オマケ―「いま、会いにゆきます」―
〈カテゴリ:マーケティング〉
聞いた話では、名古屋の喫茶店でコーヒーを注文すると、茶菓子がオマケで付いてくるそうです。午前中にはトーストが付いてくるところもあるとか。
お菓子のオマケ。これも人気があります。オマケがほしいのでお菓子を買う人もいます。
オマケはあくまでオマケなのですが、オマケというより「メイン」になっている場合があります。
事実上はメインであってもオマケとしておけば、オマケなのにスゴイ! と感じてもらえます。
人はあって当然、または受けて当然と思っているモノやサービスについては、あまり注意を向けません。もちろん、あって当然と思っているサービスの質が悪いと感じれば、二度とお店にやってきれなくなるでしょう。
オマケ付チョコで言えば、チョコがあって当たり前なのです。チョコの味や大きさがそこそこであればそれでいいのです。オマケ付チョコで重要なのはオマケの内容なのです。100円~300円ぐらいの値段で売られているチョコレ
ートの味の差というのはほとんど気になりません。それがチョコレートの味をしていればそれでいいのです。
オマケ付チョコを買うお客さんの目的はオマケです。オマケをより魅力あるものにすれば興味をもってもらえるのです。
一見するとオマケとは関係ないように思える例で考えてみましょう。いつものように映画作品を紹介します。
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作品名「いま、会いにゆきます」
土井裕泰監督/日本/2004年/
原作: 市川拓司『いま、会いにゆきます』(小学館刊)
〔Story(ストーリー)〕
ある雨の日、妻に先立たれた夫(秋穂巧)と息子(秋穂佑司)の前に妻が(秋穂澪)あらわれる。亡くなったはずの澪は記憶を無くしていた。巧と佑司は澪をやさしく迎え入れて一緒に暮らしはじめる。
澪は生前、手作りの絵本のなかで、自分が死んだら雨の季節に戻ってくるという物語を描いていた。
巧は記憶がない澪に、2人が出会った恋物語を話してきかせ、佑司は母のぬくもりを感じてしわせな日々を送っていた。
やがて雨の季節が終わり、澪は去っていく。
作品レビューはこちら
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この作品はいわゆる「感動モノ」です。子供、病気、死という要素を使っています。大ヒットしている作品で、涙なしには観られない作品だと言われています。
しかし、感動モノというだけではここまで大ヒットしなかったかもしれません。ヒットの要因は主に3つです。
〈1〉配役のうまさ(女優の竹内結子を起用)
〈2〉子供、病気、死という涙を誘う題材を使う
〈3〉SFちっくな仕掛けを使う
オマケとして重要なのは〈3〉番です。いわゆる「感動モノ」というだけでは観客が限定されます。しかし、口コミで
「感動モノなんだけど、終わりのあたりにちょっとしたネタ明かしがあるよ」
「感動モノなんだけど、終わりのあたりにちょとした仕掛けがあるよ」
と聞いたなら、それがいったい何なのかと気になることでしょう。
泣けることはまちがいなく(あって当然と思っている効果=感動の涙)、それ以外にちょっとしたネタ明かしがある(オマケ)というのです。
ただのチョコじゃない。ちょっと凝ったオマケが付いているらしい。オマケのおかげでますますおいしいチョコになるんだって!☆
チョコの味までもおいしく変えてしまうオマケがあるなんて聞いたら、もう気になって仕方ありませんよね。
「いま、会いにゆきます」は涙の定番(基本)に付け加えたオマケで、感動をもっと劇的にしたのです。
涙の定番(基本)要素 + SF的オマケ = 劇的な感動
オマケでタネ明かしをすることで、それまで感動の影にかくれていた謎が一気に解けるようになっています。つまり、サスペンスの要素をもっているのです。上の式に書き足すとこうなります。
涙の定番(基本)要素 + 謎とサスペンス +SF的オマケ = 劇的な感動
あって当然と思っている感動に、謎の答えを知りたいという好奇心(関心)と謎解きの役割を持ったオマケを付けているのです。こうして作品の内容を充実させて、より感動が広く深くなるようにしているのです。
「いま、会いにゆきます」は、オマケを使って本来メインである商材の魅力を高める良い例となっています。題名もストレートでありながら深みがあるものとなっています。この作品を観ることをおすすめします。
【まとめとポイント】-------------------------------------------------
●オマケを魅力あるものにする
●オマケでメインの商材の魅力を高める
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