大切な無駄 ―「アイ,ロボット」―
〈カテゴリ:マーケティング〉
科学技術が発達してビジネスや日常生活が便利になればなるほど見落としてしまいがちなことがある。
それは「感情」だ。
映画作品を例にみてみよう。【注】作品内容のネタバレあり
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作品名「アイ,ロボット(i,ROBOT)」
アレックス・プロヤス監督/アメリカ/2004年/105分
原作:アイザック・アシモス『われはロボット』
【Story(ストーリー)】
2035年、シカゴ。3原則によって、人類はロボットと共存していた。USロボティックス社の新型ロボット「NS-5」が発表される。
ある日、ロボット工学の権威である博士が謎の死を遂げる。博士と面識があったデル・スプーナー刑事は死の謎を解こうとする。
作品レビューはこちら
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3原則(3Laws Safe)とは?
一、ロボットは、人間に危害を加えてはならない。
一、ロボットは、人間から与えれた命令に服従しなければならない。
一、ロボットは、前掲第一条及び第二条に反するおそれのない限り、自己を守
らなければならない。
この原則により、人は安心してロボットを利用していた。そんななかにあって主人公のスプーナーはロボット嫌いなのだ。
2035年のシカゴにおいてロボット嫌いというのはかなりの変わり者だ。しかも、作品内容のネタバレになってしまうが、スプーナーの身体の一部は機械なのだ。
身体の一部が機械になっているにもかかわらず、スプーナーは機械嫌いなのである。
なぜそうなのか。スプーナーはかつて車ごと水没したことがある。もう1台の水没していく車の中には子供が乗っていた。たまたま近くを通りかかったロボットが水中に飛び込んで人間を救おうとした。そのロボットは状況を計算した結果、助かる確率がより高いほうを車から救出したのだ。そうして助け出されたのはスプーナーだったのである。
スプーナーとしては、自分よりも危険な状況にあった子供を助けてほしかったのだ。
ロボットと人間の違いは?
答えのひとつは、人間には無駄があるというこだ。無駄と聞くと悪い印象を受けるかもしれないが、人間には意味のある無駄や大切な無駄というものがあるのだ。
車にガソリンを入れて、たまには洗車機に入れる。そして家のガレージに入れてまた明日。
こうすれば車を長く使えるだろう。使えなくなったら捨てて、新しい車を買えばいい。車に求めるのは、なるべく故障しなくて安いガソリンで燃費よく走ることだ。
商用車ならこれでいいだろう。だが車には他の使い方がある。家族と海や山へ出掛けたり、友人とキャンプに行ったりするのに使うのだ。
仕事終わりに一杯飲む、温泉に入る、音楽を聴く。これらは仕事の効率という面からみれば、まったくの無駄である。しかし、無駄があるからこそ人間なのだ。
無駄――つまりもっとも人間っぽいところを充分に理解しなければ人の心は掴めない。
「アイ、ロボット」という映画作品を観る観客はなにを求めて劇場にやってくるのか。CGで描かれたロボットだろうか。いやそうではない。人間を観にくるのだ。ロボットがなんでも世話してくれる便利な世界にあって最もローテクで変わり者であるスプーナーの人間っぽさに観客は感情移入するのだ。
なぜならスプーナーはロボットにはない「感情」を持っているからだ。そして2035年のシカゴにおいて最も「感情」を大事にしている人間だからだ。
【まとめとポイント】………………………………………………………………………
●便利や効率を追い求めると「無駄」をなくそうとする
●ほんとうに「無駄なもの」と、忘れてならない大切な「無駄がある」
●無駄があるからこそ人間なのだ
●最も人間っぽいところ――それは感情である
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