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02/10/2005

新鮮な恐怖(1)―「呪怨」(日本版)―」

〈カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

2月11日(金)から「THE JUON/呪怨」が公開される。これは日本の「呪怨」のハリウッドリメイク作品で、サム・ライミが製作する。監督は日本人の清水崇のままで、ロケも日本で行っている。主要な登場人物はハリウッドの俳優という、いままでのリメイク映画とはちょっと雰囲気の違った作品だ。

「THE JUON/呪怨」は2004年10月22日に全米3245館で公開され、オープニング3日間で約4000万ドルを稼いで全米No.1を獲得した。全米NO.1は日本人監督初である。宮崎駿監督も北野武監督も海外で高い評価を受けているが興行成績はまだまだである。全米NO.1とはつまりメジャーになったということだ。そういう意味では北野作品も宮崎作品もアメリカ合衆国ではマニア市場で知名度が高いにすぎないといえる。

実は「THE JUON/呪怨」を私はまだ観てない。にもかかわらず今回取り上げるのはなぜか。それはこの作品にはアメリカ人が求める新鮮な恐怖とはなにか?を知るヒントがあるからだ。
アメリカ人が日本のホラーに何を求めているのかを知ることは、人々の要望を的確に読みとる訓練になるのだ。

「THE JUON/呪怨」の大元は、あまりの怖さに噂になって発禁寸前となった伝説のホラー・ビデオだ。このビデオが映画になったのが「呪怨」(清水崇監督/日本/2002年/1時間32分)だ。

「呪怨」のストーリーは、日本の郊外の一軒家に足を踏み入れた者たちが幽霊に次々に殺されていく、というもの。

ものすごく怖いと噂だったが、サム・ライミ監督(後ほど紹介します)が絶賛したと聞いて、もしかしたら怖くないのではないかと思った。

実際、ちっとも怖くなかったのである。とはいっても「リング」も「仄暗い水の底から」もたいして怖くなかった私は、おそらく怖いと感じるポイントがこれらの作品が狙っているところとは違っているというのもあるだろう。だが収穫もあった。

そもそも、怖くなくて得したことがる。あまり怖くないのでじっくりと作品を観れたのだ。そのため「恐怖」を題材に「人が求めるもの」について考えることができたのだ。もし心底怖がっていたら悠長に考えてなどいられないだろう。

「呪怨」はその後「呪怨2」も制作されたが、ここでは「呪怨」を取り上げる。

「呪怨」にはいわゆるストーリーらしきものはない。とにかく郊外の一軒家に一歩でも足を踏み入れた者たちが次々に死んでいく、または幽霊に遭遇して恐怖におののく、というものだ。

これは富士急ハイランドのアトラクション「超・戦慄迷宮」に近いものだろう。つまり用意された箱(一軒家・病院)の中で驚きと恐怖の演出をいくつも施すという種類のものだ。
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富士急ハイランド 「超・戦慄迷宮」

ウォークスルー型ホラーハウス。使われなくなった古く大きな病院内を歩いていくとうスタイルのお化け屋敷。

歩行距離 700メートル
所要時間 約50分
建   物 2階建て(一部中2階)
延床面積 約3000平方メートル
料   金 500円(フリーパス使用不可)
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ストーリーに見るべきところはほとんどない。「呪怨」は「恐怖の演出」が売りなのだ。何をどうしたら怖がってもらえるかがポイントだ。「呪怨」を観たサム・ライミ監督は、こんなに怖い映画を観た事がない、と言ったという。

そもそもサム・ライミ監督のホラー系の作品は怖くないというのはよく知られている。
例えば「ザ・ギフト(The Gift)」(サム・ライミ監督 2000年 アメリカ)も怖くはない。
映画レビューはこちら

サム・ライミ監督は「スパイダーマン」「スパイダーマン2」の監督して有名だが、そもそも彼は「死霊のはらわた」(83)というホラー・スプラッタ系の作品で頭角をあらわした人物だ。
「スパイダーマン2(SPIDER-MAN2)」映画レビューはこちら

「死霊のはらわた」は題名からして怖そうだ。この作品は、山小屋にやってきた若者のグループが森の悪い霊に次々に血祭りにあげられていくというものだ。おそろしげな特殊メイクと鮮血が飛び散るといったスプラッター系のホラー作品なのだが、作品には「恐怖」のほかに「笑い」の要素が入っている。

怖すぎると笑ってしまうことがあることからもわかるように「恐怖」と「笑い」は隣りあわせだ。

「死霊のはらわた」を観ると、監督の狙いはもしかしたら「笑い」にあるのではないかとも思えるのだ。ホラーという舞台で「笑い」を描く特異な才能の持ち主。「死霊のはらわた」にはサム・ライミ監督の「おちゃめ」がいっぱい詰まっているといってもいい。

そんなサム・ライミ監督が絶賛した「呪怨」と聞いて、怖いどころか笑ってしまうのではないかと期待していた。――はたしてそのとおりになった。


〈笑いの要素〉

(1)幽霊が白塗りの男の子
(3)怖がっているのは登場人物

幽霊のひとりが顔に白塗りをしたかわいい男の子なのだ。おかんの白粉を使って家でかくれんぼして遊んでいるかのようで、この男の子が出てくるたびに、白粉だけに白けてしまった。これは狙ってのことだと思われてもしかたがない。

また幽霊に遭遇した登場人物の恐怖におののく様子が怖くないどころか滑稽にみえる。
怖がらせる対象は観客であるはずなのだが、腰を抜かして声にならないほど怖がっているのは幽霊に遭遇した登場人物なのだ。せっかく幽霊が出てきたのにひたすら怖がっている登場人物を長く映しているので、観ているうちにその怖がりようが滑稽におもえてくるのだ。

「ヒロシ」をご存知だろうか。「ヒロシです」ではじまる自虐ネタで人気者になったお笑いピン芸人だ。もしネタを披露しながらヒロシが笑ったらどうだろう。カメラさえ見ずに悲しい顔で自虐ネタを披露するから観客は笑うのだ。

笑わそうとしている人間がネタのまえに、またはネタの披露中に笑っては台無しだ。同じように怖がらせようとしている人間がいちばん怖がってしまっては台無しだ。

おばちゃんが話す前に自分で大笑いして、話を聞こうとしているほうはおばちゃんがなにを面白がって笑っているのかわからない、というのをテレビやなにかで見たことがある方もいるだろう。

「いやいやおばちゃん、なにがそんなにオモロいんかいな」てなもんである。

こういうおばちゃんのキャラクターとシチュエーションは面白い。こういう種類の笑いを楽しむのが「呪怨」の裏の楽しみ方だ。

では、こんなにも笑える作品である「呪怨」がアメリカ人にとってものすごく怖いのはなぜだろうか。

サム・ライミ監督は「呪怨」に「笑い」の匂いを嗅ぎ取ったのだろうが、それはあくまできっかにすぎない。彼はおそらくほんとうに「怖い」と思ったのだろう。――「アメリカ人にとって怖い」と感じたのだ。
      
これについては次回に話すことにしよう。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●笑わせようと(怖がらせようと)おもったら、自分が笑って(怖がって)はいけない

●おばちゃんキャラクターならばそれでも「笑い」になる

●サム・ライミ監督は「呪怨」のどこを怖いと感じたのか

●「呪怨」はまさにアメリカ人にとって怖いのだ
     
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∇呪怨(じゅおん)

強い怨念を抱いたまま死んだモノの呪い。それは死んだモノが生前に棲していた場所に蓄積され、「業」となる。その呪いに触れたものは命を失い、新たな呪いが生まれる。
「呪怨」公式サイトより引用)
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∇清水崇(しみず たかし)

1972年群馬県生まれ。近畿大学芸術学部を経て、関西テレビ「学校の怪談G」の短編を脚本・演出。ビデオ版「呪怨/呪怨2」を監督・脚本。「富江re-birth」で劇場用映画監督デビュー。
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∇他のサム・ライミ監督作品
「ダークマン(DARKMAN)」 1990年 アメリカ 映画作品レビューはこちら
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Comments

怖い、怖すぎ!!!
夜・・・寝むれん!
(気絶中)
ごめんなさい(;;)(泣くな!
でわでわ。

Posted by: リン | 07/27/2005 at 21:40

>リンさん。
コメントありがとうございます。
夏だ!ホラーだ!呪怨だ! 
ということで、もし夜中にひとりで観たら、そりゃあ怖いですヨ。
怖いのお好みなら「the EYE」なんていかがですかな。ラストは感動系ですよ。

Posted by: わかスト@管理人たか | 07/27/2005 at 23:34

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