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02/14/2005

THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)

清水崇監督/2004年/アメリカ/99分

B0009G3ESATHE JUON -呪怨- ディレクターズ・カットコレクターズ・エディション
サラ・ミシェル・ゲラー 清水崇 ジェイソン・ベア
ジェネオン エンタテインメント 2005-07-22

by G-Tools

アメリカ人が異世界で体験する理不尽な恐怖。アメリカ人にってはかなり怖い。プロデューサーのサム・ライミの卓越した手腕が発揮。ハリウッド版の続編で日本人監督がソフトを作れるのかに注目だ。日本人にとっては怖いというよりも気持わるいほうが勝る。実は笑える裏の楽しみ方もある。

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
一軒家に足を踏み入れた人々が次々に幽霊に襲われていく。日本・東京――。
大学で福祉を学ぶカレンはエマの介護をするために一軒の家にやってくる。家の中はゴミで散らかり、年配女性エマはほとんど寝たきりだ。ふいに物音がする。カレンは音がした2階へ向かう……。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△カレン
 女性。留学生。日本の東京(首都)にある大学で福祉を学ぶ

△ダグ
 男性。カレンと東京で暮らしている。
 
△ピーター
 男性。大学教授

△マシュー
 男性。会計士
 
△ジェニファー
 女性。マシューの妻

△ナカガワ(中川)
 男性。刑事
---------------------
▽カヤコ(佐伯伽椰子)
 女性の幽霊

▽トシオ(佐伯俊雄)
 男の子の幽霊


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
アメリカ人が異世界で体験する理不尽な恐怖。アメリカ人にってはかなり怖い。プロデューサーのサム・ライミの卓越した手腕が発揮。ハリウッド版の続編で日本人監督がソフトを作れるのかに注目だ。日本人にとっては怖いというよりも気持わるいほうが勝る。実は笑える裏の楽しみ方もある。

この作品はストーリーの力で怖がらせるといった性質の作品ではない。ある一軒家に一歩でも足を踏み入れた者たちが次々に死んでいく、または幽霊に襲われていく、というものでお化け屋敷にちかい。

アメリカ人にとってみれば、日本という国自体が得体の知れないことが起こりそうな一軒家のように感じられるのかもしれない。


‡異世界における不安‡

夫の仕事の都合で日本にやってきたジェニファーは英語が使えない生活に不安で一杯だ。スーパーマーケットに行ってもカップラーメンに書かれた商品名が読めないので中身がどんなものかもよくわからない。それに店のスピーカーからは音楽が流れているのではなく、だれかが常になにかをしゃべりつづけているのだ。

もちろん英語ではないので何を言っているのかはわからない。そしてジェニファーは指先でカップラーメンの蓋を少し破って中の匂いを嗅いでみて、どうやらだいじょうぶそうだということでカップラーメンをいくつか買い物カゴに入れるのだ。

このシーンは、食料を買うという日常のことさえ見知らぬ土地では思うようにいかずになんとも居心地が悪く不安を感じている様子をよくあらわしている。こうした不安によって絶えず緊張を強いられている状況というのは、特にアメリカ人にとってはかなりの恐怖を感じるだろう。

というのはアメリカ合衆国にはいろいろな人が生活しているので絶えず不安を抱かざるをえないというのがある。そのため人と人が出会う場合に仲介者がいるときはからならずお互いを紹介する。そして握手するのだ。つまりお互いに、私はあなたにとって危険な存在ではありませんよ、とアピールするのだ。

一歩外へ出れば周りは他人ばかりなので、信頼できる友人を大事にする。最も大事にするのは家族だ。そういうわけでアメリカ人が「HOME」というときには単に家(HOUSE)を意味するのではなく、自分が最も信頼する人々がいて心身ともに安心できる精神的拠り所といった意味になるのだ。

夫の仕事の都合でアメリカ合衆国から日本にやってきたジェニファーにとって英語が通じない状況というのは、一瞬たりとも気が休まる時間がないことを意味する。

また作品の冒頭で日本人の女学生がヘルパーとして家にやってきくるのだが、彼女は電話で友人らしき相手と「いまヘルパーとして家にきて掃除するところだよ~じゃあまたねぇ~」といった他愛のない会話をする。だがこれに英語の字幕が付かないのだ。

アメリカ合衆国で公開された「THE GRUDGE」と、日本で公開されている「THE JUON/呪怨」とは編集が違うらしいが、アメリカ版でもこのシーンに英語字幕は出ないのだろうか。出ないのだとしたら日本語がわからない人にとってこの電話のシーンはちょっと怖い。

電話でだれと何を話しているのだろう? これから起こるであろう「なにか」とあの電話との間にはなにか関係があるのだろうか?

そんなことを考えはじめたらもう不安で一杯になる。そこが狙いなのだろう。他愛のない電話の会話さえ怖く感じさせる。これはなかなかうまいテクニックだ。このあたりの演出のうまさが監督の持ち味なのだろう。

一方、カレンは彼氏と一緒にいたいという気持もあり、日本の大学で福祉を学んでいる。簡単な日常会話はできるが、漢字などが混ざった文字は読めない。リスニングがそこそこできても文字が読めないというのはかなりキツい。

たいていの日本人の場合、英語のリスニングに弱くても看板や紙に書かれた文を読めばだいたいの意味はわかる。文字は消えてなくらないのでじっくり読めばいい。わからない文字があっても辞書を引いたり人に訊いたりすればいい。


‡主人公カレンの魅力‡

カレンは街で日本人と接するときは「すみません」や「道をおしえてください」といったように日本語で話しかける。
カレン役のサラ・ミシェル・ゲラーさんはアメリカンドラマ「パフィー~恋する十字架」に主演してアメリカのティーンエージャーの人気者となった、金髪のキュートな女性だ。その彼女がジーンズとダウンジャケットにショルダーバッグというシンプルかつ清潔感ある服装で丁寧に日本語で道を訊く姿をみた日本人男性のほとんどは、カレンに好意を持つだろう。

日本に来ているアメリカ人の多くは日本人に道を訊くときに「Excuse me」と話しかけ、相手が英語を話せないとわかると困った顔をする。英語を使えてあたりまえと思っているアメリカ人は多く、日本語で話し掛けるカレンのようなアメリカ人は少数派だからだ。

ハリウッドリメイク作品なので日本人男性のハートを掴むことは主要な狙いではないだろうが、彼女を主人公にしたのはアタリだ。極東の島国――いつも曇ったような天気の東京は味気ない灰色に染まっているかのようだ。そこで金髪をなびかせてカレンが歩くだけで、異質な世界にまぎれ込んでしまったかのような雰囲気がより一層強調されるのだ。


‡理不尽な恐怖‡

一軒家に一歩でも足を踏み入れた者はだれであれ幽霊に襲われる。シンプルすぎるぐらいにわかりやすい。それゆえにこれだけ困ったものもないだろう。蕎麦屋の出前がきたらどうなるのだろうか。いやアメリカ人の家族が住んでいるのでピザの配達がきたらどうだろうか。とにもかくにもその家に入っただけで、というのは実に怖い。特にアメリカ人にとっては。

アメリカ社会では基本的にAかBかのどちらか一方である。価値観の多様性に配慮しようとしつつも、自分の意見を言うときはAかBかどちらかひとつにしなければいけない。

仮にAにしたなら、なぜAにしたのかを「なぜなら~だから」と理由を論理的に説明して相手を納得させなければいけないのだ。物事を曖昧にせずにはっきりさせておくことは、多様な人種の集まりであるアメリカ合衆国で生活する者たちがお互いにどういう人間かを知り合って少しでも安心するために必要なことだという。

こうした世界で生まれ育った者にとっては、物事というものには原因があって結果がある、つまり何事も論理的に説明がつかなければならないのである。わからないものには名前をつけて(例:UFO)とりあえずわかったものとするのだ。
これはなにもアメリカ人に限ったことではない。人間は自分の理解を超えるものが自分に害を及ぼすときはこれを恐怖の対象として排除しようとする。逆に自分に有益に働くときはこれを神聖なものとして大事にするのだ。

理不尽というのは怖い。例えばスティーブン・スピルバーグ監督のTVムービー作品「激突!」(1972)では何気なく追い越したタンクローリーに乗用車が執拗に襲われるというストーリーだ。タンクローリーの運転手の顔はみえず、なぜ追いまくられるのかという恐怖を描いている。これも理不尽な恐怖といえる。

では「一軒家」はどうだろうか。そこへ一歩でも足を踏み入れた者は幽霊に襲われる。なんとも理不尽でないか。車、電気製品といったハードとしては自分たちの身近にありながら、日本人がなにを考えているのか(ソフト)といったことはほとんどといっていいほど全く伝わってこない。かなりの身近に恐怖があることに背筋がゾッとするのだ。「恐怖は日常にひそんでいる」とはこのことだ。

こんなにも身近でありつつも神秘のベールに包まれた謎の島国。そこでは我々の知らない呪い(まじない)や秘密の儀式が執り行われているのかもしれない……。気分はもうインディ・ジョーンズである。なにか新しくドキドキやビックリさせてくれるものはないか。
そんな気分に存分に応えたのが「THE JUON/呪怨」だ。


‡時間軸の使い方‡

ストーリーの基本ラインを担当するのはカレンだが、他の登場人物たちのエピソードごとに時間が入れ代わる構成になっている。これはクェンティンタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」の手法に似ている。

ストーリーの基本は過去から現在、そして未来へという順行である。そこでタランティーノ監督は登場人物ごとに時間軸を入れ替えてみせたのだ。こうして完成したデビュー作「レザボア・ドッグス」は注目を浴びてタランティーノは有名監督になったのだ。

「THE JUON/呪怨」でも登場人物ごとに時間を入れ替えてそれぞれが幽霊に襲われていく様子が描かれる。そしてクライマックスでは時間軸が交差して、カレンはピーター(大学教授)が過去に一軒家で遭遇した一部始終を垣間見るのだ。

そこでは、カレンにはピーターの姿が見えるのだがピーターにはカレンの姿が見えない。観客はカレンの視点を通してピーターが遭遇した恐怖を擬似体験するという仕掛けになっている。

ここでふと思うのは、もしかしたらカレンは霊能者ではないかということだ。幾度も幽霊に遭遇しているにもかかわらずカレンはいつも助かっている。なぜカレンだけ生き残るのか? なぜなら主人公だから。主人公は一軒家の謎を解かなければならないから。これもひとつの答えだ。

かつてその一軒家でなにがあったのかを観客に知らせなければならない。それもわかりやすい方法で。というわけでカレンは生き残り、一種の霊視のような形で一軒家で起こった過去の出来事を知るのだ。

世界には霊能者と言われいる人はたくさんいる。過去に一軒家で起きた出来事が明らかになって呪怨のもとになった経緯を知ることができるようになっているのだ。この経緯はアメリカ人でなくてもそこそも納得できる内容になっている。

日本版の「呪怨」はビデオも含めると4本ある。そのうちの劇場版「呪怨」(2002)と比べてみると内容はほぼ同じだが「THE JUON/呪怨」のほうがよりわかりやすくなっている。ハリウッドではよりエンタテイメントに徹するためにわかりやすい編集をしたのだろう。

「THE JUON/呪怨」は「時間を入れ替えたびっくりお化け屋敷」である。


‡アメリカ人が求めるもの‡

日本人が作ったストーリーはあまり観たくない。なぜならたいして興味がないからだ。それよりも未開のジャングルを探検するような好奇心をくすぐられる題材と、とお化け屋敷みたいな驚きがほしいのだ。こういった求めに見事に応えたのがサム・ライミさんだ。


‡凄腕プロデューサー、サム・ライミ‡

製作をしたサム・ライミは「呪怨」がアメリカ人にとってすごく怖いことにすぐに気がついたのだろう。監督は日本人のままでロケも日本で行う。主要キャストはアメリカ人にするというベストな采配をふるった。彼はまるで日本製の
レーシングカーに乗ったアメリカ人ドライバーみたいではないか。しかも優勝した。「THE JUON/呪怨」の全米ヒットはサム・ライミさんの狙いが見事に的中したことを表している。サム・ライミさんは監督としてだけでなく、プロデューサーとしてもすばらしい才能を持っているのは間違いない。


‡続編はどうなる‡

しかしヒットすればするほどアメリカ人にとってはますます日本は何を考えているかわからない不気味なところ、という認識が深まるのだ。

演出という職人技術の担当は日本人。舞台というロケも日本で行う。つまりハードはメイド・イン・ジャパンで、登場人物という内面はアメリカ人。つまりソフトはメイド・イン・アメリカである。

またしても日本のハードだけ持っていかれたという声もある。だが次がある。すでに続編の製作が決定しているというが、続編はどのような作品になるのだろうか。

清水崇監督の名前はハリウッドに知れ渡った。サム・ライミさんのおかげだ。なにをするにもまずはヒットを飛ばして名前を売らなければならない。名前が売れて次にすることは、ハードだけでなくソフトも作ることだ。続編でソフト
を作れるかに注目だ。

日本が神秘や好奇の目で見られていることは大いに利用すればいい。だがそれははじまりにすぎない。日本っぽいもので注目を集めつつ、登場人物の心の内が伝わる作品(ソフト)を作るのだ。心が伝わる作品がハリウッドでヒットする日がはやくきてほしいものである。


‡怖さより「笑い」と「気持わるさ」‡

ところで幽霊は怖いの? という疑問にお答えしよう。あくまで私の感想だが噂ほど怖くない。というより「笑いと気持わるさ」のほうが勝っている。

トシオくん(白塗り顔の男の子)はなんとも愛くるしく和んでしまう。彼の登場シーンには笑えるところがある(エレベーターのシーン)。カヤコ(女性)は怖いというより動きが気持わるい。

日本版「呪怨」(清水崇監督/日本/2002年/1時間32分)には「じつは笑える『呪怨』の裏の楽しみ方」というのがある。
これは「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」にもあてはまるが、主要なキャストをアメリカ人に変更したために笑いの要素はいくらか抑えられている。
「じつは笑える『呪怨』の裏の楽しみ方」に関する記事はこちら


‡「呪怨」本の著者 大石圭‡

作家の大石圭さんは1961年東京生まれ。93年『履き忘れたもう片方の靴』で第三十回文芸賞佳作。
大石さんの作品の文体はとても読みやすい。スラスラと読める。それだけ文章がうまいのだが、その作品世界にはなんとも得たいの知れない恐怖が広がっている。読みやすい文体でありながら淡々と綴られる物語世界に漂っている無機質さや冷たさがじわじわと伝わってくるのだ。独特の世界観を持つ作家さんだ。


‡ちなみにものすごく怖い作品といえば‡

「the EYE (THE EYE)」
この作品はものすごく怖い。しかも人間ドラマがしっかりしているのだ。おすすめだ。
(上記映画タイトルをクリックで作品レビューへ)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

THE JUON/呪怨―ハリウッド版呪怨
大石 圭
角川書店 2005-01


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呪怨 劇場版 1 & 2セット
奥菜恵
ジェネオン エンタテインメント 2004-02-25


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Comments

さて、この映画、アメリカでのヒットしたという状況を考える時、
一つの推察が浮かぶ。
それは、『THE JUON』には
アメリカ人の精神の中心にあるフロンティアスピリットをくじく恐怖がある、
ということ。

Posted by: もんどり | 02/15/2005 at 15:33

ある英国のグループが、恐怖の要素をすべて満たしている作品にキューブリックの『Shining』を選んだがあれは,悪魔や霊よりも、頭はげたパパさんの発狂ぶりが怖くて、「JUON」もそうでした。母子がメインですが、一番恐ろしいのは現実にある人心です。現実だからです。

Posted by: y | 02/22/2005 at 08:58

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