を観ないようなおばちゃんが観に行くデッカいお祭りみたいな映画が好きで、そういうのを書きたい、とのこと。好きな映画は「ダイ・ハード」と答えていたと思います(違ってたらごめんなさい)。

福井さんとさまぁ~ずの三村さんはほぼ同じ思いで、好きな映画もハリウッドの大作でした。

そんななかで吉田栄作さんの好きな作品は「ロッキー」とか。それもパート1。ハリウッド映画というよりも、アメリカ映画という感じが好きだとか。

ほぉ☆ハリウッド映画ではなくアメリカ映画という表現っておもしろいですネ。ロッキーはまさにそんなかんじです☆

それはさておき、福井さんはお祭りみたいな作品が好きなんですね。福井さんは1968年東京都墨田区生まれ。

この年代生まれの子供時代では、まだ携帯電話もインターネットもありませんでした。まして郊外や田舎育ちの少年少女たちにとっては、都会は毎日がお祭りのようなスゴいところだ、という憧れがあったでしょう。(いまでも一般的に大阪や東京への憧れというのはあるでしょう)

テレビアニメや漫画をたくさん観たり読んだりして育った少年少女が、コンピュータの発達とインターネットの発展によって自分が憧れていた世界(お祭り)を作れるようになるというのはとても嬉しいでしょう。


‡ 祭りの変遷 ‡

かつて共同体というものが人々の生活に密着して機能していた時代には、祭は「日常」に対する「ハレ(晴れ)」の日でした。こうした祭はかつて共同体によって営まれていたのです。

都市部への労働力集中によって共同体が主体となったこうした「祭」は影をひそめていきます。

祭は「共同体」から「個人」へと移り変わりました。

「共同体と祭」について参考になる「座頭市」レビュー

皆さんもすきなバンドやアーティストのコンサートやライブに行ったり、好きなお笑い芸人のライブに行ったり、好きな芝居を観に行ったりすることがあるでしょう。

現代は、興味や好みによって、個々がそれぞれに「祭」に参加しているのです。

自分だけが盛り上がっていると思っていた「祭」も、インターネットの発展によって、世界中からその「祭」に参加する人をみつけることができる時代なのです。


‡ ターゲット層はエルダーパーソン ‡

そんな時代にあって、一年に1本映画を観るか観ないかのおばちゃんが観るような大作を! ということは「戦国自衛隊1549」のターゲット層は高度経済成長期を紅白歌合戦や大鵬対柏戸で心躍らせたあたりなのでしょう。

狙いとしてはいいのではないでしょうか。

私が観たのは銀座の映画館で、場所柄もあり、またレディースディでしたが、客席はほぼ満席。高年層の割合が高く、10代~20代前半の観客は両親と一緒に、またはおじいちゃんやおばあちゃんの付き添いに少し、といったようでした。


‡ 運命(歴史)は変えられない ‡

タイムトラベルを題材にした映画は数多くあります。そういった作品の主人公がタイムトラベルをする目的に共通することは、自分と自分に関係する身近な人のために、ということです。

「タイムライン」(レビュー)は父を助けるため。
「タイムマシン」(レビュー)「バタフライエフェクト」(レビュー)は愛する人を救うため。

目的を果す過程ではなるべく歴史に干渉しないように、というのも共通しています。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にいたっては、干渉してしまった過去の出来事を修正しようと奮闘する物語ともいえます。

「戦国自衛隊1549」はかつての同僚を助けるためという建前と、世界を救うという本音の2層構造になっています。

目的 → 友を救うため
方法 → 極力歴史に干渉しない方法で

ではなく、

目的 → 世界を救うため
方法 → 極力歴史に干渉しない方法で

となっています。

そして、結果的には友(的場1佐)を救えません。というか鹿島が手を下しちゃいます。

こうして裏・本音の目的である世界を救うことに犠牲を払って成功します。

任務を果した鹿島と神崎2尉は、隊員たちから敬礼されます。

そういえば、ハリウッド映画に似たようなシーンを観たことがあるような気もしますね。

建前と本音って、このあたりも日本的かもしれませんね。


‡ 「見せ場」の魅せ方 ‡

前作では使えなかった本物の自衛隊機が登場します。登場するだけじゃなくて、ミサイルで破壊しちゃいます。でも、それに至る緊張感とかドキドキ感とか「あぶなぁい! 早く! もう少し!」とか思う隙もなく、構え、狙いよ~し、発射! とトントン拍子に車やヘリコプターが破壊されます。

こういったシーンは映画の予告編にも採用されている、いわゆる「見せ場」なんだろうなと思わせるのですが、その「見せ場」の使い方が……。

1「危機が迫る(ワクワク)」
     ↓
2「主人公がそれを阻止しようとするが邪魔が入る」
     ↓
3「危機がさらに迫る(ワクワクドキドキ)
     ↓
4「主人公が邪魔を排すと今度はヒロインがピンチに」
     ↓
5「危機がもうすぐそこまできている(ワクワクドキドキワクワク)」
     ↓
6「主人公がヒロインを助ける」
     ↓
7「危機が目の前に!!(ワクドキワクドキワクドキワクドキ!)」
     ↓
8「間一髪で危機を回避成功!!☆」

「見せ場」の基本はこんなかんじです。1番から順番に進んでいくから「見せ場」になるのですが「戦国自衛隊1549」ではいきなり7番から始まります。

本物の自衛隊機を登場させたからスゴいのではなく、それを使えばどのくらいハラハラドキドキさせることができるのか、つまりどんな「見せ場」つくれるかがポイントです。

たとえば、山奥の人口約300人の農村にアントニオ猪木がやってきた!(もちろん春一番じゃないぞ)とします。

猪木が村に来て、だれもいない田んぼの真中で「それでは皆さんご唱和ください」といきなりはじめても……。

村内回って夜にプロレスファンの村長さんと村民の皆さんとご飯食べてお酒飲んでワイワイして、「それでは皆さんご唱和くだい~」ってはじめたら、猪木さんってどこの村の?っておばあちゃんもとりあえず、いち、にぃ、さん、ダァー!! ってやっちゃうでしょ☆

アントニオ猪木さんが歩いているだけで涙流して感動するのはコアなファンですヨ。(歩いているだけで存在感すごくて、うぉ~☆ ってはなるだろうけどネ)

デカイだけの人はたくさんいるけど、アントニオ猪木はそれだけじゃないってみんな知っているから、彼が登場しただけで「うぉ~☆」ってなるんです。そしてリングがあればもっと最高。リングがなくてもビンタとマイクがあれば最高に盛り上がります。

もちろんアントニオ猪木ってだけでもスゴいんです。でも猪木が出てきてしゃべってビンタして、そして「いちぃ、にぃ、さん、ダァー!」ってするからいいんです。

見せ場については、「サハラ」作品レビューの「クライマックスの盛り上げ方」が基本の良きお手本です。

「サハラ 死の砂漠を脱出せよ(SAHARA)」作品レビュー


‡ その他 ‡

人工磁場発生器の実験中に意図せずに過去の戦場へ送られた自衛隊。その過去では的場1佐は自衛隊員であることをやめる決意をします。つまり、専守防衛ではこの世界では生き残れないし、何もできないというのです。力を見せつけることができる強い者だけが生き延びることができる、それがこの世界(1549年の日本戦国時代)だというのです。

そんな的場隊を救うという名目で、世界を救うという目的で派遣されるロメオ隊は、歴史という秩序を保つために奮闘します。

原作者としてはこのあたりを自衛隊の海外派兵にからめて云々というような観方をしてほしいのかもしれませんが、大牧場主が役者にコスプレさせて、本物のラリーカーを使ってお馬さんと競争させるイベントに行くというノリで観るのがいいでしょう。

映画制作においてはスポンサーや協力してくれるところの意向に、ある程度沿った設定や内容にするなど、いろいろ考えなければならないこともあるでしょう。そのためか、主人公鹿島の行動の基となる動機がわかりずらくなっています。。

とにかく本物の軍事車両やヘリコプターを使った映画がみたいという方。とにかく甲冑姿に刀を差したお侍さんが出ている映画がみたいという方。前作「戦国自衛隊」と見比べてみたいという方。そういった方にはいいでしょう。

骨太な人間ドラマを期待する方。熱い男の友情物語を期待する方。兵器や戦場のリアリティを期待する方。これらの方には向きません。

今回は少し辛口ですね(~_~;)

年配の方にとっては、数少ない「観れそうな映画」なのかもしれません。

でも時代劇じゃなくても、おもしろい映画はたくさんありますから☆
字幕読むのがめんどうですって? 

では日本映画でオススメの作品をご紹介しますね。

「スウィングガールズ(SWING GIRLS)」レビュー

「下妻物語」レビュー

「ロボコン ROBOT CONTEST」レビュー

「座頭市」レビュー(←設定は時代劇。構造は西部劇。その中身は?)


「戦国自衛隊1549」の制作費15億円。エキストラ3,000人。お馬さん延べ500頭。天母城(あんもじょう)総工費2.2億円。

なにげに本編よりも予告編のほうがよい出来です。

辛口レビューなのは、もちろん、がんばってほしいから。おもしろいもの作ろうって気持ちは伝わってきましたよ。制作費の5分の1でもいいからかけて、もう少し違った方向でがんばってみてもいいでしょう。

「ばんばれ! 電車男!」

アレ……?☆

ちなみに「電車男」のレビューはこちら


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06/17/2005

電車男

村上正典監督/日本/2005年/101分
元ネタ:2ちゃんねる掲示板のスレッド

ネットという日常で「ヘルパー」→「相棒」を得た青年の恋の成就までを描いた、アキバ産☆新シンデレラストーリー。

物語の紹介
―――――――――――――――――――――
電車で酔っ払いからお嬢様系女性を助けたアキバ系青年。後日その女性からお礼の品が届く。青年(電車男)は彼女(エルメス)と親しくなりたいが慣れないことでどうしていいかわからない。
そこで馴染みのあるインターネットの掲示板で相談してみることに。すると数々のアドバイスや意見や叱咤激励が寄せられる。
電車男は掲示板に集う人々に助けられてエルメスとデートを重ねていく。


主な登場人物の紹介
―――――――――――――――――――――
△電車男
アキバ系青年。アキバとは日本を代表する電気街・東京秋葉原の俗称。アキバ系は大まかには2系統ある。ひとつはパソコンを自作する人々。もうひとつはアニメーションやフィギュア(キャラクター人形)が好きな人々。電車男はこの両方の好みと知識と技術を持っています。

△エルメス
お嬢様系女性。大手外資系企業(おそらく)に勤めている。海外出張もする語学堪能で落ち着いた雰囲気の女性。機械モノの操作は苦手。高級住宅街の一軒家で家族と暮らしています(犬も)。

△名無し(夫)
サラリーマン。家の書斎のパソコンから掲示板に書き込む。妻との会話はほとんどない。

△名無し(妻)
家のリビングでノートパソコンから掲示板に書き込む。夫との会話はほとんどない。
△名無し(看護士)
二十歳前後の女性。勤務中の休憩時間や空き時間に職場からノートパソコンで掲示板に書き込む。

△名無し(青年)
家の部屋から掲示板に書き込む。

△名無し(漫画喫茶の男たち)
仲の良い3人の男たち。漫画・インターネット喫茶のパソコンから掲示板に書き込む。


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
ネットという日常で「ヘルパー」→「相棒」を得た青年の恋の成就までを描いた、アキバ産☆新シンデレラストーリー。


‡ 現代日本男性版シンデレラストーリー ‡

若くて綺麗で気立てもいいけど、地味な服を着てコツコツと働き、好きなグッズやソフトに囲まれて生活している青年。

周りの人々(継母とその娘である姉たち)にはオタクだと言われて嘲られている。

会社ではパソコンが調子悪くなったときだけ呼ばれてすぐになんとかしろと言われるそんな日々。

ある日電車(かぼちゃの馬車)に乗った酔っ払い(魔法使い)が魔法をかけてくれる。

エルメスという姫に出会った電車男は、ネット掲示板でみんなの助けを得て恋の成就を成し遂げる。


‡ 細部にこだわりが ‡

電車男の部屋はいろいろなパソコングッズやロボットフィギュアで溢れています。

本棚に無造作に積まれたキーボードや、ベッドの脇に追いやられるように置かれたテレビ(おそらくテレビはほとんど観ない)など、実際にどこにでもありそうな部屋になっています。

また電車男が着る「百式Tシャッツ」はロボットアニメの金字塔ガンダム関連のグッズですね。おそらくアキバ系でも美少女アニメ系ではなくてロボットアニメ系なのでしょう。
いくら山田孝之くんがイケメンでも、美少女アニメ萌萌~☆というのではちょっと一般ウケしずらいでしょうから、ロボット系というのは妥当な設定だと思います。

電車男はパソコンも詳しいらしく、仕事は会社のシステム関連の保守・運用といったあたりのようです。

なにかにこだわれる人が、その道を極めることができます。

幅広い教養と知識を身につけなければならないと言う方がいます。それは一理ありですが、逆に言うと広く浅い人はたくさんいます。

ある何かを専門として、その知識と技術を持った人になるためには「こだわり」が必要です。

いわゆるアキバ系やオタク系といわれる方は、パソコンだったりアニメキャラクターだったりといった、なにかにこだわることができる人です。

一生のうちで好きなこと、こだわれることをみつけることができない人はたくさんいます。

こだわれる電車男って、なんだかカッコよくないですか?

エルメスに映画「マトリックス」の説明をするとき電車男は急に饒舌になり、目を輝かせて話しつづけます。途中でハッと気付いて、こんな話つまらないですよね、といった意味のことを言います。

するとエルメスは電車男をレンタルショップに連れて行ってその「マトリックス」を借りてみるのです。

こだわりを持って、目をキラキラさせて好きなことについて話す電車男をカッコイイなァってエルメスもきっと思ったはずです。


‡ 名前 ‡

電車男は電車男。エルメスはエルメス。それでもストーリーは進みます。ハンドルネームまたはニックネームであることが、作品の世界観を作りあげる助けにもなっています。

クエンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」という作品では、ある仕事をするために集められた男たちがそれぞれコードネームで呼び合います。ミスターオレンジといったように――。おれがなんでピンクなんだ! みたいな会話もあったような気がします。。。

とにもかくにも、ニックネームを使うとことで、作品世界をより際立たせているのです。

ネットコミュニティではハンドルネームを使うのが一般的ですし、一度も会ったことがなくてもある種の信頼関係を築いている人はたくさんいます。


‡ 友人 ‡

エルメスには、おいしいものを食べにいく友人がいます。この友人はけっこうズバズバとものを言うサバサバした人のようです。でもエルメスはネットには知り合いはいません(自宅に自分用のパソコンを持っていませんから)

電車男には会ってご飯を食べたり遊んだりする友人はひとりも登場しません――いないからです。そこでネットの掲示板に書き込んでいろいろ相談するのですが、なかにはズバズバと遠慮なくキツイことを書き込む人もいます。

面識がないので、思ったことを気がねなくズバズバ言えるんですね。

会ったことがある友人だとなかなかこうはいきません。腹を割って話すには相手となにかの困難を一緒に克服しなくてはなりません。または自分をさらけ出してみせることが必要です。こういったシーンがあってはじめて主人公は真の友からのアドヴァイスを得ることができるのです。

ですが「電車男」では「困難を一緒に克服するプロット」がなくても、掲示板に集う人々はみなズバズバ言えるんです。

すると、主人公電車男が脇役との関係を作り上げるプロットに時間(シーン)を割かなくて済みます。

節約できた時間は、電車男とエルメスとのシーンに充てることができます。

つまり作品の焦点がブレずに済むんです。電車男とエルメスの関係にしっかりとフォーカスすることができるのです。


‡ シンプルだからこそ心に響く ‡

電車男はエルメスと出会ってこう告白します。

「今までずっと一人で、これからもずっと一人で歳をとっていくと思ってたし、それでいいと思ってた。でも、あなたと会って、初めて人と一緒にいることが楽しいと思った。これからもずっと一緒にいたいって…。でも、いつか失うんじゃないかって考えたら、どうしようもなく不安で恐い…」

そんな電車男をエルメスは、ず~と一緒にいましょう、と受けとめます。

またエルメスは電車男と一緒にいると、なんでもない日常が日常でなくなる、すばらしい時間になる、といった意味のことを言います。

ベタすぎるといえばそうですが、こういったセリフで心をふるわせるのは並大抵のことではありません。

「電車男」はシンプルなシンデレラストーリーです。ベタな内容です。
ですが、それがいいのです。

典型的なストーリーが現在まで存在しつづけているのは、それだけ多くの人々に愛されているからです。

ラブストーリーに焦点を合わせたキャラクター設定とキャスティングの巧みさで「応援」という感情移入をしてもらえるようにしたその「ストーリーとキャラクターの力」というものに、もしかしたら作り手さえも気付いていなかったのかもしれません。

大作にしよう! とか、群像劇みたいにたくさんのキャラクターを登場させて凝ったすごい作品にしよう! とか、そんなことを考えるまえに、「電車男」のようにシンプルで基本的なストーリーと普遍的なテーマと魅力あるキャラクターで作品をつくってみましょう。

そうすれば、たとえお金をかけなくても、たくさんの人に観てもらえる作品が作れることを電車男は教えてくれています。


‡ 相互乗り入れ ‡

電車男はドラマ化されます。

それを見据えているのでしょう、映画とドラマとの一部が相互に乗り入れしています。

映画作品のなかで、ドラマでの電車男役のアキバ青年が登場します。

実際に他の線へ乗り入れる電車もあるんだから、映画とドラマも乗り入れちゃおう! ってノリなのかも☆


‡ その他 ‡

2ちゃんねるの掲示板が元ネタらしいですが、フィクションかノンフィクションかははっきりしていないようです。

映画だけしか観ていませんが、私の感想では、実話を元にしたフィクションといったあたりでしょう。

でも、フィクションかどうかなんてどうでもいいですね。だって楽しめる作品ですから☆


〈関連記事〉
夢と現実のバランス―「電車男」―
負の連鎖を断ち切る―ドラマ「電車男」―


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4104715018電車男
中野 独人
新潮社 2004-10-22

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06/01/2005

馴染みになる方法―「バタフライ・エフェクト」―

馴染みの客。それは「顧客」ともいえます。

馴染んでみもらうには、お客さんに親しみを感じてもらい、いつも身近
にいるような感覚を持ってもらう必要があります。

映画作品を例にみてみましょう。


∇「バタフライ・エフェクト(THE BUTTERFLY EFFECT)」

 エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー監督/アメリカ/2004年/114分

〈Story〉
少年の頃にときどき記憶がなくなって失神することが度々あった大学生のエヴァンは、7歳からつけはじめた日記を読んでいるときに、運命の分かれ目である過去の一部を変更する方法を発見します。
エヴァンは最愛の人、家族、友人を救うために何度も過去を書きかえていきます。

「バタフライ・エフェクト(THE BUTTERFLY EFFECT)」作品レビュー


これは、「時間」と「記憶」を題材に「日常」という海に「感動」という波をおこした斬新SFラブストーリーです。

タイムトラベルものですが、通常のSF作品とはちょっと違う方法で時間を旅します。

たいていのタイムトラベル作品では「タイムマシン」が登場します。博士が開発したタイムマシン――たとえば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン(車)。「タイムライン」で大企業が秘密裏に作りあげたタイムトラベル装置。

どちらも庶民には開発できっこなさそうだし、そもそも開発費だって用意できそうもありません。

まぁSFなので、ありえっこないマシンが登場してもいいのですが、バタフライ・エフェクトでは身近なものを使って過去にいきます。

身近なものとは、日記です。

一度ぐらい日記をつけたことはだれもしもあるでしょう。それがたとえ3日坊主で終わったとしても……。

Eメールやホームページやウェブログというのも日記の性質と似ています。

日記を読み返すと、過去のある時点でのある出来事に思を馳せることができます。

脳は過去へ時間旅行しているのです。

そう考えると、現代の日常には日記的なものが溢れていることに気がつくでしょう。

日記を読み返すという時間旅行なら、あなたもしたことがあるでしょう。

どこかの博士が設計図を書き、どこかの大企業が資金を出して開発したタイムマシンではなく、あなたの部屋の本棚や押し入れの奥にしまってある日記――こんな身近にタイムトラベルツールがあったなんて!

SFという突拍子もない世界の出来事が、日記という身近なツールによって一気に親近感を抱きやすい出来事に変わるのです。


またバタフライエフェクトはタイムトラベルの方法が身近(日記)なだけでなく、もうひとつ工夫があります。

それは、観客の「知りたい」という欲求を刺激するという工夫です。

主人公エヴァンは子供の頃の記憶が一部ありません。少年の頃の、記憶を失ったある出来事とはいったい何なのか?

エヴァンの現在につづく線の一部が抜け落ちているのです。抜け落ちた部分を書き変えようとするのですが、そもそもその抜け落ちた部分自体が謎となっているため、観客は次の3つの興味を抱きます。

(1)抜け落ちた部分でなにがあったのか?

(2)抜け落ちた部分をどう変えるのか?

(3)抜け落ちた部分を変えることで、未来はどうなるのか?

たいていのタイムトラベル作品は(2)と(3)が観客の興味の対象です。
しかし「バタフライ・エフェクト」では(1)も謎となっているのです。

例えるならこうです。

「ジグソーパズルの抜け落ちた個所に、形は同じでも色の違う様々なピースを当てはめます。当てはめたピースによってジグソーパズルの絵柄が描き変えられてしまいます」

抜け落ちたピースを探すところがはじめるのが「バタフライ・エフェクト」なのです。

このように、観客の知りたいという欲求を上手に刺激し、観客のだれもが持っているであろう日記(的なものを含)を使うことで、主人公に親近感を持ってもらえるようにしているのです。


【要点】

●SFといえども、日常にあるもの(日記)を使って身近に感じてもらう。

●わたしにも似た経験や感覚がある(日記を読んで過去へ思いを馳せた)
 と思ってもらう。→ 親近感 → 馴染みへ。

●謎で興味を持ってもらう。

●謎を解くカギは、親近感を抱きやすいもの(日記)にする。

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