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03/03/2005

使いやすさとリアリティのバランス―「Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)」―

〈カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

潜水艦映画というジャンルには有名な作品が多い。映像技術の発達によって派手な水中戦闘シーンを撮影できるようになったため、多くの制作費をかけて潜水艦映画が作られてきた。

「U-571」、「レッドオクトーバーを追え」、「クリムゾンタイド」、「K-19:THE WIDOWMAKER」(作品レビューはこちら)、
どれも当時の最新映像技術を使い、有名俳優を起用して制作された潜水艦映画だ。

だが実は潜水艦映画は比較的低予算で作ることができる。潜水艦内のシーンを多くすれば、セットだけでほどんどの撮影が可能だからだ。

映画作品を例にみてみよう。
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∇「Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)」

トニー・ジグリオ監督/2003年/アメリカ/98分
〈Story〉
1943年。大西洋。ドイツ軍潜水艦Uボートの脅威が薄まりつつある戦況。アメリカ軍潜水艦ソードフッシュはUボートを沈めるも、自艦の損傷激しく総員退去命令が下る。わずかに生き残ったアメリカ兵はUボートの捕虜となる。やがて艦内で伝染病(髄膜炎)が蔓延。ドイツ軍兵が次々と倒れていく。海上からはアメリカ軍駆逐艦による攻撃を受け、Uボートは海中深く潜行する。弾薬不足、補給艦なし、艦の損傷、乗組員負傷・病伏、長時間潜行による酸素不足。Uボート艦長はついに、乗組員の生還のために捕虜のアメリカ兵と協力してUボートを動かすことを決意する。
作品レビューはこちら
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潜水艦同士の戦闘シーンや駆逐艦との戦闘シーンはあるのだが、最近の潜水艦映画の戦闘シーンの迫力にはとうてい及ばない。質素でチープな印象さえ観客に与えてしまうだろう。

それでいいのだ。この作品はCGを使って派手な水中戦闘シーンを撮るつもりはない。焦点となっているのは人間ドラマだからだ。

潜水艦内部での乗艦員のドラマがしっかりしていれば、潜水艦の外の様子を映像で示さなくてもよい。要は観客の頭の中に潜水艦の外の世界の地図が描かれればいいのだ。

人間ドラマをしっかりさせるほかにも作品世界をよりリアリティのあるものにする方法はいくつもある。

ひとつは、リアルにすることだ。リアルに? なにを言っているんだ。リアルにするその方法を知りたいのに、と思われる方もいるだろう。

具体的に説明しよう。
「Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)」においては、アメリカ兵は英語(米語)を話し、ドイツ兵はドイツ語を話すのだ。

ハリウッド映画のすごいところは、どんな異国のストーリーでも自国の観客が観やすいようにリメイクすることだ。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、アメリカ人にとって観やすいように主人公ほか主要な登場人物を日本人からアメリカ人に変更している。そうすることでアメリカ人は字幕をほどんど読まずに映画を観れるのだ。

ハリウッド映画ではドイツ人であろうとフランス人であろうと日本人であろうとロシア人であろうと、たいていは英語を話すのだ。

例えばトム・クルーズがコテコテの関西弁を話したらどうだろう? そんなことはハリウッド映画では朝飯前である。

しかし「Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)」ではUボート乗組員のほとんどはドイツ語しか話せない。英語を話せるのは艦長と副艦長ぐらいだ。

映画の後半、生還のためにドイツ兵とアメリカ兵が協力してUボートを動かすシーンでは、緊迫した状況で艦長がドイツ語で命令を発したためにアメリカ兵はそれを理解できい。ドイツ人艦長はすぐに英語で命令を言い直す。それでやっとアメリカ人は理解するのだ。

また「単位はメートルだぞ」というセリフもある。国が違えば単位も違うという細部をきちんと描いているのだ。

ちなみに「U-571」という潜水艦映画でも、Uボート艦内のバルブに書かれたドイツ語をひとりの兵士が英語に通訳してわまるというシーンがある。

Uボートの乗組員はドイツ語を話し、アメリカ海軍の潜水艦の乗組員は英語を話す。このリアリティを映画でも採用するのだ。

ターゲットの観客にとって観やすいかというのも大事だが、リアリティがあるかというものもまた大事だ。特に映画の場合は作品の世界観に浸れるかどうかというのは、作品への感情移入にとって大事なポイントだ。

競合他社や競合商品がひしめきあっているところへ新たに参入しようとするなら、他がまだやっていない隙間をみつけよう。

例えば激安競争には終着駅がある。限りなく安くしつづけることはできない。いつかは「ただ=無料」という名の終着駅があるからだ。終着駅を過たら今度は商品自体の価値ではなく、その商品を使うことで生じる利用料という名の車庫に入れるしかない。

つまり、同じ方向を見ていては限界があるというこだ。

【要点】……………………………………………………………………………

●競合他社や競合商品がひしめきあっているところ(潜水艦映画)へ新規参入しようとするなら、他がやっていない隙間(人間ドラマ)をみつけよう

●使いやすさ(登場人物すべてが英語を話す)をとるか、リアリティ(それぞれの国の言葉で話す)をとるか

●使いやすさとリアリティのバランスはその内容と目的による

●使いやすい⇒潜水艦による派手な戦闘シーン、戦争スペクタクル

●リアリティ⇒潜水艦という舞台を使った人間ドラマ

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KAZZのこの映画の評価 いやぁ~泣けました 戦争もの、特に潜水艦ものは、感動しますね! 潜水艦モノにハズレなしと言われていますが、 この映画は... [Read More]

Tracked on 03/04/2005 at 17:26

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