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02/28/2005

回りくどい UFO

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
状況:宇宙からUFOがやってきた。

「わたくしどもといたしましては、皆様のお住まいになっておりますこの星
をそっくりすべていただいてしまいたいと考えておりますのでご了承くださ
いますようここに宣言いたします」


〔2〕問題点
―――――――――――
⇒回りくどい


〔3〕解説
―――――――――――
例文から推測すると、「わたくしども」とは地球外生命体のようです。
いったいなにをするために地球にやってきたのか。
発言しているこの地球外生命体は控えめな性格の方のようです。
要点をストレートに示しましょう。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
「われわれはこの星をいただく」
「コノ ホシ ハ ワレワレ ノ モノ ダ」       

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
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02/24/2005

Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)

トニー・ジグリオ監督/2003年/アメリカ/98分

●潜水艦という題材を最大限に活かした良質な人間ドラマ。男の約束。夫婦の約束。勇気、信頼、名誉。潜水艦映画に異色の名作が誕生した。

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
1943年。大西洋。ドイツ軍潜水艦Uボートの脅威が薄まりつつある戦況。アメリカ軍潜水艦ソードフッシュはUボートを沈めるも、自艦の損傷激しく総員退去命令が下る。
わずかに生き残ったアメリカ兵はUボートの捕虜となる。やがて艦内で伝染病(髄膜炎)が蔓延。ドイツ軍兵が次々と倒れていく。海上からはアメリカ軍駆逐艦による攻撃を受け、Uボートは海中深く潜行する。弾薬不足、補給艦なし、艦の損傷、乗組員負傷・病伏、長時間潜行による酸素不足。Uボート艦長はついに、乗組員の生還のために捕虜のアメリカ兵と協力してUボートを動かすことを決意する。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ネイト・トラヴァース
 アメリカ兵。ソードフィッシュのチーフ

△トラヴァース夫人
 ネイト・トラヴァースの妻
 
△ヨナス
 Uボート艦長

△クレマー
 Uボート副艦長
--------------------------
▽U-429
 ドイツ軍潜水艦Uボート

▽ソードフィッシュ(Swordfish)
 アメリカ軍潜水艦


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
●潜水艦という題材を最大限に活かした良質な人間ドラマ。男の約束。夫婦の約束。勇気、信頼、名誉。潜水艦映画に異色の名作が誕生した。

潜水艦ものにハズレはない――と耳にしたことあります。たしかに過去の潜水艦映画を思いかえしてみても、まったくの駄作だと思った記憶はありません。

なぜ「潜水艦ものにハズレなし」という格言(?)があるのでしょう。なぜなら潜水艦では密室効果が大いに発揮されるからです。

限定された空間は人間の極限状況を作り出すにはもってこいです。それに密室が動いてほかの密室と戦うのです。密室なのに動きがあるんです。しかも潜水艦ってソナーを使って音で周囲の状況を知るんです。つまり目隠し状態なんですね。

限定された空間。制限された情報。動く密室。生死をかけた戦い。さらに男たちの勇気、信頼、名誉。

う~ん☆ヒットしそうな題材がてんこもりです。

「Uボート 最後の決断」っていう邦題にはUボートって書いていますね。すると思い出すわけです。あの名作「Das Bort」を。

そして今回の作品「Uボート 最後の決断(In Enemy Hands)」は従来の潜水艦映画と比べると、人間ドラマに焦点があてられています。人間ドラマを描くための箱として潜水艦が登場するのです。


‡人間のドラマ‡

潜水艦同士または駆逐艦との戦闘スペクタクルを描くといった作品ではありません。そういったシーンもありますが最近の潜水艦映画に比べるとずいぶん質素です。また、製作国のプロパガンダ映画という雰囲気もほとんどありません。

つまり戦争映画というよりも、男たちの人間ドラマである、また愛する妻との約束を守ろうとする夫の物語なのです。


‡約束の物語‡

主人公ネイトは潜水艦のチーフです。艦長でも副艦長でもありません。副艦長の下あたりでしょう。妻が帰りを待っています。生きて帰ると約束しました。潜水艦が轟沈して敵艦の捕虜になったネイトは、疫病と艦への攻撃とで何度も死を覚悟します。しかし妻との約束を思い出し、生還のために力を振り絞って行動しつづけます。

Uボート内で疫病が蔓延し、ついにドイツ兵だけでは艦を動かせなくなりました。Uボート艦長ヨナスはネイトに協力を頼みます。いっしょに艦を動かして部下を生還させよう――と。

これに応えてネイトはドイツ兵、アメリカ兵の区別なく乗組員の生還のを第一に行動することをお互いに確認して、基本となる事柄についてどうするかを決めるのです。こうして生還という目的のために約束をするのです。

ネイトはこの男同士の約束を守ります。そうすることで妻との約束も守ることができるのです。


‡登場人物が立体的‡

主人公ネイトだけでなく、Uボート艦長ヨナスや副艦長クレマーの内面もしっかり描かれています。
つまり、どちらか一方側だけの視点ではないのです。そもそもアメリカ側ドイツ側という分け方をしていません。ひとりの人間の内面をそれぞれしっかり描いているのです。

登場人物たちのセリフがまたいいんです。特にUボート艦長ヨナスの言葉には重みがあります。部下の尊敬を失ってまでも人を助ける強さを持ったヨナス艦長。彼の内面が行動となってよく表れています。


‡「アナログ感」と「潜望鏡の見方」‡

第二次大戦中という時代設定のため、潜水艦がレトロというかアナログなんです。これがすごくいい味を出しています。
「Das Bort」でもそうでしたが、急速潜行!というときには乗組員が皆船首へ駆けていくんです。いわゆる体重移動ですね。また艦の近くで爆発が起きると、パイプから水が噴き出したり火災が発生したりとものすごくアナログ感があります。それに魚雷装填も手動で、かなりの確率で不発もあります。コンピュータ制御があたりまえの現代ではかえって新鮮に映ることでしょう。

そしてちょっとばかり注目してほしいのは潜望鏡の見方です。潜望鏡の側面にせり出した取っ手のようなものを両手で掴んで覗き込むのだろうと思っていたのですが、ちょっと違うんです。そうではなく、取っ手の上に肘を乗せて、潜望鏡を抱きかかえるようにして覗くんです。おそらくこのやり方が一般的なのでしょう。潜望鏡の覗き方がわかっただけでもちょっと得した気分です。


潜水艦映画ファンはもちろんのこと、いままで潜水艦映画にあまり興味なかった方にもおすすめです。

派手な有名スターが出演していないこともあり、地味な作品っぽく思われるかもしれませんがいい役者さんを使ってます。主人公ネイトなんて一度観ら忘れない特徴ある役者さんで、きっとあなたもなにかの映画でこの俳優さんみたことあるなぁって思うハズ。

良質な人間ドラマです。おもわぬいい拾い物をしたい方はぜひ☆

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「K-19:THE WIDOWMAKER」作品レビュー

K-19
ハリソン・フォード
ポニーキャニオン 2003-07-02


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Uボート ディレクターズ・カット
ユルゲン・プロホノフ
ジェネオン エンタテインメント 2005-01-26


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U-571
ビル・パクストン
ジェネオン エンタテインメント 2002-02-22


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眼下の敵
ロバート・ミッチャム
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2004-01-23


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レッド・オクトーバーを追え!
ショーン・コネリー
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン 2004-11-26


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2重カギカッコの使い方

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
そのときの状況を訊かれたタケシくんは『あのときカナちゃんが「教室に寄っ
てから行きましょう」と提案したんだ』と答えました。
 

〔2〕問題点
―――――――――――
2重カギカッコ『 』の使い方が適切ではない。


〔3〕解説
―――――――――――
2重カギカッコは、カギカッコのなかにさらにカギカッコを入れるときに使い
ます。
例文ではカギカッコ「 」と2重カギカッコ『 』を使う位置が逆になってい
ます。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
そのときの状況を訊かれたタケシくんは「あのときカナちゃんが『教室に寄って
から行きましょう』と提案したんだ」と答えました。      

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02/21/2005

日程は表で

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
         ○子ども読書会のお知らせ○

 12月の子ども読書会の日程は、12月1日(日)が「クマのプーさん」、
 12月8日(日)が「人魚姫」、12月15日(日)が「ジャングル大帝」、
 12月22日(日)が「グリンチ」です。午後2時から始まります。なお、
 12月29日(日)はお休みします。
 

〔2〕問題点
―――――――――――
⇒知らせたい日程が一文につまっている。


〔3〕解説
―――――――――――
日程を知らせる場合は表を使いましょう。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
              ○こどものおはなし会の日○

 日にち       じかん      だいめい
-------------------------------------------------------------
 12月 1日(日) 14時~15時  「クマのプーさん」
 12月 8日(日) 14時~15時  「人魚姫(にんぎょひめ)」
 12月15日(日) 14時~15時  「ジャングル大帝(じゃんぐるたいてい)」 
 12月22日(日) 14時~15時  「グリンチ」
 12月29日(日) 14時~15時  おはなし会はおやすみです。

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02/20/2005

みんなでワイワイ―「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」―

〈カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

アメリカ合衆国でなぜ「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」が大ヒットしたか。

その答えのひとつは「みんなでワイワイ盛り上がれる」からだ。
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
∇「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」
清水崇監督/2004年/アメリカ/99分
作品レビューはこちら
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…

この作品はアメリカではPG13指定となっている。つまり13歳未満の年少者が入場する際は保護者の同意が必要なのだ。

早い話が子供でも観れるということだ。そして13歳以上、日本でいえば中学生以上は保護者の同意がなくても劇場で作品を観ることができる。

ティーンエージェーが同世代の友達同士で映画でも観にいこうという話になる。さてどんな作品がよいものか。

映画の好みは人それぞれだが、若者同士で集まった場合はとりあえずみんなでワイワイ盛り上がれるかどうかが一番のポイントだ。

すると「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」はどうだろう? これほどピッタリな映画もそうはない。

主人公のカレン役のサラ・ミシェル・ゲラーさんはアメリカンドラマ「パフィー~恋する十字架」に主演したこともあり、アメリカのティーンエージャーの人気者だ。ほかに「ラストサマー」にも出演しており、いわゆる恐怖(叫び系)の作品とイメージがピッタリの俳優さんだ。

とりあえず映画館でキャーキャーいってみんなで盛りあがれそうだという印象を持つだろう。そして実際にかなり盛り上がっているようだ。

ティーンエージャーが求めるひとつは、ベースボールやバスケットボールやXスポーツを観戦するような「盛り上がり」だ。

子供が気軽に観れて、それでいてみんなでワイワイ盛り上がれるというのはヒットしやすいのだ。

ワクワクドキドキということでは「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」は日本が舞台なので、異国のお化け屋敷に足を踏み入れるようときのように、好奇心と探求心が刺激される。


ではティーンエージャーに受け入れられる要素をまとめてみよう。

〈1)馴染みのある俳優が登場(サラ・ミシェル・ゲラー)

〈2〉みんなで盛り上がれる

〈3〉未知の領域へ足を踏み入れるワクワクドキドキ感(好奇心・探求心)


これらをみて、なにかにちょっと似ていると思った方もいるだろう。

そう、ディズニーリゾートだ。馴染みのあるキャラクター、みんなで盛り上がれるアトラクションやショーの数々、そしてディズニーやピクサーの物語世界へ足を踏み入れるワクワクドキドキ感。

ディズニーリゾートと違うのは、たいていの人はJUONワールドに住みたいとは思わないし、リピーターにはなりたくないと思うことだ。

上記3つのうち、どれかひとつ欠けてもディズニーリゾートにはならない。たとえば(3)が欠けると、日本でいうと馴染みの街でとりあえずみんなで盛り上がれるところ――カラオケだ。またはボーリング場、野球場あたりだ。(カラオケボックスで合コンという場合は、未知の相手への好奇心や探求心はあるだろう)

カラオケや野球観戦とはいわば日常だ。非日常の世界でワクワクドキドキみんなで楽しく盛り上がれるというがエンタテインメントでの成功要因のひとつだ。

製作のサム・ライミさんはこのあたりのことは百も承知で日本人監督を起用したのだろう。

まさか日本にディズニーリゾートに(ちょとでも)似ているネタが落ちていたとは……!

サム・ライミさんの目はかなり冴えているようだ。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●盛りあがって楽しめる時間と場所を提供する

●馴染みがあって(サラ・ミシェル・ゲラー)、みんなで盛り上がれて(お化け屋敷・ドッキリ)、未知の世界へ足を踏み入れるかのようなワクワクドキドキ感(異国・日本)がある。これがエンタテインメントで成功する要因のひとつだ

●身近にディズニーリゾートに匹敵(するかもしれない)ネタが転がっていないか探してみよう

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02/19/2005

輝く!日本ブログ大賞 2005

輝く!日本ブログ大賞 2005 に応募します。

【タイトル】

 「わかりやすさとストーリー」

【作者】

  TAKADA

【URL】

  http://plain-story.cocolog-nifty.com/ps/

【紹介】

  わかりやすさとストーリーをキーワードに、わかりやすくする方法、物語
  分析的映画レビュー、映画で読み解くマーケティングを紹介しています。


この賞は有名ブログや定番ブログに偏らず、無名でも内容がおもしろいブログ
を発掘したい、というコンセプトだそうです。

応募締め切りは2月20日。

ブログをやっている人は応募してみては☆

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電話で要件を伝える

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
状況:電話

「鈴木ですが、実は私の祖父が昨夜、入院いたしまして、それで田舎の妹が
急きょ上京することになりまして、明日の午前中に羽田空港へ着きますもので、
それで妹は5年前に足を悪くしてまして、私が空港まで迎えにいかなくてはな
らなくなりまして、たいへん申し訳ありませんが明日の午前10時の会議には代
理の者を伺わせますので、よろしくお願いいたします」
 
 
〔2〕問題点
―――――――――――
⇒一文が長い
⇒結論までが遠い


〔3〕解説
―――――――――――
鈴木さんは何を伝えたいのか、最後まで聞かないとわかりません。
電話の受け手は、鈴木さんが何を言いたいのかがわからないまま話を聞きつづ
けなければなりません。

★解決策 ⇒用件を先に言う


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
「鈴木です。明日の午前10時の会議に出席できなくなりました。私の代わりに
田中という者を出席させます。たいへん申し訳ありません。会議に出席できな
い理由は~」

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ラーメンメニューの表記

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
ラーメン店のメニュー

醤油ラーメン……800円
味噌ラーメン……800円
塩ラーメン ……800円
学生    ……700円
 
 
〔2〕問題点
―――――――――――
⇒表記の仕方


〔3〕解説
―――――――――――
例文のメニュー表記だと、学生が700円で売られていることになる。
その原因は、ほかのラーメンと同じ場所に並んで表記してあることによる。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
醤油ラーメン……800円
味噌ラーメン……800円
塩ラーメン ……800円

★学割アリ。学生(学生証を提示してください)は、メニューに載っている
すべてのラーメンについて、表示価格より100円値引きします。

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よい天気とは

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
状況:天気予報番組にて。

「こちらはよい天気です」


〔2〕問題点
―――――――――――
⇒よい天気とは?


〔3〕解説
―――――――――――
晴れているのか。曇っているのか。雨は降っているのか。風は吹いているのか。
空の色は? 気温は?

よい天気=晴れとはかぎらない。
雨を待ち望んでいる人には、よい天気=雨である。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
「こちらの天気は快晴です。気温は18度、湿度は20パーセント、風速は2
メートルです」

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02/18/2005


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02/16/2005

新鮮な恐怖(2)―「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」―

(カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

∇前回の記事「新鮮な恐怖(1)―「呪怨」(日本版)―」

今回とりあげる作品はこちら
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∇「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」
清水崇監督/2004年/アメリカ/99分
作品レビューはこちら
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「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」はアメリカ人にとって怖い。どんな恐怖なのか。

「身近にあったけど実はよく知らない異世界にまぎれ込んでしまった恐怖」

身近にある日本――車やテレビやビデオゲームといった日本製品はそこら中にある。普段それが日本製だと意識していない。それほど自然に日本製品はアメリカ人の日常生活の一部になっている。

では日本人はどうか。
髪型はちょんまげで顔には丸眼鏡をかけて首からはいつもカメラをぶら下げていつも集団でいる人たちでしょ。

……「ちょんまげ」を知っているだけマシかもしれないが、こんなイメージを持っている人もいるだろう。

日本人の典型的なイメージを強調したキャラクターは映画の中でもみることができる。例えば「Mr.インクレディブル」だ。Mr.インクレディブルがヒーローとしての活動を禁じられてから働いているのは保険会社で、彼の上司は日本人だ(おそらく)。なぜならその男性の上司はチビで眼鏡をかけていてMr.インクレディブルにこんなふうに言うのだ。正義がなんだ、おまえは歯車として会社の利益のための働け! ――と。

アメリカ人の抱いている日本人のイメージとは? そもそもイメージが浮かばない人のほうが多いだろう。

日本製品は身近にありながら、それを作った人達については実はよく知らない。日本文化に特別に興味がない人にとっては、知りたくもないし、知る必要もない。すくなくとも危険ではないという認識はある。

だが、身近にあって実は知らない世界がある。そこはあなたの知らない世界がある。知っていると思っていたところが、実は全くの異世界であり、あるときあなたがそこへまぎれ込んでしまったら? (「あなた」とはここではアメリカ人のこと)

ところで、作品では主要な登場人物がアメリカ人になっているのがポイントだ。言葉が通じない。字も読めない。そんな状況だけでも充分に怖いのだ。さらにもっと怖いことがある。それは理不尽な恐怖だ。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」ではある家に足を踏み入れたら幽霊に襲われる。これは日本に限ったことではなく、西欧にも古い洋館やお城に入ったら幽霊の襲われるという物語はある。

だがこれらと違いは、法則があるかないか、といことだ。西欧のお化け屋敷にはたいてい呪い等を解く方法がある。アイテムをみつけだしたり、幽霊の願いをかなえることで助かる方法があるのだ。

だが「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では呪いを解く方法をみつようとする間もなく登場人物は次々と襲われて命を落としていく。主人公のカレンは生き延びて呪いの元となって出来事を知るのだが、だからといって助かる方法がみつかるわけではない。

ハリウッド映画では危機に陥った主人公は、助かるために必要な知恵や道具を獲得して、ときには友人や知り合いのサポートを受けて危機から脱出する。

危機から脱出する方法を自ら捜し求めてやっとみつけたヒントをもとに数々の苦難を乗り越えていくのだ。つまりハッピーエンドへ向かう段階があり、失敗や苦労をしながらもひとつずつクリアしてくと、成功の法則や方法を見つけることができるのだ。ハッピーエンドの典型例の映画作品↓
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ホーンテッド・マンション(THE HAUNTED MANSION)
ロブ・ミンコフ監督/2003年/アメリカ
作品レビューはこちら
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しかし「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、どうやっても法則や方法がみつからないまま死人だけが増えていく。主人公はいつまでたっても解決方法がみつからないままに映画が終わってしまう!

法則がないという恐怖を題材にした映画に「ファイナルディティネーション」(Final Destination/ジェームズ・ウォン監督/2000年/アメリカ映画/97分)という作品がある。これは死という運命がどこまでも追いかけてくるというもので、未来を変えられるかというお決まりのキャッチコピーもつく。

ハリウッド映画には「未来を切り開いていくのは自分だ。運命は変えられる」というお題目がある。これに対する「運命とは決ったものだから変えれない」というストーリーは一種の恐怖なのだ。なぜならそれはアメリカ的価値観と生き方を否定するものだからだ。
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
運命は変えられない系ホラー映画作品
∇「ダークネス(DARKNESS)」
ジャウマ・バラゲロ監督 2002年 スペイン 作品レビューはこちら
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では「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」にみるアメリカ人が感じる恐怖をまとめてみよう。

○日常に潜む恐怖。身近にあった異世界へまぎれ込んでしまった恐怖。

○生き延びる法則や方法が存在しない恐怖

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」は続編の製作が決定している。お化け屋敷のようなビックリ演出で注目を集めた次は、登場人物のドラマによって内面を描くのかどうかに注目だ。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●ドキドキすることや未知なものは遠くにばかりあるのではない

●身近にあって今まで気にもとめていなかったものほどインパクトは強い

●法則という名の常識を突き破ると、恐怖という名の驚きとインパクトを与えることができる

●注意を引くには、お化け屋敷的方法――びっくり――も効果的だ

●注意を引いたたら次は人間を描いて内面を伝える(会社なら事業内容や業績を知ってもらう。企業活動によって信頼を得る)

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02/15/2005

ボーン・スプレマシー(THE BOURNE SUPREMACY)

ポール・グリーングラス監督/2004年/アメリカ/108分
原作:「殺戮のオデッセイ」ロバート・ラドラム著

●新アメリカンヒーロー物語。記憶喪失で自分の本名さえわからない男がどう生き抜くか。個のあり方・生き方をみつめ直そうとする「時代の空気」を象徴している

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
記憶を喪失した元CIAトップエージェントのボーンはインドのゴアで恋人のマリーと暮らしていた。ある日、殺し屋に襲われてマリーが亡くなる。ボーンは夢でみた記憶の断片と共にひとり旅立つ。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△ジェイソン・ボーン
 元CIAトップエージェント。記憶をなくしている

△マリー
 ボーンの恋人
 
△ランディ
 CIA諜報員。作戦指揮担当

△アボット
 CIA高官

△ニッキー
 トレッドストーン計画で連絡・管理等のサポートを担当

△キリル
 殺し屋。ボーン抹殺を請負う


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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●新アメリカンヒーロー物語。記憶喪失で自分の本名さえわからない男がどう生き抜くか。個のあり方・生き方をみつめ直そうとする「時代の空気」を象徴している

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前作(第1作)の作品レビュー
「ボーン・アイデンティティー(THE BOURNE IDENTITY)」
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だれでも自分が何者か知りたいと思ったことは一度はあるでしょう。どこからきてどこへいくのか。この答えをいろいろうまいぐあいに提供している人がいますよね。そういう人のもとには答えを求めてたくさんに人々が集まるものです。そのなかから自分に合った答えを選ぶこともできますよね。

でも自分で見つけ出そうとする人もいます。みんな自分で見つけ出せればそれに越したことありません。そういうわけでジェイソン・ボーンはみんなのヒーローなんです。なぜってボーンは自分が何者なのかを自分で知ろうと行動するのですから。

前作で危機を一緒に乗り越えたボーンとマリーはインドのゴアの海辺の家で一緒に暮らしています。レンタルバイクかなにかのお店を経営しています。愛するマリーと静かな生活を送っているボーンは、しばしば夢で過去の記憶の断片をみます。しかもいつも同じ内容の夢なのです。

夢をみる度に書きとめているのですが、何度も見るくらいですから自分にとって重要なことなのだろうとは思いますが、それが何なのかはわかりません。いまひとつだけ確かなこと――わかっていることはマリーを愛しているということ。

なんてロマンティック☆こんなこと言われちゃっうマリーって幸せ者ですね。でも!そこへ殺し屋がやってきてマリーは命を奪われてしまいます。

こうしてボーンはCIAのお金にまつわる事件に巻き込まれていくのです。


‡ボーンのためのボーン映画‡

題名にもあるように作品はボーンの物語です。前作を観たお客さんはすでにボーンに感情移入していますので、今作ではボーンが自分の過去を必死に探しながら過去と向き合って力強く歩んで行く(ほとんど走っていますが)様子をアクションシーンをたくさん入れて描いています。


‡カーチェイス‡

ボーンシリーズの特徴ってなんでしょうか。醍醐味とでもいいましょうか。それはなんといってもカーチェイスです。今回はインドのゴアとロシアのモスクワでカーチェイスするのです。

このシリーズではアメリカではロケしていません。アメリカ国内でのカーチェイスってハリウッド映画にたくさんありましたよね。そういうのに見慣れた人たちにはボーンシリーズのカーチェイスは新鮮でしょう。

たぶんアメリカ以外の国でカーチェイスシーンを撮影するにはたいへんな準備が必要だし、お金もたくさんかかるでしょう。それにもかかわらずカーチェイスシーンはとってつけたようなものではなく、時間も長くて迫力満点です。

ボーンはいつも庶民が乗る一般車でカーチェイスします。いっぽう敵の殺し屋はベンツに乗って追ってくるのです。この対比がいいですね。ボーンって庶民派なのね。CIAを離れたのでチームのバックアップはありません。いつも一人です。頼れるのは己の機転と身体能力と行動力。武器もほとんど使いません。近くにある物を利用して身を守ったり戦ったりします。ときには地下鉄の路線図と時刻表を瞬時に読みとって行動します。ケガをしたらスーパーマーケットに入ってアルコールを調達。車に乗って傷を消毒しながら地図を開いて道を調べながらカーチェイスするのです。

常に先の先を読んで今必要なことを確実に行いつつ、状況をよく判断して周囲から情報を収集してテキパキと動くんです。

そんなボーンが今回、主に乗るのは黄色いタクシー。車体がボコボコになりながらベンツをかわしてひた走るその姿は前作以上にパワーアップしています。カーチェイスのシーンはこのシリーズの見せ場なので気合が入りまくっていますヨ。


‡過去を見つけ、受けとめ、向き合うボーン‡

ボーンがなぜヒーローなのかっていうと、自分を知ろうと行動するだけじゃなくて、知った過去を受けとめてきちんと過去に向き合うからなのです。

内容は観てのおたのしみなので具体的には書きませんが、ボーンは夢に見た過去の出来事を知ってそれに向き合うのです。ロシアに行き、ケガをしてカーチェイスして体がボロボロになりながらも、ある人物に会いにいきます。このシーンが作品の最も良いところです。その人物に会った後にロシアの巨大アパートメントの中庭みたいなところをボーンが歩いていくその後姿……。このシーンのために撮った映画といってもいいでしょう。


‡ちなみに‡

「戦火の勇気」という作品でデンゼル・ワシントンが演じる戦車隊長が、部下が乗った味方の戦車を誤爆したことを亡くなった部下の両親に報告しにいくシーンがあります。隊長は黙っていればことなきを得るのですが、苦悩しながらも自分の過去と向き合って自分の意思で両親に報告にいくのです。このあたりはボーンの行動と似たところですので「戦火の勇気」をまだ観ていない方はご覧になてみてくださいね。

「戦火の勇気」は湾岸戦争を題材にしたヒューマンドラマです。メグ・ライアンが女性将校役で出演しています。ラブコメ系の作品出演が多い彼女ですのでファンの方にとってはある意味で貴重な作品かもしれません。ドラマがよくできています。おすすめです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
前作↓

ボーン・アイデンティティー
マット・デイモン
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2004-07-07


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戦火の勇気
ジョゼフ・M.カラチオーロ デブラ・マーティン・チェース
20世 紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2004-10-22


by G-Tools

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「基本3分!映画レビュー わかりやすい映画案内」ってどんなの?
チラっとみてもよいという方だけにしてね。
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02/14/2005

THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)

清水崇監督/2004年/アメリカ/99分

B0009G3ESATHE JUON -呪怨- ディレクターズ・カットコレクターズ・エディション
サラ・ミシェル・ゲラー 清水崇 ジェイソン・ベア
ジェネオン エンタテインメント 2005-07-22

by G-Tools

アメリカ人が異世界で体験する理不尽な恐怖。アメリカ人にってはかなり怖い。プロデューサーのサム・ライミの卓越した手腕が発揮。ハリウッド版の続編で日本人監督がソフトを作れるのかに注目だ。日本人にとっては怖いというよりも気持わるいほうが勝る。実は笑える裏の楽しみ方もある。

Story(ストーリー)
―――――――――――――――――――――
一軒家に足を踏み入れた人々が次々に幽霊に襲われていく。日本・東京――。
大学で福祉を学ぶカレンはエマの介護をするために一軒の家にやってくる。家の中はゴミで散らかり、年配女性エマはほとんど寝たきりだ。ふいに物音がする。カレンは音がした2階へ向かう……。


Main Character(主な登場人物)
―――――――――――――――――――――
△カレン
 女性。留学生。日本の東京(首都)にある大学で福祉を学ぶ

△ダグ
 男性。カレンと東京で暮らしている。
 
△ピーター
 男性。大学教授

△マシュー
 男性。会計士
 
△ジェニファー
 女性。マシューの妻

△ナカガワ(中川)
 男性。刑事
---------------------
▽カヤコ(佐伯伽椰子)
 女性の幽霊

▽トシオ(佐伯俊雄)
 男の子の幽霊


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
―――――――――――――――――――――
アメリカ人が異世界で体験する理不尽な恐怖。アメリカ人にってはかなり怖い。プロデューサーのサム・ライミの卓越した手腕が発揮。ハリウッド版の続編で日本人監督がソフトを作れるのかに注目だ。日本人にとっては怖いというよりも気持わるいほうが勝る。実は笑える裏の楽しみ方もある。

この作品はストーリーの力で怖がらせるといった性質の作品ではない。ある一軒家に一歩でも足を踏み入れた者たちが次々に死んでいく、または幽霊に襲われていく、というものでお化け屋敷にちかい。

アメリカ人にとってみれば、日本という国自体が得体の知れないことが起こりそうな一軒家のように感じられるのかもしれない。


‡異世界における不安‡

夫の仕事の都合で日本にやってきたジェニファーは英語が使えない生活に不安で一杯だ。スーパーマーケットに行ってもカップラーメンに書かれた商品名が読めないので中身がどんなものかもよくわからない。それに店のスピーカーからは音楽が流れているのではなく、だれかが常になにかをしゃべりつづけているのだ。

もちろん英語ではないので何を言っているのかはわからない。そしてジェニファーは指先でカップラーメンの蓋を少し破って中の匂いを嗅いでみて、どうやらだいじょうぶそうだということでカップラーメンをいくつか買い物カゴに入れるのだ。

このシーンは、食料を買うという日常のことさえ見知らぬ土地では思うようにいかずになんとも居心地が悪く不安を感じている様子をよくあらわしている。こうした不安によって絶えず緊張を強いられている状況というのは、特にアメリカ人にとってはかなりの恐怖を感じるだろう。

というのはアメリカ合衆国にはいろいろな人が生活しているので絶えず不安を抱かざるをえないというのがある。そのため人と人が出会う場合に仲介者がいるときはからならずお互いを紹介する。そして握手するのだ。つまりお互いに、私はあなたにとって危険な存在ではありませんよ、とアピールするのだ。

一歩外へ出れば周りは他人ばかりなので、信頼できる友人を大事にする。最も大事にするのは家族だ。そういうわけでアメリカ人が「HOME」というときには単に家(HOUSE)を意味するのではなく、自分が最も信頼する人々がいて心身ともに安心できる精神的拠り所といった意味になるのだ。

夫の仕事の都合でアメリカ合衆国から日本にやってきたジェニファーにとって英語が通じない状況というのは、一瞬たりとも気が休まる時間がないことを意味する。

また作品の冒頭で日本人の女学生がヘルパーとして家にやってきくるのだが、彼女は電話で友人らしき相手と「いまヘルパーとして家にきて掃除するところだよ~じゃあまたねぇ~」といった他愛のない会話をする。だがこれに英語の字幕が付かないのだ。

アメリカ合衆国で公開された「THE GRUDGE」と、日本で公開されている「THE JUON/呪怨」とは編集が違うらしいが、アメリカ版でもこのシーンに英語字幕は出ないのだろうか。出ないのだとしたら日本語がわからない人にとってこの電話のシーンはちょっと怖い。

電話でだれと何を話しているのだろう? これから起こるであろう「なにか」とあの電話との間にはなにか関係があるのだろうか?

そんなことを考えはじめたらもう不安で一杯になる。そこが狙いなのだろう。他愛のない電話の会話さえ怖く感じさせる。これはなかなかうまいテクニックだ。このあたりの演出のうまさが監督の持ち味なのだろう。

一方、カレンは彼氏と一緒にいたいという気持もあり、日本の大学で福祉を学んでいる。簡単な日常会話はできるが、漢字などが混ざった文字は読めない。リスニングがそこそこできても文字が読めないというのはかなりキツい。

たいていの日本人の場合、英語のリスニングに弱くても看板や紙に書かれた文を読めばだいたいの意味はわかる。文字は消えてなくらないのでじっくり読めばいい。わからない文字があっても辞書を引いたり人に訊いたりすればいい。


‡主人公カレンの魅力‡

カレンは街で日本人と接するときは「すみません」や「道をおしえてください」といったように日本語で話しかける。
カレン役のサラ・ミシェル・ゲラーさんはアメリカンドラマ「パフィー~恋する十字架」に主演してアメリカのティーンエージャーの人気者となった、金髪のキュートな女性だ。その彼女がジーンズとダウンジャケットにショルダーバッグというシンプルかつ清潔感ある服装で丁寧に日本語で道を訊く姿をみた日本人男性のほとんどは、カレンに好意を持つだろう。

日本に来ているアメリカ人の多くは日本人に道を訊くときに「Excuse me」と話しかけ、相手が英語を話せないとわかると困った顔をする。英語を使えてあたりまえと思っているアメリカ人は多く、日本語で話し掛けるカレンのようなアメリカ人は少数派だからだ。

ハリウッドリメイク作品なので日本人男性のハートを掴むことは主要な狙いではないだろうが、彼女を主人公にしたのはアタリだ。極東の島国――いつも曇ったような天気の東京は味気ない灰色に染まっているかのようだ。そこで金髪をなびかせてカレンが歩くだけで、異質な世界にまぎれ込んでしまったかのような雰囲気がより一層強調されるのだ。


‡理不尽な恐怖‡

一軒家に一歩でも足を踏み入れた者はだれであれ幽霊に襲われる。シンプルすぎるぐらいにわかりやすい。それゆえにこれだけ困ったものもないだろう。蕎麦屋の出前がきたらどうなるのだろうか。いやアメリカ人の家族が住んでいるのでピザの配達がきたらどうだろうか。とにもかくにもその家に入っただけで、というのは実に怖い。特にアメリカ人にとっては。

アメリカ社会では基本的にAかBかのどちらか一方である。価値観の多様性に配慮しようとしつつも、自分の意見を言うときはAかBかどちらかひとつにしなければいけない。

仮にAにしたなら、なぜAにしたのかを「なぜなら~だから」と理由を論理的に説明して相手を納得させなければいけないのだ。物事を曖昧にせずにはっきりさせておくことは、多様な人種の集まりであるアメリカ合衆国で生活する者たちがお互いにどういう人間かを知り合って少しでも安心するために必要なことだという。

こうした世界で生まれ育った者にとっては、物事というものには原因があって結果がある、つまり何事も論理的に説明がつかなければならないのである。わからないものには名前をつけて(例:UFO)とりあえずわかったものとするのだ。
これはなにもアメリカ人に限ったことではない。人間は自分の理解を超えるものが自分に害を及ぼすときはこれを恐怖の対象として排除しようとする。逆に自分に有益に働くときはこれを神聖なものとして大事にするのだ。

理不尽というのは怖い。例えばスティーブン・スピルバーグ監督のTVムービー作品「激突!」(1972)では何気なく追い越したタンクローリーに乗用車が執拗に襲われるというストーリーだ。タンクローリーの運転手の顔はみえず、なぜ追いまくられるのかという恐怖を描いている。これも理不尽な恐怖といえる。

では「一軒家」はどうだろうか。そこへ一歩でも足を踏み入れた者は幽霊に襲われる。なんとも理不尽でないか。車、電気製品といったハードとしては自分たちの身近にありながら、日本人がなにを考えているのか(ソフト)といったことはほとんどといっていいほど全く伝わってこない。かなりの身近に恐怖があることに背筋がゾッとするのだ。「恐怖は日常にひそんでいる」とはこのことだ。

こんなにも身近でありつつも神秘のベールに包まれた謎の島国。そこでは我々の知らない呪い(まじない)や秘密の儀式が執り行われているのかもしれない……。気分はもうインディ・ジョーンズである。なにか新しくドキドキやビックリさせてくれるものはないか。
そんな気分に存分に応えたのが「THE JUON/呪怨」だ。


‡時間軸の使い方‡

ストーリーの基本ラインを担当するのはカレンだが、他の登場人物たちのエピソードごとに時間が入れ代わる構成になっている。これはクェンティンタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」の手法に似ている。

ストーリーの基本は過去から現在、そして未来へという順行である。そこでタランティーノ監督は登場人物ごとに時間軸を入れ替えてみせたのだ。こうして完成したデビュー作「レザボア・ドッグス」は注目を浴びてタランティーノは有名監督になったのだ。

「THE JUON/呪怨」でも登場人物ごとに時間を入れ替えてそれぞれが幽霊に襲われていく様子が描かれる。そしてクライマックスでは時間軸が交差して、カレンはピーター(大学教授)が過去に一軒家で遭遇した一部始終を垣間見るのだ。

そこでは、カレンにはピーターの姿が見えるのだがピーターにはカレンの姿が見えない。観客はカレンの視点を通してピーターが遭遇した恐怖を擬似体験するという仕掛けになっている。

ここでふと思うのは、もしかしたらカレンは霊能者ではないかということだ。幾度も幽霊に遭遇しているにもかかわらずカレンはいつも助かっている。なぜカレンだけ生き残るのか? なぜなら主人公だから。主人公は一軒家の謎を解かなければならないから。これもひとつの答えだ。

かつてその一軒家でなにがあったのかを観客に知らせなければならない。それもわかりやすい方法で。というわけでカレンは生き残り、一種の霊視のような形で一軒家で起こった過去の出来事を知るのだ。

世界には霊能者と言われいる人はたくさんいる。過去に一軒家で起きた出来事が明らかになって呪怨のもとになった経緯を知ることができるようになっているのだ。この経緯はアメリカ人でなくてもそこそも納得できる内容になっている。

日本版の「呪怨」はビデオも含めると4本ある。そのうちの劇場版「呪怨」(2002)と比べてみると内容はほぼ同じだが「THE JUON/呪怨」のほうがよりわかりやすくなっている。ハリウッドではよりエンタテイメントに徹するためにわかりやすい編集をしたのだろう。

「THE JUON/呪怨」は「時間を入れ替えたびっくりお化け屋敷」である。


‡アメリカ人が求めるもの‡

日本人が作ったストーリーはあまり観たくない。なぜならたいして興味がないからだ。それよりも未開のジャングルを探検するような好奇心をくすぐられる題材と、とお化け屋敷みたいな驚きがほしいのだ。こういった求めに見事に応えたのがサム・ライミさんだ。


‡凄腕プロデューサー、サム・ライミ‡

製作をしたサム・ライミは「呪怨」がアメリカ人にとってすごく怖いことにすぐに気がついたのだろう。監督は日本人のままでロケも日本で行う。主要キャストはアメリカ人にするというベストな采配をふるった。彼はまるで日本製の
レーシングカーに乗ったアメリカ人ドライバーみたいではないか。しかも優勝した。「THE JUON/呪怨」の全米ヒットはサム・ライミさんの狙いが見事に的中したことを表している。サム・ライミさんは監督としてだけでなく、プロデューサーとしてもすばらしい才能を持っているのは間違いない。


‡続編はどうなる‡

しかしヒットすればするほどアメリカ人にとってはますます日本は何を考えているかわからない不気味なところ、という認識が深まるのだ。

演出という職人技術の担当は日本人。舞台というロケも日本で行う。つまりハードはメイド・イン・ジャパンで、登場人物という内面はアメリカ人。つまりソフトはメイド・イン・アメリカである。

またしても日本のハードだけ持っていかれたという声もある。だが次がある。すでに続編の製作が決定しているというが、続編はどのような作品になるのだろうか。

清水崇監督の名前はハリウッドに知れ渡った。サム・ライミさんのおかげだ。なにをするにもまずはヒットを飛ばして名前を売らなければならない。名前が売れて次にすることは、ハードだけでなくソフトも作ることだ。続編でソフト
を作れるかに注目だ。

日本が神秘や好奇の目で見られていることは大いに利用すればいい。だがそれははじまりにすぎない。日本っぽいもので注目を集めつつ、登場人物の心の内が伝わる作品(ソフト)を作るのだ。心が伝わる作品がハリウッドでヒットする日がはやくきてほしいものである。


‡怖さより「笑い」と「気持わるさ」‡

ところで幽霊は怖いの? という疑問にお答えしよう。あくまで私の感想だが噂ほど怖くない。というより「笑いと気持わるさ」のほうが勝っている。

トシオくん(白塗り顔の男の子)はなんとも愛くるしく和んでしまう。彼の登場シーンには笑えるところがある(エレベーターのシーン)。カヤコ(女性)は怖いというより動きが気持わるい。

日本版「呪怨」(清水崇監督/日本/2002年/1時間32分)には「じつは笑える『呪怨』の裏の楽しみ方」というのがある。
これは「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」にもあてはまるが、主要なキャストをアメリカ人に変更したために笑いの要素はいくらか抑えられている。
「じつは笑える『呪怨』の裏の楽しみ方」に関する記事はこちら


‡「呪怨」本の著者 大石圭‡

作家の大石圭さんは1961年東京生まれ。93年『履き忘れたもう片方の靴』で第三十回文芸賞佳作。
大石さんの作品の文体はとても読みやすい。スラスラと読める。それだけ文章がうまいのだが、その作品世界にはなんとも得たいの知れない恐怖が広がっている。読みやすい文体でありながら淡々と綴られる物語世界に漂っている無機質さや冷たさがじわじわと伝わってくるのだ。独特の世界観を持つ作家さんだ。


‡ちなみにものすごく怖い作品といえば‡

「the EYE (THE EYE)」
この作品はものすごく怖い。しかも人間ドラマがしっかりしているのだ。おすすめだ。
(上記映画タイトルをクリックで作品レビューへ)
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THE JUON/呪怨―ハリウッド版呪怨
大石 圭
角川書店 2005-01


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呪怨 劇場版 1 & 2セット
奥菜恵
ジェネオン エンタテインメント 2004-02-25


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02/13/2005

「ない」「形容詞」+「です」の相性

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
「駅まで走らないです」
「ケイタくんはかっこいいです」


〔2〕問題点
―――――――――――
⇒語句の相性がよくない。


〔3〕解説
―――――――――――
「ない」や「形容詞」に「です」という組み合わせは、相性がよくない。

★解決策⇒ほかの表現をする。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
「駅まで走りません」
「ケイタくんはかっこいい人です」

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02/12/2005

大切な無駄 ―「アイ,ロボット」―

〈カテゴリ:マーケティング〉

科学技術が発達してビジネスや日常生活が便利になればなるほど見落としてしまいがちなことがある。

それは「感情」だ。

映画作品を例にみてみよう。【注】作品内容のネタバレあり
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
作品名「アイ,ロボット(i,ROBOT)」
    
アレックス・プロヤス監督/アメリカ/2004年/105分
原作:アイザック・アシモス『われはロボット』

【Story(ストーリー)】
2035年、シカゴ。3原則によって、人類はロボットと共存していた。USロボティックス社の新型ロボット「NS-5」が発表される。
ある日、ロボット工学の権威である博士が謎の死を遂げる。博士と面識があったデル・スプーナー刑事は死の謎を解こうとする。

作品レビューはこちら
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…

3原則(3Laws Safe)とは?

一、ロボットは、人間に危害を加えてはならない。
一、ロボットは、人間から与えれた命令に服従しなければならない。
一、ロボットは、前掲第一条及び第二条に反するおそれのない限り、自己を守
  らなければならない。


この原則により、人は安心してロボットを利用していた。そんななかにあって主人公のスプーナーはロボット嫌いなのだ。

2035年のシカゴにおいてロボット嫌いというのはかなりの変わり者だ。しかも、作品内容のネタバレになってしまうが、スプーナーの身体の一部は機械なのだ。

身体の一部が機械になっているにもかかわらず、スプーナーは機械嫌いなのである。

なぜそうなのか。スプーナーはかつて車ごと水没したことがある。もう1台の水没していく車の中には子供が乗っていた。たまたま近くを通りかかったロボットが水中に飛び込んで人間を救おうとした。そのロボットは状況を計算した結果、助かる確率がより高いほうを車から救出したのだ。そうして助け出されたのはスプーナーだったのである。

スプーナーとしては、自分よりも危険な状況にあった子供を助けてほしかったのだ。

ロボットと人間の違いは? 
答えのひとつは、人間には無駄があるというこだ。無駄と聞くと悪い印象を受けるかもしれないが、人間には意味のある無駄や大切な無駄というものがあるのだ。

車にガソリンを入れて、たまには洗車機に入れる。そして家のガレージに入れてまた明日。

こうすれば車を長く使えるだろう。使えなくなったら捨てて、新しい車を買えばいい。車に求めるのは、なるべく故障しなくて安いガソリンで燃費よく走ることだ。

商用車ならこれでいいだろう。だが車には他の使い方がある。家族と海や山へ出掛けたり、友人とキャンプに行ったりするのに使うのだ。

仕事終わりに一杯飲む、温泉に入る、音楽を聴く。これらは仕事の効率という面からみれば、まったくの無駄である。しかし、無駄があるからこそ人間なのだ。

無駄――つまりもっとも人間っぽいところを充分に理解しなければ人の心は掴めない。

「アイ、ロボット」という映画作品を観る観客はなにを求めて劇場にやってくるのか。CGで描かれたロボットだろうか。いやそうではない。人間を観にくるのだ。ロボットがなんでも世話してくれる便利な世界にあって最もローテクで変わり者であるスプーナーの人間っぽさに観客は感情移入するのだ。

なぜならスプーナーはロボットにはない「感情」を持っているからだ。そして2035年のシカゴにおいて最も「感情」を大事にしている人間だからだ。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●便利や効率を追い求めると「無駄」をなくそうとする

●ほんとうに「無駄なもの」と、忘れてならない大切な「無駄がある」

●無駄があるからこそ人間なのだ 

●最も人間っぽいところ――それは感情である

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02/10/2005

新鮮な恐怖(1)―「呪怨」(日本版)―」

〈カテゴリ:映画で読み解くマーケティング〉

2月11日(金)から「THE JUON/呪怨」が公開される。これは日本の「呪怨」のハリウッドリメイク作品で、サム・ライミが製作する。監督は日本人の清水崇のままで、ロケも日本で行っている。主要な登場人物はハリウッドの俳優という、いままでのリメイク映画とはちょっと雰囲気の違った作品だ。

「THE JUON/呪怨」は2004年10月22日に全米3245館で公開され、オープニング3日間で約4000万ドルを稼いで全米No.1を獲得した。全米NO.1は日本人監督初である。宮崎駿監督も北野武監督も海外で高い評価を受けているが興行成績はまだまだである。全米NO.1とはつまりメジャーになったということだ。そういう意味では北野作品も宮崎作品もアメリカ合衆国ではマニア市場で知名度が高いにすぎないといえる。

実は「THE JUON/呪怨」を私はまだ観てない。にもかかわらず今回取り上げるのはなぜか。それはこの作品にはアメリカ人が求める新鮮な恐怖とはなにか?を知るヒントがあるからだ。
アメリカ人が日本のホラーに何を求めているのかを知ることは、人々の要望を的確に読みとる訓練になるのだ。

「THE JUON/呪怨」の大元は、あまりの怖さに噂になって発禁寸前となった伝説のホラー・ビデオだ。このビデオが映画になったのが「呪怨」(清水崇監督/日本/2002年/1時間32分)だ。

「呪怨」のストーリーは、日本の郊外の一軒家に足を踏み入れた者たちが幽霊に次々に殺されていく、というもの。

ものすごく怖いと噂だったが、サム・ライミ監督(後ほど紹介します)が絶賛したと聞いて、もしかしたら怖くないのではないかと思った。

実際、ちっとも怖くなかったのである。とはいっても「リング」も「仄暗い水の底から」もたいして怖くなかった私は、おそらく怖いと感じるポイントがこれらの作品が狙っているところとは違っているというのもあるだろう。だが収穫もあった。

そもそも、怖くなくて得したことがる。あまり怖くないのでじっくりと作品を観れたのだ。そのため「恐怖」を題材に「人が求めるもの」について考えることができたのだ。もし心底怖がっていたら悠長に考えてなどいられないだろう。

「呪怨」はその後「呪怨2」も制作されたが、ここでは「呪怨」を取り上げる。

「呪怨」にはいわゆるストーリーらしきものはない。とにかく郊外の一軒家に一歩でも足を踏み入れた者たちが次々に死んでいく、または幽霊に遭遇して恐怖におののく、というものだ。

これは富士急ハイランドのアトラクション「超・戦慄迷宮」に近いものだろう。つまり用意された箱(一軒家・病院)の中で驚きと恐怖の演出をいくつも施すという種類のものだ。
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
富士急ハイランド 「超・戦慄迷宮」

ウォークスルー型ホラーハウス。使われなくなった古く大きな病院内を歩いていくとうスタイルのお化け屋敷。

歩行距離 700メートル
所要時間 約50分
建   物 2階建て(一部中2階)
延床面積 約3000平方メートル
料   金 500円(フリーパス使用不可)
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…

ストーリーに見るべきところはほとんどない。「呪怨」は「恐怖の演出」が売りなのだ。何をどうしたら怖がってもらえるかがポイントだ。「呪怨」を観たサム・ライミ監督は、こんなに怖い映画を観た事がない、と言ったという。

そもそもサム・ライミ監督のホラー系の作品は怖くないというのはよく知られている。
例えば「ザ・ギフト(The Gift)」(サム・ライミ監督 2000年 アメリカ)も怖くはない。
映画レビューはこちら

サム・ライミ監督は「スパイダーマン」「スパイダーマン2」の監督して有名だが、そもそも彼は「死霊のはらわた」(83)というホラー・スプラッタ系の作品で頭角をあらわした人物だ。
「スパイダーマン2(SPIDER-MAN2)」映画レビューはこちら

「死霊のはらわた」は題名からして怖そうだ。この作品は、山小屋にやってきた若者のグループが森の悪い霊に次々に血祭りにあげられていくというものだ。おそろしげな特殊メイクと鮮血が飛び散るといったスプラッター系のホラー作品なのだが、作品には「恐怖」のほかに「笑い」の要素が入っている。

怖すぎると笑ってしまうことがあることからもわかるように「恐怖」と「笑い」は隣りあわせだ。

「死霊のはらわた」を観ると、監督の狙いはもしかしたら「笑い」にあるのではないかとも思えるのだ。ホラーという舞台で「笑い」を描く特異な才能の持ち主。「死霊のはらわた」にはサム・ライミ監督の「おちゃめ」がいっぱい詰まっているといってもいい。

そんなサム・ライミ監督が絶賛した「呪怨」と聞いて、怖いどころか笑ってしまうのではないかと期待していた。――はたしてそのとおりになった。


〈笑いの要素〉

(1)幽霊が白塗りの男の子
(3)怖がっているのは登場人物

幽霊のひとりが顔に白塗りをしたかわいい男の子なのだ。おかんの白粉を使って家でかくれんぼして遊んでいるかのようで、この男の子が出てくるたびに、白粉だけに白けてしまった。これは狙ってのことだと思われてもしかたがない。

また幽霊に遭遇した登場人物の恐怖におののく様子が怖くないどころか滑稽にみえる。
怖がらせる対象は観客であるはずなのだが、腰を抜かして声にならないほど怖がっているのは幽霊に遭遇した登場人物なのだ。せっかく幽霊が出てきたのにひたすら怖がっている登場人物を長く映しているので、観ているうちにその怖がりようが滑稽におもえてくるのだ。

「ヒロシ」をご存知だろうか。「ヒロシです」ではじまる自虐ネタで人気者になったお笑いピン芸人だ。もしネタを披露しながらヒロシが笑ったらどうだろう。カメラさえ見ずに悲しい顔で自虐ネタを披露するから観客は笑うのだ。

笑わそうとしている人間がネタのまえに、またはネタの披露中に笑っては台無しだ。同じように怖がらせようとしている人間がいちばん怖がってしまっては台無しだ。

おばちゃんが話す前に自分で大笑いして、話を聞こうとしているほうはおばちゃんがなにを面白がって笑っているのかわからない、というのをテレビやなにかで見たことがある方もいるだろう。

「いやいやおばちゃん、なにがそんなにオモロいんかいな」てなもんである。

こういうおばちゃんのキャラクターとシチュエーションは面白い。こういう種類の笑いを楽しむのが「呪怨」の裏の楽しみ方だ。

では、こんなにも笑える作品である「呪怨」がアメリカ人にとってものすごく怖いのはなぜだろうか。

サム・ライミ監督は「呪怨」に「笑い」の匂いを嗅ぎ取ったのだろうが、それはあくまできっかにすぎない。彼はおそらくほんとうに「怖い」と思ったのだろう。――「アメリカ人にとって怖い」と感じたのだ。
      
これについては次回に話すことにしよう。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●笑わせようと(怖がらせようと)おもったら、自分が笑って(怖がって)はいけない

●おばちゃんキャラクターならばそれでも「笑い」になる

●サム・ライミ監督は「呪怨」のどこを怖いと感じたのか

●「呪怨」はまさにアメリカ人にとって怖いのだ
     
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
∇呪怨(じゅおん)

強い怨念を抱いたまま死んだモノの呪い。それは死んだモノが生前に棲していた場所に蓄積され、「業」となる。その呪いに触れたものは命を失い、新たな呪いが生まれる。
「呪怨」公式サイトより引用)
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
∇清水崇(しみず たかし)

1972年群馬県生まれ。近畿大学芸術学部を経て、関西テレビ「学校の怪談G」の短編を脚本・演出。ビデオ版「呪怨/呪怨2」を監督・脚本。「富江re-birth」で劇場用映画監督デビュー。
…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…---…
∇他のサム・ライミ監督作品
「ダークマン(DARKMAN)」 1990年 アメリカ 映画作品レビューはこちら
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02/08/2005

ラジコンカーがついにこの価格に

玩具メーカーのトミーが、小型ラジコンカー「トミテック・エアロアールシー」
なるものを発売したとか。

ラジコンカーのサイズは実車の約28分の1ほどで価格は1050円

お☆安い☆ラジコンカーといえばかつてはおもちゃの王様みたいなもので、
お金持ちのおぼっちゃまは持っていても、普通のおウチの子は誕生日などの
特別なときにやっと買ってもらえるかも!っていう代物でした。

それが1050円。いまどきのお子様ならお小遣いで買えてしまうでしょう。でも
この商品、お父さんに人気ありそう。お父さんは子供のために、とか言いなが
ら満面の笑みをたたえてラジコンカーを買きそうです。いまどきお子様のお小
遣いよりも少ないかもしれないお父さんのお小遣い(T_T)。それでも1050円なら
ランチを切り詰めて買うぞ! そのぐらいラジコンカーというのはかつての子
供たちの夢だったのです。

3月にはエアロパーツセットが追加される予定とか。

「TOMITECH エアロアールシー

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02/06/2005

砂丘でサンドボード

〈カテゴリ:マーケティング〉

鳥取砂丘を滑り降りるスポーツとしてサンドボードが好評らしい。

サンドボードはスノーボードとほぼ同じ形のボードに両足(素足)を乗せて固
定して、砂の斜面を滑り降りるというものだ。

サンドボードがオースラリアから日本に入ってきたのは2001年で、スノーボー
ダーの夏の遊びやトレーニングとして競技人口が増えているという。

鳥取砂丘には一度行ったことがある。ずいぶん昔のことなので今はどうなって
いるかわからないが、そのときはスキー場にあるようなリフトに乗って砂丘へ
渡った。

海辺の砂浜を歩いたことがある人はわかると思うが、砂の上というのは予想以
上に歩きにくい
ものだ。まして走るとなると、アスファルトの上を走るよりも
何倍も筋力と体力を使う。

「はじめの一歩」(森川ジョージ著)という大人気のボクシング青春漫画があ
る。鴨川ボクシングジム所属のボクサーたち4名ほどが夏の合宿に海へ行くと
いう話が載っている。

はじめて合宿に参加した主人公の幕ノ内一歩は、先輩たちと一緒に砂浜でラン
ニングするのだが、いつのまにかみんなから遅れてしまう。

海に来て女の子をナンパして遊んでばかりいた先輩たちだったが、砂浜で一緒
に走ってみて、実は過酷なトレーニングをこなしているとわかり、一歩は先輩
たちの凄さに感心する。

浜辺を走ったことがない方でも、ボクサーがよく砂浜でランニングするという
のを聞くと、砂の上を走るのはかなりの体力を消耗するということを想像しや
すいだろう。

私が砂丘に行ったときも友人たちと走り回って遊んだのだが、やはり走りにく
くて何度も転んだ。砂が口に入ってジャリ(←「砂利」とかけたわけではない
が……)っとした感触を味わったものだ。

おまけにローカットの運動靴を履いていたので靴の中はすぐに砂だらけになっ
た。

そんなとき友人のひとりがどこからかダンボールの切れ端をみつけてきて尻を
乗せて丘を滑りはじめたのだ。その圧倒的な降下速度には目を見張るものがあ
り、みんなこぞってダンボールに乗ったが、切れ端は小さく、滑り降りる途中
で転んで砂だらけになっていた。

そのときだれもが、もっと大きなダンボールがほしい、もっとたくさんダンボ
ールがほしい、と思っていたにちがいない。そうすればみんなで滑り降り競争
をして遊べただろう。

砂と海しかない(観光用のラクダもいた)鳥取砂丘で1番ほしいものはなにか
といえば、あのときはダンボールの切れ端だった
のである。

もちろん鳥取砂丘でなければ、ダンボールの切れ端などいらない。ダンボール
ならモノを入れたりできるが「ダンボールの切れ端」など使いようがないから
だ。

そんな「いらないモノ」でも、場所が違えば皆の羨望の的になるのだ。

鳥取県のスキー場といえば「大山」だが、全国的にみれば中国地方はスキー場
が少ない。だが鳥取には砂丘という天然資源がある。サンドボードは夏のスポ
ーツとして大いに楽しめるだろう。

サンドボードの良い点はなんといっても気軽にできること。ウェアもブーツも
いらない。でもゴーグルはあってもいいかもしれない。

鳥取砂丘に行ったらぜひ挑戦してみたいものだ。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●なんの役にも立ちそうにないものでも、どこかで役に立つことがある
 (ダンボールの切れ端)

●たとえ魅力がないように思えるものでも、場所や時が違えばたいへん
 に魅力あるものとなる

●アウトドアスポーツをしてみよう。自然を活かすスポーツは、すでにある
 ものと、なにかの組み合わせによって、たのしみときもちよさを与えてく
 れる。
 (砂 + ダンボールの切れ端 = 滑走の楽しさ・気持よさ)

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「はじめの一歩―The fighting! (1)」森川ジョージ 講談社
はじめの一歩―The fighting! (1)

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25席の妖精―「ネバーランド」―

〈カテゴリ:マーケティング〉

ものの良さを伝えるには、まずはそのものの良さを感じることができる人に知ってもらうのが一番です。
なぜなら、良いと感じてくれた人はまわりの人にその良さを伝えてくれるからです。

映画作品を例にみてみよう。
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作品名「ネバーランド(FINDING NEVERLAND)」

マーク・フォースター監督/2004年/イギリス・アメリカ/100分

●名作「ピーター・パン」誕生の実話に基づいて描いたヒュー
 マンドラマ

〈ストーリー〉
1903年のロンドン。新作が不評の劇作家ジェームズはある日、作品の構想を練るために公園にでかける。そこで、父を失った4人のデイヴィス兄弟とその母親シルヴィアに出会う。
ジェームズは彼らとの交流で作品のイマジネーションを膨らませて「ピーター・パン」の脚本を書きはじめる。

作品レビューはこちら
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サー・ジェームズ・マシュー・バリは少年たちと出会って「ピーター・パン」の着想を得ます。脚本を書き上げて舞台の稽古をはじますが、登場するキャラクターに犬や妖精がいるために役者は戸惑い、劇場主は作品の評判をますます気にして資金繰りに頭を悩ませます。

ジェームズはぜったいにうまくいく、と言って劇場の25席を確保します。

そして「ピーター・パン」初演の日。ぞくぞくと観客が集まるなか、確保した25席の客はひとりもやってきません。このままでは空席になってしまう、と開劇場主は開演時間真近に25席を売りに出そうとします。

そのとき、ジェームズが招待した観客たちがやってきます。それは孤児院の子供たちでした。孤児院が劇場から遠いところにあったため、開演ぎりぎりの到着となったのでした。

当時の劇場での公演はたいていは上流階級(有閑階級)の人々が観客です。初演で観客に受け入れられればその作品は成功するのです。

そんな上流階級(有閑階級)の観客に混じって子供たちが客席に座ったのです。それも観客席にまんべんなく散らばって座ったのです(25席分)。

さて舞台の幕開けです。すると部屋のなかに犬の着ぐるみを着た役者が四つんばいになって登場します。いったいなんだろう、と顔をしかめる大人がいるなかで、犬はクンクンと部屋の中をかぎまわっています。すると劇場のあちこちでクスクスッ、キャッキャという笑い声がします。子供たちが犬を見て笑っているのです。子供たちの楽しそうな様子があたたかい空気となって劇場を包み込みます。それまで険しい顔をしていた大人たちは子供たちと同じ目線になって劇を観はじめました。

するとどうでしょう! 大人たちも「ピーター・パン」の世界にグイグイ惹き込まれて少年少女の心を取り戻していったのです。

劇中では、ある夜、子供たちの寝室にピーター・パンがやってきて、さぁ信じれば君も飛べるよ、といいますが子供たちはなかなか飛べません。ピーター・パンはいいます。「そうだ! 魔法の粉を振り掛けるのを忘れていたよ」

ティンカーベルの魔法の粉を振りかけられた子供たちは次々に体が浮いてネバーランドへ飛び立ってきます。

サー・ジェームズ・マシュー・バリがピーター・パンだとすると、25席の子供たちは妖精です。

ジェームズは「信じればかならず行ける」と言います。そして25席の妖精たちは大人たちに魔法の粉を振りかけます。すると大人たちも子供の心を取り戻してネバーランドに旅立っていくのです。

【まとめとポイント】………………………………………………………………………

●ものの良さ(ピーター・パン)を伝えるためには、まずはそのものの良さを感じることができる人(子供たち)に知ってもらうのが一番

●良いと感じてくれた人(子供たち)は、その良さをまわりの人(大人)に伝てくれる

●伝えるとはつまり宣伝。やみくもにお金をかけるのではなく、まずは良さををよく理解してくれる人をみつけて、点と線のつながりではなく、面のつなりで広く伝わるように配置する(サポーターを配置する)

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工事現場の看板

〈カテゴリ:わかりやすい日本語で(Plain Japanese)〉

〔1〕例文
―――――――――――
(道路工事現場の看板に以下の文だけが書いてあります)
 
「ご迷惑をおかけしますが、しばらくのあいだご協力をお願いいたします」


〔2〕問題点
―――――――――――
⇒どのような迷惑をかけるのか。
⇒なにをお願いしているのか。


〔3〕解説
―――――――――――
例文だけでも工事中だということはわかるでしょう。しかし、いくつか情報を
付け加えると、もっとわかりやすくなります。
どのような情報を付け加えるとよいのか(以下に例を2つ)。

(1)道路工事によってどのような迷惑をかけるのか

(2)誰に、どのくらいの期間、何をお願いするのか

ある人が、例文にあるように書かれた看板を見たら、シャベルを手にして道路
工事を手伝いはじめるかもしれません(^^)


★解決策
 ⇒必要な情報を書き足す。
 ⇒いらない語を取り除く。


〔4〕書き直し(リライト)例
―――――――――――― 
「道路工事中。まわり道をしてください」(まわり道の案内地図付)
 
「道路工事中。これにともない、(○月○日○時)まで、さまざまなご迷惑を
おかけします(騒音、砂埃、まわり道のお願い等)」

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02/03/2005

入り口(玄関)での案内で負担を減らす

〈カテゴリ:マーケティング〉

WEBサイトでもお店でも入り口での案内をわかりやすく的確に行いましょう。

日帰り温泉施設に行った時のことです。その施設を訪れるのははじめてでした。温泉施設に着くと、まずは大きなきな鳥居のような門があました。どうやら建物の玄関は階段を登った先にあるようです。そして大きな門の下には温泉施設の案内板がありました。

・温泉施設の名称
・営業時間
・料金
・レンタル用品の案内
・その他案内と注意事項

まずはここで施設の内容を知ることができるようになっていました。ひととおり読み終わり、いざ階段を登って建物の入り口にやってきました。しかし建物の玄関でしばらく足が止まってしまいました。

なぜなら、案内図などを探して周囲を見まわていたからです。

ここで、一般的な日帰り温泉施設での行動順序をご紹介しましょう。

1 玄関で靴を脱いで靴専用のロッカーに入れる

2 靴ロッカーのカギを持ってカウンターに行き、入館手続きをする

3 カウンターで脱衣所のロッカーのカギを受け取ったり、館内での飲食など
  で使えるバーコード付リスト(腕にはめるもの)を受け取ったりする

4 脱衣所に行く

5 温泉に入る

たいてい上記の行動順序だというのはわかっていますが、それでもはじめて訪れた施設で最初に知りたいのは、どういった手順で施設を利用すればよいのかということです。

玄関に「館内マップ(地図)」と「施設利用の手順」が示してあれば、お客さんは施設を利用するまえにあらかじめ情報を得て安心できます。

こうした館内マップや施設利用手順案内板の他にも、施設員がお客さんを出迎えて案内するのもよいでしょう。

お客さんはたいていは「こんな手順でいけばいいだろう」と推測してくれます。しかし、温浴施設等をはじめて利用する方もいます。海外からやってきたお客さんもいるでしょう。

推測させるというのは、それだけお客さんに負担をかけているということなのです。

風呂に入って疲れを癒そう、リラックスしようと思ってやってきた人に負担をかけないようにしましょう。
すべきことは、お客さんの目的(リラックスしたい)達成を助けることです。

はじめ(入り口・玄関)に必要な情報を与えて、お客さんの負担をなるべく減らすようにしましょう。

また、ウェブサイトの場合、必ずしもトップページから訪問者が来るとはかぎりません。たとえそうでもサイトに興味を持った訪問者はとりあえず「ホーム」をクリックして玄関にやってきます。そういうわけで、入り口・玄関というのはとても重要な場所なのです。

ほかに、はじめからウェブサイトへの入り口をひとつに限定する方法もあります。この方法では訪問者をスムーズに誘導することができます。

【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●お客さんの負担を減らす

●そのために、入り口・玄関であらかじめ必要な情報を与える

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02/02/2005

オマケ―「いま、会いにゆきます」―

〈カテゴリ:マーケティング〉

聞いた話では、名古屋の喫茶店でコーヒーを注文すると、茶菓子がオマケで付いてくるそうです。午前中にはトーストが付いてくるところもあるとか。

お菓子のオマケ。これも人気があります。オマケがほしいのでお菓子を買う人もいます。

オマケはあくまでオマケなのですが、オマケというより「メイン」になっている場合があります。
事実上はメインであってもオマケとしておけば、オマケなのにスゴイ! と感じてもらえます。

人はあって当然、または受けて当然と思っているモノやサービスについては、あまり注意を向けません。もちろん、あって当然と思っているサービスの質が悪いと感じれば、二度とお店にやってきれなくなるでしょう。

オマケ付チョコで言えば、チョコがあって当たり前なのです。チョコの味や大きさがそこそこであればそれでいいのです。オマケ付チョコで重要なのはオマケの内容なのです。100円~300円ぐらいの値段で売られているチョコレ
ートの味の差というのはほとんど気になりません。それがチョコレートの味をしていればそれでいいのです。

オマケ付チョコを買うお客さんの目的はオマケです。オマケをより魅力あるものにすれば興味をもってもらえるのです。

一見するとオマケとは関係ないように思える例で考えてみましょう。いつものように映画作品を紹介します。
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作品名「いま、会いにゆきます」
    
土井裕泰監督/日本/2004年/
原作: 市川拓司『いま、会いにゆきます』(小学館刊)

〔Story(ストーリー)〕
ある雨の日、妻に先立たれた夫(秋穂巧)と息子(秋穂佑司)の前に妻が(秋穂澪)あらわれる。亡くなったはずの澪は記憶を無くしていた。巧と佑司は澪をやさしく迎え入れて一緒に暮らしはじめる。
澪は生前、手作りの絵本のなかで、自分が死んだら雨の季節に戻ってくるという物語を描いていた。
巧は記憶がない澪に、2人が出会った恋物語を話してきかせ、佑司は母のぬくもりを感じてしわせな日々を送っていた。
やがて雨の季節が終わり、澪は去っていく。

作品レビューはこちら
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この作品はいわゆる「感動モノ」です。子供、病気、死という要素を使っています。大ヒットしている作品で、涙なしには観られない作品だと言われています。

しかし、感動モノというだけではここまで大ヒットしなかったかもしれません。ヒットの要因は主に3つです。

〈1〉配役のうまさ(女優の竹内結子を起用)
〈2〉子供、病気、死という涙を誘う題材を使う
〈3〉SFちっくな仕掛けを使う

オマケとして重要なのは〈3〉番です。いわゆる「感動モノ」というだけでは観客が限定されます。しかし、口コミで

「感動モノなんだけど、終わりのあたりにちょっとしたネタ明かしがあるよ」
「感動モノなんだけど、終わりのあたりにちょとした仕掛けがあるよ」

と聞いたなら、それがいったい何なのかと気になることでしょう。

泣けることはまちがいなく(あって当然と思っている効果=感動の涙)、それ以外にちょっとしたネタ明かしがある(オマケ)というのです。

ただのチョコじゃない。ちょっと凝ったオマケが付いているらしい。オマケのおかげでますますおいしいチョコになるんだって!☆

チョコの味までもおいしく変えてしまうオマケがあるなんて聞いたら、もう気になって仕方ありませんよね。

「いま、会いにゆきます」は涙の定番(基本)に付け加えたオマケで、感動をもっと劇的にしたのです。

涙の定番(基本)要素 + SF的オマケ = 劇的な感動

オマケでタネ明かしをすることで、それまで感動の影にかくれていた謎が一気に解けるようになっています。つまり、サスペンスの要素をもっているのです。上の式に書き足すとこうなります。

涙の定番(基本)要素 + 謎とサスペンス +SF的オマケ = 劇的な感動

あって当然と思っている感動に、謎の答えを知りたいという好奇心(関心)と謎解きの役割を持ったオマケを付けているのです。こうして作品の内容を充実させて、より感動が広く深くなるようにしているのです。

「いま、会いにゆきます」は、オマケを使って本来メインである商材の魅力を高める良い例となっています。題名もストレートでありながら深みがあるものとなっています。この作品を観ることをおすすめします。

【まとめとポイント】-------------------------------------------------

●オマケを魅力あるものにする

●オマケでメインの商材の魅力を高める

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