リバイバル―「カンフーハッスル」―
〈カテゴリ:マーケティング〉
リバイバルとは、おおまかな意味では、一度顧みられなくなったものが再び見直されたり脚光を浴びたりすることである。
あのブームはとうに過ぎ去った。あれは使い古されてもう使えない。あの人はすでに時代に取り残された――。こんなふうに多くの人に思われている人やモノにもう一度注目してみよう。なぜなら流行というのは、変化しながらも一定の周期で繰り返されるものだからだ。
ファッションの世界でも、20~30年をひとつの期間として流行が繰り返される傾向がある。これは、70年代、80年代のファッションや歌やデザインがこのところ注目を集めていることからもわかるだろう。
昔の料理に味付けして新しい料理として出せば、それは人気メニューになるかもしれない。味付けにしても塩味、味噌味、醤油味といろいろある。料理法にしても、煮たり焼いたり蒸したりとさまざまだ。素材(題材)の味付けと料理法のバリエーションは無数にある。どう味付けするか、どう料理するかは、時代の流れと人間の感情・欲望をよく観察して決めるとよい。
ここで映画作品を例にみてみよう
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「カンフーハッスル(KUNG FU HUSTLE 功夫)」
周星馳 (チャウ・シンチー)監督/中国/2004年/103分
●奇想天外エンタテインメントカンフーアクション笑劇作
【Story(ストーリー)】
中国。冷酷無情なギャング団「斧頭会」が街を牛耳っていた。しかし貧民層はそんなことはお構いなしに日々の生活をおくっていた。
ある日、豚小屋砦というアパートに、斧頭会のメンバーだという男(シンとその相棒)がやってきて小銭を騙しとろうとする。そこへ本物の斧頭会がやってくるが、アパートの住人たちに一蹴される。
斧頭会の組長からおくり込まれてきた刺客を、豚小屋砦の住人たちは死闘を繰り広げて倒す。ついには伝説の殺し屋が登場する。カンフー達人たちの闘いに触れたシンの中では、眠っていたなにかが目覚めはじめていた。シンは幼い頃に手に入れた功夫秘伝書の如来神掌に開眼する。
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70年代~80年代にカンフー映画が多く作られ、多くのカンフーアクションスターが誕生した。その後、カンフー映画として一般によく知られてきたのは主にジャッキー・チェン(成龍)主演のアクション映画である。ジャッキー・チェ
ンはハリウッドに進出して、中国武術とコメディを取り入れたアクション作品をヒットさせた。これによりハリウッドの「名声の歩道(Walk of Fame)」入りを果たしている。
ほかに李連杰(ジェット・リー)が「リーサルウェポン4」に出演してハリウッドに進出した。その後いくつもの映画に主演している。彼はわずか11歳で中国の全中国武術大会で個人総合優勝を果し、以後5回優勝している。
ハリウッドで活躍するジャッキー・チェンやジェット・リーが注目されている一方で、70年代から80年代に活躍したカンフースターは高齢になってきていることもあり最近はほとんど映画に出演していなかった。そんなカンフースターたちを起用したのがカンフーハッスルだ。かつてのカンフースターをただ起用しただけではない。そこに「最新のVFX技術」と「笑い」を加えたのだ。
カンフーハッスルをわかりやすくいうと、漫画の世界がそのまま映画になったというものだ。「北斗の拳」や「ドラゴンボール」などの拳法漫画の動きや技を映像化したのだ。そのため、これらの漫画に親しんだ日本人にとってはとりたてて目新しくはないのだが、それはいままで漫画を読んで「絵」として入ってきたものが頭の中のイメージとなって残っているからだ。それが今度はアニメーションではなく、実写とVFXとの融合による映像として見れるというのである。漫画の「ありえない」動きや技が映像に! と聞けば、話のタネにでも見てみたいと思うだろう。
アジア各国においても「カンフーハッスル」は大ヒットしている。日本の漫画はアジア各国に広く浸透している。子供の頃にテレビで見たアニメやコミックで漫画的世界に親しんできた世代にとって、カンフーと漫画的アクションと笑いとの融合であるカンフーハッスルは注目したくなる作品なのである。
カンフーハッスルのチャウ・シンチーは前作「少林サッカー」の大ヒットで注目を集めた監督だ。少林寺拳法とサッカーを組み合わせて日本の漫画「キャプテン翼」ふうのシュートを映像化した。
チャウ・シンチー監督はカンフーの大ファンだという。いくらカンフーが好きだといっても、70年代80年代のカンフー映画の真似をしただけではヒットは難しい。そこでまずは少林拳法とサッカーとVFX技術とを組み合わせたのだ。
こうして誕生した「少林サッカー」の大ヒットによってハリウッドの資金を手に入れたチャウ・シンチー監督が、今度は大好きなカンフー映画を撮ることになった。ハリウッドの資金とスタッフを得ることができたので、往年のカンフ
ースターを起用しつつ、最新のVFX技術と笑いの要素を使って多くの人が楽しめるエンタテインメント作品を作ることができたのだ。
一度顧みられなくなったものに、時代に合うよう味付けて、料理をしてみよう。
【まとめとポイント】-------------------------------------------------
●時代遅れと思われているものを見直そう(カンフースター)
●使い古されたものに、時代に合った味付けをする(VFX視覚効果)
●他との組み合わせを考える(カンフー、笑い、漫画)
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