ロング・エンゲージメント(UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES )
ジャン=ピエ―ル・ジュネ監督/2004年/フランス/133分
原作:セバスチャン・シャプリゾ
『長い日曜日( Un Long Dimanche de Fiancailles )』
●白馬に乗った王子様を迎えに行く新・乙女道。アメリ探偵の直感と行動が奇跡を呼ぶミステリー。セピア調な村と砲弾降り注ぐ泥沼の塹壕との対比が斬新。時間軸を入れ替えたパズルを当てはめるのは少々たいへん。「アメリ」は本作のお膳立てだった?
Story(ストーリー)
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第一次大戦末期のフランス、ブルターニュ地方。マチルドは婚約者マネックの戦死を知らされる。しかしマネックの最期を見た人間がいない。
「彼になにかあれば、私にはわかるはず」という直感からマネックの捜索をつづける。さまざまな証言を得るも、マネックの消息は不明のまま。それでもマチルドは探しつづけ、やがてマネックを知る重要な人物に会うことができる。
ソンムの戦いでのフランス軍塹壕。自らの掌を負傷した5人の兵士が、負傷は故意であるとして軍法会議で死刑を宣告される。掌を負傷した5人の兵士はフランス軍とドイツ軍との間のビンゴ・クレピュスキュルと呼ばれる場所に丸腰で放り出される。それは死を意味していた。やがて両軍との間で激しい戦闘がはじまる……。
Main Character(主な登場人物)
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△マチルド・ドネイ
20歳の女性。1歳年上のマネックと婚約している。
△マネック
青年。マチルドと婚約している。
コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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●白馬に乗った王子様を迎えに行く新・乙女道。アメリ探偵の直感と行動が奇跡を呼ぶミステリー。セピア調な村と砲弾降り注ぐ泥沼の塹壕との対比が斬新。時間軸を入れ替えたパズルを当てはめるのは少々たいへん。「アメリ」は本作のお膳立てだった?
‡この作品を撮るために「アメリ」(※)を作ったのでは?‡
どうやら監督は「ロング・エンゲージメント」を撮りたかった。でも戦場のシーンやらなにやらでお金がかかるということでなかなか撮れなかった。
そこでまず「アメリ」を撮ってヒットさせたんです。こうして資金を集めやすくなって、晴れてフランス映画にしては破格の制作費を手にしたんだとか。
で、いくらかかったの?
制作費 $50,000,000. 大雑把に計算すると55億円ほどでしょうか。
てなわけでお金かかってます。ジュネ監督が10年以上あたためていた企画だけあって、作品にはこういうシーンが必要で、そのためにはいくら必要だ、という流れがちゃんとあるんですね。そのための破格な制作費なんです。
なのでCGも必要なところに必要なだけ使っています。わかりやすくいうと「技術ありきじゃない」んですね。そうではなく、ストーリーに必要だから、必要な技術を使っている。そんなかんじです。
こういったお金の使い方、日本映画も見習っていいと思いますヨ。
‡マチルド探偵の動機に観客は納得する‡
マチルドは婚約者マネックが戦死したという知らせを信じません。「彼になにかあれば、私にはわかるはず」という直感を信じます。だれだって愛する人が生きているって信じたいもの。マチルドは自分の直感を信じ、たったひとりでマネックを探しつづけます。
サスペンスドラマかなにかで観たことありませんか。平凡なOLが旅行先で殺人事件に遭遇して、犯人をみつけようとする話。旅館やみやげ物屋を一軒一軒聞き込みをしたり、列車や飛行機に乗って各地を調べ回ったたりする、そんなドラマです。そこで思うわけです。このOLさんはなんで犯人探しを一生懸命やってるの? って。休暇はとうに終わってるんじゃないの? なんてことを観客にちょっとでも思われたらもうOLさんは応援してもらえません。
そういったところをふまえてみても「ロング・エンゲージメント」でマチルドがマネックを探す動機というのは、観客を納得させるものとしてはじゅうぶんなものとなっています。
さらに前作「アメリ」と同じ女優のオドレイ・トトゥを起用していることが有利に働いています。「アメリ的おんなの子」に感情移入した人は自分の直感を信じて行動するマチルドを素直に受け入れやすいからです。
‡映像の対比――「海沿いの村」と「砲弾降り注ぐ泥沼の塹壕」‡
フランスの田舎の村の映像はセピアな色調。戦場は土と泥と雨と沼の冷たく非情な色調。この対比が、平時と戦時、生きる場(村)と命を奪う場(戦場)といった対比構造をくっきりと浮き彫りにしています。
戦場のシーンでもジュネ監督の絵画的な映像の特徴が表れています。レンズ越しの映像はそのひとつですね。
その一方で、雨でぬかるんだ塹壕の様子は本格的な戦争映画のシーンといえるでしょう。塹壕の雰囲気は正統派戦場ゴシックホラーといわれてている「デス・フロント(DEATH WATCH)」を彷彿とさせます。
マネックがいた戦場は「ソンムの戦い」 といわれるところです。それは1916年に英・仏軍とドイツ軍がフランスのソンム川流域であった戦いのことです。
フランスが経験した戦いです。自分の国であったことを題材にするというのは「強み」であると同時にかなりの「気合」も必要です。「強み」というはこういうことです。ある事件はその国でしか起きていないわけですから、当然に一番きちんと描ける可能性があるのはその当事国なわけです。なのでそれは他国にはない「強み」となるのです。
例えば大韓民国は「シュリ」や「JSA」で自国にしかない題材を使って映画を作りました。そこにはかなりの気合が入っています。
で、日本はどうなの? 戦争での唯一の被爆国という題材さえも「コントな演歌」にしてしまうのですから「日本人はすごいのかすごくないのか……ようわからん」と世界の人々に思われても仕方ないかもしれませんね。「コントな演歌」についてはこちらの「ローレライ」レビューをどうぞ。
‡「アメリ」から2つの方向へ‡
仮に「アメリ」を起点にすると、2つの方向へ別れた片方に「ロング・エンゲージメント」があります。「アメリ」のプラスな面を応用したのです。恋に不器用でちょっと不思議な、自分の世界を持っているおんなの子。自分の空想の世界と直感を大事に持っているおんなの子。そんなアメリ的おんなの子が婚約者を探す物語、というのが「ロング・エンゲージメント」なのです。
2つの方向に分かれたもう一方には「愛してる、愛してない...(A la folie…pas du tout…)」があります。こちらは監督さんがアメリとは違う人ですが主人公は同じオドレイ・トトゥです。
これは「アメリ」のマイナスな面を応用したのです。恋に不器用な内気で不思議なおんなの子の想像がエスカレートして空想の世界から現実の世界へ飛び出して手が付けられなくなったら……? そんな痛怖い予感が見事に的中した、空想と現実のストーカー・サスペンス・スリラー・ホラー作品が「愛してる、愛してない...」なのです。
こうみると「アメリ」のスゴさがあらためてわかるような気がしますね。
‡予告編・チラシと内容とでは雰囲気がちが~う‡
予告編やチラシは各国の宣伝担当者が作ったものでしょう。「アメリ」の観客を動員したい狙いがあるので予告編もチラシもセピアな色調のラブストーリーで統一されています。純粋無垢な少年少女。海辺の灯台。二人が結ばれた夜。こららがメインとなっていて、塹壕など戦場の映像や写真はごく一部となっています。
なので「アメリ」のような作品を期待して観にいくと、あまりの雰囲気が違うシーンにびっくりしてしまうでしょう。ジュネ監督が使う映像の対比という手法によって「裏切られた」とちょっとでも感じてしまうならば、この作品を楽しむことはできないでしょう。「アメリ」と全く同じものを期待しても無駄です。でもでも、表現方法が「アメリ」と違うだけで、コア(核)は「アメリ」と近いですよ。予告・宣伝を担当した人は戦場シーンを抑えることで「アメリ」の観客層を繋ぎとめておきたかったようですね。
‡ナレーション多用でどんどん展開していく物語‡
「アメリ」でもそうでしたが本作でもナレーションをたくさん使っています。本来ナレーションを使うと手抜きなんじゃないの~って思われるんですが、あえて使っているようですね。ナレーションでテンポよくどんどん展開させていく撮り方なんです。
日本映画でもナレーションをうまく使ったいい作品があります。例えば
「下妻物語」。これは必見です。日本にも才能豊かな人っているもんですね☆
‡あたま使ってる?‡
どっかできいたキャッチフレーズだ! そうガイ・リッチー監督、ブラッド・ピット出演の「スナッチ」という作品の宣伝フレーズでした。
「ロング・エンゲージメント」もトントン拍子で展開していきますので、唐突にはじまるあるシーンがあとで「そういうことだったのか」といったようにわかることがあります。勘がいい人は「あそこのシーンがここに関係して、そんでもってあそこがあっちに繋がって」とピンとくるかもしれません。
でもね、フランス語なんで字幕にかなり注目しなきゃならないんですよね。そうこうしているうちにこの人だれだっけ? とごちゃごちゃになってしまう可能性があるある探検隊です^^;(お笑いコンビ「レギュラー」のネタ「あるある探検隊」より)
時間軸を入れかえるという手法は比較的最近の流行りでもあるみたいで、クエンティン・タランティーノ監督がその先駆けでしょうか。なんだかカッコ良さげだし、頭良さそうに思われそうっていうんで、つい使ってみたくなる手法だけど、これを使うと脚本や監督の力量がはっきりわかっちゃいます。
最近の日本人監督では清水崇監督が「呪怨」シリーズで使ってましたね。日本版「呪怨」で時間軸を入れかえる手法は面白かったのですが、なぜあの家が呪われることになったのかという経緯がわかりにくい。これが
ハリウッド版「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」ではとてもわかりやすくなっています。おそらく脚本の直しをさせられたのでしょう。
日本版がどのくらいわかりにくかったかというと、あくまで参考にしかなりませんがご紹介しましょう。日本版「呪怨」がテレビの地上波で放送された日、本サイトの「呪怨」関連ページへのアクセス数が通常の10倍以上にもなったのです。
おそらく「呪怨」を観た多くの人が「なぜあの家が呪われるようになったのか知りたい」と思い、ネットで「呪怨」を検索したのです。それで検索エンジン経由でのアクセスが一気に増えたのだと推測できます。
観客の興味をひきつつ、作品の終わりのレゾリューション(解決)では謎が解けるようにわかりやすくするのは重要なことなのですネ。
「ロング・エンゲージメント」はジュネ監督が10年あたためた企画だけあって時間軸を操りながらも結末に向けて謎が解けるようしっかりと脚本が練られています。
ただ、とんとん拍子で進むナレーションとフランス語という日本人一般には慣れない要素のために、かなり「あたま使って」観ないと「ついて」いけないかもしれません。一度ならず二度観ればもっとすっきりわかるはずだという感想もあるようですね。
‡白馬に乗った王子様を迎えに行くアメリ探偵‡
足を少し引きずるようにして歩くマチルドは、一緒に住んでいる親戚にさえマネックの死を受け入れるようにと言われるのですが、自分の直感を信じて歩き続けます。
そんな姿にアメリファンはもうメロメロ。そうです! 白馬の王子様が迎えにきてくれるのをいつまで待っても来ないことを現代のおんなの子はとうに気がついています。でも心の奥では王子様がやってきてくれることを信じたい。そんな複雑な乙女心を鷲づかみにして、自分だけの王子様(戦場でピンチのときも巨木に彼女への愛の文字を彫るマネック)を迎えに行っちゃう新しいかたちの乙女道を突っ走って(足を引きずりながらも!)いくマチルド☆
感情移入の秘伝書を持ってるのは間違いないね、ジュネ監督ゥ!☆
そうそう、フランス公開第1週で120万人動員とか。これって「アメリ」よりすごい記録です。
なんと! ジョディ・フォスターも出演してます。フランス語をしゃべってます。初登場するところは雑踏みたいな人がいっぱいいるシーンなんですが、さすがスター(にしきの。ってちがぁ~う)だけあってオーラ出てるのですぐに彼女だってわかるんです。ちょっとびっくりしました。一瞬出くるだけじゃなくて、ちゃんと「ひとエピソード」あります。
それにしてもオドレイ・トトゥはアタリ役ばかりですネ。
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※「アメリ」
映画作品。ジャン=ピエ―ル・ジュネ監督/フランス/120分
オドレイ・トトゥ主演。空想好きの不思議少女の恋を描いた、レトロ調チャーミングファンタジー。
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お☆これは! というお勧めレビューを紹介します。
「誠実さ」というキーワードを使ったキラリとひかるレビューです。
【まつさんの映画伝道師】さんの「ロング・エンゲージメント」
その他のお勧めレビュー
(利用価値のない日々の雑学)さん
(おのぺりの映画鑑賞会★)さん
(映画レビュー~防人城Blog丸)さん
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![]() | 長い日曜日 セバスチアン ジャプリゾ Sebastien Japrisot 田部 武光 東京創元社 1994-11 by G-Tools |
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Comments
トラックバック頂き、ありがとうございます。わざわざ「おすすめ」までしていただいて、光栄に存じます。
「マチルド探偵論」納得です。僕はあまり共感できなかったので気付きませんでした。
みなさん登場人物に混乱されてるみたいですね。何人か減らしても支障なかったと思うのですがどうでしょう?
マイブログは愛をもって映画を語っております。また機会ありましたらご来店お待ちしております。
Posted by: まつさん | 03/18/2005 03:50
>まつさん
コメントありがとうございます。
そうなんですよね、登場人物が多くて。さらにけっこ
うトントン拍子に展開していくので、途中に山場がな
いんですよね。ミステリというわりには謎解きのカタ
ルシスも薄いし……。
原作のある作品はどうしても駆け足になっちゃうのか
もしれませんネ。
私もアメリのキャラクターにはあまり共感はできませ
んが、うまいことコアなファンを獲得したなぁと感心
しておりました。
「愛してる、愛してない……」はホラーとしてかなり
怖いと思うのですが、あまりその点は話題になってい
ないようですね。
Posted by: わかスト@管理人 | 03/19/2005 00:50
なるほど、この作品を作るために「アメリ」で稼いだのですね。納得です。確かに、ジュネは「アメリ」で脚光を浴びたときからこの作品に関しての構想を話してましたものね。
今回は、カメラワークを中心見てしまい、ストーリーの細部を見る余裕がなかったので、この次は、是非、このブログを参考にストーリーを追ってみます。
Posted by: turtoone | 03/19/2005 18:51
>turtooneさん
こんにちは。
カメラワークや色彩など、見どころが多いですね。
みなさんもおっしゃってますが、一度観るだけではな
く、何度も見て楽しむ作品かもしれないですね。
恋愛物語のニュータイプとして記念碑的作品となるの
ではないかと思います。
Posted by: わかスト@管理人 | 03/20/2005 01:08
はじめまして。
TBさせていただきました。
映画を単なる感想で終わらせず、掘り下げた書評にびっくりしています。
「サスペンスドラマのOLさん?!」なるほどねぇ。
私は彼女とタイプ違うので、共感とまでは行きませんでしたが、かわいいって思いました。
リンクさせてもらってよろしいでしょうか?
これから参考にさせていただきます。
Posted by: pretty_kitten | 08/23/2005 19:22
>pretty kittenさん
TB・コメントありがとうございます。
内容と、ころころ変わる映像がおもしろいとかんじるかどうかで、作品の感じ方も変わってくるみたいすね。なんにせよ、ちょっと変わった作を観たよっていうのはありますね☆
リンクしていただきありがとうございます。こちらもさせてもらいますネ。
よろしくです☆
Posted by: わかスト@管理人 | 08/24/2005 12:44
TBしました。
猫が放火魔になりそうなシーンは
必要なさそうだったが、後でそういう事か
と分りました。
ノートルダムが髭剃ってて誰?と
思いましたが、ストーリーは普通に観てて
分りましたけど。
Posted by: YOSHIYU機 | 11/22/2005 23:42
どう考えたってライバルなわけないだろ。AKBを超すとか幻想もいいとこ。 乃木坂が売れる売れないは別として、そもそも乃木坂のコは全体的に可愛いので、コンセプトが違う「別モノ」だと思ってました だからレブロの菊池と大川は一緒に仕事してることも多いし外へもプッシュされてる
Posted by: ウェブ | 08/11/2014 01:12